妹の冷静な指摘に、姉はますますヒートアップする。
「何言ってるの?ジャーナリズムが権力に迎合してどうするのよ!?いいこと、何者にも媚びず、不偏不党を貫き、真実を追究し続けるのが真のマスコミ人なのよ。ペンは剣よりも強く、鉄は熱いうちに打つ!
これが、私達新聞部のあるべき姿で───」
「あの〜、私達の活動予算は、部長の言う“権力”、つまり学校側から出てるんですけど……?それと、その予算の配分を決めるのは山百合会なわけでして。自分達のスポンサーに喧嘩を売るっていうのは……
ちょっとまずいんじゃないですか?」
「うっ……」
なんて可愛げのない子だろう!思わず三奈子は、童話に出てくる意地悪ばあさんのような述懐を密かに
洩らした。結局、この日の会議は「山百合会その他について、何か目を引く情報があったら報告する
こと」という程度の無難な結論に落ち着いた。下校時、校門への道を歩く三奈子は、真美から見て少し
ご機嫌斜めそうだった。
(ああ……何でうちの妹は、こんなに口やかましいのかしら?私の才能に嫉妬してるってわけでも
なさそうだけど。もうちょっと素直になってくれれば言う事なしなのにねえ。これは私の姉としての指導が
足りないのかも……?)
(ああ……どうしてお姉さまって、ああも自己陶酔して暴走し易いんだろう?記者としては優秀だし、
あれさえなければ理想なお姉さまなのになあ。これは私の妹としての補佐が至らないせい……?)
性格は正反対と言ってもいいほどに違う二人だが、似たような事を考えていたりする。
三奈子が校門の前でぴたりと立ち止まると、二人は同時に口を開いた。
「真美」
「お姉さま」
「……あ、何かしら、真美?」
「いえ、お姉さまこそ先にどうぞ」
しばらく譲り合った後に、三奈子がそれではと話し始めた。
「実はね、私はちょっとしたネタを握ってるのよ」
「へえ。どんな事ですか?」