初めて乃梨子と唇を合わせたあの日。
乃梨子の部屋でそういう行為をしてから、いくらか月日が流れた。そして私と乃梨子は、
あれからも何回か肌を重ねていた。
互いの家で二人きりになれることはそれほど多くはなかったが、しかしその僅かな
機会を得る度に、二人とも少しずつ自分の気持ちに正直に、そして大胆になっていった。
そう――私は正直になっていた。
乃梨子の前では素直に自分の心をさらけ出せることに、確かな幸せも感じている。
「ちょっと寒くなってきたね」
乃梨子はお聖堂の扉を開けながら振り返り、寒そうに肩をすくめながらそう言った。
乃梨子の後に無意識に続きながら物思いに耽っていた私は、慌てて意識を現実に引き戻す。
「もう、秋も終わりなのね」