罪悪感と祐巳ちゃんの気迫に押されて、思わず一歩退いてしまった。
その刹那、祐巳ちゃんが私を追いかけて抱きついてくる。
私の胸にしがみつき、顔を見上げて最後の言葉がかけられる。
「…いくじなし…!」
その瞬間、私の胸にあったすべての感情が涙とともに吹き出した。
「わあああああああああんっ!!!!」
私は祐巳ちゃんの体を抱きしめ、あらん限りの声で泣き出した。
祐巳ちゃんも泣いた。
二人で抱き合って、延々と泣いた。
泣きつかれてうとうとしてたのか、私は眠りから覚めた。
慌てて顔を上げる。
真っ赤に泣き腫らした目で、私を見つめる祐巳ちゃんの微笑があった。辺りはもう夕焼け空だ。
何がどうなったのか覚えていないが、気がつくとベンチに座っていて、祐巳ちゃんに頭を抱きかかえられていた。
「いっぱい泣きましたね」
頭を優しく撫でられる。涙がまた出そうになって慌てて祐巳ちゃんの胸に顔をうずめる。
そこにあったダッフルコートの爪飾りを玩んだ。
「気持ち、全部ぶつけてくれましたね」
この子は強い。私は祐巳ちゃんを尊敬した。
私の感情を全て受け止めてなお、こんなに優しい声が出せるなんて。
背中をぽんぽんとあやすように叩かれる。いや、本当にあやされてるんだ。
「いいですよ。…私も、大好きです」
耳を疑った。ふふ、と笑って髪を梳かれる。
どうか、どうか夢なら覚めないで。
私はうっとりと目を閉じ-----
ぐぎゅるぎゅる〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
その瞬間、かえるの大合唱が私の目の前から聞こえてきた。
呆気に取られてまじまじと見つめ合う。
祐巳ちゃんは私の顔と自分のおなかを何度も見比べた。
「ぷ、あは、あっはっははははははははは!」
私はのけぞって笑い出した。
祐巳ちゃんは真っ赤になって立ち上がる。
「もう! 笑わないでください!
お昼も食べないでこんな時間なんですからおなかが空いて当然です!」
「あははは、あはははははっははは…」
だめだ。笑いが止まらない。
「も〜〜〜〜っ! 何か食べに行きましょう!」
そういってぷいっと顔を背け、私の手を引いて歩き出す。
「ほら、行きますよ、”聖さま”!」
笑いを抑え、て引っ張られるように要に後を追いながらつないだ手を確かめる。
この手を離さない限り、大丈夫。そう思えた。
「ありがとう。…大好き、”祐巳”」
初めての呼び捨ては、ほんの少し気恥ずかしかった。