途中、自販機でコーンスープを買って、噴水からちょっと離れたベンチに座った。
あの男たちがまだ騒いでいるのが小さく見える。
「こっちは電気、ついてないんだね」
「暗いけど、あそこよりはましでしょ」
このあたりにはイルミネーションがついてなく、ここからだと向こう側に噴水がぼおっとともって見えた。
「どうする?」
「あの人たちが帰るまでまとうよ」
「ん」
時間がかかるかもね、とつぶやいて令ちゃんは由乃の肩に手を回した。
「寒くならないように」
と引き寄せる。
「あんっ」
突然の嬌声に二人は目を合わせた。
「…ちょっと由乃、変な声出さないでよ」
「…私じゃないよ」
「じゃあ誰だって言うのよ、」
そういって令ちゃんが辺りを見回した。
「!」
明るいところから暗いところに来て、今のいままで気がつかなかったが、
あたりのベンチというベンチには抱き合うカップルが鈴なりだった。
「あ、やだぁ」
ふ、はぁ、はぁ…
耳を澄ませば、ベンチはおろか後ろの茂みからも声や音やら息遣いやらが聞こえる。
「ちょっと、何これ…」
慌てて周りを見る令ちゃん。顔を真っ赤にする由乃。
「おうニイちゃん、彼女困ってるぞぉ」
通りかかった酔っ払いのおじさんに声をかけられる。
「に、ニイちゃん…?」
呆然とする令ちゃんに、酔っ払いは握りこぶしを作り「グッといけ、グッっと!!」
とか何とか言ってふらふら歩いていった。
「グッってなによもう…」
そういって立ち上がろうとする令ちゃんの手を、由乃が引き止め、囁く。
「令ちゃん。目立っちゃうよ。私たちも、ね?」