ネギま!ネタバレスレ94時限目

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853名無しさんの次レスにご期待下さい
「コスモスフレンドに載ってた新人賞の受賞作読んだ?」
「ええ、けっこう面白かったですね。ただ、ちょっと展開が急かなとは思いましたけど」
「私は読み切りのが好きだなあ。テンポもよかったし……」
 小さな喫茶店で、机を挟んで会話を弾ませる二人。自分達の好きな話について、あーだこーだと言い合っている内に、気がつけばけっこうな時間が過ぎていた。
「あ……ごめん、私の話につき合わせて」
 腕時計を見ながら、令がすまなそうに呟く。
「いや、こうしてコスモス文庫のことで人と話せるなんて初めてだから、楽しいです。花寺ではなかなか言えないし」
「祐巳ちゃんとは、話したりしないの?」
「実の姉相手に言えませんよ……あ、もともとは祐巳が買ってきた『いばらの森』を読んで好きになったんです」
「そういえば、私もあまりこういうことで人と話したりしないなあ……」
「あれ? 妹の由乃さんは?」
「あの娘ね、こういうのダメなの。時代劇の剣客物とかが好きだから」
「意外ですね……」
 意外と言えば、令がコスモス文庫の愛読者だったという事実のほうが度合いは上だが。 
「そろそろ出ようか。店混んできたし……あ、代金は私が払うから」
「いや、そこまでしてもらうわけには……」
「助けてくれたんだから、これくらいのお礼はさせてよ」
 学校は違えど、上級生からこう言われたときは素直に甘えるべきだろう。

「じゃあ、お言葉に甘えて。ご馳走様になります」
「うん」
 ニコッと微笑んで、祐麒の分の代金も払った。
 店を出ると、すでに薄暗くなった商店街を歩く。逃げた時はわりと走った気もしたが、すぐに駅に辿り着いたのを見ると、そうでもなかったようだ。
「じゃ、私は駐輪場に自転車置いてるから。ここで」
「そうですか……あのこれなんですけど。本当にいいんですか」
 『これ』とは、令から借りた須加星の新刊である。『私はもう読んだからいいよ』と言って、貸してくれることになったのだ。
「……今度会った時、返してくれればいいわ」
「はあ……」
 とは言っても、自分達が偶然出くわすことなど、あまり無いのではないか。そう思ったのだが、なぜか口に出して言う気にはならなかった。
「またね、祐麒君」
「はい……」
 手を振って駐輪場の方に消える令を見送り、自分は改札口に向かう。
 駅のホームで電車を待ちながら、ふと呟いた。
「また……か」
 次に出会うのがいつになるかはわからないが、この本を返すにはまた会わなければならない。
 そう考えると、この本を持っている限りまた会える気がした。
「また……会えたらいいな」