ネギま!ネタバレスレ94時限目

このエントリーをはてなブックマークに追加
846名無しさんの次レスにご期待下さい
頑張ってって、言われても。こればっかりは相手のあるものだから。
自分の「頑張る!」という気持ちだけではどうにもできないことも、この世の中には
確かにあるんだ。
祐巳は今更ながら、情けない気持ちでそのことを痛感していた。


「どうしたの、祐巳?祐巳の番よ」

祥子さまの声に、考え事をしていた祐巳はハッと我に返る。
二人だけの夜、二人だけのこの寝室で。祐巳は祥子さまと何をしていたかというと――

「あ、すみません。『は』でしたね。えっとじゃあ……ハチマキ!」

そう。
祐巳と祥子さまは、二人っきりのこの部屋で。
冗談でもなんでもなく、健全にしりとりなんぞをして遊んでいた。

(ううう。由乃さんごめん、祐巳はやっぱり不甲斐ない娘です)

祐巳も色々と考えてはいたのだ。祥子さまがお風呂から上がられたら、まずは髪を梳かして
さしあげて、そこからなんとかいい雰囲気に持っていって、とか。
部屋の窓辺で二人並んで夜空を眺めて、ロマンチックな話題でも振って、そして祥子さまに
もたれかかってそのまま抱きついちゃったりして、とか。

頭の中ではそういう作戦を、いくつか練ってはいたのだが。
日頃の経験不足が祟ったのか、どの作戦も第一段階すら実行に移せない、情けない
祐巳なのであった。

そして少し焦った祐巳の口から実際に出た言葉は。
「祥子さま、しりとりでもしませんか」であった。

「しりとり」なんて、自分がシミュレーションしたラブラブ作戦の中には入っていなかったのに。
まったく今回といい、「びっくりチョコレート」の時といい、祐巳は自分で自分の口が不思議だった。
それにしても、ここからどうやってラブラブモードに持っていけばいいというのか。
これでは今夜はもうダメだ。
祥子さまのしりとりに返事をしながら、祐巳は内心頭を抱えていた。

「ええと。『お』、ね? 『お』……」

「お」で終わった祐巳の言葉に、うーんと考え込む祥子さま。今まで割合ぽんぽんとスムーズに
しりとりが続いてきたのに。
何故だか急に考え込んだ祥子さまが少し不思議で、祐巳は心の中の情けなさを一旦脇に置き、
祥子さまの顔を眺めてみた。

(私だったら、絶対すぐに「お姉さま」って答えるけどな)

でもお悩みになっているお顔もやっぱり素敵。
なんて祐巳が思っていると。

「おやすみのキス……なんて、どうかしら?」
「へっ?」

「おやすみのキス」。
微笑みを浮かべながら、祥子さまは確かにそう言った。