後ろから腕を回される。心地よい重み。
「蓉子さま、さっきはごめんなさい。お茶をかけてしまって……」
「い、いいのよ、そんなこと。それよりこの腕を……」
「蓉子さまがよくても、私の気が済んでないんです。ハンカチでふく暇もなかったでしょうから、
ふきとって差し上げます」
「だ、だからいいってば……ひゃっ」
いきなり頬をなめあげられた。生ぬるい感触と、背筋のぞくぞくする感覚が合わさる。
「うふふ。顔全体にかかってたものね。綺麗にしてあげてね、令」
「はい、お姉さま」
熱い息をはきかけながら、ことさらゆっくりと私の顔、首筋を舐め上げていく。
ランダムに、うまく左右に散らして。
背後にある令の動きが見えないものだから、次はどちらにくるか、期待……いや、考えこんでしまう。
右かと思ったら左頬へ。左だと思ったらうなじを奇襲され。油断していると容赦なく耳を。
「ああ……はあっ……」
神経をはりつめてはいけないし、油断してもいけない。
……こんなの無理だ。
「あーら蓉子。もう抵抗できないの?」
悔しい……けど気持ちいい。
頭がくらくらする……。世界がまわる……。
と思ったら本当に回っていた、というか回されていたようで、
いつのまにか令の微笑む顔が正面にあった。
いつもと同じなのに、いつもとどこか違う色気がある笑顔。
少年のような爽やかさが抜けて艶やかさが加味されたような……。
その笑顔が。近づいてくる。ゆっくりと。
……ああ、キスされてしまうのか。
唇が合わさった。
でも、軽く触れるだけ。
随分とそっけない。
……なぜ?他の娘にやったようにはしないの?
不満を感じて見上げると同時に、太股の間に令の片膝が差し込まれた。
「きゃっ、ぁ、ああっ」
思わず声が漏れてしまう。
「んんっ」
しかしすぐ塞がれる。時間差できた今度のキスは深く激しかった。