ネギま!ネタバレスレ94時限目

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815名無しさんの次レスにご期待下さい
「あ、あなたたち、いったいこれは・・・・・・」
祐巳さまから視線が逸らされたことで今更正気に戻ったのだろうか。
祥子さまも立ち上がり声を張り上げるが、もう黄薔薇姉妹は止まらなかった。
「お姉さまァ・・・・・・こっちを、向いてくだ、さい・・・・・・んっ」
「ゆ、祐巳・・・・・・」
「ここがぁ、ああっ、ん・・・・・・く、くりとりすで・・・・・・ここを触ると・・・・・・
 ああ、はあ、・・・・・・そうだ。おねえさま、おねえさまがここを触ってくださいませんか・・・・・・?」

ふらふらと祐巳さまに惹きよせられるように近づいていく紅薔薇さま。
「きてぇ・・・・・・、祐巳のここにふれてくださいぃ・・・・・・」
テーブルの前に跪くと、祐巳さまの秘所に顔をちかづけ、そっと指でそこに触れた。
「んんぁあああっ!おねえさまっ!」
「祐巳・・・・・・!んんっ」
祐巳さまは感極まったように叫び、自分のの前にあった祥子さまの頭をつかむと、そこに押し付けるようにした。
「く、くるし・・・・・・」
「おねえさまっ、なめて、なめてくださいぃっ・・・・・・」

もうすごい状態だ。
黄薔薇さま方に視線を戻すと、由乃さまはタイで器用に令さまの手首をしばり激しく熱く美しく責めたてている。
令さまも普段のミスターリリアンのミの字も見えないほどに頬を紅潮させ乱れている。
祐巳さまは腰をゆらしながら祥子さまの顔を押し付け嬌声をあげ。
祥子さまは苦しそうにしながらも夢中で祐巳さまのそこをなめあげ・・・・・・。

そして、志摩子さん。
私の愛しいお姉さまは、ギュッと握ったこぶしを口元にあて、小刻みに震えながら・・・・・・。
・・・・・・その足首までを愛液で濡らしていた。

足首から視線をあげると、上目づかいの志摩子さんと一瞬目が合った。目を見つめたままほほえんであげた。
びくんと体を震わし困り果てたように視線を落とす志摩子さん。
そしてスカートをできるだけ広げ夥しく伝った愛液を隠そうとするが、
既にスカート自体がグショグショになってしまってどうしようもない。
泣きそうな表情で、救いを求めるかのように上目遣いに私の顔をうかがう。

そんな仕草に私のなかの嗜虐性が猛然と首をもたげ私をかきたてる。
椅子から立ち上がり、ゆっくりと焦らすように志摩子さんの背後に回り・・・・・・その耳を口に含んだ。
「ひゃっ・・・・・・ああっ!!」
「かわいい、志摩子さん・・・・・・」
耳元で囁くと、またびくんと体を震わせる。
816名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 16:45:13 ID:AxOt+p6C
「ねえ、さっき言ってたよね、志摩子さん。シたことないって」
「んん・・・・・・の、りこ・・・・・・」
「それなのに、こんな、スカートがグショグショになるまで濡らしちゃったの?」
「ぃや、やぁ・・・・・・」
「どうしようもない淫乱だね」
後ろから右手をまわして濡れそぼったショーツのなかに入れる。
熱い・・・・・・。

「・・・・・・あっ!」
「ほんとにしたことないの?」
「無いわ、くっ、ふっ・・・・・・ほんとうよ、信じて・・・・・・」
「じゃあなんでこんなに濡れるの?シたことないのにこんなになるなんて、根っからの淫乱ってこと?」
「ち、ちがうの・・・・・・」
ああ・・・・・・。背筋がゾクゾクする。鼻を首筋にうめて匂いをかぐ。
いい匂いだ。ついでに舌も這わせる。白くて透き通った肌に、唾液の跡がくっきり。

「ぁあっ、ひっ・・・・・・。ちがうの、乃梨子。わたし、濡れやすくって。体質なの、それは。
 それで、下着の変えはいつも学校にもってきていて・・・・・・。
 乃梨子としゃべったり、手に触れたりしたら、それだけでもう、本当は、いつも・・・・・・
 でも、いつもはこんなに濡らさないの。信じて、こんなの初めてで・・・・・・おかしいよぉ・・・・・・」

・・・・・・。
この人は今自分が喋った内容がわかってるんだろうか?
オナニーはしたことがないのに、手を触れただけで?そんなことってあるんだろうか。
或いは、したことがないから余計に、かもしれないけど。

まあ、言葉の真偽はともかく。こうして考えてる間にも、右手はどんどん溢れるものを感じている。
考えるのは、後でいい。

「志摩子さん、もういいから。よくわかったから」
志摩子さんがエッチな娘だってことがね。
「だから、恥ずかしがらずにこっちを向いて。キスできないよ?」

ほっぺから目尻まで、何度も舌を這わせながら囁いた。
817名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 16:47:11 ID:AxOt+p6C
カシャ。キュシィーン。

「おねえさま、今度はおねえさまにも」
「ちょ、ちょっと祐巳・・・・・・ああっ」
「ほら、令ちゃん、イっちゃいなさい!ほら、ほらぁ!」
「あ、あ、あ、あああ、よ、よしのぉ・・・・・・あああああああっ」
「志摩子さんのおっぱい、すべすべだぁ・・・・・・手にすいついてくるよ」
「やっ、ああ、ぅ・・・・・・ん、・・・・・・んん、ふはっ」

カシャ。キュシィーン。

「おねえさまの・・・・・・綺麗・・・・・・」
「ゆみ、だめよ、そんなところ・・・・・・んぅ」
「まだまだぁ!もう一本!抜かずに!」
「よ、よしの、ダメェェェェェェェェェ!」
「私の唾液・・・・・・飲んでね・・・・・・」
「んんっんく、んく、んく・・・・・・乃梨子・・・・・・」

カシャ。キュシィーン。
「んっ・・・・・・」

「こふぉ、感じまふか?ここかな?んんっ。ここかな・・・・・・?」
「やめ、ああっ、・・・・・・ひっ・・・・・・んああっ」
「休んでる暇はないのよ!あと5回!目指せ全国!」
「ええっ!そんな、無理、死む・・・・・・あん、あぁっ、ぅわああああん」
「すごっ、まだまだどんどん溢れてくる・・・。志摩子さんどっかおかしいんじゃないの?」
「やだ、やだ、もうヤだぁ・・・・・・。なんで、こんな、わたし・・・・・・」

カシャ。キュシィーン。
「ふぅ・・・・・・いかに私といえどもそろそろ我慢が・・・・・・。皆さん激しすぎ」

「あは、ここだぁ。ここですよね、おねえさま。うふふ、イっちゃえ・・・・・・」
「や、あ、ゆみ、ゆみ、ゆみ、ああっ、ぁぁあああぁあああ!」
「そんなことじゃ花寺に伝わるドライオルガスムスの秘技は破れないわよ!しっかりしなさい!」
「由乃、いいかげんに・・・・・・ダメ、ダメだってばぁぁああああああああああっ!」
「志摩子さんはわたしのものだよね?そうだよね?」
「あん、あ、そうです、みだらな志摩子は、乃梨子のものですぅ・・・・・・」

カシャ。キュシィーン。
くちゅ、ちゅ・・・・・・くちゅ。

山百合会室を覗くことができる木の枝の上。
両足で器用にバランスをとりながら、右手にはカメラ、左手には膣口。

「あのお香、ちょっと効きすぎかも・・・・・・。まあいっか」
カシャ。キュシィーン。
「さて、あとフィルム1本だけでも・・・・・・」
818名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 16:48:32 ID:AxOt+p6C
三年生を送る会。
由乃ちゃんの手品・志摩子の日舞・祐巳ちゃんの安来節。そして、祥子の屈託のない笑顔。
予定外で驚いたが、どれも楽しませてもらった。全く、聖もやってくれる。

ひとしきり笑った後、今は和やかに談話しつつお茶をいただいている。
「あれ?もうお茶なくなっちゃったの?」
「ああ、じゃあ私が淹れるわ。みんなまだ飲むわよね?」
聖の発言に江利子が応えて席を立つ。

「そんな、お姉さまにやらせるわけには」
「いいのよ令。最後なんだから、やらせてくれない?」
立ち上がりかけた令を、江利子は珍しく殊勝な口調で嗜め座らせる。
「お姉さまがそういうなら……」

江利子のやつ、いったいどういう風の吹き回しだろう。
まあいいか。て色々思うところがあるんだろう。そう、なにしろこれで最後なのだ。
私は深く考えずに席を立った江利子を見送り、祐巳ちゃんと祥子に視線を戻した。
二人とも、幸せそうに笑っちゃって。
少し妬けるが、満足感と幸福感のほうが断然大きい。
ありがとう、祐巳ちゃん。よく頑張ったね、祥子。心の中でそっと言う。

「はい、お茶が入ったわよ」
江利子が席に戻る。

「……令、あなたが一番最初に飲んでくれない?」
「え?」
「私がここで淹れる最後のお茶だろうから……。あなたに一番に飲んで欲しいの」
「あ……、はい。いただきます」
「ありがとう」

本当にいったいどういう風の吹き回しだろう。
江利子は由乃ちゃんがピリピリするのを完全に無視して、
優雅な仕草で、それでいて嬉しそうに浮き立つように、令のカップにお茶を注いでやっている。
まあ、こういうのも江利子らしいと言えるかもしれないけれど。

「いただきます、お姉さま」
令が真面目くさった顔で再度言う。
なんとなく、部屋全体がシンと静まりかえり、全員が令に注目する。

令はしずしずとカップに口をつけ……
目を瞑ってぐい、と一気にカップをあおり、喉をニ・三度鳴らし……

「ぶーーーーーッ!!」
おもいっきり吹き出した。
そして吹き出したものはちょうど正面にいた私に雨のように降り注いだ。
819名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 16:49:23 ID:AxOt+p6C
「あらまあ令ったら。それでも私の妹?はしたないわねえ」
「ちょっちょっちょっ、おねえさま!何するんですか!ていうかこれは何ですか!お茶じゃな……」
「令、それは蓉子のセリフでしょ?こんなにかけられちゃって……。もうお嫁にいけないじゃない」
「そ、そうじゃなくて……いや、それは申し訳ないんですけど……」
「なら、ちゃんと謝りなさい」
「ご、ごめんなさい……。……じゃなくて!」

……令が江利子に口で勝てるわけがない。埒があかないので、令がしたいであろうツッコミを私がしよう。
「いいのよ、令。それより江利子。これ……お酒じゃないの?」
さすがに顔にかかると匂いでわかる。
「え、お酒!?令ちゃんに!?」
なぜか由乃ちゃんが素っ頓狂な声をあげるが、それどころではない。江利子を問い詰めるのが先だ。

「そうよ?紅茶にブランデーを少し多目に垂らしてみたの。いい香りでしょ?」
全然悪びれない。それにこの匂いのキツさは「少し」「多目に」「垂らした」なんてものじゃない。
令もまあ、よく気付かずに飲んだものだ。雰囲気に飲まれたのだろうか。

「そういう問題じゃないでしょうが。ここは学校なのよ。それに私達はまだ卒業してない。
 そのことをよく自覚するべきだわ」
全く、お茶を淹れるとか令に一番に飲んで欲しいとか、どうも様子がおかしいと思ったら。
こんなことを考えていたなんて……。
「相変わらず蓉子は固いんだから」
「固いとかそういうことじゃな……」
「み、みんな、逃げて!はやく!」

反論を由乃ちゃんの大声で遮られてしまった。
「令ちゃんから一歩でも離れて!」
「ちょ、ちょっと由乃ちゃん。いったいどうしたの……」
「令ちゃんは酒乱なんです……!しかもお酒が入ってるとまるで別人みたいに上手くて……!
 だ、だから、酔いが回るまえに、はやっんんくっ」

まくしたてる由乃ちゃんの唇はいきなり立ち上がった令に塞がれた。

江利子を除いた一同は唖然として固まってしまう。

「んんーーっ!!」
由乃ちゃんは暴れて抵抗するが……令は気にせず唇をついばんだり、顔を斜めに向けて深く合わせたり。
「うわ、すご……」
隣で聖が目を丸くしている。私だって同じ感想だ。
こんなの……初めて見た。呆然と二人を見ていることしかできない。

由乃ちゃんの抵抗はどんどん弱くなっていき……やがて完全になくなる。そこで令はやっと唇を離した。
「由乃みたいなカワイイ女の子がそんな大声をあげちゃいけないよ……?」
艶然とほほえみ、由乃ちゃんの頬に指を這わせる。まるでホスト。バックに薔薇が咲いている。
「うん……ごめんね、令ちゃん……」
陶然と頬を紅潮させ目を潤ませ応える由乃ちゃん。

陥落。
その二文字が頭に浮かんだ。
820名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 16:51:18 ID:AxOt+p6C
「じゃあ、次は祐巳ちゃん……」
「ふえぇっ」
小犬のように一歩あとずさる祐巳ちゃんの前に、祥子が親猫のように立ち塞がった。
「……の前に祥子かな?」

令は微笑みを絶やさずゆっくりと祥子のほうへ足を進める。
「れ、令、しっかりなさいよ!」
「祥子こそ。顔、赤いよ?由乃とのキスみて、感じちゃった?」
「か、顔が赤いのはあなたのほうよっ」
上から優しく見下ろして、頬に触れた。令が身長を生かすところを初めて見たかもしれない。
「ひあっ……い、いやっ」
「そんなに怖がらないで……。祥子のことなら、なんでも知ってるから……」

「気持ちよくしてあげる」
「ぅんんッ」
祥子の顔を両手で抑えると、強引に唇を塞いだ。
さすが、よくわかってる。そう、祥子には強気に行ったほうがいい。

令は祥子の首に腕をまわしきつく抱き締めると、自分の胸で祥子の胸を押しつぶすような動きをした。
途端に祥子の抵抗が弱まったかと思うと、呆けて床にへたり込んでしまう。
そうか。祥子は胸が弱いのか……。勉強になった。

「一丁あがり、って感じねー。いやー、お見事」
横で聖が感心したように呟く声で我に返る。
そうだ……観察してる場合じゃなかった。

……逃げよう。
祥子には悪いけれど。済んでしまったものは仕方がない。
取り敢えずまだ無事な志摩子と祐巳ちゃんの貞操(?)は守り抜かなければ。

「聖!」
「うん?」
「令を五分足止めして。そしたら、前に私が蔦子さんから没収した
 祐巳ちゃんの秘蔵写真あげるから」
「え、それ本当?」
「本当よ。女の約束よ」
「……よしきた。令、次は私が相手よ」

聖ならそうやすやすと落とされはしないだろう。
威風堂々と令に挑戦にいく頼もしい背中にエールを送りつつ、
呆然と突っ立っている志摩子と、快感のあまりエクトプラズムが今にも出そうな祥子と由乃ちゃんを見て
顔を赤くしたり青くしたりしている祐巳ちゃんの腕をひき、ビスケット扉に向けて突っ走る。
821名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 16:52:06 ID:AxOt+p6C
……が。
「逃がしはしないわよ」
江利子が立ちふさがった。

「……どいて」
「そういうわけにはいかないわ。楽しいお茶会じゃない?最後まで付き合ってよ」
「……」
悪役はまりすぎ。

「それに、祐巳ちゃんと志摩子。このままここから逃げちゃっていいの?
 あなた達のお姉さまと、友人の由乃が可哀相じゃなくって?」
「おねえさま……」
祐巳ちゃんと志摩子が、迷うようなそぶりを見せる。
「ひ、卑怯よ……!」
と言うと、待ってましたとばかりに。
「あら、置いて逃げようとしたそっちのほうが卑怯じゃないかしら?」

全く口の減らない……!でも事実だから反論できない。どうしてくれようか……。
久々に私に口論で勝ったことが嬉しいのか、満足げに小鼻を膨らませている江利子を睨みつける。
なんとかしてこの天邪鬼をどかさなくては……。

「紅薔薇さま」
うまい反論を考えあぐねていると、聞きなれた凛とした声が頭の後ろで響いた。
……なぜ?

「そういう風に眉間に皺を寄せていると、美貌が台無しですよ……?」
うえぇ。なんだこの歯の浮くようなセリフは。
ていうか、足止めの聖は。まさか。もう……?

「ようこー。ダメだったわー。マジできもちいい……令、うますぎ。
 蓉子も味わっといたほうがいいよー」
「……」
顔をあからめて、オンナの表情になっている犠牲者が部屋の隅に、新たに一人。
うわぁ。弱っ。

「……蓉子、これはいわゆるチェックメイトというやつじゃないかしら?潔く諦めなさい」
心底嬉しそうな顔をする江利子……。

「さあ、令。メインディッシュよ。存分に料理してみせてね。
 うふふ、卒業までに一度鼻を明かしてやりたかったのよ。」
「承りました、お姉さま」

料理って。やっぱり、ああいうことだろうか……。

……マリア様。お助けください……。
822名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 16:53:18 ID:AxOt+p6C
後ろから腕を回される。心地よい重み。
「蓉子さま、さっきはごめんなさい。お茶をかけてしまって……」
「い、いいのよ、そんなこと。それよりこの腕を……」
「蓉子さまがよくても、私の気が済んでないんです。ハンカチでふく暇もなかったでしょうから、
 ふきとって差し上げます」
「だ、だからいいってば……ひゃっ」

いきなり頬をなめあげられた。生ぬるい感触と、背筋のぞくぞくする感覚が合わさる。
「うふふ。顔全体にかかってたものね。綺麗にしてあげてね、令」
「はい、お姉さま」

熱い息をはきかけながら、ことさらゆっくりと私の顔、首筋を舐め上げていく。
ランダムに、うまく左右に散らして。
背後にある令の動きが見えないものだから、次はどちらにくるか、期待……いや、考えこんでしまう。
右かと思ったら左頬へ。左だと思ったらうなじを奇襲され。油断していると容赦なく耳を。

「ああ……はあっ……」
神経をはりつめてはいけないし、油断してもいけない。

……こんなの無理だ。
「あーら蓉子。もう抵抗できないの?」
悔しい……けど気持ちいい。
頭がくらくらする……。世界がまわる……。

と思ったら本当に回っていた、というか回されていたようで、
いつのまにか令の微笑む顔が正面にあった。
いつもと同じなのに、いつもとどこか違う色気がある笑顔。
少年のような爽やかさが抜けて艶やかさが加味されたような……。
その笑顔が。近づいてくる。ゆっくりと。
……ああ、キスされてしまうのか。

唇が合わさった。
でも、軽く触れるだけ。
随分とそっけない。

……なぜ?他の娘にやったようにはしないの?
不満を感じて見上げると同時に、太股の間に令の片膝が差し込まれた。
「きゃっ、ぁ、ああっ」
思わず声が漏れてしまう。
「んんっ」
しかしすぐ塞がれる。時間差できた今度のキスは深く激しかった。
823名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 16:54:20 ID:AxOt+p6C
令の舌の動きは巧みだ。
歯茎をなぞられ、たまらず私が声をもらしそうになった隙に、
奥深くに侵入し私の舌をからめとり引きずり出し、私の舌に自分の舌と唇をからめ、しごくように動かす。

「ふっ……ぅ、ぷぁ、ああっ、ん」
ダメ……体の力が抜け……て。

「え?……あああっ!?」
力が抜けてへたりこもうとした私を鋭い刺激が襲った。
そうだった。わたしの股には、令の膝がさしこまれていたんだった。
座り込もうとすると……体重と膝に秘所がはさまれッ……て……っ。
そ、それに令、重みを感じたら膝に……ひねりを、くわえ、て……る……。

「だ、だめ、令、お願い、膝……」
「膝がどうかしたんですか?紅薔薇さま」
「あぁ、んっ、く……は、ああっんんッ」

もうダメだ。唇はまた塞がれてしまったし。ああ、また舌がしごかれてる……。
足もガクガクしてて、限界。そして膝が。膝が。膝が。こすれて……。
頭、白い……でも、こ、声だけは抑えないと……。

「くっふっ……ぁ、く」
「令。私は蓉子が可愛く鳴く声が聞きたいわ」
「……わかりました、お姉さま」
「!?」

令は唇を離し、わたしの両肩をつかむと……おもいきり下方向に押さえつけた。
膝の力と動きは、全く緩めずに。それどころか、上に突き上げるようにして。

「ひっ、ダメ……はぁん、ぅぁ、ぁぁあああアアアアッ!」
電気が背筋を貫き、同時に白くあやふやになる感覚。
「あああぁぁ……!……は、ア……」
……イッちゃった……。

悔しいはずなのに、快感がそれを塗りつぶしていってしまう。
視界がぼやけるのは、焦点が合ってないのか涙で潤んでしまっているのか、その両方なのか。

「蓉子……綺麗よ」
床にダウンしてうわのそらの私の顔の前で、江利子がほほえむ。

「それにしても、さすが私が見込んだ妹よ。令。いいもの見させてもらったわ」
「どういたしまして、お姉さま」
「ふぅ……満足。満腹。て感じね。もう思い残すことはないわ」
824名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 16:55:18 ID:AxOt+p6C
「でも、お姉さま」
「なに?」
「実は私はまだ満足していなくって」
「え?あなた、まさか本気で祐巳ちゃんと志摩子も襲うつもり?いくらなんでも私だってそこまで鬼じゃあ……」
「いいえ、お姉さま。違います」
「……どういうこと?」

「………………!
 ……ま、まさか、あなた」
「さすが私のお姉さま、察しが良い」

「私にとってのメインディッシュはお姉さまですので」
「ちょっ、待っ……ぃやぁああッ、そんな、待ちなさっ」
「あ、やっぱり。お姉さま、濡れてますね?」
「いやっ、やめ……い、いきなり指、入れな……!!」

……。
江利子め。因果応報。

しかしあんなの初めてだった。未だに体が動かない。恐るべし、支倉令。の酒乱Ver。

ふぅ……。今日の片付けは明日の朝に持ち越しかな……。
どこかに行ってしまった理性を取り戻すために段取りをどうするか、床に寝たままぼんやりと考える。
……と、誰かが近寄ってくる気配があった。

「よ・う・こ」
「せ、聖……」
「さっきは可愛かったねー?」
……やばい。

「な、何言ってるの……」
「私にも、可愛いところ見せて欲しいなー?」
「……い、今はダメ……」

「ダメとかいやとか無しだよ」
「ひゃっ」
聖は私の胸に手をのばし、優しくもみしだく。
うわっ……。きもちいい……。

「うーん、これが蓉子の胸かぁ……。あー、やらかい……」
「聖、ダメ、ダメなの、今は……ッ!今はダメだからぁッ!」
「ん?なんで?……イッた、ばかりで、ビ・ン・カ・ン、だから、かな?」
一語ずつに切って耳元で囁いてくる。ほんとに中年オヤジみたいにいやらしいんだから……!

「そ、そうよ、そのとおりよ。だから、もうちょっと待って」
「うーん。じゃあ、イッたばかりで感じすぎちゃうからダメなんです聖さまぁ、
 っていってくれたら待ってあげる」
江利子といい聖といいそろいもそろって……!ほんと、何考えて……!

「ふ、ふざけないで……ぇああっ、んあっぁああ!」
「ほら、言って?」
だ、だめだ。このままじゃまた意識が。
またあんな声を出してしまう……。
825名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 16:56:11 ID:AxOt+p6C
背に腹は、変えられないか……。
意を決する。

「い、言えばいいんでしょ……」
「うんうん。はやくイッて?」
「い……イッた、ばか、りで感じすぎちゃ、うからダメ、なんです、聖さ……ま」
なんて屈辱。でもやっと休め……
「じゃあ、感じちゃいなさい。紅薔薇さま」

え?

「そ、そんな……!ひどぃ、だめ、だめぇ……う、ひあっ、んっ!」
「さっきよおっく観察させてもらったからね。多分こことかこことか……くるでしょ?」
「え、うわっ、ひゃああっ!何、コレ……まだ、もう、すぐな…のに、イッちゃ……!」
「うわ……、手が、ビショビショ」

「蓉子、まだ出てくるよ……。……ていうか、かかる。すご……、もしかして、潮ってやつ……?」
え?え?
わたしが?

「う、嘘ッ」
「嘘じゃないよ。ほら、見て」
無理矢理視線を自分の太股の間に固定させられる。
…………!ぱたぱたと音をたてて床に落ちる水滴。

「……いやっ、や、やだぁ……なんでェ、あぁッ、なんでえぇ?」
聖が目をキラキラさせて泣きそうな私の顔を見つめる。
「ようこぉーッ!かっわいい……。もっと、もっとよ。もっと見せて!感じて!イッて!」
「やだぁぁああっ!」
意識が、飛んだ。

うーん。どうしよう……。
由乃さんと祥子さま、天国から帰ってこない塩の像のお二人。。
天国への階段を登らされっぱなしの黄薔薇さま紅薔薇さま、責める令さま白薔薇さま。
そして隣には唯一正気の志摩子さん。

「ねえ、志摩子さん」
「祐巳さん……?」

そんなすがるような目で見ないでよ、志摩子さん。
「私達、なんだか置いてきぼりだね……?」
「え?ええっ?そ、そうね……」

「じゃあ、二人でしてみる?」
「ゆ、祐巳さん!?」
「えいっ」
「きゃっ」

きゃっ、だなんて、可愛いなぁ。すごく変な気持ちになっちゃった。いや、もうなってるかな。
うーん。勢いで押し倒してみたものの。どうしたらいいのやら。胸ばっかりどくどく波打って、頭が回らない。
とりあえず、白薔薇さまの真似をすれば……。それにしても、こっちは紅白なのにむこうは白紅かぁ。
なんだか面白いかも。あ、そんなこと考えてる場合じゃない。えっと……うわ、志摩子さんの顔、
アップで見たら改めて綺麗……。

「祐巳さん……。百面相してる」
「……あ。またやっちゃってた?」

わたし達はくすくすと微笑み合い……そしてごく自然に唇を重ねた。
826名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 16:57:10 ID:AxOt+p6C
支倉令は困惑していた。
彼女の妹である島津由乃のわがままに付き合わされて、
少し足を伸ばしてこの繁華街まで映画を観にやって来たはずだったのに、
どうして自分はこんな所にいるのだろうかと。
そして自分をこんな場所に連れてきた当の本人である由乃は、なぜそんなに楽しそうなんだろうかと。
「ねえねえ。こっちのお部屋はフランス風なんだって。どんななのかしらね」
「…ど…それでもいいよ。人が来ないうちに早く選んじゃってよ」
「えー。令ちゃん、私ばっかりに頼らないでよ!あ、こっちのインド風って面白いかも」
穴があったら入りたい。祐巳ちゃん、その気持ち私にもようやく判ったよ。
支倉令は心の中で泣いていた。

街頭で手渡されたチラシに載っていた地図を見ながら辿り着いたふたりは、
ラブホテルといえば西洋のお城のような妙な趣味の建物を頭の中で連想していただけに、
まるで普通のシティホテルのような外観にほっと安心した。
「ここよね。へえ。なかなか素敵じゃない」
「なんだ。特に普通のホテルと変わらないんだね。…じゃあこれでか」
「では!しゅっぱーつ!」
帰ろうか。という言葉を飲み込んだまま、令は由乃に引きずられるように歩いていく。
何だってよりによってこんな場所に。という気持ちの重さが足の重さに繋がっているのか、
俯き加減でのろのろと歩く令に由乃の叱咤が飛ぶ。
「ほら。もっと胸張ってよ。令ちゃんはこんな可愛い彼女を連れ込む『彼氏』なんだから、
もっとシャキっとするの!」
気持ちの準備もできない間に、着合い入れにぱんっ!っとジーンズのお尻を平手打ちされて、
ひゃうっと妙な声をあげてしまった令は由乃にぎろりと睨まれる。
「まったく。こーんなだらしない彼氏といっしょだなんて思われたら、私の沽券に関わるわ」
また年季物の言い回しを引っ張ってきたね…と、突っ込みを入れる気力すら沸かない。

「あ、ここよここ。では、失礼して」
受け取ったキーナンバーを見ながら辿り着いた部屋は、
建物の外観のままにリゾートホテルの一室のような雰囲気で、令はなんとなくほっと安心した。
「別に普通のホテルみたいだね」
「なーんだ。くるくる回るベッドとか無いんだ…」
きょろきょろと部屋を見渡した由乃が残念そうに言う。
「どうでもいいけどさ…そんなのどこで覚えてくるんだよ…」
「うわっ!令ちゃん令ちゃん!見て見て!天井が鏡になってる!」
天井が?どうして?意気の上がらない頭でぼんやりと考えながら、
はたとその理由に気付いた令は思わず顔を熱くしてしまう。
「…だ!だからどうしたのさっ!?」
素っ頓狂に上ずってしまった令の声と赤くなった顔に、由乃が声を上げて笑った。
「あ。令ちゃんのエッチ!」
「なっ!なんでそうなるんだよっ!」
そうやって令がムキになればなればなるほどに由乃のペースに絡め取られるのが
黄薔薇姉妹のお約束なのだが、興味本位とはいえ高校生の身でありながら
ラブホテルになど足を踏み込んでしまった罪悪感で心をちくちくと痛める令には、
由乃の冗談を笑って受け流す余裕もない。
「…へぇ?だったらどうして顔が赤いのかしら?ねえねえどうして?」
にんまりとした笑みを浮かべて、自分の頬を突き回す由乃の声に、
令は『格』の違いを思い知らされたような気分にもなった。
827名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 16:58:10 ID:AxOt+p6C
「ね?令ちゃんカラオケやろやろ」
「別にいいよ」
「テレビは何が写るのかな。…うわっ!エッチなビデオやってる!」
「…み!見ちゃダメだってば!」
「だったらプレステでもやろっか。私、スペインね」
「ウイイレは苦手だから…」
テンションの上がった由乃にいいように振り回されるのはいつもの事なのだが、
踏み込んだ場所が場所だけに、令はいつも以上にげんなりと気が抜けてしまう。
まったく由乃ってばどうしてこんな所に来ても平気なんだろ…と顔を向けてみれば、
当の由乃はベッドサイドに置いてあった箱からなにやら包みを取り出しては、
それをまじまじと観察している。
「えと…なになに?『簡単な装着方法』…まずは先端に被せて…なにこれ?」
「うわあああああっ!?」
奇声をあげながら真っ赤な顔の令が由乃の手からそれをひったくると、
そのまま元の箱の中に入れ直してばんっ!っと、しっかりふたを閉めた。
「あーもう。ちょっと。何するのよ令ちゃんってば」
「…もういいだろ。由乃、帰ろうよ」
ぜえぜえと赤い顔で荒い息を吐く令の姿に、由乃は眉をしかめてちぇっと舌打ちをする。
「つまんないの。令ちゃん、ちっとも楽しそうじゃないんだもん」
「…あ、あんまりあちこち弄らないほうが良いって。ね?由乃」
「いいわよ。令ちゃんが気乗りしないなら。今度、祐巳さんを誘ってもっとゆっくり探検しよっと」
「…いや、由乃…そんな事をしたら間違いなく祥子に殺されるよ」
アレも駄目、コレも駄目と、好奇心旺盛な彼女の暴走をちくちくとたしなめる令に、
膨れっ面で不満の顔を見せながら、
由乃はうろうろと部屋の中をうろつきまわっては様々な場所を覗き込む。

「トイレは普通…クロークにも異常なし…うわ、すごい!令ちゃん、お風呂とっても広いわよ」
「ふうん…そうなんだ。良かったね。じゃ、そろそろ」
適当に切り上げて帰ろうとする令の気持ちなどまったく念頭に無い様子で、
ぱちんっ!っと手を合わせた由乃が突然声を上げた。
「あ!そうだ…ね、令ちゃん?ちょっと来て来て」
なにやら思い付いたらしい、にんまりとした顔でこいこいと手招きする由乃を見て、
令の心臓がどきりと鳴った。ちょっと由乃さん。この上まだ、なにか?
「どうしたの…あ、本当だ。結構広いね」
覗き込んだ浴室は確かに広く、部屋の雰囲気に合わせたしゃれた造りが目を惹いた。
浴槽は長身の令が手足を伸ばしても、たっぷり余るほどの大きさに見える。
「ね、令ちゃん。お風呂入ってかない?」
「お!?お風呂!?なんでわざわざ」
突然の提案にぎょっとなった令に、だってほら。っと、由乃が指差したのは、
広い浴槽に取り付けられたジャグジーのスイッチ。
828名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 16:59:47 ID:AxOt+p6C
「あ、これって」
「そう!凄い勢いで泡がどーっ!って出る、アレよ」
えっへん。と、胸を張りながら、由乃があまりにも断片的過ぎる適当な知識を披露する。
「最近いろいろ忙しいでしょ?肩凝っちゃって。これだったら血行とか良くなりそうじゃない?」
「由乃…銭湯巡りのおばさんじゃないんだし」
確かに生徒会に籍を置くふたりは秋に集中する様々な所用に振り回されて、
この所お互いにいささかお疲れ気味ではあったのだが、
その慰労を身内同然の同姓と共にこんな場所で行おうかという女子高生とは、果たして。
「…でも、いいのかな。こんな場所でお風呂なんて」
とはいえ、校内では中世的なルックスでミスターリリアンなどと慕われながらも、
しっかり中身はお年頃の娘さんである令としては、純和風造りの自宅の浴室には望めない
こういったシャレたお風呂にも少しだけ憧れてしまったりもする。
「いいじゃない。令ちゃんどうぞどうぞ。広いお風呂でゆっくりなんて素敵でしょ」
にっこりと由乃スマイルでそう言われたら、それは令にとっては『お勧め』ではなく、
むしろ『強制』に近いものがある。
この場合、事を穏便に済ませるためには果たしてどうしたものか。
その疑念に、令は即座に長年の経験と反省から最良と思える結論を導き出した。
ここは余計な事は言わずにおいて、由乃におとなしく従うのが得策だと。
無力だなロサ・フェティダ。

「…うん、そうだね。たまには足を伸ばせるような広いお風呂もいいね」
「そぉ?じゃ、決まりね!」
やれやれ。お風呂に少し浸かったら、由乃が温まるのを待ってすぐに帰ろう。
そんな事を考えながらトレーナーに手を掛けた令の目に、
その由乃がするするとソックスを脱ぎ始めるのが入った。
あれ?今、由乃『令ちゃんどうぞ』って言わなかったっけ?
にも関わらず、自分の目の前で服を脱ぎ始める由乃…はて?
そんな当然の疑念に固まった令の姿に、由乃がけげんそうな顔を向ける。
「…令ちゃん、お風呂入るんでしょ?」
「…そうだけど」
「じゃ、早く脱いでよ」
「は?」
呆れた。という顔で、脱ぐ手を止めて由乃が向き直る。
「…あのね。令ちゃん、お風呂っていうのは服を着たまま入るものじゃないでしょ?
だったらまず着てる物を脱がないと」
「いや、それはそうなんだけど、な…なんで由乃も服を脱いでるわけ!?」
こめかみにひとさし指を当てながら、由乃はやれやれという顔で首を振り、
目の前のお姉さまに向けて容赦のない言葉を浴びせた。
「ばかね。令ちゃんったら」
ぼそりと呟いた由乃のキツイ一言にぐっと言葉を詰まらせながら、それでも思わず令の視線は
ブラウスのボタンを外して前をはだけた由乃の胸に向いてしまう。
あ。由乃、今日の下着可愛い。…いや、そうじゃなくて。
「チラシでタダになるのは1時間しかないのよ」
由乃に言われるまでもなく、それくらいは令にも判っている。
むしろそれが前提でこんな所まで引っ張って来られたわけなのだが、
それと由乃の突然の脱衣の因果関係が令にはさっぱり見えてこないのだ。
「…だ…だから?」
はぁ。っと、由乃は大きく溜め息を吐きながら、心底呆れたような顔で令の顔をまじまじと見た。
「だからあ、いっしょに入るに決まってるじゃないの。時間ないんだし」
829名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:02:02 ID:AxOt+p6C
脆弱な体が原因で歪み始めていた私達の関係は、革命によって解決した。
お互いが依存しあっていたあの頃より、今の私達はよりよい方向へ進化出来たと思う。
健康な肉体と一層深まった絆。私は幸せな気持ちで一杯だった。
健康にさえなれば、全てが上手くいくと信じていたし、実際、物事は上手く進んだのだ。
でも。
その頃は考えもしなかった不安が、今の私の胸に巣食っている。
対等でありたいと思い、ただ並んで歩ければいいと願っていたその頃の私は、なんと無欲だったのだろう。
私たちは今、姉妹として、従姉妹として、そして幼馴染として実に上手くやっている。
どうして私はその事に満足が出来ないのだろう。
姉妹として愛されている事を実感する度に、こみ上げてくるのは嬉しさではなく空しさだ。
より一層絆が深まった事で、かえって私は自分が何を望んでいたかに気がついてしまった。 

私は彼女に愛されたい。

姉妹として、従姉妹としてではなく、私が彼女を愛するように、一人の人間として。
叶うわけのない、馬鹿げた望みだとわかっている。
私達は従姉妹だ。一生付き合っていかなければならないのだ。
その後の事を考えると、玉砕覚悟で告白する事も出来ない。
彼女は知らない。私が内心何を望んでいるのかを。
絶対に知られてはならない感情だ。私が彼女を諦めきれる日まで(その日がいつかは来ると信じたい。)、胸に秘めたまま、封印しなければならない。
知れば彼女は困るだろう。気持ち悪く思うだろう。そして、それ以上に、私の気持ちに答えられない事に、罪悪感を覚えるだろう。
彼女にそんな思いをさせるぐらいなら、一生我慢している方がいい。
そうわかっているのはずなのに、「仲良し姉妹」の振りをする事が、最近無性に辛い。
家が近いことも、姉妹であることも、今の私にはかえって苦しい。
苦しすぎて、愚かな夢を見る。
彼女が私に応えてくれるかもしれない、という馬鹿げた、ありえない夢を。
830名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:03:23 ID:AxOt+p6C
私立リリアン女学園で先日行われた体育祭。
その代休と週末が上手く重なり、生徒たちにはありがたいことに三連休となった。
そこで祐巳たち薔薇の館の面々六名は、体育祭の打ち上げ及び反省会と称して、
二泊三日のお泊り旅行にやって来た。

ちなみにここは小笠原グループが所有するリゾート地の一角。
静かな木立に囲まれた貸切コテージに泊まり、三日の間敷地内にあるコートでテニスを
したり、あたりを散策したり、あるいは広めのダイニングで歓談したりしながら更に親交を
深めるのが目的。

体育祭の反省会はもちろんのこと、遊びや食事当番も無事にこなし、今は二日目の夕食後。
食後のティータイムに、他愛の無い話などをしながら皆で盛り上がっていた。
その最中、由乃さんに「祐巳さん、ちょっと」と呼ばれた祐巳は、皆からは少し離れた窓辺の
テーブルに行き、そこに由乃と二人で腰を下ろしたのだった。


「ねえねえ、昨夜はどうだった?」

由乃さんは自分と祐巳、二人分の紅茶を入れ祐巳の横の席に着くと、声をひそめて
祐巳に囁いた。
しかし囁かれた祐巳の方はというと。
由乃さんの言う「昨夜はどうだった」という言葉を頭の中で何度繰り返してみても、彼女が
一体何を聞きたがっているのかが、どうしても見当が付かなかったのである。

「え?昨日の夜?何が?」

きょとんとした顔で答える祐巳の言葉を聞き、「はあ」と溜め息をつく由乃さん。
内緒話をするかのように、祐巳の方へと身体を寄せる。

「せっかく祥子さまと部屋で二人っきりの夜だったのよ。まさか、何にもなかったってわけじゃ
 ないでしょうね?」
「えっ。な、何もって、何が!?」

そうは言ったものの。
さっきと違い、今度はここまではっきり聞かれているのに、由乃さんが言っている意味が
分からないほど祐巳も鈍くはなかった。
この場合の「何か」とは。
つまりその、キスとか更にはもっと先の……アッチ関係、のことであろう。
でも、何かあったかって聞かれても……。

「……その様子だと、何にもなかったのね」
「うー。お察しの通りです」

残念ながら、何もありませんでした。
情けない顔をして答える祐巳を見て、由乃さんはまたもや「はあ〜」と大きく溜め息をついた。
831名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:04:15 ID:AxOt+p6C
「まったく。なんのためにわざわざ色別二人部屋にしたと思ってるのよ」

由乃さんは「わざわざ」って言うけれど。
ここは元々二階にツインルームが四部屋ある建物だ。
だったら一部屋余るけれど、色別に姉妹二人が同じ部屋に寝るのが一番自然な分け方では
なかろうか。実際部屋割りした時も、そういう風にあっさり決まったわけだし。
しかしそんなことは忘れたかのような由乃さん。かまわず話を続けてくる。

「まあそんなことだろうとは思ったけど。それに祐巳さんとこだけじゃなくって、白薔薇さんちも
あの様子だと、昨夜は何もなかったようね」

そう言って由乃さんは、離れたテーブルにいる志摩子さんと乃梨子ちゃんの方を見やった。
つられて祐巳も顔を向けると、二人は楽しそうにおしゃべりしている。

「何もなかったって、どうして分かるの?」
「全然いつもと変わらないじゃない、あの二人」
「でも志摩子さんも乃梨子ちゃんも、思ってることがあまり顔に出ないタイプなんじゃない?」

祐巳がそう言うと、由乃さんは得意げな顔付きをして解説を始めた。

「あそこの姉妹は誕生してまだ半年も経っていないしね。さすがに愛の営みがあった後に
 何事も無かったかのように振る舞えるようになるには、私と令ちゃんくらいの年季が必要なのよ。
 今日の私と令ちゃん、普段と別に変わらないでしょ?」
「うん、いつもと同じ。いつも通りの仲良しさん」

返事をしながら「ふうん、そういうものなんだ。さすが由乃さんとこは違うね」、って祐巳は思った。
…………って、

「あ、愛の営みぃ!?」
「しーっ!祐巳さん、あまり大きな声出すと向こうに聞こえるわよ」

まったく、そんなに驚かなくたっていいじゃない。
祐巳のことをジト目で見ながら、そうぶつぶつ言う由乃さん。

「じゃ、じゃあ……、由乃さんは令さまと、昨夜、その、あの……」

しどろもどろになる祐巳に、由乃さんはあっさり答えた。

「私と令ちゃん?もちろんしたわよ。エッチ。昨日が初めてじゃないけど」
「――――――!!」

思わずまた大きな声を出しそうになってしまったけれど、先回りした由乃さんに、その口を
手で塞がれてしまった。
きっとまた、考えていることが顔に出ていたのだろう。なんせ祐巳は百面相だから。

慌てた祐巳が祥子さまたちのテーブルを見ると、こちらの様子には全く気付いておられないようで、
祥子さまは令さまたちと歓談なさっている。
祥子さまに自分の百面相を見られていなくてよかった。
そして今の由乃さんのセリフを聞かれなくてよかった。
祐巳はきっと今も見守っていて下さるだろうマリア様に、心の中で感謝した。

「まあ、さすがにいつもと違う場所だから、少し盛り上がったけどね」

祐巳のことを落ち着かせてそう言いながら、由乃さんはちょっとだけ何かを思い出しているような
表情になった。

もしかして昨夜のことを思い出しているのかな、と祐巳は思った。
でもいつもイケイケな由乃さん。
その由乃さんが言う「少し盛り上がった」とは、一体どれくらいの盛り上がり方なのだろう……。
832名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:05:18 ID:AxOt+p6C
「まったく由乃は情けないなぁ。あれくらいの運動で身体が悲鳴をあげるなんて、やっぱり
 まだまだね」
「しょうがないでしょ、スポーツ全般実技は初心者なんだから。それより次は脚揉んで、令ちゃん」

「はいはい」と言い、令ちゃんは由乃の腕をマッサージしていた手を止めた。
うつ伏せになっていた由乃の脚の方に身体を移し、ふくらはぎからマッサージを始める。

お泊り旅行の一日目。
スポーツ好きの由乃の提案で、まずはテニス大会が開催された。
それ自体はさほど時間もかからず終了したのだが、皆がコテージに帰った後も、由乃は
令ちゃんとその場に残り、テニスの個人レッスンをしてもらったのだ。

テニスをしている最中はプレイに夢中で疲れなど感じなかった。
しかし夕食も終わり入浴も済ませ自分たちの寝室に戻ってくると、疲れが一気に表面化
したかのように、全身がもうガクガクになっていた。

そんな訳で、とりあえず筋肉の疲れをほぐしておこうという令ちゃんの手によって、由乃は
マッサージを受けているのだ。
体育会系の部活で長年鍛えてきたためか、令ちゃんはマッサージも上手かった。
「うーん、気持ちいい」と思いながら、由乃はゆったりと身体を弛緩させる。

「脚も結構きてるね」
「令ちゃん、もうちょっと上」
「ん?ここ?」

マッサージをする令ちゃんに、由乃はあれこれ注文をつけていた。
そしてその度に令ちゃんは「由乃はマッサージにもうるさいんだね。ちょっとは私に任せてよ」と
困ったように言うのだが。
口ではぶつぶつ言いながらも、結局最後は由乃の言う通りにしてくれるのだ。
何故なら令ちゃんは優しいから。

そうしてまた由乃のリクエストに応えた令ちゃんの手は、軽く揉むような動きで由乃の
ふくらはぎからふとももの方へと動く。

「あ、そこっ…。気持ちいい。……あん」

令ちゃんの手がふとももを揉み始めるとすぐに、由乃は声を上げた。
その声はイケイケの由乃でさえも、「今のはさすがにただのマッサージにはちょっと
似合わなかったかなぁ」と思ってしまうような艶を帯びた声音になっていた。

そして由乃のその、艶っぽい声を聞いた令ちゃんはというと。
案の定、由乃の声を聞いた瞬間、由乃のふとももに置いていた手を確かに少しだけピクリと
させたのだった。
しかしそれもほんの一瞬のことで、令ちゃんは何事もなかったかのようにマッサージを再開
したのだけれども。その手の動きがそれまでと比べて少しぎこちなくなっていることは、
由乃にはバレバレだったのである。

「ね、そこ、…ぅん…もっと、……あぁっ」
「…………ちょっと由乃。ヘンな声出さないでよ」

悩ましげな吐息が混ざり始めた由乃の声に、令ちゃんが憮然としたような声で呟く。
うつ伏せになっている由乃は、頭の後ろにその声を聞いた。
もう、令ちゃんったら。無理して我慢しなくてもいいのに。
由乃は更に追い討ちをかけることにした。

「だって令ちゃん、んんっ……上手なんだもん……やっ、いい……」

由乃が熱い息を吐きながらそう言うと、マッサージしていた令ちゃんの手が完全に止まった。
――支倉令、落ちたな。由乃は心の中でVサインを出した。
833名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:08:58 ID:AxOt+p6C
「ねえ由乃…………しよっか」
「え?」

うつ伏せになっている由乃の上に、令ちゃんが覆い被さってきた。
しかし由乃は身体を動かさない。すると、後ろから耳たぶを甘く噛まれた。

「令ちゃんのエッチ」

令ちゃんの舌を耳に感じた瞬間、すごくぞくっとしたのだが。由乃はそれを隠しそっけなく呟いてみた。

「由乃があんな声出すからでしょ」

しかし令ちゃんはもうかなりその気になっているようで、しばらくそうして由乃の耳を味わった後、
ようやく離れて身体を起こした。
そして次の段階に移るために由乃の身体の下に腕を入れ、抱えるようにして仰向けにさせようと
由乃を促す。
今度は由乃もそれに応え、身体を回しながら令ちゃんの首にぎゅっと抱きつき、まずは軽くキスをした。
すぐに唇を離し、しばらくの間見つめ合う。

「由乃……大好き」
「知ってるもん……」

由乃は内心その言葉を待っていたのだが、今は素直に認めないことにする。
でも、声の調子にその気持ちが出ちゃったかな。
そう思いながら、二回目のキス。
今度のキスは、唇を開きお互いの舌を絡め合う、濃厚な大人のキスだ。

「んっ」
「はぁ……あん……」

そうしてキスを交わしていると、二人の息遣いが少しずつ悩ましげになってきた。

令ちゃんが何度も何度も由乃の舌を求めてくる。
今日の令ちゃんは、いつもよりちょっとだけ積極的で、そしてほんのちょっとだけ激しいような
気がした。

(ちょっと挑発しすぎちゃったかな)

貪るようなキスのせいで痺れ始めた頭の片隅で由乃はそう考えながら、自分の口内に
差し込まれてくる令ちゃんの舌の感触を、自分の舌で震えるように感じていた。
そして令ちゃんの手は、口付けを交わしながらも由乃のパジャマに延び、一つずつボタンを
外していく。
ほどなくして胸が露わになると、その膨らみを優しく揉まれた。

「令ちゃん……」

胸に直接触れられ自分の中の欲望も更に高まってきた由乃は、甘えるような目で令ちゃんの
瞳を見つめた。

「由乃……ここは、どう?」

そんな由乃の目を見つめ返しながら、令ちゃんの指が胸の先端の突起を軽く転がし始めた。
834名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:09:32 ID:AxOt+p6C
「や……あっ」

指の動きはそのままに、令ちゃんの顔が、由乃の胸元へと降りていく。
由乃は期待に胸を高鳴らせて、その様子をうっとりと見つめていた。

「マッサージしてた時は、もっと素直に気持ちいいって言ったじゃない」
「……令ちゃんのイジワル……あ!」

胸の頂きに唇を這わせられると、由乃はたまらずに身悶えした。
二つの硬くなった先端を、指と舌で同時に転がされる。

「令ちゃん、だめ……」

いつもの令ちゃんは、言葉責めなんてあんまりしてこないのに。
どうしたんだろう。旅行に来て開放的になってるのかな。

ともすれば快感にさらわれそうになる意識の中で、そんなことが由乃の頭に浮かんだ。

(でも、こういうのも新鮮でいいかも…。せっかくだから、楽しまなきゃ……あっ!)

油断している隙に、令ちゃんの指が由乃の秘所に差し込まれた。
既に濡れていた由乃のそこが、微かに水音を立てる。

「ねえ由乃、ここも……好きだよね?」
「し、知らない……んっ!」

令ちゃんの指は、由乃の感じるところを的確に責めてくる。
もう何度も身体を重ねているので、お互いの感じるところはよく知り尽くしているのだ。
時には焦らすようにゆっくりと、そうかと思えば激しさを増し、令ちゃんの指は由乃の
秘所を丹念に愛撫してくる。
その指の動きに合わせて強い快感が沸き起こり、抑えようと思っても勝手に腰が跳ねてしまう。

「由乃……」
「あ……はぁっ」

令ちゃんのことをもっと感じたい。由乃がそう思ったのと同じ、絶妙のタイミングで。
令ちゃんの指が、由乃の中に入ってきた。
これまでの愛撫で既に高まっていた由乃は、その指がゆっくりと自分の中で動き始めたのを
感じただけで、限界を迎えた。

もうダメ……令ちゃんっ!

この世界で一番大好きな令ちゃんの腕に抱かれながら、由乃の意識は白く跳んだ。
835名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:10:48 ID:AxOt+p6C
「祐〜巳ちゃんっ」
「うぎゃっ?」

少し肌寒いある日の朝、薔薇の館に向かっていた祐巳は、誰かにいきなり後ろから
抱きつかれて思わず声を上げた。
この懐かしい感触は……

「聖さま!」
「ピンポーン」
「ピンポーンって……どうしてこんなに朝早くに、それも高等部の敷地にいらっしゃるんですか?」

祐巳の疑問に答えた聖の話によると。今日は何故だか早起きし過ぎてしまったので、大学の講義が
始まる時間まで懐かしの母校の様子を見て回ることにしたということだった。
そうして怪しく徘徊していた所に獲物の祐巳がノコノコとやって来た、ということらしい。

「薔薇の館に行くんでしょ。お姉さんも一緒に連れてって」
「はいはい」

始業のベルにはまだ少し時間があるのだが、色々な行事が立て続けに入っている今の時期。
放課後だけでは仕事をさばききれなくなりそうなので、朝の僅かな時間も利用して仕事を
することにしたのだ。

そうだ、聖さまにも手伝わせちゃおうかな、などと祐巳は考えながら、聖と二人で
薔薇の館へ向かって歩き始めた。

祐巳は聖との他愛のない会話を楽しみながら校舎の間を抜け、中庭に足を踏み入れた。
すると少し遠くに見える薔薇の館の前に、数人の人影が立っているのが目に入ってくる。

祐巳の目にまず映ったのは、こちらに背中を向けている二人組みの男。
その向こうに、二人の少女が両手を頭の後ろに組むようにして立っている。
男の陰になっていてよくは見えないが、あの姿は間違いない。
その二人の少女は、祐巳の姉である小笠原祥子と彼女の親友の支倉令だ。
祐巳からは遠くに見えるその表情は、恐怖に強張っているように見えた。

何だろう、この光景は。
祐巳がそう思っていると、聖に腕を掴まれ引き寄せられた。
急に腕を掴まれたことに少し驚いて祐巳が聖のことを見ると、聖は男たちの方を
睨みつけるような眼差しで見つめている。
その聖の顔からは、先ほどまで祐巳にじゃれついていた時のような笑顔は跡形もなく
消えて去っていた。

そして聖が今来た方へ引き返そうとするかのように、祐巳の腕を更に引いた時。
男の一人が、不意にこちらに振り向いた。

「おい、そこの二人!」
「祐巳、逃げて!」

新たな獲物を認めた男、そして大事な妹の姿を認めた祥子、二人が同時に叫ぶ。
その声が祐巳と聖に届くのと同時に、男が二人の方に銃口を向けた。

しかし――男は銃の引き金を引くことはできなかった。
男が祐巳たちの方を振り返り、同時に自分たちから銃口が逸れたのを見た令が、
男の後ろから体当たりを喰らわせたのだ。
836名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:11:50 ID:AxOt+p6C
しかし令がいくら長身だとはいえ、ろくな助走も付けられない距離からの体当たりだったので、
男を転倒させることはできなかった。
すんでのところで踏みとどまった男と令が、バランスを崩しながらもつれ合う。

「貴様!」

そしてそれを見たもう一人の男が、令に銃口を向けようとした。
すると今度はその男の腕に祥子が組み付く。
パアン!
ずれた銃口が火を噴き、薔薇の館の階段に銃弾がめり込んだ。

「お姉さま!」

今目の前で起こっている出来事はなんなのか。
それはよく分からなかったが、祐巳は祥子の危機だけは感じ取り、聖の腕を振り払い
祥子の方へ駆け寄ろうとした。
しかし、もうほとんど男に身体を拘束されている状態になってしまっている祥子が
「祐巳、来ては駄目!」と悲痛に叫ぶのを耳にすると、祐巳の脚はピタリと動きを止めた。

「聖さま!祐巳を、祐巳をお願いします!」

祥子の叫びを聞き瞬時にその場から逃げる決意をした聖は、祐巳の腕を掴んで強く
引き寄せる。
しかし祐巳は今にも男に組み伏せられようとしている祥子から目を離すことができず、
かといって祥子を助けようにもどうしていいのか分からずに、走り出そうとする聖にただ
ずるずると引きずられるようによろめくだけだった。

「祐巳ちゃん、逃げるよ!早く!!」
「でも、お姉さまが!」

祐巳と聖がもたついていると、不意に薔薇の館のビスケット扉が開いた。
中にいた男が異変を察知して、外へ出てくる。まだ仲間がいたのだ。

「おい、どうした!」

遠くで男が叫ぶのを聞きながら、逃げることも助けに入ることもできずに
うろたえる祐巳を、聖は一喝した。

「祥子が逃げろって言ってるのよ、あの子の言うことが聞けないの!」

聖のその一言に祐巳はハっとし、一瞬身体から力が抜けた。
祐巳のその様子を認めると、聖は更に力をこめて祐巳を強く引きながら、
すぐ側にある校舎の入り口に向かって走り始めた。
837名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:13:24 ID:AxOt+p6C
「こいつ、なかなかいい女じゃねえか」

黒いシャツの男が祥子の顔を覗き込んでそう言った。
祐巳を逃がしたい一心で男に組み付いた祥子だったが、やはり腕力では男に敵わずに地面に
組み伏せられてしまったのだ。自分の横では、令がもう一人の男の手によって後ろ手に縛られている。
下卑た笑いと下品な言葉を投げられた祥子は露骨に嫌な顔をしたが、この状況で憎まれ口を
叩くのは得策ではないと、抗議の言葉を口にするのはすんでのところで思いとどまった。

「おい、犯るんなら中に入ってからにしろ!俺達は今の奴等を捕まえてくる」

薔薇の館の中から出てきた男が、祥子を押さえつけている男にそう言う。

「別に俺が犯るわけじゃねえよ。せっかく女が二人もいるんだ、もっと他の楽しみ方を
 するんだよ」
「ともかく、あと何人か応援を回してもらえ。見張りがお前一人だけじゃ心配だからな」

どうやら自分たちは、この男たちによって薔薇の館の中に監禁されるらしい。
ただでさえ男に触れられて気が遠くなりそうなのに、この上監禁とは。祥子は不快さと
恐ろしさで叫び出しそうだった。しかし、そうだ……。令が一緒にいるのだ。
祥子は自分は独りではなく信頼している親友と一緒にいるのだということを思い出し、
自分の気持ちを落ち着けた。

ともかく、自分の事はこれから考えればいい。
しかし祐巳は……祐巳は、無事に安全な所まで辿り付けるだろうか。
今のこの学園に安全な場所などあるのかどうか。それは不明だったが、祐巳さえ無事で
いてくれれば……。そういえば何故だか分からないが、聖も一緒にいた。
祐巳も自分と同じく独りではなく、聖に連れられ逃げているのだと思うと、祥子は少し安心できた。

(祐巳、無事に逃げ延びてちょうだい……)

男に引き立てられながら、祥子は心の中でマリア様に祈りを捧げた。

一番近い校舎の中に逃げ込んだ祐巳と聖の二人は、三階まで階段を駆け上がると
次に廊下を走り出した。
男たちの仲間がいるかもしれないのに、校舎の中に逃げ込んだのは間違いだったか。
聖は一瞬そう後悔した。
しかし一年生が教室にいるはずのこの校舎は、主を失い何故かしんと静まり返っていた。

「聖さま!私やっぱり、お姉さまのところへ……!」

廊下の真ん中あたりまで来ると、急に祐巳が足を止め、聖に引かれていた手を振り解こうとした。

「駄目よ祐巳ちゃんっ」
「どうしてですか!」
「私たちまで捕まっちゃうわけにはいかないでしょう」

立ち止まった祐巳の腕を離してしまわないように、聖は手に力をこめたまま祐巳を説得する。

「そんなことっ。たとえ捕まっても、やっぱり私……お姉さまと一緒にいたかった!」
「祐巳ちゃん……」

祐巳の気持ちも分かるだけに、聖は言葉を詰らせ一瞬困惑した。
838名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:14:44 ID:AxOt+p6C
その時。
階下から人の気配が伝わってきた。
はっとする祐巳と聖。
しかし素早く立ち直った聖は辺りを見回し、側に大き目の清掃用ロッカーがあるのを
発見すると、その扉を開け祐巳を中に押し込んだ。
少しきついが、小柄な祐巳の身体はロッカーの中にすっぽりと収まる。

「私が引き付けるから、中で大人しくしてて。しばらく経って人の気配が無くなったのを
 確認してから外に出るのよ」
「聖さま……何を、おっしゃってるんですか……」

弱々しく尋ねる祐巳の耳に、「お前は上に行け!」という男の声が階下から微かに
聞こえてくる。

「後で会おうね」

聖は祐巳の瞳を見つめ微笑みながら優しくそう言い、祐巳の頬に軽くキスをした。
驚く祐巳の目の前で、ロッカーの扉が閉められる。
聖の姿はもう見えない。
そして、暗闇が訪れた。

ロッカーの扉を閉め、聖は廊下を走り出す。
祐巳を独りで残すのは心配だったが、あんな状態の祐巳を連れて逃げても
すぐに二人とも捕まってしまうのは目に見えていた。
ここはなんとか自分が引き付けるしかない。

心臓がドキドキと脈打っている。
後ろからは男の気配はまだ漂ってこない。あまり引き離し過ぎても意味がないのに……。
反対側の階段がある角まで辿り付いた聖が逡巡していると、後方から男の叫ぶ声が
聞こえた。

「おい、止まれ!」

聖は向こう側の階段を上がってきた男が銃口をこちらに向けるのを目の隅に捕らえながら、
角を曲がった。

(止まれと言われて止まるわけないでしょうに!)

男は一人だけだった。
とりあえず、あいつを祐巳ちゃんのいるロッカーから少しでも引き離さないと。
そう思いながら階段に足をかけた。
と、それと同時に、今自分が曲がったばかりの角の柱が、ビシっという音を立て微かに欠けた。
撃ってきた!
心拍数が飛躍的に跳ね上がる。弾が当たったらおしまいだ。

(志摩子、お願い。私のために祈っといて!)

聖は信心深い自分の妹の顔を思い出しながら、階段を駆け上がった。
839名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:15:35 ID:AxOt+p6C
聖は一気に屋上まで来ていた。
別の場所で朝礼でもしているのか、どうやらこの校舎に生徒はいないようだったし、
教室にも入れず途中の階の廊下で挟み撃ちになるよりはマシかと思ったのだが……。
かといって、この屋上で何ができるという訳でもないのだった。

舌打ちしながらきょろきょろと周りを見回した聖の目に、非常消火用のホースが収納してある
金属製のボックスがとまった。
確か何かの外国映画で、テロリストと対決する主人公がホースみたいなのを身体に巻きつけて
屋上から飛び降りるってのがあったっけ。
そう思い出し、屋上の端に駆け寄りフェンスから下を覗く。

「うわ。高っ」

こんなの降りられるわけないじゃん!
心の中でそう愚痴りながらも、ボックスの蓋を開ける。
のんびりと考えている暇はない。
あの男が途中の階も調べていたとしても、この屋上まで辿り付くのにそうは時間は
かからないだろう。

聖は素早く非常用ホースをガラガラと引き出し、男の仲間が残っているだろう中庭とは
反対の方へ引きずって行った。




286 名前: ソドム-祐巳・聖編(3-3) 投稿日: 03/11/09 13:41 ID:n49y3Acv

「くそっ、何て女だ」

屋上に走り込んできた男は、フェンスを越えてだらりと下に延びたホースを目にすると、
諦めたようにそう呟いた。
フェンスから下を覗くが、もうそこには女の姿は無い。

あの女、私服だったところを見るとこの学校の生徒ではないらしいが、かといって
教師にも見えなかった。
一体なんなんだ。
とりあえずその疑問は横に置き、男は懐から無線機を取り出すと仲間に連絡した。

「俺だ。逃げられた。まったく、命が懸かってると人間何をするか分からねえな」

こんな高さから降りるなんて、火事場のバカ力か?
最後にそう呟くと、男は腹立ちまぎれにボックスに一蹴り入れ、階段を下りその場を後にした。

(ふう、引っかかってくれたか)

屋上の反対側の柱の陰にある隙間に隠れていた聖は、男が階段を下りていくのを確認し、
ほっと息を吐いた。

(あんなホースで屋上から降りられる女子大生がいるんなら、是非ともお目にかかりたいわ)

とりあえず、もうしばらくはここに身を潜めることにして。
なんとか下に降りなくては。それまで祐巳ちゃん、大人しくしててよ。

今日はたくさん走ることになるかもしれない。
そうも思った聖は、一人静かに呼吸を落ち着けることに専念し始めた。
840名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:16:21 ID:AxOt+p6C
「もしもーし。由乃さーん」
「あ」

ぼんやりしながらニヤニヤし始めた由乃さんに声をかけると、やっと意識がこちらに戻って
きたようだ。

「今、令さまのこと考えてたんでしょ。でもいいなぁ、由乃さんと令さまはそこまでいってるんだ」
「ふふん、いいでしょ。祐巳さんも頑張りなさいよ」

羨ましい。祐巳は素直にそう思った。自分も祥子さまとそこまでの関係になれたらなあって。
もちろん無闇やたらとそういう関係になりたいわけではないけれど、でもお互いに好きなら、
やっぱりそこまでいくよねって、そう思うのだ。

「でも祐巳さんもそうだけれど、志摩子さんのところもねぇ」
「志摩子さん?」

話題の主である志摩子さんの方を見ると、彼女は穏やかな表情で静かにお茶を飲んでいた。

「お互い好き合ってるのは分かってるんでしょうから、乃梨子ちゃんとさっさとゴールイン
 しちゃえばいいのに」
「うーん。まあでも、あれだけ仲いいんだから、そのうちなんとかなるんじゃない?」

祐巳のその言葉を聞くと、由乃さんはビシッと指を一本立てて、「甘いわ祐巳さん!」と
勢いよく言い放った。

「ロザリオの授受だけでも、あれだけぐずぐずしてた二人なのよ。結局また誰かが背中を
押してやらないと、一線を越えられないのよ」

まったく世話が焼ける、なんて由乃さんは口の中でぶつぶつ言っている。
でもまさか……。

「由乃さん、まさか。二人の背中を押すつもりなの?」

そう聞いた祐巳に、由乃さんは「何言ってるの」というような視線を寄越しこう言った。

「押すわよ、もちろん。あと祐巳さんの背中もね」
「ええーーーっ!」

由乃さんが「誰かの背中を押す」。それは、押された方は空の彼方まで飛んでいって
しまうのではないかと心配になってしまう、それくらい強烈なイメージを伴って聞こえてきた。

「でも祐巳さんはともかくとして。こういうアダルトチックな話題の場合、志摩子さんの背中って
 どうやって押せばいいものやら」
「そうだね……。志摩子さんにそういう話って……なんだかしづらくない?」
「うーん。やっぱりそうよねえ」

眉間にしわを寄せ、うーんと唸る由乃さん。
そんなに悩むなら、無理して押してくれなくてもいいんだけど。志摩子さんだけでなく、自分の背中も。
祐巳は喉元まで出かかったその言葉を、すんでのところで飲み込んだ。

そして祐巳がそんなことを思っている間にも、由乃さんは何かを思い付いたようで。
一瞬ニヤっと唇の端を上げたかと思うと席から立ち上がり、ちょうどお茶を入れに席から立っていた
乃梨子ちゃんに声をかけた。

「ちょっと、乃梨子ちゃん」

どうやら由乃さんは、背中を押すターゲットを志摩子さんではなく乃梨子ちゃんに絞ったらしい。
まあ、志摩子さんを交えて過激な話っていうのはかなり想像しにくいし。
由乃さんに捕まってしまった乃梨子ちゃんには悪いけれど、妥当な選択だと祐巳は思った。
841名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:17:22 ID:AxOt+p6C
「なんでしょう、由乃さま」

丁度自分の紅茶を入れて戻るところだった乃梨子ちゃんは、そのまま祐巳たちのテーブル
までやって来た。

「まあまあちょっと、ここへ座ってちょうだい」
「はあ」

乃梨子ちゃんは祐巳たちの正面の椅子に腰を下ろし、手に持っていた紅茶をテーブルに置いた。

「乃梨子ちゃんって、志摩子さんのこと好きなのよね?」
「え。……ええ、まあ……好きですけど」

乃梨子ちゃんが向かいの席に落ち着くやいなや、由乃さんは何の前置きもなくいきなり
本題を切り出した。
そして由乃さんの言葉にさすがに少し驚いたような乃梨子ちゃんは、由乃さんの質問の真意を
計りかねるというように、やや曖昧に頷いた。

本当は志摩子さんのことが大好きなはずなんだけど。
由乃さんが何を企んでいるのか分からないので、とりあえずは慎重に返事をする作戦なのだ、きっと。

「やっぱり好きよねえ。で、昨日の夜は部屋で二人っきりだったわけだけど。志摩子さんと
何かした?例えばキスとか」

どこまでもストレートな由乃さん。

「……えっと。そのようなことは、何もしてませんけれど」
「ダメじゃない!志摩子さんを押し倒すなりなんなりして襲わなきゃ!!」

ぶっ!
横で聞いていた祐巳は、飲みかけていた紅茶を吹いた。
「襲わなきゃ」って!そうまでしてさせたいのか、由乃さん。
祐巳は慌てながらもハンカチを取り出し、濡れた口元とテーブルを拭いた。
乃梨子ちゃんはというと、驚きの表情を浮かべて固まっている。

「いい、乃梨子ちゃん。向こうが積極的に出るのを待ってるんなら、それはダメよ。
なんたって相手はあの志摩子さんなんだから。乃梨子ちゃんの方から一歩を踏み出さないと、
いつまで経っても進展なんてしないわよ。ここは強気にいきなさい!私が許すわっ」

熱く語りまくる由乃さん。
そして乃梨子ちゃんは、話の方向性が見えてきたのだろうか。落ち着いた口調で由乃さんに
こう言った。

「あの。人のことより、由乃さまの方はどうなんですか」

乃梨子ちゃんは自分たちのことから話題をそらそうと、由乃さんに切り返した。
でもね乃梨子ちゃん、その戦法は由乃さんには通用しないよ。

「うちは昨日もエッチしたし、今夜もするわよ」

平然と返す由乃さん。ああやっぱり、と祐巳は思った。へえ、今夜もするんだ……って、ええっ!?
由乃さん、さりげなく凄いことを宣言している。

「…………そうなんですか」

そしてそれを聞いた乃梨子ちゃん。
そうなんですか、って。言葉だけ聞くと、いつもの冷めた乃梨子ちゃんの反応に思えるけれど。
見ると乃梨子ちゃんは、スティックシュガーと間違えたのか、紅茶にタバスコを入れようとしている。
あーあ、思いっきり動揺してるでしょ。
842名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:18:01 ID:AxOt+p6C
「まったく。祐巳さんも乃梨子ちゃんも、不甲斐ないわ」

由乃さんは「しょうがないわねぇ」という風に腕を組み、椅子の背もたれにもたれかかった。
そして「ふう」、と一息つくと、祐巳と乃梨子ちゃんに向かって、おもむろにレクチャーを始めた。

「いい、祐巳さん、乃梨子ちゃん。今の流行は『年下攻め』。これなのよ」

そりゃあ、あなたのところはそうでしょうけど。祐巳はそう思ったが、口にはしなかった。
乃梨子ちゃんの方を見てみると、微妙な表情で固まっている。
彼女もきっと、祐巳と同じことを思っているに違いない。

「『誘い受け』っていう手もあるけど、これは高度な技だから、初心者にはオススメしないわ」

由乃さんはノっている。祐巳にも乃梨子ちゃんにも止められない。
そしてそんな固まる二人のことは気にもせず、由乃さんは固めたこぶしをダンッとテーブルに
振り下ろし、ただ呆然と由乃さんの話を聞くだけの祐巳と乃梨子ちゃんに向かって気合いを
入れた。

「とにかく!今夜は最後のチャンスなんだからっ。頑張ってよ、二人とも!!」

頑張って、って言われてもなぁ。
乃梨子はベッドの上に寝転がりながら、ひとり密かに溜め息をついていた。

(でも、確かに今夜が最後のチャンスだよね)

姉妹ごとに割り当てられた二人部屋。志摩子さんは自分のベッドの上に座り、静かに髪を梳かしている。
乃梨子はそんな志摩子さんの様子を、さっきからこっそり伺っていた。
そして由乃さまの言葉を思い出しては、今日ここで自分の気持ちにケリを付けるべきかどうなのか、
自分のベッドの上でごろごろしながら思い悩んでいたのだ。

しかしそれもここまでだ。
乃梨子はやっと、「いつまでも行動を起こさずにウジウジしているのは自分らしくない」と
結論を出し、「やっぱり言うなら今しかない」と心の中で自分に活を入れた。
そして自分を励ますように勢いをつけて起き上がると、意を決して志摩子さんに話し掛けた。

「あの、志摩子さん。ちょっと大事な話が」

突然真剣な眼差しと声音でそんなことを言い出した乃梨子に、志摩子さんはほんの少し驚いたようだ。
しかしすぐに気を取り直すと、髪を梳かしていた手を止め頷きながら返事をした。

「大事な話?いいわ、何かしら」

そう言い手に持っていた櫛を脇に置き、乃梨子を誘うように志摩子さんは一人分のスペースを
空けてベッドの上に座り直した。
それを見て、乃梨子は緊張しつつも志摩子さんの隣に並んで腰を掛ける。
志摩子さんはただ静かに、乃梨子が口を開くのを待っている。

「あのさ、志摩子さん」

この先を言ってしまったら志摩子さんに嫌われてしまうかもしれない。
乃梨子はそう思ったが、今更後に引く気は更々なかった。
843名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:19:54 ID:AxOt+p6C
「女の子が、同じ女の子のことを好きになるのって……どう思う?」
「え?」

予想外の話だったのだろう。志摩子さんは乃梨子がどういう意味で言っているのか分からないと
いうような表情になって、乃梨子のことを見つめている。
やっぱりハッキリ言うしかないか。

「あのですね。私、志摩子さんのことが……好きなんです」

乃梨子は志摩子さんの目を見つめ返して、自分の気持ちを伝えた。
そして乃梨子の言葉を聞いた志摩子さんはさすがに驚いたようで、言葉を詰らせたように
固まっている。

「……やっぱり、変、かな?」
「乃梨子……」

志摩子さんはやっとのことでそう呟いたが、続く言葉はなかなか出てこなかった。
それは短い間のことだった。それでも乃梨子はその僅かな沈黙にも耐えられず、志摩子さんから
少し目をそらし、二人分を一人で喋ろうとするかのようにあれこれと自分の気持ちを話し出した。

「自分でもちょっとおかしいかなーって、思ってたんだよね。志摩子さんのこと見るたびに
ドキドキしちゃったりとか」
「乃梨子、あのね……」

志摩子さんに名前を呼ばれたが、乃梨子は自分の言葉を止められなかった。

「はじめはきっと、志摩子さんがあんまり綺麗だから、それでドキドキするんだと思ってたんだけど。
でも段々、それだけじゃないんじゃないかなあって、自分でも分かってきて」
「乃梨子」
「昨日の夜なんか志摩子さんと二人きりだと思ったら、なんだか落ち着かなくてよく眠れなかったし。
自分でも変だと思うんだけど、そう思えば思うほどなんだか止められなくって。やっぱり私少しおかし――」

止まらなくなった言葉の途中で。
突然志摩子さんに自分の手をそっと握られ、驚いた乃梨子は言葉を切り口をつぐんだ。
乃梨子が顔を向けると、志摩子さんは握った手をそのままに乃梨子のことをじっと見つめている。
刹那の間そうして見つめあった後。志摩子さんは口を開いた。

「私も乃梨子のことが好きよ」

志摩子さんは、真剣な眼差しでそう言った。
しかし自分の想いがすんなり受け入れられるとは思っていなかった乃梨子の頭には、
嬉しさよりもまず疑問の方が先に浮かんできた。

(それは……嫌われてるなんて思ってはいなかったけど)

でも自分の「好き」と志摩子さんの「好き」は、微妙に違ってるのではないか。
そう思った乃梨子は、自分の考えを口に出した。

「えっと。私が言った好きっていうのは、人として好きっていうのも勿論あるんだけど、
それだけじゃなくってですね……」
「分かってるわ」

え?と思う乃梨子の目の前で、志摩子さんは静かに目を閉じた。
それを見た乃梨子は、「こういう場面、ドラマや漫画で見たことあるかも」と頭の中で思った。
乃梨子の方に顔を向け、じっと目を閉じている志摩子さん。
これってやっぱり……キス待ち状態!?
844名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:20:38 ID:AxOt+p6C
「志摩子さん、あ、あの……」

思いがけない展開に動揺し、乃梨子が小さく声を出すと、志摩子さんは乃梨子の手を
握っていた手に少し力を込めた。
そしてその手に志摩子さんの温かみを感じた乃梨子は、動揺していた気持ちを抑え一瞬で
覚悟を決めた。

緊張した身体を志摩子さんの方に寄せながら、乃梨子も目を閉じた。
そして――そっと唇を重ね合わせる。
初めて触れた志摩子さんの唇は、とても柔らかかった。

唇を合わせていた間は時間の流れがとてもゆっくりと感じられた。
しかしいざ離れてみるとそれはとても短い時間だったということが分かり、乃梨子にはそれが少し不思議だった。
目を開いた乃梨子の瞳に、少し頬を赤く染めた志摩子さんの顔が映る。

(……キスした後って、どんな顔すればいいんだろ)

破裂しそうなほどに高鳴る心臓と、熱くなる身体。そして志摩子さんに受け入れられた自分の心を、
乃梨子はまだ持て余していた。

「志摩子さん……」
「乃梨子、ありがとう……。あなたの気持ちが聞けて嬉しいわ」

そう言った志摩子さんはしかし、少し寂しげな微笑みを浮かべて言葉を続けた。

「私の気持ちも分かってくれていると思っていたのだけど。でもやっぱり私は、いつも少し
言葉が足りないようね。あなたのことを苦しめてしまったかしら……」
「そんなことないっ」

志摩子さんは全然悪くないのに。
そう言う志摩子さんのことがいじらしく感じられて、乃梨子は思わず志摩子さんのことを抱きしめてしまった。
そして志摩子さんの鼓動を胸に感じながら、自分の気持ちを全部話してしまおうと乃梨子は決意した。

「私、志摩子さんにキスとかこういう事とか……もっと先の事とかもしたいって、そんな風にも
思ってたんだけど……。それでもまだ私のこと、好きって、言ってくれる?」
「どんな乃梨子でも、私は好きよ……」

その言葉を聞いた乃梨子は、志摩子さんを抱きしめた腕にさらに力を込めた。

腕の中に志摩子さんの身体の温かさを感じながら、そのままベッドに押し倒す。

「志摩子さん……」

乃梨子はベッドの上で、自分の下に横たわり目を閉じている志摩子さんと夢中で唇を
合わせた。

ぎこちなく、自分の舌で志摩子さんの唇を開かせる。
志摩子さんとの距離がまた一歩近付いたことを実感し、乃梨子の心は高揚していた。
ディープキスの経験などなかったが、口付けは自然に熱を帯び始める。
845名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:21:26 ID:AxOt+p6C
そして志摩子さんの胸にそろそろと手を延ばすと、寝巻きの上からではあるが、柔らかく温かい
その胸の感触が、確かに手のひらに感じられた。
志摩子さんのことを喜ばせたいけど……。さすがにこの後、上手くできるかどうか。
こんなことは初めてだった乃梨子は、高揚した心とは裏腹に、身体を上手く動かすことが
できないでいた。

そんな逡巡を心中に抱え、乃梨子が身体を少しずらそうと脚を動かしたその時。
志摩子さんの唇から「んっ」と小さな吐息が漏れた。
志摩子さんのその声に乃梨子は一瞬「どうしたんだろう」と思ったが、もしかしてと
思い当たり、志摩子さんの脚の間に入り込んでいた自分の片脚を、志摩子さんの秘所に
押し当てるようにして軽く上下に動かしてみた。

「……ぁっ!」

志摩子さんの唇から、また声が漏れた。目が閉じられたその顔は、少し切なそうに眉が
寄せられている。乃梨子の脚の動きに合わせて、志摩子さんは確かに悶えていた。

(やっぱり気持ちいいんだ……)

そう確信した乃梨子は、志摩子さんの背中に両腕を回し軽く腰を抱えるようにすると、
思い切って脚の動きを激しくした。

「やっ……乃梨子……っ!」

志摩子さんの息遣いが激しくなり、乃梨子が脚を押し当てる度に、悩ましげに身体をくねらせている。
このまま志摩子さんを最後まで……。
そう思って脚で志摩子さんの腰をゆすっていると、悶えた志摩子さんの脚が僅かに跳ね、
乃梨子の脚の間に入る形になった。

「あっ!」

そのはずみで志摩子さんの脚に自分の秘所を刺激され、攻めることに夢中になっていた乃梨子は
自分が感じた快感に驚き、思わず声をあげた。
突然の乃梨子の声に驚いたのか、志摩子さんが今まで閉じていた目を開く。
志摩子さんと目が合った。
とろんとした眼差しで見つめあった二人は、その瞬間お互いの意図が分かったような気がした。

志摩子さんが脚を少し立てるようにし、乃梨子の両足の間に自分の片脚を挟み込む。
それを合図にしたかのように二人は互いを抱きしめ深い口付けを交わし、乃梨子は再び志摩子さんの
秘所を自分の膝で責め始めた。
そして同時に志摩子さんの立てた脚のももの辺りに、自分の秘所を押し当てるようにして
腰を動かすと、あっという間に下腹部に熱い快感が沸き起こってきた。

「あっ……志摩子さん、んっ」
「乃梨子…はぁっ、ぁっ」

互いの脚で、互いの敏感な個所を刺激する。
時間と共に二人の息遣いが激しくなり、徐々に高まる快感に顔を歪ませた。
自然と脚と腰の動きが速くなる。
そして訪れた絶頂の予感に息を飲み、身体を震わせ――きつく抱きしめあいながら、二人は共に果てた。
846名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:22:37 ID:AxOt+p6C
頑張ってって、言われても。こればっかりは相手のあるものだから。
自分の「頑張る!」という気持ちだけではどうにもできないことも、この世の中には
確かにあるんだ。
祐巳は今更ながら、情けない気持ちでそのことを痛感していた。


「どうしたの、祐巳?祐巳の番よ」

祥子さまの声に、考え事をしていた祐巳はハッと我に返る。
二人だけの夜、二人だけのこの寝室で。祐巳は祥子さまと何をしていたかというと――

「あ、すみません。『は』でしたね。えっとじゃあ……ハチマキ!」

そう。
祐巳と祥子さまは、二人っきりのこの部屋で。
冗談でもなんでもなく、健全にしりとりなんぞをして遊んでいた。

(ううう。由乃さんごめん、祐巳はやっぱり不甲斐ない娘です)

祐巳も色々と考えてはいたのだ。祥子さまがお風呂から上がられたら、まずは髪を梳かして
さしあげて、そこからなんとかいい雰囲気に持っていって、とか。
部屋の窓辺で二人並んで夜空を眺めて、ロマンチックな話題でも振って、そして祥子さまに
もたれかかってそのまま抱きついちゃったりして、とか。

頭の中ではそういう作戦を、いくつか練ってはいたのだが。
日頃の経験不足が祟ったのか、どの作戦も第一段階すら実行に移せない、情けない
祐巳なのであった。

そして少し焦った祐巳の口から実際に出た言葉は。
「祥子さま、しりとりでもしませんか」であった。

「しりとり」なんて、自分がシミュレーションしたラブラブ作戦の中には入っていなかったのに。
まったく今回といい、「びっくりチョコレート」の時といい、祐巳は自分で自分の口が不思議だった。
それにしても、ここからどうやってラブラブモードに持っていけばいいというのか。
これでは今夜はもうダメだ。
祥子さまのしりとりに返事をしながら、祐巳は内心頭を抱えていた。

「ええと。『お』、ね? 『お』……」

「お」で終わった祐巳の言葉に、うーんと考え込む祥子さま。今まで割合ぽんぽんとスムーズに
しりとりが続いてきたのに。
何故だか急に考え込んだ祥子さまが少し不思議で、祐巳は心の中の情けなさを一旦脇に置き、
祥子さまの顔を眺めてみた。

(私だったら、絶対すぐに「お姉さま」って答えるけどな)

でもお悩みになっているお顔もやっぱり素敵。
なんて祐巳が思っていると。

「おやすみのキス……なんて、どうかしら?」
「へっ?」

「おやすみのキス」。
微笑みを浮かべながら、祥子さまは確かにそう言った。
847名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:23:19 ID:AxOt+p6C
でも、「どうかしら」って、何が?
間抜け面をしてぽかんと口を開けたままの祐巳に、祥子さまはこう聞いた。

「いやなの?」
「イヤじゃありません!」

何がイヤで、何がイヤじゃないのか。突然のことに、本当のところ祐巳はいまいちよく
分からなかった。
しかし、祥子さまの麗しの唇が紡ぎ出した、「キス」という甘美な言葉。それに対して
「イヤ」などと、誰が言えるものか。

そう思いながら身を乗り出して返事をした祐巳に、祥子さまは少しだけ驚いたような顔を
したのだけれど。
すぐに柔らかな微笑みを祐巳に返すと、祥子さまも少しだけ祐巳の方に身を乗り出し。
そして――

「祐巳、良い夢を」

祥子さまは優しい声でそう囁くと、祐巳の頬に軽くチュっ、とキスをした。

「それじゃ、おやすみなさい、祐巳」
「はい……おやすみなさい」

部屋の電気を茶色にしてからご自分のベッドに入られた祥子さまを見て、祐巳も
自分のベッドに横になる。
目を閉じると、さっきの祥子さまの唇の感触が思い出されてちょっとドキドキした。

祥子さま、この先はナシですか?って、一瞬そう思ったけれど。
でもなんだか本当にいい夢が見れそうで、祐巳はもうこれだけで、とても満足な気分に
なっていたのだった。

最終日の朝。
食卓に全員揃った薔薇の館の面々は、この旅行最後の朝食を食べていた。
そして祐巳はご飯を箸で口に運びながら、他の面々のことをこっそり観察していた。

まずは黄薔薇姉妹。
向かい合わせの席に座った由乃さんと令さまは、何やら楽しく会話している。
そんなを二人を見ながら、祐巳は考えた。

(うーん。あの二人、今日もいつもと変わらないなぁ。でも昨夜も……したんだよね?)

昨日、由乃さんが「今夜もする」って宣言してたし。
祐巳と乃梨子ちゃんに奮った熱弁からすると、あの由乃さんが昨夜何もナシで眠りに
ついたなどとは到底想像できない。

自分がもし祥子さまとそういう風なことをしたとしたら、次の日の朝なんて一体どういう状態に
なっていることか。きっと百面相どころの騒ぎではないだろう。
そう思って、祐巳の隣に座っている祥子さまを横目で盗み見ると。
今日の朝食当番である令さまお手製の料理を、おいしそうに口に運んでいる。
そうして祥子さまのことを見ていたら、ついつい昨日の「おやすみのキス」のことを
思い出してしまい、顔がにやけそうになってしまった。

(危ない危ない。キスだけでこれだ。しかもほっぺになのに)

ともかく今祥子さまのことを見つめるのは非常に危険だ。絶対顔に出てしまう。
そう思った祐巳は、気分を切り替えようと、今度は白薔薇姉妹の様子を観察することにした。
848名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:24:09 ID:AxOt+p6C
祐巳の反対側の席に、二人並んで座っている志摩子さんと乃梨子ちゃん。祐巳が様子を伺おうと
視線を移した丁度その時、志摩子さんが何かを取ろうと食卓の端に向けて手を延ばした。

「あ、お姉さま。お醤油ならお取りしま……」

醤油さしを取ろうとした志摩子さんの手と、それをフォローしようとした乃梨子ちゃんの手が
一瞬触れた。その瞬間、思いっきり身体をびくっとさせて、慌てて手を引っ込める二人。そ
して何故か、そのまま硬直している。

「す、すみません……」
「いえ……いいのよ」

顔を少し赤らめ、俯き加減に食事を再開した志摩子さんと乃梨子ちゃん。
なんだこの二人の反応は。そういえばさっきからこの二人、やけに会話が少ないような気がする。
祐巳がそう不思議に思っていると。

「あの二人、結ばれたわね」
「えっ?」

祐巳の耳元で小さく囁く由乃さんの声。
結ばれたって、結ばれたって……、そうなのーーー!?
心の中で叫ぶ祐巳。すると。

「祐巳、何をボケっとしているの。早くお食べなさい」
「は、はい」

祥子さまに注意されてしまった。どうやら祐巳は、おかずの卵焼きを一切れ箸で掴んだまま、
しばらくの間固まっていたらしい。慌てて食事を再開する。
それにしても、「ボケッとしてる」だなんて。
低血圧で朝に弱い祥子さまにそう言われたんだから、きっともの凄く「ボケ」っとしていたに
違いない。祐巳は反省し、とりあえずは食事のみに集中することにした。

そうして朝食を食べ終わり、皆が一息つきかけたところで。

「これよりつぼみ会議を開きます」
「へっ?」
「つぼみ会議?」

いきなり由乃さんが立ち上がり、高らかに宣言した。
由乃さん以外のつぼみである祐巳と乃梨子ちゃんは、突然のことに驚いて顔を上げる。

「紅薔薇のつぼみ、白薔薇のつぼみ、ちょっとこちらへ」

そんな二人には構わず、由乃さんは「お姉さま方、ちょっと失礼いたしますわ」とにっこり
笑いながら祥子さまたちに告げる。そして祐巳と乃梨子ちゃんを引き連れて、少し離れた所にある
昨日と同じテーブルに三人で陣取った。席に着くと早々に、由乃さんが口を開く。

「では各自、昨夜の戦果を報告してもらいます。まずは私ね。昨夜もバッチリでした。以上」
「うわ、やっぱり」
「以上って、それだけですか?」

さっさと自分の報告を終えた由乃さんは、余裕の表情で優雅に紅茶を口にしている。

「今更私たちのノロケ話なんか聞いたって、しょうがないでしょう」

まあ、それもそうなんだけどね。
でもやっぱりちょっと聞きたいかなぁ、なんて祐巳が思っている間にも。
由乃さんはまるで司会のようにその場を取り仕切り、会議を次の話題へと進行させた。
849名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:25:23 ID:AxOt+p6C
「はい。じゃ、次。乃梨子ちゃん」
「えっ」

早くも話を振られた乃梨子ちゃん。
いえ、私たちは別に……なんて言っているけれど。乃梨子ちゃんに似合わず、ちょっと
目が泳いでいる。
そして由乃さんは、「全てお見通しなのよ」というような表情を浮かべてこう言った。

「またまた〜。最後までいったんでしょ。今朝のあなたたちを見てれば分かるわよ」
「最後までって!どうして分かるんですかっ!?」

ガタンと椅子を蹴立てて立ち上がった乃梨子ちゃん。
クールな乃梨子ちゃんがそんな分かりやすい反応をしてくれるなんて、ちょっと意外。

「おめでとう、乃梨子ちゃん。私はあなたを信じていたわっ」

うんうんと頷く由乃さんに手を握られ。

「乃梨子ちゃんって、志摩子さんのことになると分かりやすくなるよね」

ボケキャラであるはずの祐巳にまでツッコミを入れられ。

「えっとですね……」

乃梨子ちゃんは言葉を詰らせ真っ赤になった。
でもこういう乃梨子ちゃんもなんだかかわいいなぁ、なんて祐巳は思う。

でもそっか。志摩子さんと乃梨子ちゃんも結ばれたんだ。
おめでとう。祐巳は心の中で、二人にそう言った。

「はい、最後は祐巳さんが報告する番よ」

乃梨子ちゃんを座らせると、由乃さんは祐巳に向かって言った。
しょうがない。二人だけに白状させて自分だけ内緒にはできないしね。
祐巳は昨夜のことを正直に話すことにした。二人の戦果に比べたら、ちょっと見劣りするかも
しれないけれど。

「キスを、少々」
「少々って、どれくらい?」
「ほっぺに。チュって」

それだけでした、と報告を終える。
それ以上はできなかったけれど、でもあの時は、確かにそれで満足だった。
そんな祐巳の気持ちが、由乃さんにも伝わったのか。

「ふうん……。まあ、祐巳さんにしては良くやったってところかな」

「キスだけなんてダメじゃない」と言われるかと思いきや、祐巳の報告は意外にも由乃さんを
満足させたようだった。


「でも祥子さまにキスするなんて、勇気がいったでしょ」
「……いえ。祥子さまからされたんです」
「紅薔薇さまが。結構やりますね」
「祐巳さん、まさか。上級技の『誘い受け』を実行?」
「それはすごいです、祐巳さま。何気に侮れませんね」
「そうそう、私ってこう見えて実は攻め属性……って、ちがーう!」

もしかして、からかわれてる?そう祐巳は思ったけれど。
でもほんの少し楽しくて、そしてすごく幸せだったのも、また事実だったのである。
850名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:26:03 ID:AxOt+p6C
祥子は令、志摩子とともに紅茶を飲みながら、少し離れたテーブルで「つぼみ会議」なる
ものを開催している自分の妹たちの方を眺めていた。

由乃ちゃんはいつもの彼女らしく、明るくけらけらと笑っている。
乃梨子ちゃんはすました顔で紅茶のカップに口をつけているが、その肩は少し震えていて、
なんだか笑いを堪えているようにも見える。

そして祥子の妹の祐巳はというと。
彼女はまだ朝だというのにもう百面相を披露している上に、腕をぶんぶんと振り上げたり
下ろしたりしている。

(まったく祐巳ったら。あと少しでもいいから、落ち着けないものかしら)

祥子はそう思いながらも、その口元には微笑が浮かんでいた。
そんな祥子に、令が話し掛ける。

「ねえ。あの三人、いつの間にか団結してない?」
「そのようね。でも、いいことだわ」
「そうですね」

あちらのテーブルでは、少々過激な会話が交わされているとは露知らず。
祥子、令、志摩子の三人は妹たちの様子を見つめ、幸せそうに暖かな微笑みを浮かべていた。
851名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:28:10 ID:AxOt+p6C
 とある日の休日、福沢祐麒はK駅ビル内の書店に来ていた。
 人目を避けながらあるコーナーへと移動する。その前にたむろする人々の間に生じる隙間から、音速の速さで手を差し入れ、目当ての本を手に取った。そのままカウンターに叩きつけ、目を丸くしている店員に千円札を叩きつける。
「…カバーは」
「お願いします」
 茶色いカバーのかけられた文庫本と釣銭を受け取り、逃げるように書店を飛び出した。
 別に悪いことをしている訳ではないのだが、つい人目を気にしてキョロキョロと辺りを見回してしまう。
「未だに慣れないな、このテの本買うのは……」
 知り合いに見つからないうちに、さっさと家に帰ることにしよう。祐巳の目は気になるが、部屋に閉じこもって鍵でもかけておくしかない。
 そう思った瞬間、不意に聞き覚えのある声が飛び込んできた。声の聞こえたほうを見ると、一人の女性が数人の男に絡まれている。
 中心に居るのは、ベリーショートの髪形をした、長身の女性。ミスター・リリアンの異名も持つ、ロサ・フェティダ支倉令だ。
(令さん……ナンパされてるのか?)
 周りにいるのは、ガラの悪そうな男達。馴れ馴れしく令の肩を握り、ベラベラとなにか話しかけている。
 嫌悪感丸出しの表情で、令が男の腕を払った。
 だがそれを見てプライドを傷つけれたのか、男が令をドンと突き飛ばす。小さな悲鳴と共に、令が尻餅を着いた。
「っ!!」
 それを見ると同時に、祐麒の体が反射的に飛んだ。男の背中めがけ、肩から突き刺すが如くタックルする。男の体が宙を舞い、地面を這った。
「え……祐麒君?」
 地面に座ったまま、呆気にとられた表情で呟く令。

「な、なんだおまえ!!」
 答える代わりに、別の男の鳩尾に肘を叩き込む。醜い呻き声と共に男が倒れた。
 そこまでやって、ようやく自分のしている事に気がつく。考えるよりさきにここまで動いてしまったが、花寺の生徒会長である自分がこんなことをするのは、非常に不味いのではないか。 
 そんなことを考えたせいか、背後から迫る殺気に気がつかなかった。
「てめえ!!」
 振り向けば、リーダー格の男が鉄パイプを振りかざしている。
 まずい、かわせない。
 そう思った瞬間、横から箒が伸び、男の攻撃を遮った。
「大丈夫!? 祐麒君!!」
「は、はい!!」
 祐麒が答えると同時に、令の箒が目にもとまらぬ速さで飛び、男の得物を跳ね飛ばした。
「面っ!!」
 箒が男の顔面を打ち据え、昏睡させる。
「助かりました……」
 ハァと一息ついて気がつくが、いつのまにやら周りに人垣ができている。
 ミスター・リリアンと花寺の生徒会長が喧嘩。これは少し問題があるのではないか。
 そう思った瞬間、令の手を握った。
「え、え?」
 驚いて体を硬直させる令を無視し、そのまま走り出す。
「逃げましょう。お互い、こういうとこ見られたくないでしょう」
「そ、そうだね」
852名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:29:19 ID:AxOt+p6C
 通行人に迷惑そうな顔で見られながら、駅ビルの中を走り回る二人。気がつけば駅から離れ、商店街の方にまで来ていた。
 ここまで来ればいいだろうと思い、ホッと息をつく。
「もう大丈夫でしょうね……」
「うん……あの……手……」
「え?」
 そう言われて自分の手を見ると、しっかりと令の手を握ったままだった。
「わわっ!! すいません!!」
 急に恥ずかしくなって、腕を離す。姉がいる分、男子校の花寺の中でも女性に免疫があるほうだとは思っていたが、こんなにしっかりと異性の手を握ったことはなかった。それは幼稚舎からリリアンにいた令も同じだろう。
 なんとなく気まずくなり、無言になる二人。だが、それを打ち消すように令が口を開いた。
「その……祐麒君って、強いんだね……生徒会長って、そういうこともやるの?」
「まあ……俺の場合、柏木先輩みたいに、ただ立ってればいいということにはならないんで。実際に動かなきゃいけないことも多いから、鍛えられたんです」
 男子校の花寺には、昔ながらのヤンキーやツッパリも居る。といっても、ほとんどはそれなりにスジを通す連中なので特に問題にはならないが、中には他の生徒に暴力を奮う者も居る。そういう者に対しては、力で押さえつけなければいけないこともあるのだ。

「祐巳ちゃんは……知らないんだよね。祐麒君が生徒会長やってたことすら知らなかったみたいだし」
「ええ……あまり心配かけたくないし、かっこいいとも思ってないですから……」
 柏木なら、もっとスマートに済ませることができた。祐巳には『無理することないって』とは言われたもの、ついいつも自分と比べてしまう。
「だから、令さんも祐巳には黙ってて欲しいんですけど」
「わかった。私も箒で人殴ったなんて言えないから……二人だけの秘密ね」
 二人だけの秘密。言った後で、
「そ、それじゃ俺はこれで」
「あ、ちょっと……」
 何かお礼でも、と令が言おうとした時。
「ん……?」
 祐麒が急に、ベタベタと自分の体を触り出した。まるで、何かあるはずのものを確かめるように。
 十数秒後、サーと顔を青くして叫んだ。
「あーっ!! コスモス文庫の新刊置いてきた!!」
 そう言った直後、ハッと口元を押さえる。
「祐麒君……コスモス文庫読むの?」
「ま、まあ……」
 今度はカァと顔を紅く染める祐麒を見て、祐巳の百面相を連想する令。やはり姉弟なのだなと思った。
「新刊って……もしかして、須加星の『いばらの森U』?」
「え?」
 予想外の言葉に驚きつつも、コクンと頷く。 
「それなら私、今持ってるけど」
 あたりまえのような顔で、鞄からひょいと文庫本を取り出した。確かに自分が先ほど買った物と同じ物である。
「令さん、コスモス文庫……読むんですか?」
「そうだけど?」
853名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:29:58 ID:AxOt+p6C
「コスモスフレンドに載ってた新人賞の受賞作読んだ?」
「ええ、けっこう面白かったですね。ただ、ちょっと展開が急かなとは思いましたけど」
「私は読み切りのが好きだなあ。テンポもよかったし……」
 小さな喫茶店で、机を挟んで会話を弾ませる二人。自分達の好きな話について、あーだこーだと言い合っている内に、気がつけばけっこうな時間が過ぎていた。
「あ……ごめん、私の話につき合わせて」
 腕時計を見ながら、令がすまなそうに呟く。
「いや、こうしてコスモス文庫のことで人と話せるなんて初めてだから、楽しいです。花寺ではなかなか言えないし」
「祐巳ちゃんとは、話したりしないの?」
「実の姉相手に言えませんよ……あ、もともとは祐巳が買ってきた『いばらの森』を読んで好きになったんです」
「そういえば、私もあまりこういうことで人と話したりしないなあ……」
「あれ? 妹の由乃さんは?」
「あの娘ね、こういうのダメなの。時代劇の剣客物とかが好きだから」
「意外ですね……」
 意外と言えば、令がコスモス文庫の愛読者だったという事実のほうが度合いは上だが。 
「そろそろ出ようか。店混んできたし……あ、代金は私が払うから」
「いや、そこまでしてもらうわけには……」
「助けてくれたんだから、これくらいのお礼はさせてよ」
 学校は違えど、上級生からこう言われたときは素直に甘えるべきだろう。

「じゃあ、お言葉に甘えて。ご馳走様になります」
「うん」
 ニコッと微笑んで、祐麒の分の代金も払った。
 店を出ると、すでに薄暗くなった商店街を歩く。逃げた時はわりと走った気もしたが、すぐに駅に辿り着いたのを見ると、そうでもなかったようだ。
「じゃ、私は駐輪場に自転車置いてるから。ここで」
「そうですか……あのこれなんですけど。本当にいいんですか」
 『これ』とは、令から借りた須加星の新刊である。『私はもう読んだからいいよ』と言って、貸してくれることになったのだ。
「……今度会った時、返してくれればいいわ」
「はあ……」
 とは言っても、自分達が偶然出くわすことなど、あまり無いのではないか。そう思ったのだが、なぜか口に出して言う気にはならなかった。
「またね、祐麒君」
「はい……」
 手を振って駐輪場の方に消える令を見送り、自分は改札口に向かう。
 駅のホームで電車を待ちながら、ふと呟いた。
「また……か」
 次に出会うのがいつになるかはわからないが、この本を返すにはまた会わなければならない。
 そう考えると、この本を持っている限りまた会える気がした。
「また……会えたらいいな」
854名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:31:00 ID:AxOt+p6C
「ふう……」
 風呂上りで湿った髪をゴシゴシと拭きながら、令は自室のベッドに腰を下ろした。
 今日買った文庫本でも読もうと思ったが、すぐここには無いことを思い出す。
「そうか、祐麒君に貸したんだ……」
 祐麒にはもう読んだと言ったが、実は自分も今日買ったばかりだった。そうでも言わないと受け取りそうにないと思ったからだ。
「しかし、いきなり来たのは驚いたなあ」
 見知らぬ男に取り囲まれた時、周りからは気丈に振舞っていたように見えただろうが、内心ではビクビクと震えていた。力ずくで突き飛ばされたときはもうだめだと思った。
 だがその瞬間、祐麒に助けられた。いきなり飛んできた祐麒を見たとき、まるで夢を見ているような気分だった。
 そう、まるで
「絵本に出てきた王子様、みたい……」
 ポツリと呟いた言葉に、赤面する令。
「なに言ってるかな、私。祐麒君だって、私みたいなの嫌だろうし……」
 そう言って、部屋に置かれた長方形の姿写しに目を移す。他人からは賞賛されるが、美少年にすら見える長身と顔立ちは令にとってコンプレックスのひとつだった。
 パジャマの前を開けて、地味なブラジャーに包まれた胸を出す。ズボンも脱ぎ、白いショーツを纏った下半身を露出させた。
「……こうしてれば、ちゃんと女っぽく見えるかな」
 鏡の中に、下着姿にパジャマの上だけを羽織った自分の姿がある。グラビア撮影のように、ポーズをとってみた。少し筋肉のついた二の腕が気になるが、意外とサマになっているのではなかろうか。

「ちょっとエッチかも……」
 スルリとパジャマを脱ぎ、ブラジャーのホックも外す。少し体を動かすと、ハラリとブラジャーが落ちた。
「あ……」
 大き目の乳房が、鏡に映っている。トレーニングの賜物か、ブラジャーなしでも重力に引かれることなく、美しい形を晒していた。
 だが令の目を引き付けたのは、その先端である。薄い色の乳首が、何かを主張するように固くしこっていた。
「う、うそ……」
 咄嗟に胸を押さえるが、腕の下で胸が潰れる。その感触が、ゾクリと体の奥に響いた。
「やだ、私……」
 胸を潰した感触が、お腹の中で燻っている気がする。そしてそれは、下半身にも影響を与えていた。
 下腹部のさらに下を、ショーツの上から撫でる。体がビクリと震え、指先に布以外の感触を残した。気がつけば、いつのまにかかすかな湿り気を感じる。
「そんな……私、なんで……」
 ショーツの上から割れ目をなぞった。同時に、胸を押さえた手をゆっくりと上下させる。
 乳房が揺れ、乳首がこすれるたびに、鈍い感触がジワジワと令を苦しめていく。指先を見れば、べっとりとした粘液が付着していた。
 それを口元に運び、まるで幼児のようにチュパチュパとしゃぶる。
「パンツ、汚れちゃうよぉ……」
 長く美しい足から、ショーツをスルリと引き抜いた。脱ぐ瞬間、ヴァギナから溢れた粘液が、ショーツに糸を引いていたのを見て赤面してしまう。
855名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:31:55 ID:AxOt+p6C
 ショーツをベッドに放り投げると、全裸となった自分の姿を鏡に映した。上気してほんのりと紅く染まった肌に、乳首を固くしてフルフルと揺れる乳房。薄い陰毛を備えた秘所からは涙をこらえるかのように、トロリとした蜜が浮かんでいる。
 この姿を見れば、ミスター・リリアンなどと言うものは居ないであろう。
「ふわあ……やだ……」
 自慰の経験は初めてではないが、やる時はやろうと決めてからやるものだ。今のように、気がつけば自慰にふけっているというような体験は無かった。
 ヴァギナをこすりあげ、乳房を揉みしだく。その動きに反応するかのごとく、次々と蜜があふれ出していく。
「うわあ……止まらない……」
 ドロドロの粘液に濡れる指を見て、ふと思った。今、自分の秘所はどんな状態なのだろうか。
 目の前には、令の痴態を写し出している鏡がある。その前に座ると、両足を抱えて、M字型に脚を開いた。
「あう……」
 柔肉の扉が鏡に映る。鏡の中の女性器は、今は泣くように蜜を溢れ出させていた。
 観音開きの扉に指を添え、そっと開く。クチュリという音が聞こえた気がした。
 今まで自分の女性器をマジマジと見つめたことなどない。そのせいか、最初に思ったのは『気持ち悪い』という感想だった。
(お姉さまも……由乃も……祥子も……こんな形なのかな……)
 自分の体の一部を、じっくりと観察する。充血した小さな突起と、下方にある肉の通路がまる見えだった。

「うわあ……」
 クリトリスにそっと触れてみる。下半身が別の生き物のように、ビクリト震えた。
「ひゃ、ひゃあっ!!」
 大きな声を出したことに気づき、はっと口を押さえる。親にこんなとこを見られるわけにはいかない。シーツの端を噛んで、声を殺した。
「ふうっ、ふっ……」
 クリトリスを優しくいじる。そのたびに、体内に火種を投げいられている感触がした。
「は、はうっ」
 一方の手で乳房をこねくり回し、もう一方の手でクリトリスを弄ぶ。開いた指で、膣の入り口をツンツンとつつきながら。
 膣から溢れ出す粘液が、肛門の方まで洪水のように流れていた。
 鏡に目を移す。そこには、弛緩しきった表情で自慰にふける自分の姿。
(こ、こんな……いやらしいっ!!)
 資格を通して伝わる映像が、最後の引き金となった。
「ふ、ふううっ!!!!」
 腰がビクビクと振るえ、ダラダラと粘液を垂れ流した。その拍子に、人差し指が膣に進入する。第一間接までだが、新たな刺激を感じた女性器が、搾り出されるように蜜を放った。
 下半身から脳まで響く快楽が、令を打ち据える。
「ふ、ふにゃあ……」
 未だ腰が脈打っているような感触を覚えながら、脱力して絨毯の上に倒れこんだ。
 暫くボーっと壁を眺めていた令だったが、荒い息をつきながらポツリと呟く。
「い……いっちゃったよぅ……」
 絶頂を迎えた体が覚めていくのに反比例して、罪悪感がフツフツと沸き起こってきた。なにか自分はとてつもなく悪いことをしてしまったのではないかと思ってしまう。
「こんなんじゃ……祐麒君にだって愛想つかされる……」
 そう呟くと同時に、ベッドの上にパタリと倒れる。未だ体に残る疲労感も手伝って、令が眠りに落ちるのに、時間はかからなかった。
856名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:34:03 ID:AxOt+p6C
「祐巳さん……私、さっきみたいな感じで良かったかしら……」
志摩子さんが不安げに聞いてくる。
さっき、とは多分、部活の予算編成会議のことだろう。
勿論、志摩子さんは完璧だった。2年生なのに白薔薇さまの職務を十全にこなせていた。
「さあ……まあ、あれでいいんじゃない?」
でも、てきとうに答えて不安を煽る。

「そう……。ありがとう」
物憂げに視線を伏せると、思考の海に沈んでいく志摩子さん。
多分、志摩子さんのなかではあの事件がまだ消化されてないんだろうな。
だから自分が白薔薇さまとして仕事をこなせばこなすほど、裏切ってるような気持ちになるんだと思う。
そうだよね、ずっと悩んできた信仰に関わる問題が、山百合会と瞳子ちゃんが仕組んだ茶番のなかで
殆ど何も知らない一年生に祝福されたくらいで解消されるわけないもん。
結局、令さまも祥子さまも宗教と真剣に向き合ったことがない人だから。
あれを聖さまが見ていたら、宗教に恋人をとられた人が見ていたら、何と言うことやら。

表向きの感情と内面の葛藤が、志摩子さんのなかでどんどん乖離していくのがわかる。すごく不安定になってる。
去年までいた聖さまという壁が取り払われて、乃梨子ちゃんの壁はまだ完成していなくて、本人は無防備で。
狙うなら、今だ。
あの楚々とした美しい顔が、どういうふうに歪むんだろう?そしてそれを知ったときの乃梨子ちゃんは?
考えただけで、笑みがこぼれる。ついでによだれもこぼれそうになった。危ない危ない。

「祐巳さん、また百面相しちゃって」
くすくす笑う志摩子さん。あなたに癒されてるって顔。
「あはは、恥ずかしいなぁ〜」
でももうすぐ、あなたはもっと恥ずかしい百面相をすることになるんだよ。

さて。
ビスケット扉を背にして硬く閉めて。
とりかかる。

「志摩子さん……。私、ずっと思っていたことがあるんだけど」
「何かしら?」
「志摩子さんは……志摩子さんは、あれで良かったの?」
「……あれって……?」

「おメダイのときの……」
びくんと体を震わせる。うんうん、さすが白薔薇さま、もう何の話かだいたいわかってるみたいだね。
「ゆ、祐巳さん、……?」

「私ね、思うんだ。志摩子さんなんかが全校生徒の代表でいいの?ってね」
「……ッ!」
「だって、ずっとみんなを裏切ってきたんだよね。ずっと騙してきたんだよね。
 令さまとお姉さまは笑ってたけど、一年生もなんか拍手とかしてたけど、納得してない人もいると
 思うんだよね。私とか……志摩子さん、あなた自身みたいにね。それに聖さまがきいたら何て言……」
「祐巳さん……それ以上は……」

力なく項垂れる志摩子さん。
ココだ。
その右手を、そっと両手で包んであげる。
「辛かったよね、苦しかったよね。下手にみんなの前で"ゆるされた"ことになっちゃったから……
 私なら、みんなよりはわかってあげられると思うから。だから、もう一人で悩まないで……!」
目に涙をためながら、精一杯に志摩子さんに笑いかける。
857名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:36:10 ID:AxOt+p6C
最初は美しい顔をぽかんとさせていたが。
やがてみるみる目から涙が溢れ出させる乃梨子ちゃんのマリアさま。
「わ、わたしを、糾弾しないの……?ここから出ていけって言わないの……?」
「言うわけないよ」
わあん、と感情を弾けさせ、志摩子さんは私に抱きついてきた。
おお、よしよし。その顔をこの胸に埋めたまえ。豊満とはいえないけどね。

子供のように声をあげて泣く彼女の頭を優しくなで、強く抱き締めてあげる。
私はマリアさまのマリアさまになる。

しばらくそのままにしていると、小さい声でたずねてきた。
「……ふわぁん、ひっく、と、友達でいて、ひっく、くれるの……?」
「当たり前だひょ!」
いけない。あまりにうまくいきそうで声が上ずってしまった。まあかえって普段の私らしくて良かったかな。

志摩子さんは小さく笑うと、やっと泣き止んで顔をあげる。
その顔を見つめつつ、頬から耳に手を這わせ、そっと唇を重ねた。乃梨子ちゃん、お先ー。
「んんっ……」
やわらかい。突然のキスに驚いていた志摩子さんだが、やがて官能に支配されたように体から力を抜いた。

「可哀相な志摩子さん。罪は消えるわけじゃないけど、せめて私と二人でいるときは、それを忘れさせてあげるね……」
タイを解く。
「祐巳さん……」
わたしはあなたにゆるされてあなたのものになりましたもうどうにでもしてくださいって顔だ。ゾクゾクする。

「志摩子さんを気持ちよくさせてあげたいの。全てを忘れさせてあげたいの。
 だから、感じるところがあったら言ってね」
「は、はい……」
耳に吐息を吐きかけ、舌を入れる。
「ここは……?」
「きもち、いいです……」
そのまま頬に舌をはわせ、口内に侵入。上の歯の裏の、口腔の柔らかいところと硬いところの境目。ここは効くよねー。
「どう?」
「ああ、はぁ、い…いいですっ……」
胸に右手をやり人差し指と中指で突起をはさみ、
「そ、そこも……!」
左手でおへそのまわりをさすって
「ふああっ……!ん、んん……」
唇をときどき塞ぐのも忘れず
「んくッ……!あああっ」
胸から背中にまわした手で背骨をなぞり
「いやっ、そんな……そこも……!」
秘所に左手をおろす。
「ああ、っく、ひああっ……!」

「困ったなぁ」
そういって愛撫を中断すると、志摩子さんは熱に倦んだ表情で私を見た。
「志摩子さん、えっちだね。体中どこ触っても反応するんだもん。こんなえっちな人、初めて」
「……」
羞恥のために泣きそうな表情になる。
「でも、そんな志摩子さんも大好きだからね」
ぱっと表情を明るくして、体を預けてくる。
不安定になっている彼女は、いちいち私の言葉に反応してくれるおもちゃだなぁ、
と抱きついてきた細身を抱き返しながら思う。もっともっと可愛がってあげる。
858名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:38:15 ID:AxOt+p6C
「じゃあ、自分のいいところはだいたいわかったと思うから。今度は一人でやってみよう?」
「……え?」
「できるよね?」
「は……はい……」

志摩子さんはおとがいを軽くあげて、自分の口内を自分の舌で刺激し始めた。口は半開きで。
なんて淫靡な光景。思ったより大胆だ。
左手は胸にあてて、右手はショーツの中に入れて。ときどき声を漏らす。水音も漏れる。
恍惚と自分の中に入りかけている彼女の意識。
これじゃ少し面白くないから、連れ戻してあげるかな。もっと恥じらいがないとね。

「えっちだね」
「……!」
「志摩子さんて、そういうことしたことないと思ってたけど。ほんとはけっこうするの?」
「……」
「するの?」

「……い、今まで2回だけ……」
「へえ……。やっぱり1回は聖さまで1回は乃梨子ちゃん?」
表情が固まる。図星だったみたい。
「で、でも、達するって、よくわかんなくて……だから、1回ずつだけで……」
あら。イッたことはないんだ。

「じゃあ、私が教えてあげるね」
予定変更。初めての絶頂は私がもらってしまおう。

「指、入れたことはある……?」
秘所のかたちをなぞりながら耳元で囁く。もうかなり濡れている。
「無い、で、す……」
「じゃあ、ここね、クリトリスっていうんだけど、ここはどれくらい感じる?」
指さきで軽く押しつぶしながら聞いてみた。
嬌声あげつつ何か答える志摩子さん。ふーん、答える余裕はあるんだ。
令さまなんて、普段から自分でいじってたのもあるかもしれなけど、答えらんないくらい感じるのに。
クリトリスより中のほうで感じるタイプなのかも。

今度は小指のさきを中に少しいれて、こすってみる。くちくちくち、と音が響いた。
「……! あああああっ!!」
やっぱり。中のほうがいいんだ。
「指入れたことは、なかったんだね……」
「ああ、はぁ、んっ……だって、こわく……て……」
「志摩子さんはね、えっちだから、中のほうが感じるみたいだよ?もっとシてあげるね」

人差し指にかえ、さっきより強く早く出し入れする。くちくちくちくちくちくち。
「ひっ、く、い…いた……!」
「でも、いいでしょ?」
「はぁ、はぁ、う…ん、いた、いけど……きもちいい!」

そろそろかな。少し奥にいれて、間接をまげてひっかいてみる。
「ひゃ!なに、それ…!それ、だめ、くる、なにかく……る……!」
駄目押しに一度突き入れてから、間接を曲げたまま一気に引き抜いた。
「ぁ、あ、あああああああああ……ッ!」

パタ、パタと透明な液があふれ出てくる。むむ、これは潮というやつでしょうか、イーグル加藤さん。
あそびがいがありそうな体……。
でもまあ、今日はここまでかな。
859名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:41:34 ID:AxOt+p6C
衣服を整える間、ぽつぽつと話し掛ける。
「もう志摩子さんと私は、二人だけの秘密を共有する仲だから。
 私もみんなを裏切ってる、同罪だね」
にっこり微笑む。
「祐巳さん……」
「でも、志摩子さんは二つで私は一つだけどね」
にっこりと、しかし酷薄さを交えて微笑む。
「ゆみ、さん……」
ああ、その表情いい。たまらなくなっちゃうよ。

「一人で悩まずに、私には何でも言ってね」
そして私の前で、何度でもイッてね。

彼女のお尻を制服の上からずっとなで、ときどき頬を舐めながら薔薇の館をでて、バス停まで送る。
色んな意味でビクビクしながら誰かに見られてないか視線を泳がせる志摩子さん。
すごくかわいい。志摩子さん。私の志摩子さん。

「今晩は、私で、オナニー、するんだよ。私も、志摩子さんで、する、から」
一語一句切って耳元で囁いて別れ、それぞれの帰り路についた。
ああもう、いちいち体震わせて、目潤ませちゃって。かわいいんだから。


蔦子さん、さっきの写真ちゃんと撮れたかな。
次は志摩子さんの写真を使って、乃梨子ちゃんかなー?
860名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:44:29 ID:AxOt+p6C
 私をストーキングしている可南子ちゃんが、花寺の学園祭に行かないでください、などと言い出した。
 聞けば、男は危険で私を狙っているとかいうことらしい。妄想もここまでくれば賞賛に値する。
 可南子ちゃんがここまで男を敵視するのは、どうもお父さんに理由があるらしい。人の家庭の問題に首を突っ込むのが好きな私は、それとなく聞いてみることにした。
「可南子ちゃん、なんでそんなに男の人を嫌うの?」
 と、私が尋ねると、可南子ちゃんが頬を染めて口篭もった。
「そ、それは……」
 人には言えない話らしい。そうなると、ますます聞きたくなるのが人情というものだ。 
「ねえ、教えてくれない? 場合によっては、私も男に対する認識を改めなければいけないと思うし。お姉さまには悪いけど、花寺に行くことも考えさないと」
 可南子ちゃんがパァと顔を輝かせた。宗教の勧誘に成功したときは、こんな顔をするのかもしれない。もっとも、今の獲物は可南子ちゃんのほうだが。
「わ、私……父に……です」
 顔を真っ赤にしながら、ボソボソと話し出す。長身をブルブルと震わせているのを見ると、よっぽど屈辱的なことなのだろう。

「よく聞こえないよ、可南子ちゃん」
 そう言いつつ、私はポケットに忍ばせていたMD録音機のスイッチを押した。このさいだから、しっかり証拠を残しておこう。月並みだが、『このことをばらされたくなければ』と脅迫しちゃうのも面白いかもしれない。
「私、父に犯されたんです!!」
 と、可南子ちゃんが泣きそうな表情で言った。
 なるほど、リリアン育ちにとって、一番身近な男はお父さんだ。それにレイプされたのでは、全ての男に嫌悪感を示すのも無理はない。
「可南子ちゃん、それいつの話? どんなことをされたの?」
「そんなこと、思い出したくもありません」
「そうは言われても、もっと詳しく言ってくれなきゃわからないよ。それとも、嘘なの?」
 天使の祐巳ちゃんは『犯された』なんて想像できません、そういう設定でいくことにした。
 いつもの天然ボケフェイスで尋ねると、案の定、あっさりと引っかかってくれる可南子ちゃん。
「私が十三歳のとき……その時から私は背が高くて、胸も他の子に比べて大きかったんです。ある日、私が部屋で着替えをしていると、たまにしか帰ってこない父が入って来たんです」
 そういえば、可南子ちゃんはけっこう胸も大きい。ちょっとむかつく。
「私は出ていってと言いました。でも酒に酔っていた父は、いきなり私を押し倒したんです。私が抵抗すると何度も殴ってきました。抵抗をやめると、汚い手で私の体をまさぐって……うう……」
 あ、言葉に詰まってきた。ここからがいいところなのに。
 可南子ちゃんの腕をきゅっと抱きしめて、勇気をわけてあげることにした。簡単に勇気づけられた可南子ちゃんは、再び口を開く。
861名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:46:38 ID:AxOt+p6C
「父は私の下着をひきちぎり、自分も脱いで……ぺ、ペニスを私の中に……入れたんです。ただひたすら痛いということしかわからなかったんですが……お腹の中に熱いものが吐き出されたのは感じました」
 うわあ、中田氏。すごいねお父さん。
「それからというもの、母の居ないときには何度も犯されました。母がそれに気がついて離婚するまで、一年以上犯されつづけたんです」
「妊娠とか、しなかったの?」
「ええ、生理がまだ来ていませんでしたから……」
 おおう、生理前の実の娘に中田氏。いいなあ、うらやましいなあお父さん。
 私がそんな感想を心の中で述べていると、
「祐巳さま、男がどんなに卑劣な生き物かわかったでしょう!」
 拳を握り締めて、力説する可南子ちゃん。お父さん一人がどうだといって、男すべてが悪いということにならないのには気づいてないのだろうか。
 そんな当然のことを、今更言う気にはならない。
「うん、そうだね。男ってひどいね。可南子ちゃんが嫌うのも当然だよ」
 私の言葉に、可南子ちゃんは顔を輝かせて喜んだ。
「でも」
 私は素早く可南子ちゃんに近づくと、スカートの中に手を差し入れた。
 ショーツに包まれたヴァギナに、くいっと指を食い込ませる。
「ゆ、祐巳さまっ……あうっ!?」
 予想通りの反応を返してくれる、可南子ちゃんのあそこ。
「だったら、なんで可南子ちゃんのココはこんな風になってるんだろうね」
 可南子ちゃんの目の前―――そうは言っても身長の関係で口元あたりになるが―――で、愛液に塗れた指を晒した。指と指の間で、トロリと糸を引いてるのが見える。
「い、いやあっ!! 祐巳さまやめてください!!」
 悲鳴をあげる可南子ちゃんの下半身に、再び指を近づける。今度はショーツをずらして、直接指を入れた。
「本当に嫌だったの? もしかして、お父さんに犯されて感じてたんじゃない?」
「違うっ……違いますっ!!」

 ブンブンと首を振って反論する可南子ちゃんだが、ヴァギナはもう大洪水。長い脚に伝って流れ始めてきている。
「もしかしたら、最初からお父さんを誘ってたのかもね」
「そんなことっ……そんなことっ!! あああっ!!」
「お父さんのペニスをココに入れて……奥でドバっと熱いのを注いでてほしかったんだよね」
「違いますっ!! もう、もうやめてくださいっ!!」
 口はそう言ってもここは素直。使い古された台詞だが、つい言いたくなってしまう。
「今だって、男の人を見るたびに犯してほしいって思ってるんじゃないのかな?」
「言わないで……いや、いやあああ!!!」
 耳元で騒がれるのもうるさいので、クリトリスをプチッとつまんで止めをさした。
「あ、ああああっ!! ああっ!!」
 ガクガクと脚を震わせて、ダラダラと蜜を垂れ流す。いや、噴出す。
「あ、潮吹き。お父さんにちゃんとしつけられてたんだね」
「なんで……なんでこんな……」
 リリアンの天使に蹂躙されたのが、かなりショックだったらしい。地面に横たわったまま、愛液に濡れた下半身がまる見えになっているにも関わらず、すすり泣くように呟いている。
 はっきり言って、萌える。
「可南子ちゃんが素直にならないからだよ。本当はお父さんが大好きだったんだよ」
 そういいつつ、指を先膣口に入れた。イッたばかりの敏感過ぎるヴァギナには衝撃的だったのか、跳ね上がるように体を痙攣させる可南子ちゃん。
「お父さんのペニスにとは比べ物にならないだろうけど、とりあえず指で我慢してね」
「ゆ、祐巳さま……なにをっ!?」
 答える代わりに、指を三本挿入する。チュプッといやらしい音を鳴らして、奥まで吸い込まれた。
「ひゃうっ!!」
 指を出し入れするたびに、ブルブルと体が震えて蜜を噴出す。
「も、もう嫌ですっ……嫌っ!! イキたくないっ!! もうイキたくないんですっ!!」
「じゃ、我慢すれば?」
862名無しさんの次レスにご期待下さい:2006/04/24(月) 17:48:24 ID:AxOt+p6C
 そう言いつつ、可南子ちゃんの胸を揉みしだく。制服の上からでもムニムニと形を変えているのがわかる。これはいい。お父さんの気持ちがよくわかる。
「嫌っ、嫌ぁ!!」
 ちょっとうるさくなってきたので、もうそろそろ黙らせる。指を最奥まで挿入すると同時に、親指でクリトリスを潰す。
「嫌ぁぁああああっ!!」
 まるで男の人が射精してるみたいに愛液が吹き出てきたた。ビクンビクンと全身を痙攣させる可南子ちゃん。
「あ、あうう……」
 弛緩した表情で、可南子ちゃんがグッタリと倒れる。もう終わったとでも思っているのだろうか。まだ指は可南子ちゃんの中に入ったままなのに。
 指を二、三度出し入れすると、可南子ちゃんの体がまた痙攣しはじめる。
「そんなっ、まだっ!? もう嫌ぁ!!」
「じゃ。今度四本いこうか。もしかしたら、フィストファックとかできちゃうかな?」
「そ、そんな……」
 絶望したような表情の可南子ちゃん。私好みのいい顔をしてると思った。



 さて、これからどうしよう。
 祐麒でも呼んで、可南子ちゃんの相手させようか。そうだ、瞳子ちゃんとも仲直りさせてあげなきゃ。
 これからもやることがいっぱい。二年生って大変だなぁ。