「聞いてみようか。」
乃梨子はどこからか持ってきたイヤホンを可南子の耳に取り付けた。
『あんっ、志摩子さん…。』
『祐巳さんの‥‥今日も淫らに濡れてるよ。』
『いやぁ!言っちゃだめぇ…。』
可南子は脱力し、膝をついてしまった。
「どうだった?可南子さん。」
乃梨子は背後から可南子に抱きついた。
「乃梨子…あなたがお姉さまに頼んで、祐巳さまを犯したのですか?」
「犯したなんて…人聞きが悪いわね。あれは、祐巳さまが望んだ事よ。」
「祐巳さまは…そんな事をする人じゃ!」
「祐巳さまは皆から愛される人なのよ。それに…。」
「男の人にはそんな事はしないからね…。」
「女同士なら…良いと思ってるんですか?」
「想像できる?祐巳さまが花寺の生徒とそういう…」
「嫌っ!そんなの絶対嫌っ!」
「ふふふっ。可南子には耐えられないよね。祐巳さまが男と…」
乃梨子の言葉が出尽くす前に、可南子は乃梨子を突き飛ばす。
乃梨子はバランスを崩し、地面に倒れた。
「ご、ごめんなさい。」
可南子は怒りに任せて突き飛ばしたことを謝った。
「いいわ。でも…。」
乃梨子は可南子の耳元に寄ると、こう囁いた。
「貴方のことも…書かせてね。」
可南子は顔を縦に振った。