ネギま!ネタバレスレ93時限目

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735名無しさんの次レスにご期待下さい
 全体的に見て、小森霧の肉体は明瞭な曲線から出来ていた。
 例えば湯面近くの腰に注目すれば、しっかりと括れていて贅肉も少ない。前屈み気味の
体勢を取っていても、腰骨の左右にある窪みを見分けるのは実に簡単である。臀部の肉は
湯の中にあって直接見る事は出来ないが、腰のラインから推測する限り、肉付きはかなり
良さそうに見える。湯面からすらりと伸びた太腿も、蕩けるように柔らかそうだ。
 確かにその一つ一つを取り上げても魅力的ではある。だが糸色が最も注目したのは――
 太腿と、肩から二の腕にかけてのなだらかな曲線とで構成された三角形の内側に見える、
隠しようもなく張り出した霧の豊かな乳房だった。見るからに持ち重りしそうで、とても
糸色の手に収まる代物ではない。糸色の両手を使っても、包み込むのは難しいだろう。
 もっと胸の大きな女性はこの学校にも確かに存在する。例えば霧のクラスメートである
帰国子女の木村カエレだとか、あるいはSCの新井智恵だとか。
 けれども霧の乳房は形が良い。まだ十代という事もあって、重そうな質感にも関わらず、
綺麗な球形を描いている。
 艶やかな長い黒髪に男好みの肉体を惜し気もなく晒していた美少女を前にして、糸色は
己が少しずつ興奮してゆくのをはっきりと自覚した。

「――それより先生、どうしたんですか?いきなり私の部屋に来て」
 小森霧は木桶に座ったまま糸色へと向かい直す。両膝をぴたりとくっ付けてはいるが、
細い脹脛の隙間から覗かせる下腹部の茂みを糸色に見られてしまっている。
 その事に気付かぬまま、霧は長い前髪を掻き分けて嬉しそうな様子で糸色に訊ねた。
大きな瞳を輝かせた幼けない表情が、よく発育した肉体と不釣合いな印象を与える。
 糸色は眼鏡のずれを指で直して平静を取り戻した。どうせ茂みの奥の花びらは湯の中だ。
無理に覗こうとして好色な視線を霧に気付かれたくはない。それで糸色を嫌悪することは
恐らくなかろうが、彼にしてみればもう少し霧の裸を楽しみたいのだ。
 霧はそんな糸色の内心に気付く様子もなく、部屋片付けときゃよかった、と小さく呟く。
糸色は軽く笑いを浮かべ、本来の用件を切り出した。
「ここで寝かせて欲しいんですけど、構いませんか?」
 えっ、と霧は糸色の言葉に一瞬訝しんだ。戸惑いつつ彼女なりに糸色の言葉を理解する。
やがて前髪の下の肌が茹蛸のように赤くした。
「やだ、先生、その、あの――」
 あたふたと身じろぎしながら糸色の表情を確かめる。眼鏡越しに見える糸色の表情は、
真剣そのものであるように霧には思えた。
 ややあって、霧は黙り込む。
 口元に恥じらいを浮かべ、小森霧はこくりと小さく頷いた。

 風呂から上がるまで待ってと霧に頼まれ、糸色は畳敷きの上で時間を潰すことに決めた。
「別にただ冬眠させてくれたら嬉しいのですが」
 そう一人ごちて糸色は溜息を吐く。霧がどういう勘違いをしたのか想像するのは容易い。
 とは云え――
 糸色は霧の入浴する姿を堪能したお蔭で、すっかり興奮している。冬眠するどころか、
今夜眠りに就くのも難しいだろう。小森霧が女として彼に抱かれるつもりならば、糸色は
甘んじてそれを受けようと思った。
 衝立で区切られた向こう側で、肌を擦る音と湯を被る音とが交互に繰り返す。
 糸色は退屈凌ぎにと、少し色褪せたテレビの画面を漠然と眺める。あっと声を上げた。
 妖怪大戦争――それも元祖の方だ。霧の事だから神木隆之介君の登場するDVDばかり
観ていたのかと思っていたから、これは糸色にとっては意外な発見だった。
 画面の中でアブラスマシが身長の何倍も高く跳び跳ねる。ペルシャからやって来た悪魔
ダイモンの目玉を、アブラスマシが槍で切り裂いた。
 古びた映像は、糸色に彼の幼年時代を回想させる。
 チョウレンジャーのショーが見たいと家族に駄々を捏ね、長兄の縁に蔵井沢の屋敷から
後楽園まで連れて行って貰ったこと。ショーが終わった後、チョウレンジャーのブルーと
握手した上に、レッドから「のぞむくんへ」と自分宛てのサインまで貰ったこと。
 誰しも子供の頃は幸せな思い出に満ちている。その時が糸色の人生の峠だったのだろう。
峠を過ぎれば、後は斜陽族のように不幸への地獄下りが待っているだけ。それが人生だ。
 ――お金持ちは金持ちだ
 ――登り詰めたら、後は下り坂
 何に登場した歌だったか、と糸色は唄いながら頭の中で出典を探す。中々出て来ない。