重心のバランスを失い、私は向かいの一室に押し込まれた。ささくれた畳の上で尻餅を付く。
すぐにマリアと風浦さんが私の両脇を抱え込む。体育座りになったまま身動きが取れない。
「ちょっと何するのよマリア! 風浦さんもよ!」
風浦さんとマリアはきょとんと顔を見合わせる。私の言う事が信じられぬ、といった雰囲気だ。
やがて綺麗な四つの黒い瞳が、得体の知れぬ薄ぼんやりとした不安を覚えた私へと向けられる。
何って決まってるじゃないですか――風浦さんは忍び笑いと共に言い切る。
トモダチ――マリアはあっけらかんとした笑顔だ。
「私たち、友だちだもん。そうよねマリアちゃん」
ネー、と二人は声のタイミングを合わせて互いに頷いた。
「委員長とマリアちゃんも友だちなのよね」
「確かにそう言ったわよ!けど友達ならこんな所に閉じ込めたりしないでしょう?!」
脇を抱える彼女たちから逃れようと、足を畳の上でバタバタと泳がせる。それが拙かった。
スカートが捲り上がり、膝から太腿までが露になる。もう少しでショーツまで見られそう。
女同士だから恥ずかしがる必要はない筈なのだけれど、その時は何か嫌な予感を覚えた。
先生と深い仲になってから、私はこの手の細かい事に気付くようになった。
私の下半身を見つめる風浦さんとマリアの視線が、妙に艶っぽい。保健室のベッドで先生が
見せた、情事を予感させる熱い目付きにそっくりだ。
そんなまさか、という思いがまだ残っていた。女同士でするなんて、マリア先生じゃあるまいし――
流れるように自然な動きで、風浦さんの細い手が右足の膝頭に向かう。風浦さんはちょっと
拗ねたような声で言った。
「わあほっそりしてキレイな脚。いいな委員長スラッとしてて」
「止めて風浦さん!」
おぞっとした悪寒が背筋に走り、私は素早く右脚を伸ばす。風浦さんは動じる様子もなく、
そのまま膝の内側に触れた。あくまで優しく撫でる手付きが、却って不気味さを際立たせる。
「ムダ毛もないし、スベスベしてるわね。ホントに羨ましいな」
「止めてって言ってるでしょ! ねえマリア、風浦さんを――」
止めてくれ――と頼もうとして、私は息を呑んだ。目を瞑るマリアの顔が間近に迫っていたのだ。
固まってしまった私の唇を、マリアはちゅっと軽く吸う。
「トモダチ、だから仲良くスル」
にっこりと笑い、彼女はまた唇を吸った。啄ばむように二度、三度――
その間にも風浦さんの掌が、右足の皮膚を余すところなく丹念に撫で回す。
膝を持ち上げ、下げて逃れようとした。
いい加減くすぐったい。それに冗談にしても悪質過ぎて、南国のダジャレよりも笑えない。
キスの合間を縫うようにして、私はマリアの背後にいた風浦さんにも聞こえるよう訴えた。
「ちょっと止めてよ……二人とも……冗談は……止して」
途端にマリアの唇が強く押し付けられた。彼女の舌が、強引に私の口を抉じ開けようとする。
口が利けなかったので目で抗議したが、マリアは止めてくれない。
むしろ口付けは激しさを増すばかりで、くすぐったさのあまり私は身動きが取れなかった。
唇を解放して貰った後も、額やほっぺたに顎から鎖骨にかけてと休む間も無く責められ、
制服の上から胸を手で押され――