ネギま!ネタバレスレ93時限目

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676名無しさんの次レスにご期待下さい
「関内くん、関内太郎くん」
「ハイッ!」
 女の子の爽やかな返事が、教室の澱んだ空気を圧してこだまする。
 健康そうな褐色の肌に覆われた少女が、天使のような無垢な笑顔をして
出席を取る新井智恵先生に向かって手を挙げていた。
 汚れを知らなさそうな心身を包むのは、卒業生のお下がりらしき学校の夏服。
 生地の黄ばみは漂白されておらず、破れを繕う継ぎ当ては目立つように、
貧乏をそのまま絵にしたような格好をするのが彼女のたしなみなのだろう。
 もちろん、足を見ればソックスとも上履きとも縁のない、はしたない格好をしている。

 ここは二年へ組。
 新学年を迎えるに当たって編成されたこの学級は、もとは学年の問題児を
隔離するためにつくられたものだというもっぱらの噂である。
 校舎の西側。夏は西日が差し込んで暑く冬は日射量の不足で寒いこの場所で、
私たちは他のクラスと顔を合わせる事もなく鬱々とした気分で授業時間を過ごす。
 一年間通い続ければ誰もが筋金入りの人間不信に陥り、後の半生を絶望に
打ちのめされたまま過ごす生徒が合計三十二人揃って出荷されるという
全く有難くないクラスである。かくいう私、木津千里もその一人な訳だが。
 学年でもトップクラスの成績を誇り、身だしなみも素行もきっちりしている私の、
一体どこが問題児だというのだろう――

 そもそもこのクラスで出席を取る事自体が異常だった、と言えば驚くだろうか。
 担任の絶望先生――本名は糸色望、横書きにしたら由来が分かると思う――が
書き置き一枚を残して失踪したために、本来は授業を持たないカウンセラーの
智恵先生が仕方なく出席を取っているのだ。
 絶望先生はきっちり出席を取らない。国立N大の犀川先生みたいに自由闊達な雰囲気が
いいと風浦さんは言うけど、それは余りにもポジティブな物の見方だと私は思う。
 ここは大学じゃなくて高校だ。先生がきっちり出席を取らないのは問題だろう。
 実際、智恵先生もへ組の実態を知って驚きと呆れを隠し切れなかった。

 ともかく智恵先生は私たちの点呼を取った。普通のクラスなら当たり前の事だけど、
HRできっちり名前を呼ばれるのは新鮮な気分だった。
 日塔さんと常月さんを除く全員が出席していた。高校生なんだからきっちり授業には
出なきゃいけないのに、欠席者がいるとイライラする。
 それに日塔さんはともかく、常月さんがいない理由も私には気に入らなかった。
 あの粘着ストーカー女は――多分先生の後を追っているのだろう。
 先生と私は近々入籍する予定だ。両親を泣き落してやっと結婚の許しを貰ったのに、
あの女がいる限り私たちが結ばれる事はない。役所への入籍届出も式も、下手をすれば
先生との夜の生活まで妨害されかねないだろう。
 そんな事をつらつら考えている内に、冒頭で挙げた場面に移っていたという次第だ。