ネギま!ネタバレスレ93時限目

このエントリーをはてなブックマークに追加
667名無しさんの次レスにご期待下さい
『これは……賭けだ』
闇の中……一人の少年が奇妙な紋様の陣の上に立っている。
その右手の指には扉の装飾が施された指輪、左の手にはナイフを携えて。
『ARMよ誘え そして応えよ―― 異界の住人!!!!』
銀の刃が指輪の扉を封じる鎖を断ち、そして…光が解放される。
扉から溢れ出る純白は視界を埋め尽くし…巨大な光の柱となって闇天を貫いていく。

切実なる祈りと叫びを乗せて……

AKT.1/(PROLOGUE)KNOCKIN'ON HEAVEN'S DOOR

邪悪な魔王、導く妖精、そして……魔王に捕らわれ救いを求める姫君。
少年は平和を取り戻す為、目の前の力に手を伸ばす。魔王を打ち滅ぼす唯一なる手段。
その動作に迷いはなく…彼は聖剣を引き抜いた。……そして

静まり返る教室。
彼……虎水ギンタは定規を振り上げ机の上に立っていた。
そこには魔王も妖精も見当たらず、代わりに青筋を浮かべた教師が目に入る。
青空の下、チャイムと共に教師の怒号が学校内に鳴り響いた。

虎水ギンタは中学二年生。
運動神経はゼロ、視力両目0.1(ゲームのやりすぎ)。成績は中の下。朝礼の時は一番前に並ぶちびっ子だ。
その夢見がちな性格からかクラスメイトにいじくられる日々が続いている。
そんななか唯一ギンタに理解を示す少女・小雪。彼女はギンタの夢の姫君だった。
小雪は楽しそうに夢の話を語るギンタに微笑みチョコレートを渡す。
「たくさん食べて強くなろうよ!じゃなきゃその世界でも大変だよ!!」
ギンタは思う。強く…願う。一度でいい、その世界に行ってみたい…。
彼の見る夢の国……彼と彼女だけが信じるメルヘンの世界へ。

「 ん な モ ン ね ぇ よ バ カ 。 」
母に一刀両断にされるギンタの夢。童話作家もメルヘンの世界は信じない、それが現実。
しかし小学校の頃から同じ夢を見続け、今では日に二度三度と見るようになったその世界はそれでも胸を躍らせる。
こんな楽しいこともいつかは消えるのだろうか。
将来、大人になり今と違う自分になっていく。いろいろな事を考え、そのうちにこの夢も忘れていく……そんなのは、嫌だ。
ピーターパンシンドローム。子供のままで居たいと言う願望。ギンタはそんな自分を自覚し、自嘲にかられる。
「……なんてな。そんなトコロは無い。わかってんだ……」
小雪から貰ったチョコレートに手を伸ばす。
『でも―――信じてくれるコが一人いるんだぜ……!!』
そう、彼女が……信じてくれている。自分が望む世界を―――

―――――瞬間、脳裏に浮ぶ黒髪の少年―――――
突然周囲の光が消え、頭の中に声が響く。

気が付くと元の自分の部屋に戻っていた。
まるで何事も無かったかのように先ほどの異変の残滓も無い。しかしギンタは覚えていた…少年の声を。

『じきに……つながる……』