【久米田康治】さよなら絶望先生part18【マガジン】
┏┯━━━━━━━━━━━━┓ 狸のレンタル尻尾店では尻尾が不自由な動物に
┃│ ┃ 尻尾を貸しています。人間で言うとカツラ貸し店です。
┃│ ┃ ある日、一匹のネズミの少年がやってきました。
┠┤ し レ た ┃ 店長の狸は言いました。
┃│ っ ン ぬ ┃ 「お客さん、立派な尻尾を持ってるじゃないですか」
┃│ ぽ タ き ┃ するとネズミの少年は答えました。
┠┤ 店 ル の ┃ 「ほら、僕、体は白いけど。尻尾だけ黒いだろ……
┃│ ┃ 実は、僕、母さんが白鼠、父さんが黒鼠なんだ。
┃│ ┃ 混血なんだよ。でも、今度僕が通う学校は
┠┤ ┃ 純血の白鼠ばっかりなんだよ。だから……」
┃│ ┃ 狸は何も言わずに白い付け尻尾を渡しました。
┃│ ┃ それは白い細い筒状の物で、ネズミの少年は
┠┤ ┃ 自分の黒い尻尾をその中に通し、お尻の毛の中
┃│ ┃ に隠したベルトで固定。白い尻尾のできあがりです。
┃│ ┃ それから混血ネズミの少年は定期的に狸の店に
┠┤ 准 藤 久 ┃ レンタル料金を払いにきました。
┃│ ┃ この付け尻尾は非常に良くできていて、
┃│ ┃ 純血の白鼠のクラスメイトと全く同じ外見で、
┗┷━━━━━━━━━━━━┛ バレることはないそうです。
ところが、ある日のことです。
混血ネズミの少年が付け尻尾を返しにきました。
「もういらないんだ」
混血ネズミは泣きながらそう言いました。
「どうしたんです、お客さん」
「ちょっと油断しててさ……尻尾を止めるベルトを締め忘れて……
体育の時間に尻尾を引っ張られて……バレちゃったんだ……
だから、明日からは、この白い付け尻尾要らないんだ……」
店主の狸は何も言わずに付け尻尾を受け取りました。
翌朝のことです。混血ネズミは白い身体から伸びる黒い尻尾を丸めて
うつむきながら教室に入りました。
そこに待っていたのは……
黒い付け尻尾を付けた白鼠のクラスメイトたちでした。