日経キャラクターズ!5月号
週刊少年マガジン【新人作家の企画で漫画氏の基本に立ち返る】
「今、うちでは『はじめの一歩』が相変わらず強い一方、ラブコメ系も人気があって、『魔法先生ネギま!』
『スクールランブル』などの単行本が好調なセールスを記録しています。
そのほかでは、『ツバサ』や『エア・ギア』などがコアファンを獲得。『あひるの空』や『ゴッドハンド輝』などの
作品も比較的調子はいい。こう見ると、ジャンル的に広がりがあって、それはいい事だと思っています。
雑誌ってやっぱり”雑”の部分がなければメジャー誌にはなり得ませんからね。
その方向は守りつつ、編集者にも読者にもわかりやすい”マガジンらしさ”をどう見せるかということを検討
しているところです」(森田編集長)
「”マガジン”の良さって、現実と向かい合っていく部分だったと思うんです。『特攻の拓』や『湘南純愛組!』
『カメレオン』『GTO』などのヤンキー系漫画を連載したり、『金田一少年の事件簿』で加害者の動機にシリアスさ
を加えていたり。だから実写化される作品も多かった。最近はアニメ化を前提にしたような作品が多いですが、
あえてそんなちょっとしたリアル感を、もう一度入れてみたいなと考えています」(都丸副編集長)
「今後の編集方針の一つとして挙げられるのは、特別な事じゃないんですが、若い編集者が仕込んだ新人作家の
企画を強化していく事です。つまり、漫画誌のプリミティブなところに戻ろうと。読者はいつも新しい作家と
作品を求めていますから」(森田編集長)
週刊少年サンデー【1.5倍の熱さと本気のエンターテインメントを!!】
改めて今、少年誌のあり方を考えています。基本的な編集方針としては小中高生を読者の中心に据えて、下の層から
上の層までアピールできるようなもの。つまり、熱いエンターテインメント作品を送り出すことです。
ただ、時代の移り変わりとともに、理想のヒーロー像は変化していきます。その本質を見極めることが大切ですね。
おこがましい言い方ですが、連載20本のうちいくつかは、「生き方」を提示できるような作品を作っていければと
思います。今の「サンデー」では『金色のガッシュ!』や『MAR』などが幅広い年齢層に受けています。
4月からは『うえきの法則プラス』の連載と、前シリーズのTVアニメが始まります。最近では、他媒体とのコラボレーション
が読者層を広げるために重要だと感じているので、アニメには期待しています。
これまで『コナン』『犬夜叉』『ガッシュ』『焼きたて!!ジャぱん』などはアニメ化で認知度を高めることに成功して
ますから。次に狙うのは『結界師』『ワイルドライフ』『史上最強の弟子ケンイチ』などでしょうか。
僕は編集者にも作家にも、「頑張ってるだろうけど、”テンゴ”(1.5倍)熱さを加えて!」と言い続けています。
見たことも会ったこともない人を感動させるには、こちらが本気にならないとね。
最近は上品なイメージの作品が増えてますが、読者の心を揺さぶるようなエンターテインメント作品を作っていきたい
ですね。(林編集長)
週刊少年ジャンプ【うちの手法はシンプル、新人でヒットを出すこと】
『NARUTO』の勢いが止まりませんね。初版162万部で、第二部に入ってからも読者の人気は高いです。
あと『BLEACH』もアニメの影響もあって初版100万部目前。『アイシールド21』は4月からアニメ化されるので
今年はもっと伸びるでしょう。続くのが『銀魂』『D.Gray-man』『家庭教師ヒットマンREBORN!』ですね。
もちろん、4月から第二部に入る『DEATH NOTE』も。
雑誌は95年に653万部出してから10年間下がり続けていたんですが、去年はなんとか現状維持。部数減を
くい止めました。ただ、雑誌離れは止まらないでしょうね。でも、コミックは調子がいい。
結局、今の読者は好きなもの以外読みたくないんじゃないかな。そういう意味で、やることはシンプル。
新人の面白い新連載を載せていくだけですね。
既存の作品と新人との入れ替えは今まで通り。アンケート次第で10週打ち切りは変わりません。
次に欲しいジャンルは面白ければ何でもよくて、やっぱり第2の『ドラゴンボール』かな(笑)。強いて言えば、
男っぽい熱いドラマを見せる漫画ですかね。ただ、描く作家が少ない。今のはやりの絵柄って泥臭くない
シャープな線で、きれいなものばかりなんでね。
今年の課題も、とにかく新人漫画家でヒット作品を出すこと。
あとは読者の年齢が少し上がりつつあるので、6月くらいに低年齢層向けの増刊号を出す予定です。
そこで新人作家を見つけたいですね。(茨木編集長)
【最近のジャンプは勢いを取り戻した?】
「週刊少年ジャンプ」の黄金期は前人未到の653万部に達した95年。当時と比較して、04年は297万部と
雑誌の部数こそ落ちているが、連載作品のコミック総売上は過去最高を記録。
『ONE PIECE』の初版225万部を筆頭に『NARUTO』『HUNTER×HUNTER』、さらには連載開始間もない
『DEATH NOTE』までが初版100万部を突破。『BLEACH』も80万部以上。続く『D.Gray-man』『銀魂』
『アイシールド21』も50万部目前。
各連載作品の初版部数だけを見ても、最強の布陣であることが分かる。
【ジャンプ・コミックスの初版部数は大きい?】
人気作品ともなればその初版部数は圧倒的に大きい。だが、連載打ち切り作品や新人の第一巻となると、
部数は絞られる。実は、大ヒット中の『D.Gray-man』は6万部、『銀魂』は最低部数の3万部からそれぞれ
スタート。ジャンプコミックスの部数はアンケートの順位などを分析して編集部と販売部で慎重に設定
されているのだ。
【連載を継続するか打ち切るかの基準は?】
基本的には各漫画誌とも読者アンケート票の結果を頼りに決定する。
「少年ジャンプ」は10週目までのアンケート結果至上主義。逆に、「少年サンデー」は編集長とアンケート、
単行本の売れ行きなどの総合的に比較的長いスパンで見る。
「少年マガジン」は編集部全体で明確な基準は設けておらず、二誌の間のスタンス。
【漫画の連載は昔から長かった?】
現在は編集部の事情もあり人気作品は長期連載傾向に。
【漫画家同士は交流があるの?】
一般に漫画家同士の交流関係は、担当編集者が同じことから仲良くなったり、編集部主催のパーティーで
知り合って意気投合したりするケースが多いようだ。
このほか、師弟関係というのもある。例えば、北条司氏の下では井上雄彦氏がアシスタントを。
偶然の出会いもある。『サイコ』の田島氏は、『DEATH NOTE』の小畑氏と友達。
「以前、偶然にもマンションの上と下の部屋。大家さんに”上の人も漫画家なんですよ”とか教えられてから
仲良くなって(笑)」その後、浅田弘之氏も交えて、3人で漫画を描いたこともあるらしい。
【魁!!クロマティ高校は本当に人気ある?】
12巻累計400万部突破。”ショートギャグ”は売れないというジンクスを打ち破った。
「週刊少年マガジン」のアンケートでは「面白くない漫画」第1位を記録。だが、実は女性を中心に隠れファン
が多数存在しており、単行本1巻は強気の10万部スタートも即完売。最終的には60万部を越えた。
「今後どうなるかは本人のやる気次第ですね。作者の野中さんは、基本やる気がない人なんで(笑)」
(編集部・三浦氏)