【MAR】死刑執行中・アニメ化進行中

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79メルヘブン戦記1/5
663 名前:名無しさんの次レスにご期待下さい 投稿日:04/03/17 01:55 qqzIe+yQ
>>604
>擁護派さんの言う('A`) マー の世界は、向上心や教訓といったものが存在しない?
>それもあたりまえか、作物が一晩で育ち、わずか数時間の訓練で数段実力が上がる。
>そんなんじゃ努力する喜びや達成感を味わうことが出来るわけがない。
>人々はだらけきった他力本願どもばかりで、この先なんの発展も望めない世界…と

これ読んでふと思いついた。




かつてダンナと呼ばれた男は絶望の中に居た。

とてもとても深く暗く虚しく。


(俺達はなんの為に戦ったんだ・・・)
地獄のような死闘、
多くの仲間たちがメルヘヴンの為に戦い、
傷つき、死んだ。
そして自分は最強の敵と戦い勝利した。世界は平和を取り戻した。

だがチェスは滅びてはいない。
いずれ同じ事が繰り返される、
それは火を見るより明らかなことだ。

にもかかわらず、世界はただひたすらに平和だった。
まるで次にチェスが現れても、自分達には何の関係もないかのように。

そう、まるでダンナのような英雄が再び現れて、
自分達を救ってくれるに違いないと確信しているかのように。
いや、確信ではないだろう。
それは彼等にとっての真実なのだ。
ただ自分達にとって都合が良いだけの真実。

だから彼等は努力しない。 戦う勇気を持とうともしない。 困難に立ち向かう意志すらない。
80メルヘブン戦記2/5:05/02/04 18:42:44 ID:2Jha1T5p
そんな彼等に発展などありえない。
発展のない世界には歴史はない、ただ時間だけがそこにあるのだ。

ダンナは思う。
ファントムとの決戦の最中、彼の口からもたらされたチェスの真の目的を。

 「危機がなければこの世界の人間は永遠に腐ったままだ。
 チェスの駒は惰眠を貪る愚かな大衆を目覚めさせるために戦うのさ。」
 だからチェスは容易に世界を支配することも滅ぼすことも可能な力を持ちながら、
 「ウォーゲーム」などという下らない戦争ゴッコを始めた。
 その戦争ゴッコを通じて、大衆が戦う意志に目覚めることを期待して。
 眠った人間にナイフを付きつけ、いつ起きるかを今か今かと待ち望む者、それがチェス。
 
 ・・・だが、その試みも無駄だった。
 大衆は相変わらず他力本願の権化でしかなく、
 各国の指導者達もただ利益を貪るだけの亡者でしかない。
 チェスもクロスガードの仲間達も所詮は無駄死にでしかなかったのか。

 (ちがう、そんな事はない。あいつらの死を無駄にはさせない。)

 「だから俺が目覚めさせてやる」

 (だが)

だが、それでもなお目覚めないのであれば?
ダンナと呼ばれた男は仮面の下で呟く。

 「そのときは、死ぬだけだ。」


こうして第二次メルヘヴン大戦の幕が挙がった。


 ――――――――

けどギンタいらなくね?

 ――――――――

うああ、667の何気ない一言でまた妄想が広がってしまった。

 ――――――――

   向上心も何も無い他力本願な人々=ギンタ
   夢ばかり見てないで現実を見ろと説教する小うるさい大人=チェス
   つまり作品のテーマとしてはギンタはメルヘヴンそのものを写す鏡であり、
   ギンタが一人の大人として自立していく過程をメルヘヴンの成長と共に描いた超大作
81メルヘブン戦記3/5:05/02/04 18:43:31 ID:2Jha1T5p
ウォーゲームを大した苦戦もせず、次々と勝ち抜いていくメルチーム

そしてファントムとの決戦。そこでギンタは彼から衝撃的な事実を告げられる。

世界中のほとんどの人間が、自分では何もしようとしない屑である事。

かつてのメルヘヴン大戦の教訓がありながら、それを全く生かせなかった事。


 「この世界の住人は腐りきっている。
 だから僕達は彼等を目覚めさせる為に、
 ウォーゲームという名の戦争ゴッコを始めたのさ」

 「ふざけるなファントム!たとえこの世界が、
 他力本願な人ばかりだとしても、苦しめて殺して良いはずがない!!」
 「それが良いんだよ。だって放っておけばみんな死んじゃうんだからね」
 「え?」

 「なんで魔力が“魔の力”って呼ばれるか知っているかい?
 それは世界を滅ぼす力だからさ。そして魔力の源は想像力。
 ・・・キミがとても強く秘めているものだ。」
ファントムの言葉がただ淡々と綴られてゆく。
 「元々、このメルヘヴンは人々の意志が支えている。
 それも何かを己の力で成し遂げようという前向きな意志だ。
 だが想像力は、ただ努力無しに結果だけを求める妄想に過ぎない。
 でもそれを力としてしまう道具が生まれた。≪ARM≫というね。」

 「だからなんだって言うんだよ。」
 「このARMが発端かどうかは解らない。ただこのメルヘヴンでは、
 徐々に自分の力で何かを成し遂げようとするものが減っていった。
 人々は想像するだけで何もしなくなった。そうしたらこの意志で支えられた世界はどうなると思う?
 答えは単純、滅びるのさ。」
 「・・・!」

「今はチェスのキングがその強い意志で世界を支えている。
 でもそれもそう長くは無い。だから僕達は劇薬である事を知った上で・・・
 このメルヘヴン大戦を起したのさ。」
 「そんな・・・」
うなだれるギンタ。

 「そしてキミは他力本願な、自分では何もしようとしない人々の妄想を支えるものだ。
 キミが居るから大丈夫だと皆が思う。自分はただ見ているだけで良いと無意識に感じる。
 そんな甘ったれた考えこそが世界を滅ぼすんだ。つまりギンタ、キミは・・・世界を滅ぼす癌なんだよ。」
 「う、嘘だぁぁぁ!!」
 「いや、本当さ、キミは世界を滅ぼす癌だ。・・・かつての俺と同じようにな。」

そう言って仮面を外すファントム。
そこにはかつてトムと名乗った少年の顔が。
だがそれはすぐに歪みギンタの良く知っている顔へと変化する。

 「お、親父!?」

82メルヘブン戦記 4/5:05/02/04 18:44:21 ID:2Jha1T5p
 「久しぶりだな、ギンタ。
 相変わらず夢ばっか見て現実を知らねぇ馬鹿息子。
 昔の俺を見ているようで虫唾が走るぜ。」


  もはや勝敗は決していた。
  確かにダンナの力は圧倒的だった。
  だがそれ以上に、ファントムが実の父だった事、
  英雄気取りだった自分が実は世界を滅ぼしかけていた事、
  それらがギンタに重くのしかかり満足に戦う事も出来きなかったのだ。


当然のように、ギンタは無残にも敗れた。
だが、ファントム=ダンナはギンタを殺さなかった。
呆然とただ呆然と地に賦すギンタ。
そして絶望に浸るメルチームの仲間達。

そして、再び開始されるチェスによる殺戮。

その惨状の中、メルヘヴンの住人の怒りはギンタとその仲間達に向けられた。

逃げるように散り散りになるメルチームの仲間達。

  ドロシーとアランはそれぞれ行方を晦まし、
  ナナシはメルヘヴンの現状に絶望して盗賊団を再結成し略奪の限りを尽くす。
  ジャックは母親がメルチームの人間の親だというだけで、
  近隣住人に嬲り殺しにされたのを機にチェスへと下る。
  アルヴィスは呪いの進行に耐え切れず半ば廃人となり、
  辛うじてアランの手回しで素性を隠して隠遁。
  スノウとガイラはその世話をしている。

そしてギンタは、ただ目的を失い、ボロを纏って放浪を続けていた。

今まで自分を英雄ともてはやしてきた人々。
ただ一回の敗北でその人々から石をもって追われる日々。

そんな中で荒んでゆくギンタの心。
だが、わずかだが、ほんのわずかだがそんなギンタを暖かく迎える人達が居た。


何の見返りを求めることなく、具の入っていないスープを痩せこけた手でよそってくれた老婆。

民衆に暴行を受け、成すすべも無いギンタを自分の店に匿ってくれた雑貨屋を営む中年男。

メルの人達を見習って皆で団結してチェスを倒そう、そう言って街頭で演説するひ弱そうな青年。

彼等が凍てついたギンタの心を溶かし、救う。

83メルヘブン戦記5/5:05/02/04 18:45:12 ID:2Jha1T5p
再び、単身チェスへと挑むギンタ。
だが彼の身にかつての想像力は無く、その力は貧弱だった。
それでも挫けず、諦めず、前に進むギンタ。
挫折は彼を本当の意味で強くしていた。

そして遂にチェスの本拠に辿り着くギンタ。
だが其処で待ち構えるナイト達の力は圧倒的だった。
想像力と言う名の妄想を失ったギンタには成すすべも無い。
そう、そんな都合の良い力はもう存在しないのだ。まさに絶体絶命。

だが、そのとき無数の民衆がギンタを庇うようにチェスの前に立ちふさがった。

絶望し、苦悩し、自分を信じられなくなって、
それでも前に進もうともがくギンタの姿に、ただ他力本願で全ての責任を、
メルチームに押し付けていた人々が変わり始めたのだ。
まるでギンタの成長に呼応するかのように。

民衆の怒り、数の力、次々と倒れてゆくナイト達。
もう彼等はかつての他力本願な大衆ではなかった。
自分の力で未来を切り開こうとする力ある勇者達だった。

そしてファントム=ダンナと対峙するギンタ。

 「ギンタ・・・お前は俺が出来なかった事をやってのけたんだな。」
ダンナの顔に満足感が浮かぶ。

そして最終決戦。ギンタの一撃がダンナに決まる。
 「ギンタ、大きくなりやがって・・・・もう、餓鬼扱いできねぇな・・・なぁ、
 元の世界に帰ったら・・・アイツに済まなねぇってつ・・・た・・・ え・・・」
大量の血の海に倒れ賦すダンナ。ギンタは自らの両の手をかざす。
その手は、血まみれだった。

 「親父、これが現実なんだな。」



そして元の世界へと帰るギンタ。

自分の部屋にあった多くの本を空き地に持ち出し、火にくべる。

一緒に来た小雪が尋ねた。

 「燃やしちゃっていいの?
 童話とか漫画とかゲームとかライトノベルとか同人誌とか、
 ギンタが大好きだったものばかりじゃない。」
 「良いんだよ。もう物語の世界は必要ない。だって俺は・・・」

空を眺める。
そこには輝く太陽が。
そしてメルヘヴンで経験した多くの出来事が走馬灯のように蘇る。

 
「だって俺はこの現実の世界で生きていくんだからな!!」


-完-

長い間、ご愛読有難うございました。