伝説の頭“翔”を真面目に語るスレ 15

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 「翔の単行本を見たよ」
 刃森は黙っていた。
 「俺さ、考えたんだけど、君、打ち切る気はないか」
 「なぜ」
 「なぜって、まだ随分ながく連載を続けたじゃないか。もう充分だろう」
 「まだ、やりたいことをやりかけぜ・・・!?。編集だってこれからだといってくださるんだぜ・・・!?」
 「誰だ、その編集ってのは」
 「“ ”と!?の編集だぜ・・・!?。昨日、話したじゃないか(ギリビキ」刃森は今度は怒ったように言った。「講談社を支える一流の編集者だぜ・・・!?。マガジンで彼に担当して頂いているのは俺一人だぜ・・・!?」
 私は思わず、自分たちの周囲をもう一度みまわした。相変わらず異様なBIKEIばかり描く女や、他誌の漫画をパクってる男たちが幾十人も編集部のなかを右往左往していた。
 これらは屑だ。どれもこれも漫画家のなかで自分だけは才能があると思い、沈んでいく連中だ。刃森も今、このマガジンの歴史の中でその一人になろうとしている。
 「でも、こんな連中みたいになったらお終いじゃないか」
 私は自分のトゥイードのコートに眼を落とした。だが刃森は負けずに、
 「たとえ、そうなったって……生きることって結果ではないじゃないの・・・!?。糞漫画だって自分がいいならそれでじゃないか・・・!?」
 「だがな、この連中を見ろよ。惨めだと思わないかい」
 この編集部にまで来て刃森と争いたくはない。ただ、これら男女が、しゃべったり、懸命になったり誠実に生きても、漫画の残酷な世界では立派なものを生むとは限らないと刃森に言ってやりたかったのである。
 だが言葉はうまく口からは出ずにそれは別の結果を彼に及ぼしたらしい。
 「わかったぜ・・・!?」刃森はまばたきもせず黒い大きな眼で私をみつめて、「だから豪ちゃんは打ち切られたんでしょう・・・。豪ちゃんはなにか報われなければ嫌だったんでしょう・・・!?」
 「よそうよ、喧嘩するのは」
 私は原稿を手にとった。刃森の言っていることは半分は正しい。七年前、私の片半分は安易さを捨てろ、もっともっとこの業界に一人で止まるべきだと囁いていた。
 それに耳を塞いだ私はあの講談社の雑誌の連載を喪い、かわりにこのトゥイードのコートをえた。