非常に遅くなりすぎました、スイマセン。では――
武藤カズキが人間でいられるタイムリミット―28日(推定)―
所は横浜市 山下公園
携帯を何度もリダイヤルする剛太。しかし一向に繋がらない。
「くそ!どうなってんだ あれから一週間全く以て連絡がつかない!」
《本当に大丈夫か 先輩… いや心配なのは先輩だけじゃない こっちも――》
剛太の手には真っ二つにちぎれた銀行の封筒入り軍資金。
《やってくれたぜ 犬飼のヤロウ》
手持ちの金でなんとかたどり着けたけど、もう残り少ないしこのままじゃ…
と思案に暮れる剛太をよそにおやつの買い出しに行っていたカズキ。
「言ってるそばから無駄遣いしてんじゃないッ!」
「しかも俺の苦手なモノがいっぱい!」(とりあえず青汁は苦手なようです)
「ゴメン でもホラ、腹が減っては戦は出来ないっていうし」
と悪びれた様子もないカズキ。
「そんなに腹が減っているならいっそ ちょいちょいとエネルギードレインすればいーだろ」
相変わらず敵意丸出しの発言にカズキの表情も真剣になり―
「冗談でも 怒るぞ」
《……》なにか、思う所のありそうな剛太。
「オマエさ」「ん?」「もし運良くヴィクター化を阻止出来たら」「たらってなんだよ」
「出来たら 錬金戦団の戦士に戻る気か 一度自分を殺そうとした者達と本当に共に戦えると思っているのか?」
「…… 少なくとも… 同じ気持ちを持っている人達とは戦える」
「守りたいモノが同じならきっと必ず 戦友になれる!」
そこでカズキの携帯が鳴り出す。もちろん、相手はパピヨン。
奴の現在地は横浜中華街。「暑い中で食べる肉まんってのもなかなか乙だね♥」
うるせェ知るか!ンなコトより先輩は!?斗貴子さん!?と騒ぐ連中に
斗貴子さんは大丈夫だ、変わりないと御前様の上から応答。すかさず御前様が
「リカちゃん人形のお洋服着てる以外はな」とツッコミ、桜花も巻き込んでの口喧嘩に。
「なんで今まで連絡を断ってた!答えろ!」剛太がパピヨンに問い詰めるが
パピヨンは肉まんを頬張りながら「ふぇつにぃ」
「強いて言えば電話かけられるのは嫌いなんでね」と軽くあしらう。
軽くキレかける剛太から電話を代わってもらうカズキ。
「そろそろいーだろ蝶野 オレを先に進ませろ」
明朝、外国人墓地で合流し、すぐにニュートンアップル女学院に向かうことで話がまとまる。
「ちょっと待った なんで今すぐ合流しない!」
「今夜は美味しい中華に舌鼓を打つ予定なんでね」そう言って電話は切れた。
「腹が減っては戦は出来ない ってね」
一見人を馬鹿にしているかのようなパピヨンの言動だが、
どうやらただの気まぐれでは無いらしい事に斗貴子さんは気付いていた。
「元々貴様は不治の病を固定した不完全なホムンクルス
LXEとの決戦で受けた大ダメージは二ヶ月で治せても充分な体力回復に至るには及ばなかった」
「ようやくやっと七・八割方回復したところだろ!」
斗貴子さんの指摘に不適な笑みと吐血で答えるパピヨン。
「なかなかどうして ちょっと見直したよ」
「でも ここの中華を味わいたいってのもホンネだけどね」「うーん目移り♥」
相変わらずの言動に呆れる斗貴子さんだが「人喰いだけは絶対に許さない」と釘を差すことも忘れない。
しかしそれに「今は人喰いより中華なキ・ブ・ン♥」と答えたパピヨンに斗貴子さんは違和感を覚える。
それを察した桜花から通信が入り、どうもこのところのパピヨンは人喰い衝動が薄れているらしいことを告げた。
「少なくともこの二週間一緒に行動して そういう素振りは一度もなかったのよ」
《どういうコトだ?》
《人喰いはホムンクルスの絶対的習性 現にコイツは誕生の際に20数人喰らっている
なのに これは一体 コイツは一体――》
《どういうコトだ!?》