詳細投下します。
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机に向かい、せっせと原稿に筆を走らせる八雲。播磨は座ったまま眠っている。
チラッと時計に目をやると、すでに18時30分に差し掛かろうとしていた。
「姉さん・・・・・心配してるだろうな・・・ゴハン食べてるのかな・・・」
その頃塚本家では――――――天満が笑顔でお茶碗をチンチン叩いていた。
ガバッ、と突然播磨が目覚めた。携帯で時間を確認し、青くなる。
焦る播磨に、八雲はここまでやっておきましたと原稿を差し出した。
「お!! ああ! スゲー!! スマン妹さん!!」
八雲に感謝を示した後、とりあえず妹さんは楽にしててくれ、寝ててもいいよと、播磨は一人で原稿に筆を入れ始めた。
必死にペンを走らせる播磨の前で、八雲は単語帳をめくっていた。
時計の針が19時30分を回った頃、
その頃塚本家では――――――天満が俯いて激しくお茶碗をチンチン叩いていた。
播磨のマンションの方でも、八雲がそろそろ帰・・・・と言いかけたのだが、
「どう考えても締め切りに間に合わねえ―――――――――!!!」
原稿を勢いよく数え始め、そして絶望したように叫ぶ播磨の声にかき消された。
床に両手をつき、打ちひしがれている。
「ちくしょう・・・・俺の”愛”はこんなところで終わるのか・・・・」
「そんな・・・・最後まで・・・・がんばりましょうよ」
八雲が、そっと声をかけた。
しばしの間。無言だった播磨が、絞り出すように声を出した。
「・・・妹さん・・・・こんあコト頼めるわけでもないし、嫌だったら断ってもいいんだ・・・・・」
播磨が、深深と八雲の前に頭を下げる。
「今晩・・・・泊まっていってくれ!!」
「え・・・・・・・・」
八雲の頬が、わずかに染まった。
その頃塚本家では――――――天満が俯いてものすごい激しくお茶碗をチンチン叩き―――――
「ヤーーークーーーーモ・・・・・・・・」
力尽きてパタッと倒れていた。
再びマンション。
「俺を・・・・俺を男にしてくれ!!」
「・・・・・・・・・ハイ」
八雲は、静かにその言葉を受け入れた。
「あ、ありがとう妹さん!! イヤ 妹サマ!!」
感極まった播磨が立ち上がって八雲の両腕をガシッと掴んで立ち上がらせた。
一呼吸置いて、扉の方にチラッと目を向ける。
播磨がガチャッと扉を開けると、予想通り、そこには正座した絃子がコップを扉に押し付けて盗み聴きをしていた。
「じゃ、そーゆうコトだから」
播磨が声をかけると、絃子はそのままの体勢でコクコク頷いた。目は虚空を泳いでいた。
その頃塚本家では――――――天満が自分で作ったマグロカレーを前に、じっと八雲の帰りを待っていた。
マンションでは、播磨のところに泊まる事にした八雲が、姉に電話をかけようとしていた。
ふと、視線を横に向けると、播磨が八雲にごめんねっ妹さん!と謝りながら必死に原稿を描いている。
『大丈夫・・・・ちゃんと説明すれば・・・・』
そして押された発信ボタン。3コールの後、電話はすぐに塚本家に繋がった。
『八雲! どーしたの!? こんなに遅くなるなんて!?』
マグロカレー作ったから早く帰っておいでという天満。そして、何時ごろ帰るのかを聞いて来た。
「あ・・・・そ、それは・・・えっと・・・・じ・・・・じつは・・・・今日・・・・その・・・・・泊まる事になって・・・・・」
コトがコトだけに、いささか歯切れが悪くなる八雲。だったが―――――――
『え? 泊まる? ひょっとしてサラちゃん家?』
「え・・・・あ・・・・う、うん・・・・・」
『やっぱり!? そーだと思ったんだ! 2人で試験勉強するんでしょ!?』
「え・・・・そ、そう・・・・」
天満の誤解を否定する事無く、それに乗じて咄嗟に嘘をついてしまった。
おそらくは、姉に対しての生まれて初めての嘘。
その後、しばらく通話をした後、天満はしっかり勉強するのよと言ってから通話を終えた。
「・・・・・・・・・ごめん・・・・・姉さん・・・・・・」
そして、播磨の部屋で二人の作業が始まった。
その頃笹倉邸では―――――――
「え〜〜〜〜えっとさ・・・・フロのカマが壊れて・・・・・」
絃子が葉子の家のチャイムを鳴らしていた。