からくりサーカス 第67幕

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機械仕掛の神 第5幕惨劇

リーゼ達とドクトルラーオ。三牛親子とフラッシュジミー。
しろがねとワイルド・ウェスト・ジェーン。それぞれが対峙している。
そして仲町、ノリ、ヒロの場面。
「フ、フサエ・・・」
狼狽する仲町。
「?」
だがノリとヒロはしっくり来ない。
自分達の記憶にあるフサエと格好は勿論のこと、顔、何より表情が違う。二人は思う。
(オフクロって・・・)
(あんな冷たい顔だったっけ)
「あら、人間が三人かと思ったら・・・あなた、まだその任務から開放されてなかったんですか」
フサエの姿をした自動人形が言う。
「?」
仲町は困惑した表情を見せる。
「Leve-toi(起きなさい)」
フサエがそうポツリと呟いた途端、ガガガガガガッッと大きな音が辺りに鳴り響く。
「な、なんだこの音!」
「うるせぇっ!」
ノリとヒロが思わず耳を塞ぐ。ふと見るとその音は仲町の体から発せられている。
「え!?」
「オ、オヤっさん!?」
ピタッと音が止んだ。そしてクルリと振り返った仲町の表情は
フサエと同じようにとても冷たいものだった。
「かつて人のサーカスを研究する為に、人間の記憶を埋め込まれ、
人間としてサーカス団を立ち上げることを命令された自動人形がいたわ。
それが私と彼。メディアとデラルテよ」
「随分長いこと眠ってたような気がするぜ」
首をゴキゴキならすかつて仲町だったモノ。
「な・・・何言ってんだよオヤっさん・・・」
「意味わかんねーよ・・・」
汗だくで目を白黒させているノリとヒロ。
「わかる必要もねぇ」
「あなた達はここで用無しだから」
その二体の自動人形の瞳にはそれぞれ、かつて息子と呼んだ人間の姿が映っていた。

暗転
場面変わって対峙するしろがねとワイルド・ウェスト・ジェーン。
「じゃあ行くわよ」
ジェーンはそう言うやいなや目にも止まらない速さでライフルを構え、そのまま引き金を引く。
さらにほぼ同時に数本のナイフも投げる。残像を残してゆらりと弾とナイフを避けるしろがね。
避けられた銃弾がしろがねの後ろにいた一体の自動人形の脳天を貫く。
「ガ・・・ギ・・・」
「あらあら、あっさり避けてくれるわねぇ。・・・でもいいのかしら?」
ジェーンが流し目でしろがねに言う。その瞬間銃弾を食らった自動人形が大きな爆発を起こす。
「!」
その炎はたちまち近くの家の屋根に燃え移った。
「この銃弾特別製でさー、あたし達の擬似体液が大量に付着すると・・・激しく燃え上がるのよ」
(まずい!火が燃え移っていったら・・・)
焦るしろがね。そのままあるるかんを繰りつつ燃える家に向かおうとする。
「どこ行くのさっ!」
ジェーンが再びライフルを構えたその腕にガキッと刺さる一本のナイフ。
「!?」
「あんたはこのヴィルマさんが相手してやるよ」
近くの家から出てきたヴィルマ。その手には何本ものナイフが握られている。
「一つ質問に答えな」
サングラスの奥からするどい目を覗かせてヴィルマが言う。
「あんたがアメリカにゾナハ病をばら撒いたってのは本当かい?」
無言のまま腕に刺さったナイフをジッと見るジェーン。
そしてそれを抜いたと思うやいなや、そこに握られたナイフは既に五本に増えている。
「ゾナハ病にかかった人間ってすごくいい表情で泣くのよ。
あんなに興奮してゾクゾクしたゲエムはなかったわぁ〜。それがどうかした?」
ナイフを構えたまま答えたジェーン。
そのセリフを聞いたヴィルマはうつむき加減に呟く。
「そうかい・・・。しろがねに付いてて正解だったよ。あたしゃついてるね」
再びサングラスから覗く瞳。
「弟の仇をこの手で!!」
それは先ほどとは違い、獲物を見つけた獣の目であった。

そして場面変わって閉じ込められたままの勝。
「うーん!うーん!!」
必死でつっかえ棒をのけようとするグリュポン。
ドカッ
「開いたー!!」
グリュポンが棒をはずすと同時に飛び出す勝。それに当たって転がるグリュポン。
「しろがねは!?」
ダッ
地面に落ちたグリュポンを見る事もなく勝は慌てて駆け出していった。


広がる平原。

そこはとても静かな空間だった。

燃える黒賀村の家々が空を紅く染めている。

呆然と立ちすくむ勝。

「おじさん?」

紅色の背景の向こうから歩いてくるのは3体の自動人形。
フラッシュジミー。メディア。そしてデラルテ。

メディアは踊っていた。
フラッシュジミーは他の二体の姿を写真に撮っていた。
デラルテの姿は団長だった頃の汚い姿ではなく、
黒い道化師風の衣装に身を包んでいる。
それはかつてドットーレと呼ばれた自動人形が
身に着けていた物と同じ。

そしてその手には−


三牛親子とノリとヒロ。
4つの首がジャグリングされていた。

(煽り:二百年前の悪夢再び!!)

つづく