Page.40 「仲間」
捜査本部ビル
L「私は一人でもやっていけます。そして…
必ず警察にキラの首を土産に皆さんに会いに行きます」
月「竜崎 僕がいる限り一人という事はない。この約束もある」
ジャラ、と手錠を見せる月
L「そうでした
夜月くんはキラを捕まえるまで行動を共にしてもらいます
しかし他の皆さんは警察に戻られた方がいい…」
捜査陣(……)
父「竜崎 この事件には警察の協力が必要だと言ってくれてたじゃないか」
L 「言いました
しかしそれは夜神さん達が残った事で私と警察が切れずにいた事と
警察が組織としてキラには従わず逮捕を望む姿勢でいた事が協力となっていたんです
さくらTVの時のように…
しかし警察を辞める二・三人の一般人の協力は警察の協力ではありません
そして警察はキラを捕まえないと決めたのですから
もういいです」
捜査陣「……」
父「た…確かに警察でなくなる我々ではたいした力にはなれないかもしれない…
しかし…
私達の気持ちはどうなる?
これでもここまで本当に命懸けでやってきたつもりだ
警察を辞めここでキラ捜査を続けるか 警察に戻りキラを追う事を諦めるか
それくらい自分で決める権利はあるはずだ」
L 「………そうですね
ではどちらにするか決めてください」
相沢「……… し…しかし局長…
正直警察を辞めたら無職になるって事ですよ…
キラを捕まえられたとしてもその先どうするんですか?
松田の言う様に私や局長には妻子がある…
私には…とてもそれを犠牲にしてまで…」
父「先か…
考えていないが…キラを捕まえたその後は…」
父、爽やかな笑顔
父「再就職だな」
相沢・松田・模木「………」
松田「決めました!!僕も警察辞めて局長達とキラを追います」
相沢「松田…」
松田「せっかく僕の調べた事が役に立ってヨツバが怪しいって思えてきた。
ここでやめたくないし、僕にはミサミサのマネージャーって仕事もあるから
無職にはなりませんよ…はは…
元々コネで入れた警察庁だしもういいっすよ。親達はガッカリするでしょうけどね。
それにこれでキラを捕まえられず警察に戻ったら負け犬って気が…」
父「松田 言葉に気をつけろ」
松田「!?」
俯く相沢
松田「あ… 相沢さん…」
相沢「竜崎 警察に戻り空いた時間に協力するというのでは?」
L 「……駄目です 警察に戻るならもうここには来ないでください
もはや警察の人間は敵だと思った方がいい状況ですから…」
相沢「……………………
そんな…。今まで通りここにいようが警察にいようが秘密は漏らさない
いや…こんな形で警察庁に戻れば最初の捜査本部に居た者達から
Lのスパイという目で見られるだろう…
それなら開き直って警察の動きを観る者をこっちから一人置いたと考えれば…」
L 「警察に戻り警察の方針に従い一人でキラを追うのは自由です
何か知らせたい事があったら夜神さんにでも電話して伝えればいい。
それも自由です。しかしこっちの情報は絶対渡しません」
相沢「……………………
そうだな…竜崎の言う通りだ… ここの情報は絶対に外に出しては駄目だ…
未練がましい事を言って申し訳ない」
L 「一刑事として命懸けでキラを追う事は間違ってないと思いますが
刑事でなくなってまで家族に迷惑をかけキラを追うのは
決して正しい事だとは私は思いません。
刑事として死んだら殉職ですが、ここで無職で死んだら犬死にです」
父「竜崎の言う通りだ相沢。ここでやめても誰も責めはしない」
松田「そうですよ 裏切り者なんて思いませんよ」
相沢「……
き…局長だって家族があるのに警察を辞めてまで…………」
父「相沢 私とおまえでは立場が違う
息子がキラだと疑われ 息子共々自らだが監禁までされた。全てキラのせいでだ。
おまえも見てたはずだ もう引き返せない…。これは私のエゴなんだ…………」
L 「それに私はまだ月くんが主犯のキラだという線も捨てていませんしね」
父(………)
父「こんな言い方もなんだが うちの子は大きい
おまえにはまだまだ子供を育てていく責任が--」
相沢「ず…ずるい。ずるいですよ…俺だってここでやりたいです…
俺だって本当にいつ死ぬかわからない覚悟でやってきました…
それに…ここでやめたら宇生田に顔向けが…
くそっ!なんで警察に勤める刑事がキラを追っちゃいけないんだ…」
モニターから声『……竜崎』
L 「どうしたワタリ」
ワタリ『あなたはこの捜査本部の者に何かあった場合 例えば警察をクビになった場合でも
その者と家族が一生困らないだけの経済的援助をする事を最初に私に約束させた。
何故その事を言って差し上げないのですか?』
L 「余計な事を言うな ワタリ」
ワタリ『あっ…はい すみません
つい聞いていられなくなり…』
笑顔になる松田
松田「な…なんだ… ぼ…僕達の生活保障までされてたんですか
よかったじゃないですか相沢さん。これなら刑事という肩書きにさえ拘らなきゃ
今まで通りにやれますよ」
相沢「竜崎」
L 「はい」
Lの方を向き直る相沢。Lは相沢に背を向けている
相沢「俺が警察を辞めて一緒にやるかどうか観てたのか?」
父「ち 違うぞ相沢 竜崎はそういう事を自分で言うのが嫌いなだけだ」
松田「そ…そうですよ 竜崎ってそういう偏屈なところあるのは
もうわかってる事じゃないですか」
L 「いいえ
試してました。どっちを取るか観てました」
父・松田(竜崎…)
相沢「……………………」
L 「……………………」
相沢「わかった…俺はここを辞めて警察に戻る」
松田「!相沢さん…」
相沢「俺は局長達の様にすぐに決断できなかったし、警察に戻る方に傾いていた…」
松田「そんな意固地にならずに…」
相沢「いや、やめる。今またはっきりわかったが俺は竜崎が嫌いだ。
竜崎のやり方全てがな!!」
L 「それが普通です相沢さん
私は相沢さんみたいな人好きですけどね」
たじろぐがすぐにLに背を向ける相沢
「こ…こういう事を白々しく言うところがまたどうしようもなく嫌いなんだ!
俺はここをやめる!」
L 「お疲れ様でした」
-捜査本部ビル-
二日後
モニターに映っているミサ、メイク中
PCに向かっている月
何かフォークで食べてるL
大量の書類を作っている模木
暇そうな松田
松田「また一人減っちゃいましたねー。建物が大きいだけに寂しいっすねー。
(黙々と働く模木を横目に)
模木さんは居ても殆ど喋らないし…」
月「また見つけたぞ竜崎。
9月10日 自宅階段で足を滑らせ転落 打ち所が悪く死亡
大友銀行飯田橋支店長 矢位部巡一 来月には本店次長になる予定だった
実質 大友で今一番のやり手とされていた人物。
そして三日前に大友銀行取締役 山込田時男が贈賄容疑で事情聴取。
逮捕はまだだがこうなると今までのパターンからキラに裁かれるか自殺する事に…
これで大友銀行はもうガタガタだ。ヨツバ銀行は大友を抜けば国内一になる…」
父「9月10日というと金曜だな」
月「!?」
父「私達は簡単な事を見落としていた。もう一度よく調べ直してわかったんだが
ヨツバにとって都合のよい死は週末に集中している」
松田「えっ?本当ですか」
父「一連の死が三ヶ月前からだとして、最初の頃は事故死でも死亡日時にバラつきがあったが
土曜の午後に集中しだした。ライトが最初に注目した三人の心臓麻痺も全てそうだ」
松田「よ…よく気づきましたね局長!……………まだ月くんも竜崎も言ってなかった事を」
父「………もう局長ではないと言ってるだろう」
松田「いえ僕にとってはずっと局長です」
月「殺人が週末に集中…どういう事だ?」
L 「おかしいですね…
この殺人にキラが関係しているのならキラは心臓麻痺以外でも人を殺せる事になる
ならばそれがバレない様、事故死等は死の時間を操って片寄りが表面に出ないようにするはず…
週末に何か意味があるのか?…
やはりキラではないのか?…」
月「僕も見落としてたことを…これは何かのヒントになるよ父さん」
父、ガッツポーズ
父「私だってまだまだおまえや竜崎に負けておれん
ここのお荷物にはなりたくないからな」
松田(………………)
L 「ヨツバの中にキラがいるのか、キラがヨツバを利用しているのか、
キラは関係していないのか…わかりませんが、もうキラの仕業だと考え捜査しましょう。
ヨツバを徹底的に調べます」
模木「国内外ヨツバグループ全社員リストできました」
L 「模木さん地道な作業ありがとうございます」
大量の紙束を置いて去っていく模木
月「30万人以上か…よくこれだけの人をこんなに早く出せたな…凄いよ模木さん」
L 「模木さんは最初から何気に凄いですよ」
松田「………………。よ…よし、僕もがんば…」
携帯が鳴る
松田「あっマネージャー携帯が………………」
モニターに映っているミサ、携帯で電話している
ミサ『マッツー、ロケ行くよー』
松田(そうか、今日も午後から映画のロケが…)
松田「僕も捜査の方がしたいけど仕方ないから行ってきまーす」(………)
書類を見ている皆の様子を横目に、気まずそうに立ち去る松田
父「社員の数にも驚くが支社だけでもこんなに…。どこから手をつけたらいいのか…」
月「もっと人手が欲しいな」
L 「ワタリ」
モニター越しにワタリの声
ワタリ『ハイ』
L 「アイバー、それにウエディをここに呼べるか?」
ワタリ『え?彼らの居所は把握してますが顔を見せる気ですか?』
L 「彼等と私にはもうそれなりの信頼関係があります。ヨツバという大きな物を探るのにわざわざ
ワタリを通していたのでは無駄に時間がかかるし私の考えも伝えにくい」
ワタリ『……わかりました。手配します』
三日後
捜査本部ビルに現れた男女。コツコツと歩いてくる
アイバー「俺はアイバー、詐欺師だヨロシク」
ウエディ「ウエディ、職業はドロボウ」
父「さ…詐欺師に泥棒?……」
L 「そうです。アイバーは語学力 心理学 人格変換術 あらゆる社交に必要な物を身につけ
必ずターゲットと親密な関係になる詐欺師。潜入捜査に使えます。
ウエディはどんな鍵 金庫 セキュリティでも破れる泥棒です。その証拠にこうして
我々に気づかれる事なくここまで入って来た。2人とも歴とした、犯罪者です」
父「………………は…犯罪者と一緒にやるのか?」
L 「犯罪者といってもキラに裁かれる様な表に出てくる者とは少し違います。
裏の世界のプロとでも思ってください。他にも必要に応じ犯罪者であろうと
手を借りられる者は押さえてあります
皆顔を見せたがりませんし私も信用できる者にしか顔は見せませんが
この本部に住んでもらう者がいるかもしれません。
流石に夜神さん達が警察であったのでは入れられませんでしたが今となっては…」
父「…………しかし…」
月「…………なるほど、ヨツバを探るならこういう人達も必要になる。
皆で力を合わせてがんばろう!」
アイバー・ウエディに握手を求めて手を差し出す月
松田「うん」
父「……う…うむ…」
公園。ベンチに一人座ってボンヤリしている相沢
相沢の娘「あっパパだ!」
相沢の妻「まさか…」
相沢を見つけて駆け寄る娘
娘「ほらーパパだーっ」
妻「あなた…」
相沢「由美… 恵利子…」
娘、相沢に抱きつく
妻「何してるのよこんなところで…
帰って来るならちゃんと言ってよね、あなたの分のおかず買ってないのよ」
娘「私のコロッケ半分あげるよー」
相沢「すまん…ずいぶん休んでなかったから休暇がもらえてな」
娘「えっ『きゅーか』ってお休み?」
相沢「ああそうだ」
娘「やったー」
相沢、娘を高く抱き上げる
相沢「それにこれからはちゃんと毎週休めるんだぞ」
娘「ええほんと-?すっごーい」
相沢「だからこの公園にだって… いや動物園にだって… 遊園地にだって…」
肩を震わせている相沢。娘を降ろし、項垂れる相沢の後ろ姿。
娘「どうしたの?パパ…
ママ…パパが泣いてる…」
己の命の為ではない。愛する家族の為に…相沢、無念の離脱!!
ヨツバに対するキーマンとなるのは!?次号、『松田』