【ウサギ署】こち亀Ver.51【爆破マダー?】

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いや、今週も面白かったね。
まず冒頭、今年はオリンピックイヤーだからとかつてバイトした超電子工業に翻訳機を取りに行く両さん。
電極のところでかつてバイトしたという設定を忘れてないとは、凄すぎる!
ノーベノレ賞の件も覚えてたみたいで、この素晴らしい記憶力には驚かされます。
会社の中で、電極父が乗ってた二足歩行メカ。こんなところにさりげなくマクロスの敵メカへの
オマージュをちりばめるとは、憎いですね、秋本さん。この敵メカ、電子警察手帳の回で、
両さんがデータを部長に売ろうとする際の、抱き合わせプラモとしても出てきてましたね。
さて、その翻訳機。派出所で実験しているところを、部長に目をつけられ、フグと引き換えに貸すことに。
ところが徐々におかしな兆候が出始め、寿司屋で調整。ここで、待ってましたの檸檬たん登場!
う〜ん、可愛い。ハァハァ。ここでの、檸檬の言葉を「This is a pen」と略すシーンは、ほんと大爆笑です。
かの田沢慎一郎氏は、「でかい顔するな、このタコ」を「I am a boy. This is a octopus」と略してくれましたが、
それを大幅に上回る素晴らしいセンスです。ここ、初期のこち亀で、両津と中川が派出所のビデオで『ダーティハリー』を見てた
シーンへのオマージュであることは言うまでもありません。あの時も、
「I love Pink Lady, Hiromi Ohta」に大笑いしましたけど、長い月日を経て、秋本さんのセンスは凄い進化を遂げています。
で、ついに翻訳機の修復はあきらめ、中川・麗子に無線機で通訳してもらうという挙に出る両さん。
この辺には、機械は壊れることもあり信用できない、やはり頼れるのは人間の力だ、という秋本先生の文明批判が込められています。
さて、パーティのシーン。英語の翻訳に素晴らしい性能を発揮すると、今度はスワヒリ語で話し掛けてくる人が。
ケニアやタンザニアなど東アフリカの言葉を、顔の白い人が使ってくるあたり、人種偏見にとらわれない秋本先生の
博愛精神が感じられます。これも、見事に訳す中川・麗子。
その後のロシア語らしき文字列も難なくこなします。スワヒリ語氏も、ロシア語氏も、
自分の言葉が日本語に訳されるのを聞いて、「Oh!」と驚く。つまり彼らは日本語も知ってて、
それで正しい日本語に訳されたのを聞き、驚いたわけですね。この辺、日本に来て仕事してるんだから
日本語くらい知ってておかしくないという、秋本先生の見事な洞察です。
このパーティで大好評を博した翻訳機は、電気メーカーに5億円で売却され、その間に両さんは高飛び。
マレーシアで捕まるという、ワールドワイドなオチとなりました。

今回のお話、前にも書きましたが、機械より人間の力だ、という秋本先生の文明批判が込められております。
先生は前にも、米軍のミサイルが2000年問題で誤発射し派出所を直撃するという、社会派の作品を書いていましたが、
今回もまた、それに続く機械文明への警鐘といえます。
で、翻訳機の形状は、バウリンガルを思わせるものでした。バウリンガルは、犬の言葉を訳すという触れ込みでしたが、
犬語わかる人なんていないわけで、訳が正しかったのか確かめようが無いんですよね。
で、翻訳機に限らず翻訳というものも、人に頼むならともかく、合ってるかどうか自分で知るには、英語→日本語なら
英語と日本語両方に詳しくないといけない。最近、洋楽の歌詞や洋画の字幕などの"誤訳"を指摘する本など出てきてますが、
そういう誤訳が長いこと通用してきたのは、大多数の人が英語を知らず、確かめられなかったからなんですね。
イラク戦争の際の、「show the flag」の解釈などは、それが権力に利用されたいい例でした。
今回、「and is」だとか訳された英文に対し、色々ツッコミが入ってますけど、それには、正しい訳とされているものでも、
本当は間違ってるかもしれない。機械なり翻訳者なり任せにせずに、自分で確かめる必要がある、という秋本先生のメッセージ
が込められているんですね。英文の和訳がおかしかったのには、そのような意図があったのです。

ともかく秋本先生、いつも素晴らしい作品をありがとうございます!