[美しき島の落日 1]
鬼星隊に勝利したイヴとスヴェン。
「あとはお前、ひとりだな・・エキドナ」「よくも・・」 バタバタ「お、追いついたようだぜッ」
さらに二人と一匹がエキドナと対峙しているところへ、ナンバーズの面々も空中楼閣まであがって来た。
「潮時だな。紳士は女を泣かせないもんだ。おとなしく頼むぜ」スヴェンはエキドナににじり寄る…。
「あっちもずいぶん静かになったね・・。どっちかの決着がついたのかな?なあ、トレイン君・・」
クリードが一瞥を向けた相手は、いまだ壁に埋まったまま動かない。
「・・・仕方ない。本当に祭りは終わったようだね。じゃ、あっちの騒動も僕が収めに行くか・・」
「まてよ…。まだ終わっちゃいないぜ・・」壁にめり込んでいたトレインがゆっくりと起き上がりはじめた。
「フッ起き上がってくれたのは嬉しいよ、もう少し遊べるんだからね。君が僕に勝つのは相変わらず絶望だけどさ」
「ま、あせるな。お前の攻略法をちょいと考えてたのさ。あんまり考えすぎて…うっかり寝ちまってたんだけどな」
トレインはにやりと唇を持ち上げて言う。
「減らず口を・・」クリードが踏み込み、一足飛びに襲い掛かった!!
クリードの刃はその驚異的な速度のため目に映らない。 ズアァ! グァア!
さき程まで同様、Lv3に進化したイマジンブレードにトレインは防戦一方。かわすのが手一杯だ。
「どうした、トレイン君!?やっぱり、逃げ回るしかないのかァー!!」
「見えない刃…同じだな・・ルナフォートタワーの時と…そう、何もかも同じさ…」
トレインは急に動きを止め、そのまま前のめりに身を乗り出す。
ドスッ
クリードの巨大なブレードがトレインの胸を深々と貫く。「!」
「グッグゥ・・ よし!なんとか刃は止まってくれたようだな…」
「なるほど…自分の命まで犠牲にして刃を止めるとはな・・。トレイン、つねづね僕は君が優秀な人間だと評価して
いた!だが、それは間違っていたのかも知れない・・こんな考えもない行動に出るのはただ無茶な人間なだけだ!」
「優秀な人間?勘違いしてんじゃねェ…昔から俺はただの掃除屋・・元暗殺者のな。だから俺に
できる対策なんてのも、いつも…いつだってこんな程度なのさ・・グゥウゥ・・」
トレインは歯を食いしばり左腕に力を込めた。しかし、だらりと垂れ下がった左腕のハーディスは動かない。
「は、大胸筋と肩甲骨が貫かれてる。腕の腱だってズタズタ…それで撃てると思ってるのか!?」
ところが、意に反し突然トレインの左腕はピクリピクリと動いたかと思うとゆっくり上がってきたのだ。
「!」クリードには今になってやっと気づいた…さっきから彼の耳では絶えず小さな耳鳴りがしていたのだ。
「僕のナノマシンがトレイン君のナノマシンと共鳴している? トレイン君の胸の傷も治していると言うのか…?」
ついにハーディスの照準がクリードの額に向かう。
「甘い、甘いよ!この至近距離、レールガンでもない限り僕がよけられないと思ってるのか?いや、それ以前に
撃たせるものか!」第三の腕が伸び、トレインを引き抜きにかかった!
「この・・このッ! ・・なぜ、抜けない・・。なぜ腕に力が入らない!?」
それだけではない、いまや胸の傷と刃は融合を始めていたのだ。
ナノマシンの共鳴音がけたたましい程耳をつんざき始めた。 バチッバチッ ハーディスの銃身にパルスが走った。
「レールガンか・・確かに俺のナノマシンによる細胞電流はスッカラカンだった。けどな…今は
お前の刃とお前のナノマシンと同化してるんだ・・。お前自身からエネルギーを分けてもらってるんだぜ」
「馬鹿なッ・・」 いまやクリードの表情にゆとりはない。その表情には明らかに驚きと恐怖があった。
「アディオス・・(スペイン語で『さよなら』の意) クリード=ディスケンス」
バァァァァーン!
ハーディスから放たれたレールガンの閃光がクリードの顔面にぶち当たった。
「ハートネットォーー!!」セフィリアの目に最後に写ったものはクリードの頭が
粉々に吹きとんだ姿だけだ。後は部屋いっぱいに広がった発光にすべてが包まれる・・・。