黒猫の最終回をせめて格好よく予想しよう!!3

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171未来という名の牢獄 1
男が病室に入ってきた。
病室の主は、来客の様子にちらりとも目をやる様子もなくベッドで横になったまま
無言で窓の外を眺めている。病室は簡素なつくりの個室で、部屋の中にはこれと
いったものもなく。せいぜい置き時計、テレビ、テーブル、そのテーブルの上にはテレビの
リモコンとカセットテープひとつがある程度だった。

来客は、まずテーブルの上に置かれていたリモコンを手にとり、テレビのスイッチを消した後、
慎重にリモコンを元の位置に置き直した。テレビの音が消え、部屋は静寂に包まれる。
しかし暖かい春の日差しが窓いっぱいに差し込んでいた。

来客は底氏病人の様子を見る。おそらく外に出られないためだろうが袖口から覗く手首は
おそろしくやせていて、つながれた点滴が痛々しい…。次に、テーブルの上に置かれていた
もう一つの方のカセットテープに手を伸ばし、スイッチをいれた。テープからは懐かしい声が
元気よく流れめ始める。
「よお、トレイン!これを聞いてるって事は…今は4月7日13時47分ってところか!?」
「久しぶりだな…スヴェン 元気だったか?」
「はは、オレの事は気にするな。 と、そっちこそどうだ、なに変わったことはないのか?」
「そうだな こっちの話題は…リンスが最近結婚した事かな? 聞いて驚くなジパングの大富豪とだぜ」
テープは廻り続ける…。
「…へェー、そうか! あのじゃじゃ馬がねぇ …世も末だぜ(笑)!!」「だろ?」「はははは・・・・」
しばらく談笑が続いた後、突然にトレインが切り出した…
「お前がここに入院して、もう3年になるのか… お前には感謝している。クリードの館が爆発する際、お前の
ビジョンアイが俺たちを安全な場所に導き。一人も欠ける事なく救ってくれた…今更だが、ありがとうスヴェン」
「何を言ってるんだ? トレイン、水臭いぜ 」
「…だが、そのビジョンアイの限界使用量を超えた後遺症に …今、お前は苦しんでるんじゃないか。 
ビジョンアイは暴走し、常に未来を見せ付けられるようになってしまった…。『意識は未来にあるのに体は
現代にある』。いやお前から見れば、『意識は現在にあるのに他人はすべて過去にいるんだ』。意識と肉体の時間が
ずれたせいで、お前は時間のまったく変化のない この部屋で年中すごさねばならな苦なってしまった・・」 
「そんな…そんな、苦しく孤独な思いを、お前にさせてしまったことを本当にすまないと思っているんだ…」
172未来という名の牢獄 2:03/11/18 04:55 ID:YNn3GFaX
「フッ 何を言いだすかと思えばくだらない オレは後悔なんてしてないよ なによりイヴを、そしてお前と
他の掃除屋たちを救うことが出来たんだ これ以上何がある? オレの犠牲で全員を救えたんだ 俺は納得している」
「そうか  …ありがとう。スヴェン……」 
「…!!!  待てトレイン! まだ早い… まだ来たばかりじゃないか!?」
「すまないな… スヴェン オレも忙しいんだ…」
「なぜだ!?なぜお前達は、こんなにオレを一人にさせるっ?」
「わかってくれ・・。これもお前のためなんだ。お前のそのビジョンアイを治すためにはまだまだ稼がなければならないんだ」
「俺は・・俺は直らなくてもいい…。 みんなと一緒にいられさえすれば…」
「そうもいかない、スヴェン…。 今まで黙っていたが、お前に未来を見せ苦しめているそのビジョンアイ・・。そのビ
ジョンアイの正体は寄生虫だったんだよ! 眼球の神経から脳に侵入し宿主に取り付く… 虫は寄生する見返りに
宿主に未来をみせる事で宿主を危害から守る。 だがその力を使い続けると、やがて宿主の脳の侵食がすすみ能力が
暴走するんだ… そして暴走した虫を放っておけば、今こうして未来を見せてるだけの後遺症でも、いつ宿主の脳を
崩壊させるか知れないんだ…」
「もう、直らないのか…?」
「ビジョンアイはシナプス単位で脳を汚染している…外科による除去では摘出不可能なんだ。 
だから抗ビジョンアイ用ナノマシンがいる… イヴもティアーユも寝ずに研究をしている… その研究費を
捻出するためにも どうしてもまだ金が要るんだ 俺にはそれを掃除屋としての稼ぎで負担するくらいしか出来ないんだ…」
「どうしても行ってしまうのか…トレイン?」
「すまない… スヴェン…」
「待ってくれ! 行かないでくれッ…!! たのっ…」 ガチャッ 部屋の扉は少々乱暴に閉められ、それっきりだった。
トレインが消し忘れたテープからは、まだスヴェンの声が聞こえてくる。
「待っているぞ みんな… たとえ何年、何十年もの先に見えた映像が、この病室の中だったとしても
俺は、それでも待ち続ける…。 みんなと同じ時間を共有できる その日まで…」
そういい残し、しばらく廻り続けていたテープも巻き戻り始めた。
病室はテレビがついてない以外は、先ほどと、なんら変わらない風景となり、また静寂につつまれる。

窓の外には一面の桜が咲いていた。花弁が病院の門に向かうトレインの肩にもかかる
(おそらく、その様子すらも目に入ってないだろうが)外の光景を焦点の定まらぬ瞳で
眺めていたスヴェン本人はつぶやいた。
「冬が来ているな トレイン、今年も寒くなるぞ…」