東京新聞の記事全文
子どもたちに囲碁ブームを巻き起こした人気漫画「ヒカルの碁」の連載が終了した。
最終回の予告もなく、"突然"に見える終わりに戸惑うファンも多い。
漫画を通じて囲碁界には新しい波が押し寄せた。漫画とともに"ブーム"も終わるのか。
人気投票は上位 ドル箱のはずが
連載は少年ジャンプの5月12・19日号で終わった。ファンの会社員男性(32)は
「いやぁー、びっくりしました。『ヒカル』は、話の内容からも、これから一番盛り上がる
ところだっただけに、友人に聞いてショック。最終回は単行本が出るまで待つ。雑誌では
あえて見ません」と話す。
終わり方について、同じ少年ジャンプの人気漫画「スラムダンク」との類似点を挙げる。
「スラムダンク」もある意味唐突で、次また始まるような終わり方だった。でも、
待っていたが始まらなかった」という。
「単行本は、うちの店でも中高生から中高年まで人気がある。現在進行形の本としては、
ベスト5には入ります」と話すのは、東京・新大久保の漫画喫茶オーナー前田孝之さん(35)。
「ジャンプは、人気投票で最終ページの目次の順位が下がってきて打ち切りになるのが
普通だが、ヒカルは常時、5、6番目ぐらいだったでしょ。まったく想定してなかった」と驚く。
その上で「とっつきにくい碁という分野をこれだけ盛り上げただけでも革命的。集英社に
とってはドル箱だったでしょうに・・・」と話した。
その集英社にも「なぜ終わるのか」「続けてほしい」という問い合わせが多かったという。
同社広報室は「物語が終わったため」と、予定の結末であることを強調する。
「漫画は永久に続くものではない。一応の結末を迎えたということです。一般論として、
これでおしまいというわけでもない。例えばキャプテン翼の『ワールドカップ編』のように
その後に続編が出ることもある。もちろん、今の段階では何とも言えませんが」と話す。
最終号では、夏に読み切りが掲載されるとだけ告げられた。
漫画熱去った後 残るものわずか
ヒカルの碁は1998年に連載が始まり、現在21巻まで出ているコミックの販売は
計2200万部に上る。子どもたちの"囲碁熱"は漫画から始まった。
日本棋院では「特に2年前にアニメ化されてからの反響が想像以上だった」と説明する。
これまで4、50人で推移していたジュニア教室には、200人を越える子供たちが集まり、
教室も隔週から毎週になった。昨年の夏休みには全国100ヶ所で「ヒカルの碁」を看板にした
入門スクールも開催。タイなど囲碁があまり普及していない海外にもブームは広まった。
それだけに、同棋院に通う子どもたちからも「何で終わっちゃったんだろう」と惜しむ声が
多かった。
漫画をきっかけにした囲碁界の活気は、漫画の終了とともにしぼむのか。
日本棋院では「囲碁というと年配者のものというイメージが強かったが、子どもたちは
『碁を打っている姿が格好いい』という。漫画の終了は残念ですが、囲碁の面白さに
はまった子は、そのまま続けてくれるだろう。一過性のブームではないと思う」と楽観的だ。
だが「子どもの文化」編集長の石子順氏は「漫画をきっかけにしたブームの寿命は短い。
これまでにもドッジボールやヨーヨーなどがはやったが、多くは漫画やテレビの終了とともに
ブームも終わる」と指摘する。その上で、残るものもわずかにあるという。「釣りキチ三平を
きっかけにした釣りブームは、子どもたちの世界を広げた。一過性に終わるかどうかは、
周囲が子どもたちの興味を持続させることができるかどうかにかかっている」
見出し
ブーム終局 防げるか
「ヒカルの碁」突然の連載終了
『なぜ』惜しむ多くのファン 出版社は『物語、一応終了』
日本棋院はあくまで楽観『一度のめり込めば続けてくれる』
あと、連載終了した少年ジャンプの「ヒカルの碁」(中央)と単行本と書かれた横に
単行本1〜21巻までぶわぁーと広げた上に189局トビラを開いたジャンプが乗っている写真