655 :
カシージャス:2014/06/14(土) 11:26:01.78 ID:jXCavbHX0
ロビン・ファン・ペルシだ、と僕は思った。どうしてこんなところに突然ロビン・ファン・ペルシが出てくるんだ?
彼のヘディングシュートがするすると頭上を越えていった。僕はぼんやりと考え事をしながらそれを見ていた。
ロビン・ファン・ペルシ、彼はエジプト時代から存在したのだろうか?
それともこれはみんな僕が頭の中で作り出した意味のない幻想に過ぎないのだろうか?
僕はポケットに手を突っ込んだままゴール前に立ってそんなことを考えていた。
657 :
西村雄一:2014/06/14(土) 12:33:30.35 ID:cr1aPmOe0
「ファールは誤審の対極としてではなく、その一部として存在している」
659 :
名無しが急に来たので:2014/06/14(土) 16:27:52.56 ID:mApIelip0
「どうしてベロオリゾンテに住んでリオの自宅をあんなに高値で貸すようになったの?」
「きっとあんた笑うよ」とロナウジーニョは言った。
「たぶん笑わないと思うよ」と僕は言った。
「誰にも言わない?」
「誰にも言わないよ」
「アトレチコ・ミネイロの給料が安かったかったからさ」
我々はしばらく黙って歩いた。
661 :
デルボスケ:2014/06/15(日) 11:17:36.15 ID:MVUSaIUp0
「わからないよ。自分でもわからない」と私は記者に向かって叫んだ。自分の声さえも変な方向から聞こえてきた。
「オランダの追加点を見ているうちに、もうどうでもいいような気がしてきたんだ」
「どうでもいいって?」
「たいしたチームじゃないし、たいした大会じゃない」
「でもあなたはさっき自分のチームに満足してるって言ったわよ」
「言葉のあやだよ」と私は言った。「どんな軍隊にも旗は必要なんだ」
日本の予選突破の可能性は殆ど残っていなかった。
コートジボワールとコロンビアの快進撃が見えるだけだった。
しかしそんな風景をじっと眺めているうちに、ここ何日かではじめて私はこの予選で消えたくないと思った。
日本が決勝トーナメントでどこのチームとあたるなんてそんなことはどうでもいいことなのだ。
日本の予選突破の可能性の九三パーセントがコートジボワール戦の敗北で失われていたとしても、それでもかまわない。
私はその七パーセントを大事に抱えたままこのブラジルワールドカップをどこまでと眺めていきたいのだ。
何故かはわからないけれど、そうすることが私に与えられたひとつの責任であるように私には思えた。
663 :
大岡昇平:2014/06/15(日) 12:44:23.66 ID:kFaCAj8Q0
すごいね!みんなレベル高いね。
大笑いしながらここまで読みました。
664 :
名無しが急に来たので:2014/06/16(月) 19:31:34.25 ID:Mmfw2G0i0
「私は良かれと思って遠藤を入れたんだが、いかんせん状況が悪い方へ悪い方へと流れてしまったです」
とザッケローニはすまなそうに言った。「そして私の手ではどうにもできんところに来ちまったです。
私にもどうにもできんしあんたにもどうにもできん。1次リーグ敗退への流れはどんどん回転を速めており、誰にもそれを停めることはできんのです」
「やれやれ」と本田は言った。
「しかしあんたはこのワールドカップで、あんたが失ったものをとりもどすことができるでしょう。
あんたの失ったものや、失いつつあるものを」
「僕の失ったもの?」
「そうです」とザッケローニは言った。「あんたが失ったもののすべてをです。それはそこにあるのです」
665 :
名無しが急に来たので:2014/06/16(月) 19:39:57.69 ID:9QtvQCPN0
TVでサッカーのワールドカップを観ようと思ったが、
神宮球場に野球を観に行った。
なぜかって?
野球の方が得点がたくさん入るからさ。
部屋で飲むより青空の下で飲むビールの方が旨いに決まっている。
もちろんヤクルト・スワローズが勝利した。
666 :
名無しが急に来たので:2014/06/17(火) 22:51:19.75 ID:c6Th4FxS0
「ねえペルシさん」とロッベンは言った。「あなたがもし禿げたら、かつらをつけると思う?」
「どうだろうな」と僕は言った。「面倒くさいのは苦手だから、禿げたら禿げたままにしておくんじゃないかな」
「うん、きっとその方がいいわよ」と彼は口許についたケチャップを紙ナプキンで拭いた。
「禿げてるのって、本人が考えてるほど悪くないわよ。そんなに気にすることじゃないと思うな」
「ふうん」と僕は言った。
667 :
名無しが急に来たので:2014/06/17(火) 23:45:05.79 ID:65Vp3Lrb0
2008年から細々と続いてるなんて
すごいなこのスレ。
668 :
名無しが急に来たので:2014/06/18(水) 18:49:59.50 ID:w2ewaEaZ0
あるいは日本代表は負けるかもしれない。予選突破の可能性は失われてしまうかもしれない。どこにもたどり着けないかもしれない。
どれだけ死力を尽くしたところで、既にすべては取り返しがつかないまでに損なわれてしまったあとかもしれない。
日本代表はただ廃墟の灰を虚しくすくっているだけで、それに気がついていないのは何人かのメンバーだけかも知れない。日本の予選突破の側に賭ける人間はこのあたりには誰もいないかもしれない。
「かまわない」と本田佳佑は小さな、きっぱりとした声でそこにいる誰かに向かって言った。
「これだけは言える。少なくとも日本には残された試合があり、探し求めるべき予選突破の可能性がある」 それから本田は息を殺し、じっと耳を澄ませる。
そしてそこにあるはずのサポーターの声を聞き取ろうとする。報道陣と人々の罵声の向こうに本田佳佑の耳はその音のない微かな 響きを聞く。
そこでは誰かが誰かをを戦犯として叩こうとし ている。誰かが誰かを引き摺り下ろしている。
声にならない声で。言葉にならない言葉で。
669 :
シャビ・エルナンデス:2014/06/19(木) 19:32:32.26 ID:1rVD1TKk0
太陽がスタジアムに射し込んで、ベンチにいる私を光の中に包んでいた。
目を閉じるとその光が私の瞼を暖めているのが感じられた。
おそらく美しいパスサッカーをする代表チームには限定された期間の祝福が与えられるのだ。
私はついでにオランダとチリの代表選手たちに私なりの祝福を与えた。
他国の代表に祝福を与える権限が私にあるのかどうか分からなかったが、
私はすでにスタメンを外れたのだか ら、誰かにこの先責任を追及される恐れはまずなかった。
私は自チームのセスク・ファブレガスやアンドレアス・イニエスタもこの祝福リストに加えた。
彼らはバルセロナでも我々のパスサッカーを支えてくれるのだ。リストに加えていけない理由は何もなかった。
私はスペインの守備のことを考えてみた。誰も相手チームのカウンターを止めることはできない。
だれもボールロストやパスミスから逃れることはできない。
やがて、そのパスミスだらけのスペインサッカーはぼんやりとした色の不透明なカーテンとなって私の意識を覆った。
スペインの予選敗退がやってきたのだ。
670 :
名無しが急に来たので:2014/06/19(木) 21:34:41.99 ID:9nxq25++0
この作家というと
ビールとやれやれしかないだろ
今の日本サッカーにふさわしいわ
671 :
香川真司:2014/06/20(金) 06:07:22.69 ID:gZTBQo720
今、僕はギリシャ戦にかけようと思う。
もちろん問題は何ひとつ解決してはいないし、試合を終えた時点でもあるいは事態は全く同じということになるかもしれない。
結局のところ、攻撃的サッカーを行うことは予選突破の手段ではなく、予選突破へのささやかな試みにしか過ぎないからだ。
しかし、攻撃的なパスサッカーをすることはひどくむずかし い。 僕がワンツーをもらおうとバックパスをすればするほど、ボールは自陣の奥深くへと沈み込んでいく。
弁解するつもりはない。少くとも前回のコートジボアール戦で出来たことは 現在の僕におけるベストだ。
付け加えることは何もない。 それでも僕はこんな風にも考えている。
上手くいけばずっと先に、何年か何十年か先に、日本らしい創造的なサッカーを発見することができるかもしれない、と。
そしてその時、海外組は日本に還り、Jリーグは盛り上り始めるだろう。
できることなら、日本代表のことはなるべく早く忘れてしまってください。 ワールドカップを楽しむために、あなたが世界の別の国の代表を応援していくことが、私たちにとって最良の道なのです。
日本代表が今何を起こしていて、どうして自分達のサッカーができないのかはたいした問題ではありません。
何よりも重要な事実は、何かしらの理由によって、日本と世界のサッカーとがすでに異なった 世界に分かたれてしまったことです。そしてそれはもう、もとには戻らないことなのです。
わかってほしいのですが、 こうして試合後のインタビューに答えることすら、日本の選手には身を切られるように辛いのです。
きっとあなたには想像もつかないくらいつらいことなのです。
だからそのことでもうこれ以上、日本代表を苦しめないでほしいのです。
私のために何かできることがあるとしたら、それは一刻も早く日本の存在を 忘れてくれることです。
ワールドカップのためにこれまで応援してきた年月を、存在しなかったもの として記憶の外に追いやってくれることです。
それが結局、日本代表にとっていちばんいい結果をもたらすことなのです。私はそう確信しています。
コスタリカ「よ、よ、予選突破だ」
僕は電気もつけずに薄暗い部屋でビールを飲みながらイングランド代表のヴィデオをぼんやりと見ていた。ベッカム、オーウェン、シェリンガム。
最高の試合だ。これは何年の試合だったろうか? 彼女が風呂から髪をふきながら出てきた。
「どうしてイングランドの試合なんて見るの?もう敗退したんでしょ」
「そうだよ。GL敗退だよ」
「敗退したの分かってて昔の試合見るのってつまんなくないの? 」
「つまんなくたっていいんだよ。暇つぶしだから。それにどんなチームにも 浮き沈みあるよ。イングランドなんて分かりやすくてかわいいもんさ」
「あなたってそうやって世間をはすにみて馬鹿にしてるのね。いつもそう」
僕は彼女に何か言い返そうとしたが、彼女が泣いているのに気づいてやめた。 そしてヴィデオの電源を切った。電源の落ちたテレビの画面は暗闇の中でも一層濃い闇の入り口みたいに見えた。
「別に消さなくてもいいのよ。あなたの家のあなたのテレビなんだから」
「もう見たくなくなったんだ」
彼女は居間のテーブルで声を出さずに泣いていた。まったくでたらめな一日のでたらめな夜だった。
あなたがワールドカップ中継のTVの前で孤独な消耗を続けているあいだに、あるものはプルーストを読み続けているかもしれない。
またあるものはドライヴ・イン・シアターでガールフレンドと『勇気ある追跡』を眺めながらヘビー・ペッティングに励んでいるかもしれない。
そして彼らは時代を洞察する作家となり、あるいは幸せな夫婦となるかもしれない。
しかしワールドカップ観戦はあなたを何処にも連れて行きはしない。画面の選手がパスミスとシュートミスを繰り返すだけだ。
パスミス、シュートミス、パスミス・・・。
無数の試合が止むことなく流れ、無限に続く中継はある種の永劫性を目指しているようにさえ思える。
僕は君たちのプレーを応援出来てとても楽しかった。日本がワールドカップに出ることができてとても楽しかった。
童話みたいだった。それが君たちにとって慰めになるかどうかは僕にはわからないけど、でも君たちのことはずっと忘れないで覚えている。
我々はブラジルで雪かきをしたのだ。サッカー的雪かき。
おやすみ、ザックJAPAN、少なくとも君たちはもう二度とブラジルで苦しまずに済む。二度と敗退しないで済む。
おやすみ、と僕は言った。
オヤスミ、思考がこだました。
かっこう、と本田が言った。
「まあ当分会うこともないと思うけど元気でな」と別れ際に本田さんは言った。
「でも前にいつか言ったように、ずっと先に変なリーグでお前に会いそうな気がするんだ」
「楽しみにしてますよ」
「でも本田さん、マスコミのイメージも大事にした方がいいですよ。
これからCMの依頼も減るだろうし、代表での立ち位置も見かけより脆弱だから」
「うん、それは知ってるよ」と彼は頷いた。
「だから本当を言えばだな、俺の後を柿谷がひきうけてくれるのがいちばん良いんだよ。お前と柿谷ならうまくいくと思うし」
「冗談じゃないですよ」と僕は唖然として言った。
「冗談だよ」と本田さんは言った。
「ま、幸せなれよ。いろいろありそうだけれど、お前も相当に頑固だからなんとかうまくやれると思うよ。ひとつ忠告していいかな、俺から」
「いいですよ」
「自分に同情するな」と彼は言った。
「自分に同情するのは下劣な控え選手のやることだ」
「覚えておきましょう」
我々は握手をして別れた。彼はミランの、僕はマンチェスターユナイテッド?ベンチへと戻っていった。
それが日本代表というものだった。気にいるといらざるとにかかわらず、我々はそういう代表の国に生きていた。
スポンサーのブランドも細分化された。ソフィスティケートされたのだ。
代表選手の中にもファッショナブルな代表選手と、非ファッショナブルな代表選手がいた。スポンサーの中にもファッショナブルなスポンサーと、非ファッショナブルなスポンサーがあった。
ファッショナブルなスポンサーの中にもフォーマルなアディダスがあり、カジュアルなナイキがあり、ヒップなプーマがあり、トレンディーなアシックスがあり、スノッブなミズノがあった。
組み合わせも楽しめた。記者会見のスーツに、ダンヒルのジャケットを着てアウディに乗る、みたいに、 複雑なスタイルを楽しむことができた。
そういう世界では、日本サッカーはどんどん芸能界に似ていった。サッカーは時代のダイナミズムに近接するのだ。
「大丈夫だよ。ポルトガル代表は予選敗退したりしない。嘘じゃないよ。もんしろ蝶に訊いてもいい、うまごやしに訊いてもいい。
僕くらい世界で称賛されているFWはそんなにいない。ただワールドカップには突発事故というものがあるんだ。
予想もしていないことが急に起こったりする。世界は広くて複雑だから、ある場合には僕の手に負えないことがもちあがるかもしれない。
そういう時にレッドカードでチームから一人減ると、とても困る。
僕が言ってることはわかるだろう?」
「突発事故」と彼は言った。
「青天の霹靂」と僕は言った。
「起こらないといいわね」とペペは言った。
「まったく」と僕は言った。
でもそれはちゃんと起こった。
682 :
名無しが急に来たので:2014/06/29(日) 11:25:06.02 ID:aNL/rcJC0
やがて哀しき日本代表…
683 :
名無しが急に来たので:2014/07/01(火) 16:32:11.49 ID:a5UOc6uY0
「スアレスさん、あなたはいったい何回出場停止になっているのかしら。怪我は別にして」
「説明するととても長い話になる」と僕は言った。「なにしろリーグ優勝にはまだ無縁だけど、
得点王は獲れたんだ。でもともかく、君は昨日の僕の試合を見たんだね」
「そしてあなたが試合で選手に噛みついているところを見たのよ」
「あれは本当に何でもないんだ。なんて言えばいいのかな、ちょっとした儀式のようなものなんだ」
「私に言い訳なんかしなくてもいいのよ、スアレスさん」ベンゲルは素っ気無く言った。「私はFIFAの審判員なんかじゃないんだから。こう言っちゃなんだけど、あなたには何か問題あるわよ」
「そうかもしれない」と僕は言った。
「あなたが今どんな目にあってるにせよ――きっとひどい目にあってるはずだと思うけど――それはたぶんあなた自身が招いたものだという気がするな。
あなたと、あなたのサッカーには何か根本的な問題があって、それが磁石みたいにいろんな問題を引き寄せるのよ。
だから少しでも気のきいた審判団なら、あなたをさっさと何ヵ月かサッカー活動禁止にして代表戦からも締め出すと思うわ」
684 :
名無しが急に来たので:2014/07/01(火) 17:50:22.79 ID:1fCdzn9W0
やれやれ。
本田圭佑がチームメイトに無条件で好かれているかというと、それは疑問だった。
みんなは本田圭佑を批判したりはしなかったが、彼には友だちと呼べるような相手は1人もいなかった。
彼はおそらくチーム・プレイにたいして無自覚に過ぎたのだろう。それを我が侭でごう慢だと取るものだって中にはいるかもしれない。
ただ長友祐都にはロナウドの心の奥に潜んでいる温かく、傷つきやすい何かを感じ取ることができた。
それはかくれんぼをしている小さな子供のように、奥の方に身を潜めながらもいつかは誰かの目につくことを求めていた。
そういうものの影を、ギョロ目の笑顔の中に、長友祐都はふと見い出すことがあった。
686 :
柿谷曜一朗:2014/07/02(水) 19:02:45.69 ID:vAIGKU1w0
「それで」彼女は言った。「あなたは何故スイスリーグなんかに行ったの? もっとレベルの高いリーグだって選べたわけでしょう」
「確かに君の言いたいこともわかる」
僕はピスタチオの殻を割りながら答えた。「イタリアやスペインからもオファーはあった。もし、僕が20歳だったらそっちを選んでいただろう。
でも、僕はもう25歳だ。挑戦をするには年を取りすぎた。確実に活躍できるレベルのリーグを選ぶべきだと思った んだよ。」
「あのカカがアメリカに行ったみたいに?」
「そのとおり」
「なんだか馬鹿みたいな話ね」
彼女はそういって店を出て行った。
僕は彼女の座っていた席をぼんやり眺めながらつぶやいた。
「やれやれ」
「守備をしながら働くのって楽しい?」とウェイン・ルーニーが訊ね た。
「わからないよ。まだそれほど長く働いたわけじゃないからね」
彼はフィールドの上のボールに足を伸ばして、ほんの1タッチだけ触り、すぐにはたいて汗を拭った。それから試合から姿を消した。
「私ってそういうのに向いてるかしら?」
「チームプレーのこと?」
「そう」と彼は言った。
「どうかな。考えているよりは結構煩わしいことが多いもんだよ。細かい規則とか監督の指示とかね」
「そうね」と言って彼はしばらく何かを考えていた。それから僕の目をじっとのぞきこんだ。彼の目は不自然なくらいすきとおっていた。
彼がこんなにすきとおった目をしていたなんて僕はそれまで気づかなかった。ちょっと不思議な気のする独特な透明感だった。まるで空を眺めているみたいだ。
「でも、そうするべきじゃないかって時々思うの。つまり・・・」
彼はそう言うと、僕の目をのぞきこんだまま唇を噛みしめた。それから目を伏せた 。
「わからないわ。いいのよ」それが会話の終わりだった。彼のイングランドは大会から姿を消し、僕にはやるべき仕事があった。
688 :
名無しが急に来たので:2014/07/09(水) 11:26:07.04 ID:RlQ20z5R0
「どうして痛み止めを射って準決勝に出なかったの?」
「きっとあんた笑うよ」とネイマールは言った。
「たぶん笑わないと思うよ」と僕は言った。
「誰にも言わない?」
「誰にも言わないよ」
「大惨敗のドイツ戦で戦犯にされたくなかったからさ」
我々はしばらく黙って歩いた。
「ワタナベ君、グラスもう一個持ってきてくれない? 」
「いいですよ。でも何するんですか?」
「これから二人でブラジル代表のお葬式するのよ」 レイコさんは言った。
「淋しくないやつを」
おお鉄!また小鉄とシバキおうとんのか!?懲りへん親父やで〜
自国開催のワールドカップでセレソンがベスト4まで勝ち上がったとき、僕のやるべきことはひとつしかなかった。
自宅やスタンドからセレソンがドイツやオランダに虐殺されていくのを眺めること― それだけだった。
セレソンの10番を背負っていたことやカメルーン戦の2ゴールでMOMに輝いたことや
そんなものはみんな忘れてしまうことにした。ベロオリゾンテの1-7の惨劇や3位決定戦の0-3の惨敗、そんな何もかもをだ。
「ギグス君、もう1個グラスを持ってきてくれない?」
「いいですよ。でも、何をするんですか?」
「これから二人でユナイテッドのお葬式するのよ」ファン・ハールさんは言った。
ファン・ハールさんはまずDF陣の「ヴィディッチ」と「ファーディナント」をとても綺麗に静かに弾き出した。
「さて、酔っ払っちゃう前に何人売れるかな。ねえ、こういうお葬式だと淋しくなくていいでしょう?」
ファン・ハールさんはプレーヤーに移り、「ビュットナー」を売り、「エブラ」を売り、「ナニ」を売り、「香川」を笑いながら売り、
「エルナンデス」や「ウェルベック」、「ザハ」、「キーン」、「クレバリー」を売った。僕はマッチ棒を11本並べた 。
「11人」とファン・ハールさんは言ってワインをすすり、煙草をふかした。
「この人たちはたしかに人生の哀しみとか優しさというものをよく知っているわね」
ユナイテッドが死んでしまったあとでも、ファン・ハールさんは僕に何度も手紙を書いてきて、それは僕のせいではないし、誰のせいでもないし、
それは雨ふりのように誰にもとめることのできないことなのだと言ってくれた 。
693 :
香川真司:2014/11/09(日) 09:36:40.16 ID:cnkV8ZZI0
「やあ、久し振り」と清武君が言った。「懐かしいな。元気かい?」
「なんとか元気だよ」と僕は言った。
清武君の笑顔は昔と変わらずさわやかで、活躍ぶりはニュルンベルク時代以上だった。
「ドルトムントの練習の帰り?」と彼は訊いた。
「どうしてわかるんだろう?」
「マンチェスター・ユナイテッドを放出されたって聞いたからさ」と彼は言った。
まるで厭味のない言い方だった。
清武君がしゃべると、周りの空気がぱっと明るくなる。
まるでアニメの魔法使いのネズミのようにだ。
694 :
横浜プロレタリア党 vs 村上春樹:2014/11/16(日) 09:51:20.08 ID:mGDiLOEA0
695 :
原博実:2014/12/20(土) 06:25:23.39 ID:ClaU0P/b0
『どうしてリーガの監督時代に八百長したの』と僕はアギーレに訊いてみた。
訊こうと思って訊いたわけではない。
それはふっと口をついて出てしまったのだ。
「僕にも確信が持てないんだ。こういう言い方って馬鹿馬鹿しいと思うだろう?
でもほんとうなんだよ。僕はサラゴサの会長から金をもらったような気がするんだ。
あの残留のかかったレバンテ戦で僕は金を受け取った。そういう気がする。どうしてだろう?
どうして僕の口座に金の振込みの記録が残っていたんだろう?
−僕は金を受け取ってそれをクラブの会長が相手クラブの選手に渡した。
でもそれが事実だという確信が持てない。本当に起こったことだとは思えない。気がするっていうだけなんだ。
証明できない。
それについて僕はずっと考えていた。でも駄目なんだ。わからない。肝心なことが空白の中に呑みこまれている」
696 :
名無しが急に来たので:2015/01/21(水) 12:04:16.46 ID:RvJ0bP2d0
■■■
通名の方々:
テレビ局・新聞社・ラジオ局・出版社・芸能人・芸術家・スポーツ選手・アダルトビデオ・性風俗・ヤクザ・暴力団・
部落(同和)・教員・大学教授・医師・弁護士、検察官、裁判官・政治家・公務員・経団連・経済同友会・公益法人・
巣鴨プリズン・明治政府〜・塾・予備校・専門学校・ 自動車教習所・ 商店街・飲食店・寺・2ちゃんねる・
■■■
697 :
名無しが急に来たので:2015/01/23(金) 19:31:40.33 ID:PbXyHEQ40
@kanburia7: サッカー負けてんじゃん!^_^;
アジア何かで躓いている様では世界では通用しない。
ずいぶん偉そうだなw
「監督人事で日本の強化委員会はいったい何をしているのかしら?」と記者が質問した。
「知らない」と僕は言った。
「スパレッティとかマガトなんかと交渉してるんじゃないかな」
「せっかくの委員会なのに、もっとサポーターやメディアの意見を聞いて取ろうとして動くんじゃないの?」
「知らないな。でも頭の構造が監督選びに向いてないんじゃないかな。つまり、君たちなんかに比べてさ」
「あなた、意外にいろんなこと知らないのね」と記者は言った。
「原君って、監督人事のことはたいてい知ってるのかと思ってたわ」別の記者が言った。
「サッカー協会は広い」と僕は言った。
「霜田君、あれなんだかわかる?」突然原専務理事が言った。
わからない、と僕は言った。
「あれ、スペインの検察庁がアギーレ監督を告訴してるのよ」
「へえ」と僕は言った。それ以外に何を言えばいいのかよくわからなかった。
「一部残留のかかったレアルサラゴサが相手クラブのレバンテに金を渡して八百長してたっていうの」
と言って原専務理事はにっこりした。
「欧米のサッカー界って八百長が盛んでしょ、
スペインでもそう。もともとスペインでは賄賂と八百長が横行してたらしいんだけど、
今回は業界の悪弊を断とうと告訴になったの。その時の監督がアギーレなの」
「そう思って見るとどことなく荘厳さがあるね」と僕は言った。
701 :
原博実:2015/02/13(金) 08:29:31.54 ID:9GkWY6gX0
僕は56歳で、日本サッカー協会の専務理事として席に座っていた。
会見場の乾いた空気が室内に暗くたちこめ、フラッシュを焚き続けるカメラマンたちや、
メモにペンを走らせる記者や、押し黙った協会幹部やそんな何もかもを
フランドル派の陰うつな絵の背景のように見せていた。
やれやれ、また監督選びか、と僕は思った。
「お願い。もう私のことは放っておいて」
本田は何も言えずにじっと黙っていた。
「本当にもういいのよ」と香川は続けた。「正直言って、アギーレ監督になってからとても楽しかった。こんなのって久しぶりだったの。だからとても嬉しかった。
色んなことがうまく行きそうに思えたわ。豊田や武藤が大はずれだった時だって、まあいいや、と思ったの。
なにかの間違いだろうってね。だけど…」
香川の声がつまり、涙の粒が香川のアディダスジャージを黒く染めていった。
「だけどね、UAE戦で延長になった辺りから、何もかもが嫌になっていっちゃったの。
もうこんな試合見たくない、もうPKなんて蹴りたくないってね」
そんなに長く香川がしゃべったのは、それがはじめてだった。香川がしゃべり終えると、長い沈黙がまた二人の間に下りた。
「悪かったと思う」と本田は言った。
香川は涙に濡れた前髪をわきに やって微笑んだ。「いいのよ。そもそもここは私のいるべき場所じゃないのよ」
香川の言う場所がドルトムントを指すのか、それとも暗闇の中を転がり続ける日本代表を指すのか、本田には分からなかった。
703 :
反町康治:2015/02/14(土) 08:54:16.31 ID:fH/szdGA0
クラブハウスの電話が鳴る。そしてこう思う。
誰かが僕以外の誰かに向かって日本代表の監督のオファーを告げようとしているのだ、と。
僕自身に電話がかかってきたことはなかった。
僕に向かって代表監督を頼む協会の人間なんてもう誰ひとりいなかったし、
少なくとも僕が語ってほしいと思っていることを誰ひとりとして語ってくれなかった。
多かれ少なかれ、誰もが日本代表の監督は海外の有名監督から選ぶのが既定路線だと、当たり前のように考えていた。
それが僕の望むサッカースタイルと違いすぎると腹が立つし、似すぎていると悲しくなる。それだけのことだ。