不定期連載小説『卞喜 〜鈍き流星の如く〜 (仮)』 (7)
卞喜が董卓暗殺に失敗したという報を聞き、王允は落胆した。金で暗殺を請け負う者たちの中で卞喜以上の評判を持つ者を王允は知らなかった。
(いっそわし自身の手で刺し違える覚悟で討つか。いや、わしの腕ではとても……)
王允は七星の宝刀を鞘から抜いて、またすぐに収めた。その様子を館で養われる若い歌妓、貂蝉が悲しげな目で見つめていた。
数ヶ月後――。
洛陽、王允の邸宅にて開かれた宴会の最中、王允は突然泣き出した。漢王朝の行く末を嘆いてのことだ。宴の参加者も一同もらい泣きする。ただ一名を除いては。
「朝廷の大臣諸侯が集まり、これは滑稽。それで董卓を泣き殺しでも出来るとでも言うのかね」
男は手を叩いて笑った。驍騎校尉の曹操、字は孟徳。後世の人間からは、好き嫌いの違いはあっても、口を揃えてこの時代の主役の一人と呼ばれる人物である。
そしてまた、後に流星鎚の使い手、卞喜が、生涯の主君と仰ぐことになる男でもあった――。
続く ( 第一幕『卞喜、董卓を討つ!?』 終 )