心の繋がりを求めながら、それが報われないという恋愛的発想は、
古代詩文の世界でさまざまなジャンルに流用されている。
これから挙げる『楚辞』からも、その代表的な例を見出すことができる。
楚辞
漢代に成立した歌謡集。
楚とは戦国時代の楚国であり、辞は「ことば」「うた」という意味であるから、
字面からすれば楚の歌謡集ということになるが、厳密にいえば秦による楚の滅亡後、
「楚の歌」として後代に伝承されていった作品をまとめたものである。
(クラシック音楽のジャンルで言うところのハンガリー音楽、ジプシー音楽のような感覚)
楚辞に収められている作品の特徴を紹介する前に、まず楚という国の性質を説明しなければならない。