元亀三年 十一月二十一日
お城に田中さんがいらしたので、またせがんでおかゆを作ってもらった。
今日はヤマイモ入りの特製だ!
田中さんはぼくと紀ノ介が食べるのを「佐吉くんも強くならなくちゃな」と言いながら
うれしそうにみてた。
しばらくして、田中さんがもじもじしながら、「聞いてくれるかい?」と切り出してきた。
うちのとのが田中さんのご主人の宮部さまを調略したとき、
人質がわりにとののご一門のおこさまを宮部家に差し出したそうだが、
「その子っていってもさ、羽柴どののご一族ってことは、大きなことでは言えないけど
そこらあたりの百姓の子なわけよ。それがたった四歳で突然親元を離れて人質に出されて、
さらにさむらいや侍女にかしづかれて大事にされて、気が動転しちゃうのも当然だよね。
最近はさらにふさぎこんじゃって部屋からも出てこなくなっちゃってね。
宮部さまになんとかならんのかと言われてるけど・・・困っちゃってねえ。
そうだ、年の近い佐吉くんと紀ノ介くんでなんとか気持ちを解きほぐしたりできないかなあ」
田中さん、初めからそういう目的で来たんだな。うーん、でもぼくも小さい子は苦手だなあ。
困った顔で横の紀ノ介を見ると、怒ったような笑ったような顔をして考え込んでいた。
とりあえず、宮部城に今度行ってみようかな。