星彩って関平が好きだったの?

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368無名武将@お腹せっぷく
好きなんだけど
それは言葉に出来ないほど好きなんだけど
その言葉を伝えるのはとても恥ずかしい
とても好きだと心で叫ぶ けれどそれは聞こえない
大人になりきれていない僕たちは

「星彩って好きな人いたりするの?」
「・・・・」
久しぶりに2人きりになれたと言うのに、いきなりその話をするか。と星彩は胸の内で呟いた。
目の前にいる関平は、相変わらず好奇心旺盛な眼差しでこちらを見ている。それとは反対に
星彩は無表情であるが、ほんの少しだけだが頬が赤く染まった。

今2人は、桃の花が咲き誇る園にいる。そこはとても綺麗な場所で、お互い幼い頃から度々父
親に連れて行かれた場所でもあった。
桃の花はあまりにも鮮やかな薄紅色で、星彩の染まった頬の色もその花に混じる。
「別に、関係ないでしょう」
「まぁたまた。言っても良いじゃないか」
「・・・・」
この男には何を言っても聞かない。それは幼い頃から知っていた。
だがこんな質問をされると誰だって困る。関係無いとは言ったが、好きな人だっているとは言って
ない。彼は「いる」を前提にその答えを自身に追求した。
「・・・好きだった人ならいたわ」
「それって趙雲殿?」
「まぁね。関平もずばずば言うのね」
「あはは、ごめん」
「別に、謝ることもないでしょう」

確かに趙雲に恋した事もあった。しかし先程口に出したように彼にはもう想い人があり、
あっけなくその恋は終わった。
大体年月が経ったものだから、星彩はその事を思い出しながら両手に持っている盃を口に当てた。
それから少し酒を喉に通し、いつ飲んでも美味しくないなと少し苦い顔をした。
関平も星彩と合わすように、同じく盃を口に当てる。
369無名武将@お腹せっぷく:2006/01/01(日) 20:02:59
「どうしたの?」
「何でだろう。でも振られた時はすごくショックだった」
「ふーん・・・」
「振られたって言うか、趙雲殿は同じく好きな女性がいるみたい。それを聞いただけなんだけどね」
「片想いってやつ?」
「そんな所。・・・所で、関平にも好きな子はいるでしょう?」
今度は、と星彩は同じ事を関平自身に聞いた。

相変わらず酒を飲みながら話を聞いていた彼だが、その動作が盃を口に当てたままピタリと止まる。
そして次第には星彩や桃の花以上の紅色に染まり、元通りの顔色に戻るわけでもなかった。
好きな子はいるのだけど、それは君自身でもある。
本当に好きだ。けれど言葉に出せない。
目の前の星彩は、相変わらず冷静な表情でこちらに視線を送る。
その瞳、綺麗な顔立ち、全て。ずっと小さな頃からの片想いであった。

「拙者は・・・別に」
「またまた。別に言っても良いじゃない」
先程と立場が逆になる。今更ながらに、こんな話振るんじゃなかったと後悔。
相も変わらず酒を運ぶその手は止まったままであり、顔は紅ではなくもう朱色。
おまけに動揺した物言いに、自分自身情けなく恥ずかしい。
そのくらい彼女に惚れていて、言葉に表したいけれど恥ずかしくて。
370無名武将@お腹せっぷく:2006/01/01(日) 20:03:30
「関平?」
「な、何!?」
「何って、いきなりどうしたの?もしかして酔った?」
「あ、あぁそうそう!何か酔ってきてしまって」
「珍しいね、大丈夫?」
「あぁ、大丈夫」
何とか誤魔化せたとほっと一息吐く。
彼女の整った顔は、いつの間にか自身の目の前。気が付いた時にはどうしようとしか思ってなく、その場に
いられなくてつい立ち上がった。冷静な素振りを見せようと必死になる。

「少し風に当たってくるよ」
「うん、分かった・・・」
その後は星彩に背を向け、もうどこまでもと言って良いほどに歩き続けた。
あぁ、自分は女の子1人置いて何をやっているのだ。本当に情けない男でしょうがない。いつの間にか頬を両
手で抑え、心臓が早く脈打つのが分かった。

桃の花はそれにもお構いなしで、ただ咲き乱れるだけであった。
関平の背を視線で追い続ける星彩も、同じくらいに顔が朱色に染まっていた。
ただ無言でその背を見つめ、何を思っていただろう。それは星彩自身しか知らなかった。

こんなにも好きでしょうがないけど
言葉に出せない情けない男と女よ
こういう所は大人になりきれてなく、まるで素直じゃない子供の様で