「それは違うな、伯符。」
司馬懿さんが答える前に、周瑜さんが答えを引き取っていきます。
理由は大きく四つある、と指を四本立てて
「一つは、あのヘリは警察所有のものとは思えないこと。
二つ目は、真実あれは我々の味方で、テロリストを狙ったのならば、
渡り廊下を落とすほどの攻撃をするまい。
三つ目は、攻撃を仕掛けた後、こちらに何の反応も示さずに立ち去ったことだ。
もし、味方ならば、着陸できずとも我々の安否くらいマイクか何かで訊ねてくるだろう。」
ここまで一気に捲くし立てながら、三本の指を順に折っていきます。
「で、四番目は?」
三本まで折られた指に残りの一本の指を指して、続きを促せば、
周瑜さんは、実に美しい笑みを、それこそ名工の手による芸術品の如く美しい笑顔で
四本目の指を折り、グッと握り拳を作ると、
「・・・私の美しい髪を焦がしたことだ。」
目から鼻へ抜ける怜悧さを持つ美貌の軍師、周瑜さん。
しかし、その傍にただずむ陸遜さんのヤケクソ染みた笑いの陰で、
その場にいた全員が大きく周瑜さんへの認識を改めたのでした。
旅は道連れ、世は情け。波乱万丈修学旅行。
頑張れ、徐晃さん!ファイト! タイムアップまであと12時間7分!
真偽の程はともかく、司馬懿さんから衝撃の事実を付きつけられ、場が揺れる中、
「しかし、拙者達を始末するメリットがさっぱり分からんでござる。」
徐晃さんから控えめな問いが持ち上がりました。
「…徐晃さんには、解らんでしょうな。」
徐晃さんの純粋さゆえに疑問を持つだろうことに、
張遼さんは苦々しい自嘲の笑いを刻んでいました。
その人の好さに、伝えるのは少々酷かと思いつつ、司馬懿さんは口を開きました。
「客観的に、この状況で何が見えるかというと…、」
悪党のテロリスト、被害者である人質、それに敵対する政府。
この三者と、この事件を見守る一般民衆です。
あくまでも仮定ですが、もし、我々を含む人質がことごとく死んだとします。
すると、観客である一般民衆の目には、
テロリストは、多くの殺人を犯した忌むべき犯罪集団に、
人質は、悲劇の犠牲者に、
そして、テロリストに敵対する政府は、悪者に立ち向かい復讐をしようとするヒーロー、
と映るようになるのです。
それこそ、民衆の支持を得て。
「我々が死ねば、政府はテロリストを徹底的に叩きのめす大義名分を得る。」
そう締めくくられた答えに、
袁紹と言う男の、いいえ、人間の持つ冷酷非情な一面を見せ付けられ、
徐晃さんは、鳥肌がたちました。
しかも、とさらに司馬懿さんは追い討ちをかけます。
「ここは、豪華とは言え、一般的なホテルだ。
今回、宿泊客は我々修学旅行の集団がほとんどを占めていることと、
ホテル内の細々した物に英語が表記されていないことから、
外国人客は少ないと考えられる。
言うまでも無いが、京都ならいくらでも海外の客向けの宿があるから、
恐らくは、そっちに海外旅行者は流れているんだろう。」
司馬懿さんが何を言いたいのか分からず、怪訝に眉を寄せれば、
「つまり、ここは日本人の客ばかりだと考えられる。」
外国人がいないと言うことは、
海外諸国からの、人質解放に向けての助力、または圧力はあまり期待できず、
また、政府は、徐晃さん達を見殺しにしても、被害者が自国人のみならば、
国際関係上は、大きな問題になりにくいと言うことなのです。
それどころか、もしかしたらこれを機に、他国の同情を呼び、
テロリスト対策に対して、外交上有利になれる可能性すらあるのです。
他人事のように淡々と語られるその内容に、徐晃さんは色を失いました。
正直、胸に堪えたのです。
自分が温室育ちとは思いません。
それなりに社会の荒波に揉まれ、苦労してきたつもりです。
しかし、こんなにも、人の悪意の真ん中に突き落とされたのは初めてでした。
何のかの言いつつ、自分は何と周りの人間の廻り合わせに恵まれてきたことでしょう。
やり切れなさを含んだその衝撃は、
徐晃さんを不信と不審の狭間に追いやり、暗い影を落としたのでした。
旅は道連れ、世は情け。波乱万丈修学旅行。
頑張れ、徐晃さん!ファイト! タイムアップまであと12時間!
当たり前ですが、普通の生活を送っている限り、
盗聴器なんて滅多にお目にかかるものではありません。
まじまじと物珍しげに夏侯惇さんは、壊れた盗聴器を眺めていましたが、
不意に顔をあげると、
「何故だ?」
と、質問の内容さえわからなくなるほどに省略した疑問を口にしました。
しかし、「どうして盗聴されていると分かったのか」との意味を正確に読み取り、
司馬懿さんはこれまた簡潔に
「我々の行動が読まれ過ぎているからだ。」
事実ならば、非常に重大であることを認識していないかのように
あっさりと言い放ちました。
「難なく別館を制圧できただろうが。」
腑に落ちん、と、手にしていた盗聴器を司馬懿さんに放りました。
放られた盗聴器を、司馬懿さんは羽扇で弾き飛ばし、
「我々は別館を制圧した。
しかし、それは我々の武力が相手に勝っていたからだ。」
実にタイミングよく次から次へと敵兵が現れて来ていたのは確かです。
まるで、徐晃さん達の進行ルートを把握しているかのように。
「確信したのは、あの兀突骨と瓊英とか言う二人組が現れた時だ。」
弾き飛ばされてきた盗聴器を、これまた生まれてはじめて見たらしく
子供のように弄くり回す徐晃さんに、チラリと視線をやった後、
「この緊迫した状況下で、腹を減らして鍋を食う集団が何処にいる。」
「…。」
徐晃さんの手から盗聴器がポトンと落ち、
無言でそっと肩に置いてくれた張遼さんの手は温かいものでした。
「つまり、我々の和やかに食事とる行動は、敵にとって想像の範疇外。
普通ならば、我々が厨房に集まっていることなぞ分かるはずないのだ。」
「でも、そこはそれ、妖術のせいじゃ…」
「頭を冷やせ、馬鹿めが。」
にべも無く切って捨てる司馬懿さんに、孟達さんは正直カチンとしました。
「妖術なんて一言にまとめて逃げてしまえば、容易かろうがな。」
そう言い切った目は、事実のみを重視する冷徹な軍略家のものでした。
そもそも妖術なんて、科学の発展したこの現代社会において
滅多に存在し得るものでは無い、との司馬懿さんの意見。
…では、司馬懿さん、
貴方の羽扇から出るその光線は何なんだ、と訊きたいところですが。
思い返してみれば、おかしいと思わなくもありません。
何故徐晃さん達は平気だったのか?
徐晃さん達は多少変わってはいますが、超能力者でも何でもないのに。
どうしても言葉がきつくなってしまう司馬懿さんに代わり龐統さんが、
「人間は何かってぇと騙されやすい動物ですからね。
そこを如何に巧く利用するかってことっしょ。」
言っていることは、かなりキツイのですが、
そのおどけた口ぶりのせいか、不思議と耳に障りません。
「…あの頭痛や耳鳴りは」
「あんなもの、夕食に何か薬でも混入しておけばちょちょいのちょいでさ。」
「現に、一番たくさん平らげていた徐晃が、
一番、目を覚ますのが遅かったではないか。」
「…。」
またしても槍玉にあがってしまった徐晃さん。
そして今度は反対側に座る張郃さんの、
無言で肩に置かれた手を温かく感じたのでした。
「でも、人が消えているのよ?」
いくら司馬懿さんの言うことに説得力があったとしても、
人が消えるというのは尋常じゃありません。
孟達さんが、妖術か何かと思うのは致し方ないのです。
そして、孟達さんの意見に同意するように夏侯淵さんが後押しします。
「ここに引き返して来る時確認したけど、
私たちが別館制圧に向けて倒した敵兵の姿も、綺麗さっぱり消えているのよ?」
本館に行くには、先程破壊された渡り廊下を通るしか道はありません。
しかし、その道を進んでいた徐晃さん一行と、
かち合わずにどうやって本館に戻るというのでしょう。
仮に食事をしている間に移動したとしても、
怪我を負っている状態で、並みいる猛将の目を盗んで、
厨房前、ひいては渡り廊下を通過するのは困難です。
それに、あの凸凹コンビこと兀突骨さんと瓊英さんも消えているのです。
爆発の直前まで徐晃さん達と数メートルも離れてない所にいたのに。
爆発に巻き込まれて死んで吹き飛ばされてしまったかとも思いましたが、
「それはないぜ。」
一番近くで対峙していた甘寧さんが断言し、それに司馬懿さんも頷きました。
「死んだなら微かなりとも血の臭いか、たんぱく質の焼ける臭いがしてもいい筈だ。」
「…やっぱり妖術なんじゃない?」
事実とは言え、あまり具体的には考えたくない発言に、
孟達さんの声も苦みを含んだものなります。
「それともう一つ考慮して欲しい点がある。
さっきも言ったが、ここは一般的なホテルだ、宿泊客のほとんどが日本人のな。」
日本屈指の観光地である京都は、たくさんのホテルがあります。
勿論、ここより立派なホテルも山ほどあります。
その中から、何故、このホテルが標的になったのでしょうか。
確実に目的を遂行するためなら、海外からの客が多い方が
他国から政府に圧力もかかり、ことは容易に運ぶ可能性が高いのです。
それとも、絶対、このホテルでなければならなかったのでしょうか。
そこに張遼さんが、徐晃さんが落とした盗聴器を繁々と見遣りながら、
「この盗聴器、少々旧式ですな。」
人を食った薄ら笑いを浮かべました。
それが一体何だというのか、問い詰めたくなる発言でしたが、
「待ってください。」
陸遜さんの悲鳴にも似た声が、部屋を支配しました。
このホテルでなければならなかったのは。
「ホテル内に私たちの知らないルートがあると?」
陸遜さんの驚いた声に、
「もしくは造ったか、だ。」
司馬懿さんは強く頷きます。
「でも、別館全部見回したけど、そんなところ見当たらないわよ?」
夏侯淵さんの言うことは最もです。
別館制圧のため、少なくとも別館内はスタッフオンリーとの部屋ですら、
余すところ無く駆け巡ったのですから。
ここに、我々の知らない道を既に造ってある。
そう言われても、実物を見ていない以上実感が湧きません。
「何も、廊下のようにきちんとした通路とは限らん。」
大型通風孔やダストシュート、人が通れそうな空間は、探せばたくさんあります。
あの凸凹コンビも、爆発の瞬間、危険を察知して、
近くの何かのルートを使用して避難したと考えられます。
「待て、それだと矛盾が生じないか?」
それでは、俺たちが、他の人質同様連行されなかった理由にならん、と
夏侯惇さんが意義を唱えます。
見落としたとも考えにくく、司馬懿さんはちょっと逡巡し、
「これは、恐らくだが…、各自の部屋の近くに、このメンバーが通れる大きさの
通路が無かったのだと思う。」
周泰さんをはじめ、軒並み平均身長を突き抜けた高身長の集団。
しかも筋肉質で重いときます。さぞかし重労働となるでしょう。
それぞれの部屋の近くに、それぞれの通れそうなルートが無いならば、
多少無理をしても、少し離れた別ルートを使用すればいいことです。
では何故それをしなかったのでしょう。
「時間だな。」
ことを起こし成功させるには、人質を手に入れ己の守りを固めるまでを、
如何に迅速に行動するかにかかってきます。
部屋に近くに、通れそうなルートが無い、かと言って、
別ルートのところまで運んでいては時間がかかり過ぎる。
ならば、仕方ないが、放置しておくしかないとの判断なのでしょう。
部屋に一人でも、通れなさそうな者がいたら、他に通れそうな者がいても、
部屋のメンバー全員が起き出して騒がれでもしたら面倒ゆえ、
その部屋のメンバー全員放っておこう。
そう思ってのことなのでしょう。
「では、私などは周泰殿の背の高さに助けられたと。」
「・・・・・・。」
背の高さ以外には助けられてないのか、と
ちょっと周泰さんは陸遜さんに突っ込みたくなりましたが、やはり黙っておきました。
目が覚めた時の身体の不調と、周りの部屋から人が消えていること、
これらを、妖術と恐れおののき、
また、武装した兵士があちこちに配置されていること、
普通なら、外部の情報を人質に知らせないため、
テレビなど見れなくすることが多いのですが、
わざとテレビの線などを切らずに残しておき、
テレビの情報からテロが行われていることを知らせば、
大人しくしていることと思ったのでしょう。
ま、全て誤算だったわけですが。
「盗聴器も恐らくほとんどの部屋や廊下に仕掛けられていることでしょうな。
我々を監視するために。」
張遼さんは、忌々しげに握り潰したそれをパラパラと手から落とし、
「しかし、そのようなルートの存在や、盗聴器が仕掛けられていたことを考え申すと…」
徐晃さんが、そのパラパラと散らばされた盗聴器だったゴミを
生真面目に掻き集めて片付けつつ、眉間に皺をよせました。
テロリストたちは自分たちが思っている以上に、
かなりの根深さを持った大きな組織と考えねばいけません。
建設業者や工事関係者や従業員など、それらの中にも
テロリストの一味が入っていたのでしょうか。
徐晃さんにとって、自分たちに営業用とは言えど、
笑顔を向けてくれた従業員さん達に
刃を向けることになるかもしれないのは、少々気の重いことでした。
そんな徐晃さんの優しさゆえに生じる甘さに不安を覚えつつ。
司馬懿さんが、発破をかけます。
「今回の事件が、いつから計画されたものなのかはわからん。
だが、盗聴器が旧式であることから、結構前から計画は練られ、
準備は進められていたのだろう。」
そこで一息つき、
「これがどういうことか分かるか?」
低い、力のこもった声でした。
ポッとでの思いつきとは違うということ。
覚悟が違うということなのです。
旅は道連れ、世は情け。波乱万丈修学旅行。
頑張れ、徐晃さん!ファイト! タイムアップまであと11時間45分!
騙された記念カキコ
134 :
モルジュ ◆OPPAI.s4YE :05/01/09 00:27:49
_ ∩
( ゚∀゚)彡 張遼!張遼!
⊂彡
張遼と徐晃の絡みだけでハァハァ
_ ∩
( ゚∀゚)彡 徐晃!徐晃!
⊂彡
保守
_ ∩
( ゚∀゚)彡 期待age!期待age!
⊂彡
もっとネタを!
_ ∩
( ゚∀゚)彡 張遼!張遼!
⊂彡
保守
徐晃って関羽撃退したから演義で孟達に射殺されたのかな?
逆恨みもいいとこだ、フォッフォッフォッフォ。
141 :
無名武将@お腹せっぷく:05/02/07 01:47:58
アゲ
142 :
無名武将@お腹せっぷく:05/02/14 22:46:08
職人さん待ちage
頼む
ageなさんな
肥の三国志IIをやった時、徐晃さんに偽書疑心をかけたらコロコロとかかるのだが、敵中作敵には全然ひっかからんかった
騙されやすい割に愚直なところがこのスレの徐晃さんっぽくてニヤリとした
マダー?
ホシュっとく
職人さん待ち
保守っとな
149 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/03/27(日) 20:34:30
150 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/04/07(木) 23:01:29
_ ∩
( ゚∀゚)彡 徐行!徐行!
⊂彡
151 :
コンビニにて 1:2005/04/09(土) 20:09:18
「どうして俺にゃ出演交渉がこなかったんだろうな。日本映画のプロデューサーとやらも、その実、目は節穴と見える」
午前二時。
事務所に隠れ、郭嘉さんはグラビア雑誌をめくりつつ、廃棄処分になった皮のぶよぶよにふやけたピザまんを
頬張っています。
無念をにじませたその愚痴は、夏に公開予定の映画『サンゴク・ボーイズ』も無事クランクアップし、
傍らで再びコンビニのアルバイトに精を出し始めている徐晃さんへの当てつけでしょう。
「黙ってても怜悧な叡智をかもし出すこの端整な美貌、極限まで絞り込まれた容姿、
すれ違う女を片っ端から落とす双眸が目に留まらず、掃いて捨てるほどいる脳筋野郎を持てはやすなんざ、
世も末ってもんだね。なぁ」
「郭嘉殿ほどの器は、ハリウッド級でないと収まり切らぬと踏んだのでござろう」
「おぅおぅ、余裕ができた人間ってなぁ違うもんだ。舌もすっかりなめらかになってやがるぜ」
相も変わらずの毒舌に苦笑を浮かべる徐晃さんですが、その指摘に反駁することはありません。
出演料は幼い兄妹、太郎と花子の将来の奨学資金に、定期預金へ手を一切つけず封印したことは
あくまでも私的な話であり、口の端に乗せる必要もないことです。
自分の苦労を二人に背負わせることだけはするまい。
義侠をたっとぶ徐晃さんらしい選択でした。
「へっ。関羽も孟達も、今やアイドルの仲間入りってか。見ろよ」
夜も濃く深く、棚の前で雑誌を立ち読みする客以外には誰もおらぬ売り場を監視するモニターを気にかけつつ、
郭嘉さんが広げたページに目を流します。
「おっ、おおっ」
澄み切ったプールの水面から濡れそぼる上半身をもたげる、ビキニ姿の関羽さん。
清楚なワンピースに身を包み、咲き誇る桜の枝の下にたたずむ孟達さん。
普段の男勝りな気丈ぶりはいずこへやら、はにかみを含んだ微笑みを穏やかにたたえる二人は、
多くの不特定男性の目に触れる被写体になることにもまんざらではない様子でした。
「フォトジェニックっていうのかねぇ、こういうのは。いざ、テレビやら雑誌やらに出てみれば
なかなかに映るってのは」
「拙者、難しいことは判りかね申すが…」
「複雑だろ、貴様」
あでやかな肢体に頬と耳朶を赤らめる純情な徐晃さんに、郭嘉さんが舌鋒鋭くたたみかけました。
片や、レースクィーンの職をつかみ、片や、現役女子高生アイドルの肩書きを手にし、一躍、
それぞれのシーンで新星となった二人とは会う機縁もなく、一抹の寂しさを感じていたのは事実でした。
「そ、そんなことはござらぬよ。二人を応援することはござっても、嫉妬するなどは夢にも思わぬでござる」
「そうでなくってだな…」
ペットボトルに残った緑茶をぐっと飲み干すと、郭嘉さんは溜め息をこぼしつつ、頭を掻きました。
「俺も野暮なことはいいたかないんだが。まぁ、直截にいや、関羽とも孟達ともこのままの距離で
いいのかってことだよ」
「そ、それは…」
周囲に微妙な関係を目ざとく察せられていたことなど忘れ、徐晃さんは考え込んでしまいました。
「やれやれ。狭いロケ現場に男と女。何かあってもおかしくはないんだがなぁ」
「な、何かとは何でござるか」
「ま、そこが貴様らしいっていやぁ、貴様らしいところだな」
郭嘉さんは読んでいたグラビア雑誌を丸めて徐晃さんの頭を軽く叩くと、不器用な奴め、と一言ののしり、
レジに立った客の応対へ立ち去っていきました。
「いらっしゃいませ。こちら、サラダはドレッシングが別売りになっておりますが、いかがなさいますか」
瞬時に猫をかぶって丁寧に説明する郭嘉さんを背に、徐晃さんは椅子に腰かけたまま、手を握り、目をつぶり、
今までの二人との間にあったことをじっと頭の中で反芻します。
元気づけの感謝に、ぬくもりの残る手袋を渡していった関羽さん。
仲違いの相談に乗り、デコピンを炸裂させていった孟達さん。
どちらも徐晃さんにとってかけ替えのない存在でした。
「友人、でござるか…? 拙者にとって…、二人にとって…」
o( ^(,,ェ)^)o
この過疎スレ、乗っ取ったりクマー!
勝手に書いてくクマ。ご免候クマ。
156 :
名無し:2005/04/27(水) 18:31:17
キターw
保守
職人さんコナイ・・・
保守
張遼さんは、我が耳を疑い、もう一度徐晃さんの顔を覗き込みました。
「それ、一本失敬してよろしいか、張遼殿」
確かに、いつもの明朗快活とは縁のない溝を眉間に刻みながら、徐晃さんは煙草を所望したのです。
徐晃さんらしくもない、と苦笑しながら応え掛け、しかし、喉に詰まらせました。
太陽が西に傾いた、晩春の午後。
校舎の屋上の、魏高のラリホー使いと渾名される孔融先生の退屈な儒学の授業をサボった二人の姿は、
肌に優しい風の中に溶け込んでいくかのようでした。
「徐晃さん」
溜め息を一つこぼした後に、張遼さんは新発売の、鈍く銀色に光るセブンスター・ライトの箱を開け、
徐晃さんに差し出します。
邪気や好奇心に基づいた言葉でないことは明らかでした。
己にあらぬ己へ変貌したい願望を、人間ならば誰しも一度ならず持つものです。
それは、冷徹な視線を傾ければ、単なる現実逃避といえるかも知れません。
しかし、全能の神ならぬ身を自覚すれば尚のこと、そこまで追い詰められた心境に陥っているに相違ない徐晃さんに
安易な同情の念を注ぐこともできず、ただ、張遼さんは見守ることを選んだのでした。
「かたじけない」
慣れぬ手つきで一本を摘みとった徐晃さんの目前に、火を点けたジッポ・ライターを向けます。
「ゆっくりと、胸を使って吸い込むように、そう…」
生臭い苦さに顔をしかめつつ、しかし、その苦さをこそ望んでいたように、徐晃さんは続け様に吹かします。
二人の間から二筋の煙がたなびいて宙に散っていく光景を、張遼さんは、懐かしい物に触れるかのような
眼差しで眺めていました。
「花の季節ですな」
「花…」
「惜し気もなく豪奢に咲く花もあれば、人知れず可憐に咲く花もありますな」
ふと下を見やれば、校舎の窓際に設えられた花壇には、園芸部の活動の甲斐もあり、点描のようにヴィヴィッドに、
様々な種の花が桜のそれと入れ替わるように咲き誇っています。
「貴殿は、花は好きですか」
「…嫌いではござらぬが…」
「私も、嘗ては好きでもなかったものです」
徐晃さんは目を丸くしました。
張遼さんが過去を吐露するなぞ、未だないことだったからです。
「昔、高順という女がいました」
「…高順、殿」
「いつでも私と共立って、しかし、危地に斬り込めば私の先を歩き、死地に踏み込めば私の身をかばう、
そんな女でした」
張遼さんは目をつぶって、自嘲するように口元をほころばせました。
「死ぬことなど気にも懸けなかった私が、死を怖れるようになりました。死んではいけないと思うようになりました。
しかし、死なぬように努めることもなかった。どうすればそうできるのかを知らなかったのです」
「…」
「若かったのですよ。私だけが」
徐晃さんは声も出ませんでした。
その暗い顔に、しかし、不思議と濁りや淀みが感じられなかったからです。
「すずらんの好きな女でした」
感傷的に勘が働いたのか、或いは、花の咲く季節が巡る毎に思い出すのか、らしからぬ饒舌を働かせた張遼さんは、
そう言葉を締めくくり、新しい煙草をくわえて火を点けました。
硬派に身をやつし、女性を近寄せもしない張遼さんが覗かせてくれた心の扉の向こうにあったのは、
過去を省みて耽らずに今日を生きる漢の矜持でした。
「張遼殿…、張遼殿! 拙者のやるべきことが見つかり申した。ご免!」
深々とこうべを垂れて一礼を示し、徐晃さんは階段口へまっしぐらに駆け出して行きました。
「やれやれ、孫堅先生に見つかったら大目玉ですぞ」
コンクリートの上に残された焦げたフィルターを拾い、親友が己と同じ轍を踏むことのないように祈りつつ、
張遼さんは携帯灰皿にそれを収めました。
163 :
クマクマ:2005/05/14(土) 02:11:01
o( ^(,,ェ)^)o
久しぶりに時間ができたので書いたクマ。
微妙に登場キャラの性格設定が違ってるけど、気にするなクマ。
他の職人さんも書くクマー!
職人さんたちガンバレ♪
G&J。
援軍はまだかー!?
まちぼうけ
いい加減諦めよ。
このスレの黄金期はもう終わったんだ。
ここには厨しか残ってない。