〜漢中〜
郭淮「夏侯将軍 週末うちで張コウ将軍たちとパジャマパーティーしない?」
夏侯淵「あ─ ごめんなさい あたし殿のいる業阝に見舞にいくの」
郭淮「え?」
夏侯淵「あ 言ってなかったけ? 殿、頭痛が酷いから 空気のいい業阝の別荘で暮らしているの」
郭淮「へぇ ずっと? 苦しんでしょ?」
夏侯淵「ものごころついたころからだもの 慣れたらしいけどね」
夏侯淵(でも今度はとくべつ だってはじめて殿のほうから誘ってくれたんだもの♪)
〜曹操亭〜
曹操 RRRRR(夏侯淵に電話をかける)
淵『あっ 殿? 支度できたわ これから行きます』
曹操「そう 一人で大丈夫?」
淵『平気よ 夏侯覇はお仕事でいけなくて残念だけど………』
曹操「気をつけていってらっしゃいね あなたに会えるのを楽しみにしてるわ」 チン!(受話器を置く)
荀ケ「殿 何を考えていらっしゃるんですか?
どうして急に夏侯淵様をお呼び出したりなんか……」(顔面蒼白)
曹操「あら 荀ケ 主君が部下に会いたがるのになんの不思議があって?」
荀ケ「でも……… いままではどちらかと言えば 避けておいででしたのに………」
曹操「……………」(ニヤリ)
〜業阝 曹操亭前〜
淵(やっと殿の別荘が見えてきたわ!)
『 出 て お い き 』
淵(!?)
フワ……(曹操亭の南はしの部屋のカーテンがしまる)
淵(あれはたしか使ってない部屋だわ お客様?)
曹操「淵」
淵「殿 おかげんいかが?」
曹操「ありがとう 相変わらずよ」
荀ケ「いらっしゃいませ 夏侯将軍」
淵「荀ケ」
荀ケ「まあ お会いする度に きれいにおなりですね」
淵「いやね 荀ケ」
曹操「………………」
〜酒宴中〜
淵「そうだ 殿 どなたかお客様が見えてるの?」
曹操「いいえ どうして?」
淵「南はしの部屋に人影が見えたから」
荀ケ「──────ッ!!」 ガチャ─────ン (杯を落す)
荀ケ「も……… もうしわけありません とんだそそうを………」(顔面蒼白)
淵(荀ケ?)
曹操「淵 漢中のことを聞かせてちょうだい お友達はたくさんいて? 調練はちゃんとしてるの?」
〜就寝前 淵の寝室〜
淵(よかった 殿 お元気そうで………
それにあんなふうに笑いかけてくださったり おしゃべりなさるなんて初めてだわ)
『 出 て お い き 』
淵「だれ!?」 ビクッ(人の気配に気付く)
(※なんと、淵そっくりな武人が立っている)
淵(なんだ鏡……… ちがう! あんなところに鏡なんか………!)
武人『出ておいき ここから出ておいき』
淵「きゃああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」
荀ケ「どうなさいました 夏侯将軍!」
淵「荀ケ こわいっ 気味の悪い武人が……… そこに立ってたの
あたしにそっくりの………… だけど……… だけど顔半分が…………」
荀ケ「夢でもごらんになったんでしょう」
淵「ちがうわ!」
荀ケ「さあ おちついて 静かになさってください……… 殿が………」
淵「………ごめんなさい」
荀ケ「おやすみなさいまし」 (淵の部屋を去る)
淵(あれは絶対夢なんかじゃなかったわ)
曹操「元譲 どこなの 元譲」
淵(殿の声?)
淵「殿 どうなさったの?」
曹操「元譲? …………ちがうわ あなたは元譲じゃない」
淵「殿? あたしは妙才よ 元譲って誰?」
曹操「……………」(去っていく)
淵(殿? どうしたの いったいどういうこと?
へんだわ みんな なにかあたしに隠しているみたい)
〜次の日〜
淵「荀ケ 元譲って誰?」
荀ケ「夏侯淵将軍?」
淵「もう一人 ここに武将がいるんでしょ 元譲って字の………」
荀ケ「ま……… いったいなにを………」(顔面蒼白)
淵「教えてくれないのね いいわ自分で探すから」
荀ケ「おまちください!! 夏侯将軍!!」
淵(あそこだ 南はしの部屋!)
〜南はしの部屋〜
淵(よく手入れのゆきとどいた 武人らしい部屋………
つかってない部屋なんかじゃないわ やっぱりここにいたんだわ)
(※左半分を粘土で埋め潰された鏡を発見)
淵(なに? この鏡 半分ぬりつぶしてある)
荀ケ「夏侯将軍」
淵「荀ケ ここにあの武人が住んでいるんでしょ あたし昨夜見たのよ
いったい何者なの? 教えて 知ってるんでしょ 荀ケ」
荀ケ「…………このことは 殿にかたく口止めされてました
ここに住んでいらしたのは 夏侯淵将軍の従兄…………夏侯惇さまです」
淵「惇兄さま? だって……… あたしは一人っ子…………」
荀ケ「お若い時………… 夏侯惇さまは顔に酷い傷をおわれたのです
それで……… 殿とわたしがずっとここでお世話してました」
淵「どうしてお従兄さまがいることを あたしにかくしてたの!
こんなところに………… まるで閉じ込めるみたいに……… ひどいわ」
曹操「ひどいですって? 元譲をあんな顔にしたのはね………」(突然登場)
荀ケ「殿! おやめください!!」
曹操「淵! あなたなのよ!!」
淵「─────ッ!!!」
曹操「あなたはまだ30歳だったわ
曹性の弓部隊の前で ふざけてあなたが元譲を突き飛ばしたのよ そのために元譲は…………
元譲は家名を守るために こんなところに自らを閉じ込めてしまったのよ
あの子を愛しているのは わたしだけだった
なんにも知らず 武功を一人占めにしているあなたに元譲の気持ちがわかって?」
淵「………お惇兄さまに会わせて」
曹操「もう遅いわ あの子は………
わたしの元譲は死んだのよ あなたが漢中で楽しくやっているあいだにね………」
淵(死んだ? でもたしかに姿を…………)
荀ケ「ひどいことを……… 夏侯淵将軍に罪はありません
お若くてなにもおわかりにならなかったんですから
夏侯淵将軍 漢中にお戻りになってくださいまし ここは将軍のためによくありません」
淵「………戻ってどうするの? 何もかもわすれて 今まで通り暮らすの?
そんなことできないわ お惇兄さまはあたしを恨んでいるのよ あたしがお惇兄さまを………
あの部屋で……… 半分塗りこめられた鏡を見て 毎日 毎日…………」
〜その夜〜
荀ケ「もしもし(電話) 郭淮殿ですか? わたくし荀ケです
すぐいらして夏侯淵将軍を連れ戻してあげて下さい 殿が夏侯将軍のことを…………」
曹操(ドスッ) 荀ケをナイフで刺す
荀ケ「あう………!」(死亡)
曹操「………………」
郭淮『もしもし? 荀ケさま? 荀ケさま?』
淵「荀ケ どうかしたの? 荀………」 ギクッ(夏侯惇の亡霊(?)に気付く)
惇『出ておいき』
淵「あ……… ああ お惇兄さま」
惇『ここから出ておいき』
淵「ゆるして お願いゆるして きゃああああああぁぁぁぁぁぁ」
淵「たすけて 殿!」
曹操「どうしたの? 真っ青よ こっちへいらっしゃい」
淵「殿……… お惇兄さまが………」
曹操「元譲はもういないわ」
淵「いいえ いるのよ どうしたらお惇兄さまに許してもらえるのかしら」
曹操 ぐっ(夏侯淵の肩を強く掴む)
淵「殿? いたいわ はなして」
曹操「元譲に許してもらいたいのでしょう? あなたも元譲と同じ顔になればいいのよ
そしてあの部屋で一生暮らすのよ」(淵の片目に弓を向ける)
淵「やめて 殿 やめて いやあっ!!!」
………中途半端に終わる orz