週刊それがしのおやかたさま

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602無名武将@お腹せっぷく
それがしのお館さまはお兄ちゃん。
お館さまのためにもっと役立ちたい。そう、それがしずっと思ってた。
でも、戦じゃちぃ兄ちゃんや家久の方が強くって、それがしは見劣りしちゃうの。
だから一生懸命考えたんだよ。考えて、考えて。そして、思い付いたんだ。
冷静になろう。醒めて行こう。ちぃ兄ちゃんや家久は牽引役。だったら自分は歯止め役をしようって。
それなら、それがしにしかできないご奉公がきっとできるはずだからね。
それがしたち四兄弟の力があれば、大友にも竜造寺にも、絶対負けないよ!

でもね、お館さまは負けちゃった。
相手が天下人じゃ勝てないよ。…そう、わかってたのに。
秀吉への降伏を決めたとき、お館さまはそれがしに「すまない」って言ってくれたよね。
そのとき、それがし、自分の役目がわかっちゃったんだ。
これからは厳しい時代になる。お館さまの決定に不満を持つ家臣も現れる。
それがしはそうした家臣たちを、味方のフリして抑え込むんだ。
ふふ、こんなことちぃ兄ちゃんにも家久にも絶対出来ないことだもんね。

ごめんね、お館さま。
それがし、頑張ったんだよ。でも、ダメだった。
もう身体が動かないんだ。へへ、情けないよね。
家臣の反乱を止められなくて。秀吉がカンカンに怒って。
そんなそれがしの手を取って、お館さまはただただ泣いていたよね。
うん、わかってる。嬉しいよ。こんな身体でも、まだ役に立てるんだ。
それなのに、可笑しいよね。刺客のみんなったら泣いてるんだもの。
ダメだよ、情に流されちゃ。それがしの首を取らないと、みんな秀吉に潰されちゃうんだよ。
「誰か早くこの首を取れ!」これが、それがし最後のご奉公なんだから。
さようなら、お館さま。さようなら、お兄ちゃん。ずっとずっと、大好きだよ。


第八十七弾 島津歳久