THE本能寺〜覇王の後継者〜

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27無名武将@お腹せっぷく
1582年
京都本能寺にて、明智光秀の軍勢に包囲された織田信長は、最後の奮闘を繰り広げていた。
信長は自害する為、本堂に火を放つが、そこへ信長の首を獲ろうと明智勢の兵が殺到し、
森蘭丸成利以下小姓達が信長を守ろうと必死の防戦ぶりを見せる。
その時、凄まじい閃光が信長と蘭丸達を包み、彼等の姿は消えてなくなった。

明智光秀は本能寺の焼け跡が信長を遺体を見つけ出す事ができなかった・・・。

1599年
炎の中で腹を切ろうとしていたはずの信長は、辺りが静まり返っている事を知り、
自分が見も知らぬ城下町にいる事に気づく。
先ほどまで死闘を繰り広げていた小姓達と明智勢の兵士の姿はなく、
代わりに自分を怪しげに見守る城下の民の姿があった。
そして、目の前ににはかつて信長が築いた安土よりも巨大な城がそびえ立っていた。
だが、その城下町の周囲の山々は信長にとって確かに見覚えのある光景であった。
自らが十年もかけて攻め落とした場所であるだけに見間違えるわけがない。
民衆達の通告よって衛兵達が現れ、信長は不審人物として捕らえられる。
事態を把握できない信長は衛兵達の成すがまま、牢に放り込まれる。
数日後、信長の元に1人の老人が面会に来る。
その人物は、信長の顔を一目見るや、衝撃をあらわにし、その場にひれ伏し、
これまでとは打って変わり、信長を丁重に扱い、自分の屋敷へと案内する。
その老人は、かつては信長の家臣であり、今や豊臣家五大老の1人である前田利家であった。
最初はその老人が利家だと分からない信長だが、信長と利家しか知らないはずの様々な事を話す内、
並外れた理解能力を持つ信長は即座に状況を把握する。
確かに自分は17年も先の世界に飛ばされたのであった。
28無名武将@お腹せっぷく:03/07/17 10:41
利家は信長が天下から消えたのち、世の中がどのように変わっていったのかを話す。
そして利家は自らの寿命があとわずかである事を悟っており、
豊臣秀吉亡き後、徳川家康が天下を狙っている事を信長に伝え、 家康の天下取りを阻止せねばならないと信長に告げる。
だが、秀吉によって織田家をないがしろにされた信長は不満をあらわにし、 豊臣家の為に力を貸す事を拒む。
利家は信長に、再び天下を取る野心があるのかと尋ねるが、信長は何も答えなかった。
“前世”では、あれほど天下取りに燃えていた信長だったが、不思議と、この世界では天下を取ろうという野心が湧かなかった。
自分が消えてからいともたやすく織田家が衰退し、そしてまた秀吉が死んだ後、豊臣家が衰退しつつある現状に空しさを感じていた。
しかし、信長は豊臣家を思う利家の真剣な願いに心を揺り動かされつつあった。
そんな折、信長の元へ信長の次男・織田信雄が訪れる。
最初は相手が自分の父であると全く信じない信雄は信長をただの狂人とみなして罵倒するが、
信長に大喝を食らうと、その雷鳴のような怒声を浴びるや、たちまちその場にひれ伏し、相手が父である事を理解する。
その後、まもなく利家が病で倒れる。
利家の屋敷に見舞いに訪れた石田三成は、屋敷に居座る信長を見て、 若き日の記憶と寸分違わない信長の姿に衝撃を受ける。
一方、信長も、かつて秀吉が拾った小僧・佐吉の成長ぶりを見て、 そのただならぬ才覚を読み取り、
秀吉への絶対的な忠義には感服し、かつて猿と呼んだ草履取り時代の秀吉の姿を重ねていた。
そして最後まで自分に従った小姓・蘭丸を思い出す。

その頃、蘭丸も、坊丸、力丸の兄弟と共にこの時代へと現れていた。
彼等が訪れたのは、信濃川中島。
川中島城の現城主は、森千丸忠政。
蘭丸達の末弟であった。

(つづく)