異説本能寺〜覇王の後継者〜 天正十年版その1

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【天正十年六月十日 筑前国秋月城】

書を嗜む種実は、この日も上質の紙に筆で無心に書いていく。
かつて流浪を味わい、浪人の頃に出会った人間がこの栄華を見れば、驚くに違いない。
筑前・豊前・筑後に三十六万石、毛利の力を借りたとは言え、当代きっての器量人であった。
梅雨の湿った空気を掻き分けるように、種実の弟、種冬が転がり込んで来た。

種冬 「兄じゃ! 聞き申したか? 竜造寺家が兵を募り当家に攻め入るとの専らの噂でござりまする」
種実 「ふふっ 戯言を申すな。 我と隆信殿は共に大友に当たる盟友ぞ? 大方、大友の調略であろう」
種冬 「某も左様に思っておりましたが、博多の商人の話では、佐嘉の諸式(物価)が騰がっておる様子」
種実 「…うむぅ 警戒するに越したことは無いか…」

そこへ、早馬からの知らせが舞い込む。 竜造寺隆信、秋月の領内に闖入。

種実 「おのれ、隆信め!! 後背を衝くとは!」
種冬 「兄じゃ、如何致しますか? 大友とは交戦中、兵を裂く余裕はござりませぬ」
種実 「道雪殿に連絡せよ。 我、竜造寺と不倶戴天に成りにけり、昨日の敵は今日の友、
    共に竜造寺に当たるべしとな」
種冬 「御意!」

【秋月家、立花道雪に和睦の使者を立てます】六月十一日到着
【秋月家、領内に動員令を敷きます。 常備軍六千 残りは筑前・筑後方面に割り振ります】
【筑前の城方に兵糧・弾薬の補充を開始、宗像・原口等の組下大名に動員勧告】