少しひどいな。やめませんか、こんなこと。
【6月5日、美濃曾根城】
安藤父子が岐阜に入ったとの知らせに激怒した者がいた。
美濃きっての勇将にして頑固者、稲葉一鉄である。
「冗談ではない、何の安藤づれが忠義面しおって」
「父上、何をお怒りなのです」
子の貞通が首を捻る。
「安藤殿は元は僚友ではありませぬか」
「あれは不手際があって放逐されたのだ。それが信長殿が死んだからといってのうのうと忠義面して稲葉山のお城に入るとは片腹痛い」
「竹中殿や氏家殿も喜んで迎え入れたとか」
「馬鹿馬鹿しい。この期に美濃を切り取る腹かよ」
「では我らはどうするのです」
「・・・決めたわ。わしは十兵衛めに合力してやるぞ」
「十兵衛って・・・まさか!」
「おうよ。あれは美濃の男だ。それにあれがこの挙に及んだ気持ちも分からんではない」
「逆臣に荷担するつもりですか」
「馬鹿め。俺も元は逆臣よ。藤吉郎の口車に乗って信長に美濃を取らせたのは誰だ?」
「・・・それはそうですが」
「それよりも何よりも、氏家だの安藤だのましてや竹中の小倅が、何の相談もなく美濃の主面しておるのが気に入らぬのだ。もう決めたぞ。決めた!」
この頑固親父はもうこうなると梃子でも動かない。貞通は溜息をついた。
「ならば一刻も早く明智殿に使者を飛ばしましょう」
「無論。兵どもの手配りもせい。それから野口の小六郎(西尾光教)にも使いをやっておけ。あれもわしが動けばついてこよう」
「心得申した」
【稲葉父子、戦闘準備に入ります】
【6月7日 日野城】
田丸直昌との会談終了後…
氏郷「上様の御家族、そして蒲生の家族を伊勢に移す」
郷舎「…確かにその方が宜しいかも知れませぬな」
氏郷「明日よりは周辺の勢力とも連携を取らねばならんな」
郷舎「御意」
氏郷「三法師様もお送りせよ。ただ、蒲生の家族として、だ。
その為に父上にも伊勢へ行って頂こう」
郷舎「納得されるでしょうか」
氏郷「まあ、説得するさ。父上は安土の留守居、上様の御家族を守らねばならん。
そして三法師様を隠すためにも父上は必要だ」
郷舎「なるほど」
氏郷「いざという時は」
郷舎「はい」
氏郷「蒲生の者にしなければならないかも知れぬ」
郷舎「過ぎたることでは…」
氏郷「御家争いの目の敵にされてはどうにもなるまい。それならば、だ」
郷舎「無情な世でございますな」
氏郷「是非も無し」
【翌日、信長・蒲生の家族が伊勢に向かいます】
172 :
無名武将@お腹せっぷく:02/12/10 01:16
A
173 :
無名武将@お腹せっぷく:02/12/10 01:31
2ゲット
【6月14日 行軍中】
兼続「殿」
景勝「なんだ」
兼続「徳川家康の動きが不穏でございます」
景勝「徳川か。無事に帰ってきたようだな」
兼続「どうやら甲信に手を出す様子」
景勝「手の薄い時を狙ってきたか」
兼続「徳川は天下の傑物。手を携えておくべきかと」
景勝「高く買うものよ」
兼続「織田亡き後は、徳川が威を張るでしょう」
景勝「どうせよと」
兼続「殿の信濃の扱い、聞きとう存じます」
景勝「やみくもに欲張るものでもない。あの地は厄介な地だ。今の勢力を保てるならば
他に存念は無い」
兼続「畏まりました。ならば徳川に使者を送りましょう」
景勝「盟約か。条件は任せる」
兼続「はっ」
【上杉家より徳川家へ書状】
内容 上杉景勝は徳川家康を高く買い、共に協力して天下の騒乱を治めたい旨。
信濃の仕置きに関して、上杉の勢力内で不埒を行わぬならばこちらも関与しない。
お互いの利を考えた上での不可侵条約。
兵站にお困りあらば、些少だが協力しても良い。
提案として、越後―駿河間の内陸貿易開始。