無理矢理マルチプレイ三国志8〜その3〜

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「ほっほー、悶えとる悶えとる!」
長江の対岸では、劉表軍総大将の呉巨の隊が、罠にかかって行軍不能となっている
呂砲が「雪風」と名づけた軍船上からも、その模様ははっきり見えた。
「上陸だ、上陸! 逆上陸! 腰抜け劉表の部下だ。切り応えもなかろうが、攻め込んできたからには生かしておけん! 一人残らず引っ捕らえい! ほれ、上陸だっつーの!」
興奮して、軍船の漕ぎ手たちをはやし立てる呂砲。
上陸一番槍を果たし、兵がついてくるのも待たずに、ドタドタと呉巨隊の方へと駆けて行く呂砲。
自分が率いるのは、わずか2000の兵に過ぎないことをすっかり忘れている。
呂砲の興奮は、もう一人の劉表軍武将・霍峻の重歩隊が現れたことで、頂点に達した。
「お前たちなどわしの敵ではないわ! 命が惜しくば、退け!」
調子に乗って、「大喝」を仕掛ける呂砲。
「ありゃ、効かんな」
当たり前だった。
「敵兵は思ったより度胸が据わっているようだな」
自己欺瞞か、本気でそう思っているのかは不明だった。

自分が置かれている状況を掴んでいない呂砲だったが、混乱状態から復活した呉巨の重騎隊11000が突っ込んでくると、さすがに慌てた。
「い、いかん! 全軍わしを守れ!」
だが、兵たちの動きは遅い。
仮に速かったとしても、2000対11000では、分が悪いにもほどがあった。
戦死者は500人程度だったが、戦闘不能な負傷者が800人。
呂砲隊、残り693人。
「ば……馬参! 吾玄! 助けてくれえ!」
特技「医術」を使う暇も、そもそも自分が特技「医術」を持っていることを思い出す暇もなかった。
続けざまに攻め立ててきた霍峻の攻撃は、あっさりと呂砲を飲み込んだ。

 「呂砲が霍峻に捕らえられました」

呂砲の戦さ下手を示すエピソードは数多いが、この永安防衛戦はその最初の例となった。(終わり)
590長史:03/02/20 02:01
>541
ふぅ、ご命令とあれば進めざるをえないな。
・・・ん?陛下の為に金をガンガン使え?
ふむこれは使えるな。

皇帝陛下のご命令にて宮殿の造営を進める。
その為一時的な増税を行うとの布告を出せ。
それと宮殿の規模を予定より大きくするのだ。
皇帝陛下直々の命だ。民の声など気にする必要はない。
それと、殿下はこの事に反対してるとの噂を流すのを忘れないようにな。

荘厳な受禅台を建設していると思えば良い訳だ。
しかも怨嗟を劉協に向け、殿下の名声を高める。
まさに一石三鳥の策だな。
現行のスタイルへのリニューアル面白いです。
しかし、こうして読むとよく勝てましたな本当に。
>>呂砲殿下
リニューアル版いいですね。
なんか懐かしいです。

593廖衛 ◆ttmECRHBeQ :03/02/21 17:33
や、やっと来れた・・・。殿下、遅くなって申し訳ありませぬ。
見たところ漢の復興を目指すそうでございますな・・・?
私は殿下の臣、異議を申し立てる気はございませぬ。
殿下の決定には従う所存にございます。
(ふん・・・、皇帝め弱輩かと思えば中々の器を持っているようだな・・・。
だがもう遅い、もはや漢の命脈は尽きたのだ。
しかしあの文官め、なんと言う態度だ。しかも軍師殿を見る目が
異様によそよそし過ぎる。まさか初対面ではないのか?)

>廖影殿・主簿殿
此度の戦において、私の軽挙を押し止めた功と、戦場での功により
廖影殿を将軍府督前部先鋒に任じ、主簿殿(名前どうする?)を
将軍府中軍師に昇格させる。これからも私を助けて欲しい、頼むぞ。

>571殿
弁護ありがたく存ずる。すみません、学校でも書けなくなって、ネットカフェで書いてます。
本当なら先々週に来てたのに。

>郭図公則殿
今来たよ。

(以下、今回のネタ)
・・・此度の戦・・・、勝つ為とはいえ、無抵抗の人間を多大に殺してしまった・・・。
私は治世には向かぬ人間かも知れぬ・・・。
秦の白起将軍も私と同じように夜も眠れぬ日々が続いたと言うが・・・。
・・・軍師殿・・・。貴方は平気でいられるのですか・・・?
594無名武将@お腹せっぷく:03/02/21 17:44
保守
595池田屋:03/02/22 23:41
>590
厄介なお客が去ったと思ったら今度は増税?!
何が宮殿だ!そんなに宮殿に住みたければ自分で勝手にやってくれ!!

全く勘弁して欲しいよ。
596いつぞやの占い師:03/02/22 23:47
どこからともなく現れた老人が廖衛に声をかけた

廖衛殿・・・・
廖衛殿・・・・・・・・
己の行く末についてお悩みかな?
なんなら戦が無くなった暁にはこのジジイとともに師の元で仙道の修行をなされてはいかがかな?
古の張良もそうしたと聞きますぞ
猟犬は獲物が無くなれば捨て去られるが定め
その時の為にも今から身の振り方を考えておきなされ

廖衛は声がした方を振り向いたが既に老人は消え去っていた
597孫策:03/02/23 02:59
涼賊が漢帝を手中に収めたか…曹魏も堕ちたものだ。
もっとも、まったく他人の事は言えないのだがな。

…間諜を以って涼を乱せ、と?
公瑾、お前も先の一戦を見た者であろう。
下手な小細工はかえって逆の効果を生む。
間者には諜報に専念させよ。
…何が御意だ、俺がこう返答する事など判っていたくせに。

行くぞ公瑾、調練を視察する。
戦いは、そう遠くはない。
598郭図公則 ◆2getuRmEIU :03/02/23 13:23
トリップ変更報告

>>595
酷いな………
太守に申し出れば軍の兵糧を拠出するとふれを出せ

長 史 が 帝 の 手 先 だ と は 知 ら な か っ た
>>590長史殿
( ̄ー ̄)b

>>591>>592
あの頃はまだ、某人の話に口を挟むのが大好き男以外、七同志のキャラが掴めていなかったんですな。
だから報告形式で、と。
じゃ今は全員のキャラ掴んでんのかと言われたら………

∧_∧   
( ´・ω・) まあ、そういうことは気になさらず、茶でもどうぞ。
( つ旦O ∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬
と_)_) 旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦

>>593廖衛殿
何はともあれ、ネタ多謝。
期末試験時期なのかな、とか思ってた。
自分が高校生だったのは10年以上前なので、いつ期末試験やるのか覚えとらんのだが。

>>595池田屋殿
今後も洛陽、そして涼の経済事情の報告ヨロ。

>>597孫策殿
>戦いは、そう遠くはない。
その通り。
でも………まさかこんなことになるなんて。

>>598郭図公則殿
どんどん長史殿とやりあったもれ。
ニュースの時間です。
スレ本文担当の涼王殿下が、書き込み直前だった本文の大半を消去していたことがKINの取材でわかりました。
涼王殿下は消去直後、ショックで椅子ごと後方に転倒し、肩などを強く打ちましたが、命に別状はありませんでした。
許昌地方検察庁は、公文書消去の容疑で涼王殿下に対する在宅起訴を検討しましたが、「故意ではなく、消去分補填の努力は遂行されている」として、今回の起訴を見送りました。
涼の侵攻に晒されている魏と呉は、この処分を不服とし、許昌検察審査会に再審請求を行う方針です。
一方、涼と一度も戦闘になったことのない燕は、見舞いの使者と湿布30年分を涼に贈るなど、外交に配慮した動きを見せています。

許昌地検の調べによりますと、涼王殿下は22日深夜、許昌の自宅で「波紋」編の編纂にあたっていたところ、持病の荒藻之藻垣帯病を発症。
文章量が一気に増えたため、1回での書き込み完了を予定していた「波紋」編を、上下2回構成に変更することを急遽決定しました。
これに伴い、整理しやすいよう他のアンダンテへのコピー作業を行いましたが、「名前を付けて保存」と選択するところで、誤って「上書き」をクリックし、第二軍に関する記述を除くすべての文章を消去した、とのことです。
スレ進行に関する涼王殿下の失態は、赤壁の戦い書き込み直後にゲームのセーブデータを誤って消去し、同戦役を再びやり直して以来、二度目となります。

涼王殿下はKINの取材に対し、「ノーコメット。コメットとは『彗星』。すなわち、『ノーコメット』イコール『イヤ彗星』。いやすいせい。いやすぃーせー。いやしいせい。卑しいぜ。おまえらマスコミは卑しいぜ」と語りました。

荒藻之藻垣帯病は、あらゆるものを書き加えたくなる神経性の病気で、発病すると、書き手の文章が異様に長文化するなどの症状が表れます。
発症患者には、日ごろ短い文章を書くことを強制されている人が多く、根本的な治療法は見つかっていません。

なおKINは、文章消去直後に錯乱状態となっている、涼王殿下の映像を入手しました。
映像をご覧ください。

            。。
   。     。 +   ヽヽ
゜ 。・ 。 +゜  。・゚ (;゚´дフ。 ニシュウカンブンノカキコミガ……
            ノ( /
              / >


以上、ニュースをお送りしました。













雑兵「このあとは!」
長史「『波紋』前編」
呂砲「今日のテーマは『確執』」 (ノД`)シクシク
翻陽・酒楼。
袁奉隊の兵士が、酒を舐めながら語っている。
「陛下から甲冑を賜るとは……よくやったものよ」
「しかし、納得できんな。七同志の中で殿の戦功は、馬参将軍に次ぐ第二位。軍師殿や廖衛将軍、それに同じ三品官の町費将軍よりも上なんだぞ」
「仕方あるまい。それが第一軍武将としての恩恵ということだ」
「おまえ、それでいいのか? 吾玄将軍の要請がなかったなら、殿は第一軍に所属したままだった。陛下から甲冑をいただけたはずなのだぞ」
「言っても詮無きことだ。第二軍武将として目覚しい働きを続けていれば、いずれ殿や我らにもいい目が来るさ」
そのやり取りを隣りの卓で聞いていた男がいる。
商人風のその男は、スッと立ち上がると、別の卓を囲んでいる兵たちのもとへ近寄っていった。

「兄さんたち。ちょっと耳寄りな話を仕入れたんだが、同席していいかい?」
商人風の男が声をかけたのは、吾玄隊の兵たち。
兵A「あん? なんだい?」
兵B「楽しく酒が飲めるような話なら歓迎するぜ」
兵C「話せー飲めー!」
「吾玄将軍が袁奉将軍を招聘したりしなければ、袁奉将軍も恩寵の甲冑をもらえたのに、ってさ」
商人風の男は、たった今耳にした袁奉隊兵士の愚痴を、尾鰭をつけて耳打ちした。
「それと袁奉将軍は三品官で、吾玄将軍は四品官だろ。副将の立場に甘んじてはいるが、本当は袁奉将軍の方が格上なんだ、とか言ってたぜ」
兵士たちの反応は、微笑ましいほど素直なものだった。
兵A「副将風情が殿より格上だとー!」
兵B「ふてえやろうだ! 締めてやる!」
兵C「喧嘩だー喧嘩だー!」

「水軍大都督をなめんじゃねーぞ!」と袁奉隊兵士。
「うるせー! こちとら揚州二軍司令様でい!」と吾玄隊兵士。
大乱闘となった酒楼を、人知れず後にする商人風の男。
吾玄と袁奉の離間を果たすべく、郭図公則が派遣した細作だった。
翻陽・第二軍本営。
吾玄隊と袁奉隊の兵たちの喧嘩は、双方のストレス発散と、店内を壊された店主の悲嘆で幕を閉じた。
「まったく、今は共通の敵に向かって協調し合っていくべき時であるのに……」
苦虫を潰したような袁奉に対し、吾玄は笑ってみせる。
「連中にしてみれば、ちょっとした息抜きみたいなものなんだろう。私の兵など、実にふざけたことを言っていたぞ」
「ふざけたこと?」
「戦さに備え、個人技の練習を袁奉隊の連中とやっていました、だと」
吾玄の言葉に、袁奉は思わず吹き出した。

「処分はどうする? 軍団長たるおぬしが処理すべき問題だが?」
「二、三日営倉に叩き込んでおけばよかろう」
「うん。それが妥当だな」
つきあいの長い武将の、くだけた会話。
事情を知らぬ者にはそう見える。
実際、袁奉はそのつもりだった。
酒を通じてのイザコザなど、兵の間では日常茶飯事だし、たいした怪我人もなし。深刻になる必要もなかった。
もっとも、もし死人でも出ていたら、かなり面倒な事態になっていただろう。
軍団長たる吾玄には、軍令違反者を死刑にできる「仮節」の権が与えられている。
仮に吾玄隊の兵が死亡し、その咎で袁奉隊の兵が死刑となったら。
いや、たとえ逆のパターンであっても、相当な禍根となっていたはずだ。
とにかく今の袁奉は、そんな事態にならなかったことに安堵していた。

一方の吾玄は、笑顔の下の葛藤を懸命に隠している。
今、自分の目の前で笑っている戦友が、自分の地位を狙っている。
そんな情報や噂が、様々な形で吾玄の耳に入ってくるようになって一月余り。
最初は一笑に付していても、繰り返し聞かされれば、やがて疑念を抱くようになる。
それは善悪の問題ではなく、人間なら誰もが持つ弱さであり、そして吾玄は人間だった。
一月余りという時間は、「そんな馬鹿な」が「まさか」へ、そして「まさか」が「あるいは」へと変わっていくのに、短すぎるというものでもない。
「……あえずは一安心だな」
上の空になりかけていた吾玄は、袁奉の言葉を聞き逃した。
「ん? すまん、何だって?」
慌てて問い直す吾玄だったが、袁奉は特に気分を害した風もなく、繰り返した。
「殿下の漢朝復興宣言だ。これで一安心だと思わんか。漢にとっても。そして涼にとっても」
「ああ、そのことか」
その話について、吾玄はあまり関心がなかった。
「私の望みは中華の安寧のみ。それ以上でもそれ以下でもない。この世から戦さがなくなりさえすれば、天が蒼色だろうが黄色だろうが構わんよ」
「まったく、おぬしも変わったな」
袁奉は笑った。
「殿下の元へ馳せ参じるよう、わしをけしかけた頃のおぬしは、武で天下に名を轟かすと息巻いておったが……今では戦さを無くすために、戦さに励む武将だ」
「戦さで苦しむのは、弱い民百姓だ。平和な益州にいたころは、考えもしなかったが」
「民の間では評判になっているぞ。『戦さ嫌いの軍団長様』とな」
そう言って、袁奉は再び笑った。
一方の吾玄は、袁奉の口から出た「軍団長」という単語のせいで、作り笑いを浮かべることしかできなかった。

翻陽とともに東呉と国境を接している、涼領・江夏。
ここから第二軍本営に急使がもたらされたのは、吾玄と袁奉が語らった数日後のことだった。
送り主は、江夏太守の呉巨。

書状を読んでいた吾玄の手が、やがてブルブルと振るえ始めた。
控えている袁奉や軍師の黄権、張任ら、第二軍武将が見つめる中、吾玄は堪えきれなくなったように声を張り上げた。
「な……なんだ、これは! どういうことだ! 呉巨は一体何を考えている!」
吾玄は完全に我を失っていた。
書状を床に叩き付け、呉巨の使者を思い切り蹴飛ばすと、そのまま本営から飛び出していく。
袁奉らが制止する暇もなかった。

突然の成り行きに、しばし呆然としていた第二軍武将。
誰も声すら出せぬ中、袁奉が書状を拾い上げた。
いぶかしみながら、サッと斜め読みで目を通す。
概略はすぐにわかったが、呉巨が何を考えているのかということは、吾玄同様、袁奉にもわからなかった。

  孫賊を廬江より駆逐すべく、江夏軍は精鋭8万をもって進軍する
  ついては戦勝を涼王殿下に捧げるべく、第二軍団長殿に増援軍の派遣を請う

書状には、江夏軍の出撃日も書いてある。
今日から三日前の日付け。
江夏軍は、今から伝令を送っても間に合わない地点まで進軍しているはずだった。
「援軍は出さぬ!」
黄権になだめられて本営に戻ってきた吾玄だったが、怒りは収まっていなかった。
「孫呉征伐は、殿下が我が第二軍にお下しになられた任務だぞ! 江夏軍は討って出ることを禁じられた守備隊ではないか! 巧妙欲しさに勝手に軍を動かす輩に、増援など送れるか!」
「そうは申されても、友軍には違いありません」
若干青褪めた顔ながら、黄権は吾玄を説得する。
「書状には精鋭8万とありますが、実際江夏には、4万程度の兵しかいないはずです。単独で廬江に攻め入れば、確実に呉軍に撃退されます」
「知ったことか!」
吾玄は本気で言っていた。

吾玄がこれほど怒るのも、当然のことだった。
涼の攻略戦は、軍団―許昌の第一軍、上党の第三軍、そして翻陽の第二軍―が実施する。
言い方を変えれば、この三個軍団以外に攻略戦の実施は許されておらず、七同志である郭図公則が太守の洛陽ですら、侵攻を受けての防衛戦しかできないのだ。
江夏軍の侵攻は、単なる軍令違反に留まるものではなかった。
揚州方面司令官たる吾玄に、何の事前協議もないままの進軍であり、それはすなわち、吾玄の面目を完全に潰す行為にほかならない。

そして、呉巨は確信犯だった。
呉巨が出陣したのは、増援を求める使者が翻陽に到着する三日前。
吾玄が進軍中止の伝令ではなく、増援を出さざるを得ない状況を作るという、明白な意図に基づくものだった。
以上だけでも、吾玄が呉巨を憎む理由としては十分だったが、さらにもう一つ、吾玄が呉巨を許せない理由があった。
個人的な問題ではあったが。

吾玄は呉を憎んでいる。戦さを憎む以上に。
呉領全てを蹂躪すると誓った吾玄にとって、呉巨の突出は到底許せるものではなかった。
首を縦に振らない吾玄に対し、袁奉も説得にかかった。
「ここは援軍を出さざるを得まい」
吾玄は、キッと袁奉を睨み付けた。
その目は、「黄権のみならず、おぬしまで言うのか」と、袁奉を激しくなじっている。
「江夏軍がやられれば、呉を勢い付かせることになる。そしてそれは」
袁奉は注意深く言葉を選びながら、語り続けた。
「江夏軍の消耗と、呉軍の江夏への逆侵攻にもつながり得る。そうなれば収拾がつかんぞ。我が第二軍も、抹陵攻めどころではなくなる」
だが、吾玄は袁奉の説得に感銘した様子はまったく見せなかった。
「呉の心臓は抹陵だ!」
吾玄は卓を叩いて怒鳴った。
「抹陵さえ陥とせば、支軍など脅威ではない! 勝手に立ち枯れるわ!」
「そうはいかんだろう」
辛抱強く、袁奉は状況を説く。
「荊州には、ほとんど兵がいないではないか」

先の翻陽の戦役で大損害を受けた第二軍は、荊州の各都市から兵を集め、なんとか軍の再編に成功した。
ただその結果として、荊州の各都市は、刈り取り放題の草場となっている。

感情に訴えることなく、袁奉はあくまでも現実的視点から吾玄を説得する。
「江夏を抜かれれば、呉軍は好き勝手に荊州を蹂躪するだろう。そのまま襄陽当たりに拠点を移すことだってあり得る。そうなれば、揚州を制圧したところで、意味はなくなるぞ」
「そうなったなら、それは呉巨の責任だ。自分の尻拭いは自分でやれと言ってやる!」
「四則殿。おぬしは対孫呉の司令官ではないか。江夏もまた、おぬしの管轄だぞ」
「おう、そうだとも! 私の管轄だ! つまり、呉巨は私の部下ということだ! にもかかわらず、私に一言の相談もなく、勝手に軍を動かした! あんなやつなど知ったことか!」
援軍を出すべきだ。いや、出さぬ。
議論には、張任や厳顔ら他の武将も加わった。
「増援軍を出すべきと存ずる」
そう主張したのは、第二軍武将の中でもっとも規律の遵守を尊ぶ男、張任。
「呉巨の勝手な進軍は、確かに厳罰に処すべき問題だ。しかし」
増援軍の派遣は、それとは次元の異なる問題。そう張任は強調した。
「抹陵攻めは目前なのだぞ」
派遣に反対するのは、老将・厳顔。
「第二軍には、呉の拠点を攻め落とすという極めて重要な任務がある。ようやく再編した兵を、廬江ごとき痩せた都市ひとつのために損なうわけにはいかん」
「しかし御老人」
「わしを年寄り呼ばわりするな!」
「申し訳ござらん。しかし厳顔殿、もし江夏軍が敗れ、調子に乗った孫呉が荊州に乗り込んだら、それこそ目も当てられませんぞ」
「呉巨とて、その程度のことはわかっていよう。にもかかわらず軍を動かした。それなりの勝算があるということだ」
「勝算と厳顔殿はおっしゃるが、呉巨はまさしく、翻陽からの増援を勝算に含めて出兵しているのですぞ」
「それはおぬしの推測だろう」
「呉巨は使者がここに到着する日にちを逆算して、軍を出している。それが何よりの証左でしょう」
「証左なものか。そういうのを推測というのだ」
「廬江がどれだけの兵を有しているかご存知か? 6万ですぞ。それに抹陵からの援軍もあるでしょう。4万の江夏軍だけで勝てるわけがない」
「何か策があるのだ。そこまで呉巨も愚か者ではあるまい」
「だから! 第二軍の増援こそが、呉巨の策だということがおわかりになりませんか!」

増援軍を出すのなら、一刻も早く動くべきだった。
さもないと、劣勢の江夏軍は簡単に撃破され、遅れた増援軍も各個攻撃の憂き目に遭う。
だが、結論はなかなか出なかった。
増援の可否について、第二軍は完全に分列していた。

出兵派:袁奉、黄権、張任、呉懿、呉蘭
非出兵派:吾玄、厳顔、雷胴、孟達
議論は加熱していく。
最初から頭に血が上っていた吾玄は、さらに熱くなった。
そして、何とか理詰めで話を進めようとしていた袁奉もまた、熱くなっていった。

「話にならん!」
堂々巡りも三巡目となったところで、とうとう袁奉が切れた。
「四則殿は戦略というものをまったく解しておらぬ!」
「おう、よく言った!」
怒り狂った目をさらに釣り上げ、吾玄は憤然と立ち上がった。
「そんなに呉巨が心配なら、勝手に増援でもなんでもすればよい!」
袁奉も立ち上がった。
卓を挟んで、二人は激しい言葉をぶつけ合う。
「話を摩り替えるな! 誰が呉巨の身など案じるか! わしが心配しているのは、江夏軍の敗北と、その後に起こる揚・荊州の混乱だ!」
「何度言えばわかる! そうなったら呉巨に責任を取らせると言っている!」
「呉巨などの首を切っても、混乱は収まらん!」
「誰が切ると言った! やつに火消しをさせると言っているのだ!」
「やつにさようなことができるものか!」
「できるという自信があるからこそ、勝手に軍を動かしたのだろうよ! お手並み拝見、それで良い!」
「もし荊州を呉軍に蹂躪されたら、殿下に何と申し開きするつもりだ! 責めはおぬしにふりかかるのだぞ!」
「どうしてわしの責任になる! すべての責は呉巨にある! 明白ではないか!」
「おぬしは対呉方面の司令官ではないか! 軍団長ではないか! なぜそんな無責任なことが言えるのだ!」
「軍団……長……だと?」

吾玄がここまで感情を爆発させたのは、斐妹の死以来のことだった。
そして、袁奉が口にしたその単語は、昂ぶっていた吾玄の精神を、強く、激しく刺激した。
「軍団……長……だと?」
吾玄は繰り返した。
「自分が軍団長なら、すぐにでも増援を出す、というわけだな」
熱くなり切っているはずの吾玄だったが、その口調は急に低くなった。
不気味な豹変振りに、袁奉も他の武将たちも、一様に動きを停止させた。
「おぬしに何がわかるものか」
吾玄の目に浮かんでいるのは、怒り。
そして、これから大切なものを失おうとしている、そのことへの哀しみ。
吾玄はわかっていた。
これを口にしたらおしまいだ、と。
だが、もはや引っ込めることができないということも、吾玄は知っていた。
「軍団長という地位には、責任と重圧が伴うのだぞ………軍団長なりたさに、コソコソ動いているだけのおぬしに、何がわかるものか」
むしろつぶやくような声だった。
しかし、場は凍り付いた。

袁奉は最初、吾玄の言葉の意味がわからなかった。
軍団長なりたさに、コソコソ動いている?
何のことだ?
吾玄は何を言っているのだ?

不意に、以前水兵隊長が自分に告げた、「悪い噂」のことを思い出した。
吾玄の言葉の意味に気付いた袁奉は、全身の毛が逆立った。
ち、違う! 誤解だ!
そう言いたかったし、言おうとした。
しかし、吾玄が言葉を発する方が早かった。
「第二軍は私の軍だ。そんなに軍団長になりたいのなら、上党へ行け
袁奉を見すえる吾玄の目は、古くからの戦友を見るそれではなかった。
「私はコソコソ謀事を巡らす輩は好きではないが、同郷の誼もある。投票については、考えてやってもよい」
絆が切れた瞬間だった。
最初は、取るに足らないすれ違い。
だが、「悪い噂」は徐々に吾玄を虫食んでいた。
そんな折りに起こった呉巨の暴走は、吾玄の面子を完全に潰し、同時に我を忘れるほどの怒りをもたらした。
不幸なことに吾玄の怒りは、正論であるはずの袁奉の意見をはねつけるほど強く、激しかった。
そして、袁奉の口から出てきた「軍団長」という単語。
単なる話の流れから出たに過ぎない単語だったが、それを聞き流すには、この時の吾玄の心は、余りにも昂ぶり過ぎていた。

外へ向かって歩き出す吾玄。
雷胴らが慌てて道を開ける。
背中に、男たちの視線を感じる。
その視線の中に、袁奉のそれはあるのだろうか?
袁奉は、今、自分の背中を見ているのだろうか?
(到越殿!)
吾玄は心の中で叫ぶ。
(私を呼び止めてくれ! 今すぐ!)
そうすれば、すぐに謝る。必ずそうする。
吾玄とて、自分が謝るべきだということは、十分に承知していた。
だが、吾玄は歩き出してしまっていた。
意地が邪魔をして、どうしても自分から立ち止まることができなかった。
意地もプライドも捨てなければならない時。人間にはそういう時が必ずある。
今がまさにそうだった。
だが、それを実行するには、吾玄は若すぎた。
自分が袁奉より年下であるが故の、甘えもあったのかもしれない。
(早く!……到越殿、早く!)
駄々をこねる子供のように、吾玄は叫んでいる。
ただし、心の中で。
軍議の間の出口に差し掛かったが、袁奉の声はない。
吾玄は軍議の間から退出した。
歩く。ことさらゆっくりと。
だが、背後から彼を呼び止める声は、ついになかった。
軍師・黄権の「自分が責任を負う」という言葉で、増援軍を廬江へ送ることが決定された。
軍を構成するのは、袁奉、張任、呉懿、呉蘭の四将。
増援に反対した厳顔、孟達、雷胴は、出撃を拒否した。

大急ぎで部隊の編制が行われたが、兵の招集、武具の用意、兵糧の調達など、すぐに終わるものではない。
「最低限で良い。不完全でもかまわん」
そんな指示の元での突貫作業が完了したのは、派遣が決定してから2日後のこと。
驚異的な早さではあったが、袁奉らにとっては身悶えするような2日間だった。
「とにかく、急いでいただきたい」
出撃準備なった袁奉らに対し、黄権は真剣な表情で告げた。
「兵糧の不足分は、必ず私が何とかする」
返事をする時間も惜しく、袁奉は「頼みます」とだけ答えた。
増援軍の派遣を黙認する形となっていた吾玄が、慌ただしく出撃する袁奉らを見送ることはなかった。

@呂砲プレー中
 ゲゲ! 江夏の軍が勝手に廬江に侵攻しやがった! 翻陽から増援が出てる!
 もしも負けて、吾玄やら袁奉やらが孫策配下になったら、シャレになんねーぞ。
 そういや江夏は、襄陽のCPUが勝手に攻めたところだったな。クソ、太守は誰だ?
 ……おお、勝ったか。良かった。非常に良かった。
 ハッ!………コレッテネタニツカエマセンカ?(∀)

捕虜を検分する天幕で、袁奉らは呉巨と対面した。
「おお、袁奉殿!」
満面の笑みを浮かべて、呉巨が近寄ってくる。
「さすがは精鋭揃いの第二軍ですな! この呉巨、貴殿らの御助力は………」
江夏軍の兵たちがいた。
捕虜となった呉軍の将たちもいた。
だが、知ったことではなかった。
何も言わずに袁奉は、呉巨の顔面に己の拳をめり込ませた。

【登用武将】賈華、張紘
帰陣した袁奉ら廬江増援軍を、翻陽に残っていた兵たちが出迎えた。
少なからず問題の残る出兵ではあったが、「凱旋」といっても間違いではない。
にもかかわらず、迎える兵たちから、歓喜の声は上がらなかった。
「生きて帰ってきたか。良かった良かった」
顔なじみの兵が、そう語り掛ける程度であり、しかもそれすら、周囲を憚るような小声で交わされていた。

袁奉隊が吾玄隊の前を通り過ぎた時、「静かな凱旋」は破られた。
「なんでえ、おまえら帰ってきたのかよ!」
いきなり上がったヤジに、誰もがビクリと肩を揺らせた。
「廬江で第四軍を編成するんじゃなかったのかい!」
袁奉隊の間から、殺気が沸き上がった。
普段冷静な水兵隊長ですら、馬首をヤジの方向に向けようとしている。
「やめんか!」
袁奉の一喝で、踏み込む寸前だった兵の足が止まった。
ほんの少しでもタイミングが遅れていれば、そのまま切り込んでいたのは間違いなかった。

吾玄隊の兵たちは、逆にこれで勢いづいた。
軍団長でない袁奉に、兵を切る権利「節」はない。
逆に袁奉が吾玄隊の兵を切れば、吾玄によって処罰される。
それを心得ているのか、ヤジはいっそう大きくなった。
袁奉隊を中心とする廬江増援軍の兵たちは、歯を食いしばりながら、「凱旋行進」を続けるしかなかった。

第二軍団長・吾玄。そして第二軍副将・袁奉。
車の両輪たる二人の確執は、既に全軍の知るところとなっている。
そして、廬江への増援を支持した者と、必要なしと反対した者の間にも、確執が生じていることも。
ささやかな噂として流れていた第二軍内の不和は、単なる噂から事実へと変貌を遂げた。
第二軍本営。
厳顔も、孟達も、雷胴も、そして吾玄も、そこにはいなかった。
戻ってきた袁奉らを迎えたのは、軍師の黄権ただ一人。
「廬江増援の任、無事完了とのこと。本当にお疲れ様でした」
黄権の顔は、大きくやつれていた。
不足していた兵糧の手配は、決して簡単なものではなかったはずだ。
食糧庫に貯えられている膨大な兵糧は、すべて抹陵攻略戦のためのもの。
廬江への転用など、吾玄が許すわけもなかった。
黄権の苦労は、兵糧の調達だけではなかった。
袁奉らが廬江で戦っている間、吾玄と袁奉の確執を除くべく、懸命に奔走していたのだ。
ただ、その結果については、黄権の顔を見れば誰にでもわかる。
「軍師殿」
それでも一縷の望みをもって、袁奉は問い掛けた。
「その後、軍内の状況は?」
黄権は目を伏せた。
そして、ゆっくり首を横に振った。

「どういうことだ!」
とうとう呉蘭が怒りを爆発させた。
「我らは友軍の増援として出陣したのだぞ! そして、その任を見事に果たした!……なのになぜ、このような仕打ちを受けねばならんのだ!」
「蘭、言うな」
呉懿が甥を制する。
その顔には、疲労感と徒労感がない交ぜになっている。
呉蘭は乱暴に椅子に腰を下ろしたが、何も言い返さなかった。

全員がグッタリと椅子に座ったところで、黄権が口を開いた。
「貴殿らが廬江で戦っている間、抹陵で動きがありました」
「なに?」
疲れていたが、黄権から告げられた「抹陵」という地名に、袁奉らはすぐに反応した。
「広陵の魏軍が抹陵に侵攻しました」
黄権の表情は硬い。
「孫策は呉に退却しております。なお、魏領・抹陵太守は、夏侯淳です」
吾玄邸。
自室の揚州地図を見下ろしながら、吾玄は眉間にしわを寄せている。
広陵魏軍の抹陵侵攻。そして制圧。
正直なところ、想定外の状況だった。
孫策にしてみれば、悪夢以外の何物でもなかっただろう。
敵勢力と接している二つの領有都市に、ほとんど同時に涼と魏が攻め込んできたのだから。
これにより孫策は、呉と会稽という小都市に閉じ込められる形となった。
「小覇王」と称された孫策の命運は、この時点で実質的に潰えている。

今の状況は、吾玄にとって喜ばしいものではなかった。
これまで韓や呉と戦いを繰り広げてきた第二軍は、魏と対峙するのはこれが初めてとなる。
もっとも、いずれ魏と戦端を開くことはわかりきっていたから、それ自体に懸念はない。
吾玄が憂いているのは、孫策を呉と会稽に閉じ込め、蓋をしているのが、自分ではなく夏侯惇である、ということ。
今の孫策を壊滅させるなど、魏にしてみれば、鼻歌交じりでできる任務に違いない。
(すぐに抹陵攻略に出るしかないな)
地図を睨み、吾玄はそう心中でつぶやく。
孫策は、自分の手で斬る。
そう誓う吾玄にとって、抹陵はすぐにでも魏から奪い取るべき都市だった。

黙思を続けている吾玄に、家令が遠慮がちに話しかけてきた。
「庭に投げ込まれておりました」
そう言って家令が手渡した封書は、吾玄宛となっている。
差出人の名は、ない。

  第二軍副将袁奉、廬江解放後、増援軍諸将と歓談
  曰く、第四軍設立の折りは、貴公らを我が幕僚に迎えん、と
  諸将ら答えて曰く、第二軍団長にふさわしきは、一人袁将軍なり、と

吾玄は黙って書状を読み返した。
この時、吾玄が考えていたのは、どのようにして袁奉との関係を修復するか、ということではなかった。
第二軍が分裂した状況下で、どのようにして夏侯惇を打ち破るか。
存念はそれだった。
袁奉邸。
「さすがに今回はくたびれたな」
自邸に戻った袁奉は、最後まで控えていた水兵隊長に笑いかけた。
「呉巨のやつもこれで懲りただろう。部下や捕虜の前で殴られたのだからな」
水兵隊長は笑みを返さなかったが、かまわず袁奉は、陽気に振る舞い続ける。
「おかげでわしも気が晴れたわ……うん、スーッとした」
余りにも痛々しい袁奉の独り言だった。

追笑することなく表情を消していた水兵隊長は、ここで意を決したように告げた。
「殿……ここは我らが居るべき場所ではない、と存じます」
今日は耐えた兵たちも、明日はどうなるかわからない。
もし再び騒動が起こったなら、今度は酒楼の喧嘩程度では済むまい。
ここで切り上げるべきだった。最悪の事態―涼軍の同士討ち―となる前に。
「第一軍へ帰りましょう」
水兵隊長の声は、なだめるようなものになっている。

袁奉は、水兵隊長の意見に直接答えることはしなかった。
「夏侯惇が抹陵を制圧した」
「存じております」
はぐらかされているような気もしたが、水兵隊長の応答は静かだった。
ただでさえ袁奉は、深い心労を抱えている。きつく問い詰めることなど、できなかった。
「理由は知らぬが、四則殿は孫策を憎んでいる。尋常でないほどにな。だがこのままでは、孫策の首を夏侯惇に取られるから……近日中に抹陵攻めが発動されるだろう」
「廬江への増援部隊は、今日戻ったばかりですが?」
「それでも、やる。四則殿ならな」
袁奉は断言した。吾玄の性格は知り尽くしている。
「とりあえず抹陵を陥とすまでは、第二軍の副将として戦おう。わしの身の振り方を決めるのは、それからでもよい」

差出人不明の投げ込み文は、袁奉邸にも届いていた。
勝手に廬江へ向かった袁奉らを、吾玄が強く批判している、という内容だった。
袁奉は乾いた笑いを浮かべた。
どうにでもなれ。
そんな気分になっている。
宿屋。
商人風の男が、筆を走らせている。
送り先は、洛陽。
内容は、呉巨の突出に端を発した第二軍の確執。
書いているこの男は、言うまでもなく、郭図公則配下の草。

呉巨の廬江攻略は、予測通り吾玄の自尊心をズタズタに切り裂いた。
これで第二軍内に何らかの亀裂が生じるだろう、とは考えていたが、あそこまで確執が深まるとは予想外だった。
吾玄派と袁奉派に分裂している今の第二軍は、いつ同士討ちが起こってもおかしくない状況となっている。
今日、吾玄邸と袁奉邸に投げ込んだ書状は、二人の亀裂をさらに深くしていることだろう。
(それにしても、ここまで事が大きくなるとはな)
自分の蒔いた種が、予期せぬほどの影響をもたらしていることに、草は愕然としていた。
郭図公則配下の名目で呉巨に面会し、廬江侵攻をそそのかしたのは、ほかならぬこの男だった。

(だが……)
計が成功した喜びよりも、釈然としない気持ちの方が先に立つ。
(俺はいったい、何をしているのだ?)
吾玄と袁奉の離間をなせ。
細作頭から受けた命令はこれだけであり、その目的については、一切知らされていない。
友軍相手にこのような陰湿な計を仕掛けるなど、的外れも甚だしいとしか思えなかった。
自分は確かに、洛陽太守・郭図公則配下の細作だ。
だが同時に、涼の録を食む者でもある。
上司の命令が絶対であることは承知しているが、自分がやっていることは、涼にしてみれば明らかに利敵行為だった。
(俺はいったい、何をしているのだ?)
もう一度、同じ思考が頭をよぎる。
しかし、答えは出てこなかった。


※次回、「波紋・後編」
618第二軍兵士:03/02/25 11:44
「袁奉派が5人で吾玄派が4人か」
「増援に関してはそうだったが、黄権様が吾玄様と対決する道を選ぶかな?」
「てことは、袁奉派4人に吾玄派5人?」
「うーん。どう転ぶことやら」
「なんか派閥争いの数合わせみたいだが」
「実際のところ…同士討ちってあるかな?」
「吾玄様も袁奉様もトサカに来てるみたいだからな」
「やれやれ…こんなんで、夏侯惇に勝てるのかよ」
619315番目の草:03/02/26 07:33
第二軍団がこれほどまでに揺らぐとは…
涼の進攻にまで影響が出ては本末転倒なのだが。

こうなっては呉巨の面会に郭図公則様の名を出したのは失敗かもしれぬ。
公になれば第二軍だけでなく涼王にも排されよう。
第二軍団も俺の行く末も天のみぞ知るということか…ハッまた声が(゚ Д゚ ;)

>>呂砲様
感激しました!好きに使ってやってください。
620希代之副官:03/02/27 02:21
(軍師邸にて)
は。呉巨様から讒訴の書状、でございますか?
なるほど、きたない字だな・・・武功を挙げたのに袁奉様に衆前で辱められたと。袁奉様に?
いやこれは、どうにも腑に落ちません。何かの間違いでございましょう。

しかし讒言は早めに封じないと厄介かも知れませんな。彼は前線の太守ですし。
621見習忍者:03/02/28 02:38
楔を打つ事には成功したな。
他の部隊にも伝達し、より複雑に絡み合ってもらうとしよう。
しかし、この様子だと吾玄将軍の方が取りこみ易いかもしれんな。
そう言えば例の呉の女を始末したのは軍師殿だったな。
これを絡めると吾玄将軍の反応は面白いものになりそうだ。

あとは呉巨の処分だな。
彼の役目をもう終わりとするかそれとも・・・。
屈辱が元で自害したり、相手に復讐するのはよくある話だからな。

>閣下
長史の増税の件・・・洛陽事件の時と言い抜け目ない男ですな。
さて魏及び燕についてでありますが・・・(略
長史殿は帝の名を語り重税を科して私腹を肥やしておるそうだが(ry



郭図公則が公的な場で長史を批難シマスタ
623呉の義兄弟:03/02/28 18:40
( ハゝク)「伯符だ」
( コゝウ)「公瑾です」
( ハゝク)「廬江と秣陵を同時に失ってしまったな」
( コゝウ)「魏軍の侵攻が意外でした」
( ハゝク)「流石は夏侯惇、抜け目ない。かっかっか」
(;コゝウ)「笑ってる場合じゃありません」
( ハゝク)「おおっと、そうだったそうだった」
(#コゝウ)「真面目に(・∀・)ヤレ!!」
( ハゝク)「怒るな公瑾。長生きできんぞ?」
( コゝウ)「貴方よりは長生きします」
( ハゝク)「ショボーン」
( コゝウ)「そんな事より、これからどうなさいますか?」
( ハゝク)「取り敢えず、大喬たちを会稽へ退避させるか」
( コゝウ)「愛妻家ですね」
( ハゝク)「うむ。手配が終わったら呉の歓楽街へ参る」
( コゝウ)「今のお言葉、奥方に言いつけますからね」
(;ハゝク)「それだけは勘弁してください」
保守します
     __ ,,  
   '´    ` ,  カタカタカタカタ   
   i |,_i_/i|__|         
   ヽ* ´Д`⊂)。゜。 < ウチナオシハシンドイヨ。ウワァァァン!
   (つ._|| ̄ ̄ ̄ ̄|  
 __|\.||   V   |_
     \,,,|========.|


  _、_     
( ,_ノ` )     ……とまあ、けっこう大変だったわけが、大まか書き終えた
   
    [ ̄]'E
      ̄
  _、      
( ,_ノ` )     例によって長くなったが、荒藻是藻垣帯病のせいちゅーことで
  [ ̄]'E 
    ̄
  _、 _      
(  ◎E      お? 急に暗くなったのはなぜ?

  _、_
( ; Д`) .・;'∴   ブレーカー落ちたぁ!? 上書き保存しとらんぞおおおお!
         

    [ ̄]'E

     __ ,,  
   '´    ` ,  カタカタカタカタ   
   i |,_i_/i|__|         
   ヽ* ´Д`⊂)。゜。 < ………………
   (つ._|| ̄ ̄ ̄ ̄|  
 __|\.||   V   |_
     \,,,|========.|

現在、再度書き直し中。
627雑兵1号:03/03/03 21:08
諸行無常。
諸行無常の響きあり。

あぼ〜ん。
殿下……おいたわしや(同情
>>627雑兵1号殿 >>628

      /ヽ        /ヽ             
     /::::::::ヽ____/:::::::ヽ            
    /  ::::_    :::::::::::::._ .\            
   /:::::: /  。\ヽ v.._/。 \ :::\  クワッ
  |::::   / ̄ ̄ /___√ ̄ ̄\ ヽ         <諸行無常ってわしが何したって言うねん!
  |:: :::::.     /|ーーーt ヽ ヽ.. :.:::::::::. |          
  |::.        |    ||:..  ...:::::.. |         
.. |:::::       ! | ヽニ⊃| |    ::: |         
  |::.       | |::::T:::|  | |   .. : |.         
 _丿::::     ├^^^^^--∧  :: :/  ∧      
/::::::::::::::::::::        ../ ::ヽ   \ / ヽ、
::::::::::::::::::::         / ::::ヽ⌒ヾ⌒ヽ  ::::ヽ ←>>雑兵1号&628
:::::::::::::::::::: グリグリッ/    ..(.....ノ(....ノ  ::::/ ヽ 
::::::::::           |         ∪  .:(....ノノ ))
::::::::::         / ̄ ̄ヽ ∪     :::::::::::::/`ヽ
::::::::::      (( (___..ノ      ::::::::::::::(....ノノ ))
              ヽ ノノ     ::∪:::::::::::::ノ
     __ ,,  

>>629
なんとかUPできる量だけは書き終わりました。
許昌・仮王宮。
元涼州牧・馬騰が、玉座の呂砲と対面している。
静かな中にも明確な意志を示している馬騰に対し、呂砲は途方に暮れた顔をしている。
頭の中で言葉を組み合わせながら、呂砲はなだめるように語り掛けた。
「おぬしは確か、51歳であったと思うが」
「それがしなどの齢をお覚えいただけるとは、恐縮にございます」
「おぬしと同い年の馬参は、第三軍団長として、ますます意気盛んであるのだぞ」
「彼の御仁の軒昂なる意気は、まこと涼の誉れと存じます」
「はぐらかすでないわ。かつて涼州牧として覇を誇ったおぬしとは思えぬ」
「もはや牧などという分不相応な官職に縛られる身ではございませぬ」
「そうだ。今のおぬしは西涼の牧ではない。涼の、そして漢の忠臣のはずだ」
「承知しております」
「天はまだ乱れておる。おぬしの力を欲しておる……にもかかわらず、なぜ隠遁したいなどと申すか」
馬騰はこの日、公職の身から引退したい旨を呂砲に伝えに来ていた。

「殿下は九州の半分から戦火を収め、さらには皇帝陛下を庇護されました。今後は涼の軍旗を掲げるのみで、賊は霧散し、民はこぞって糧食を差し出し、殿下をお迎えするでありましょう」
「そんな簡単なものか。魏に呉に燕。我らが陛下を庇護したからとて、安々と尻尾を振るタマではない。戦さはこれからも続くのだぞ」
「御意。戦さは終わってはおりませぬ。されど、終局へと向かいつつある、と存じます。これからは次の世代の者たちの仕事。老兵は去るのみにございます」
「馬参やら黄忠やら厳顔やら公孫讚やら張燕やらが怒るぞ。いずれもおぬしと同年か、あるいは年長。しかし、現役として頑張っている」
その言葉に、馬騰は詫びるように頭を下げた。

結局呂砲は、馬騰の引退を承諾した。
「超、鉄、岱の三人を何とぞよろしくお願いいたします」
愛する次男の死に打ちひしがれた男は、その言葉を最後に退出した。
「体を大事にな」
そう告げる呂砲の口調は、しらけた感情もあらわな投げやりなもの。
歴史の表舞台から退場していく男の背は、年齢以上に老けて見えた。
漢朝復興宣言の布告文と、呂砲から長史に送られてきた手紙を読み返しながら、長史は暗然とした気持ちを禁じ得ないでいる。
漢朝復興宣言事体は、まだよい。
まだ刻が満ちていない。そう考えれば収まりもつく。
だが、布告文に遅れて届いた呂砲の手紙は、そんな長史の淡い期待を粉々に打ち砕くものだった。
「大涼宮などという不遜な名称を皇宮に付けるとは、余を大逆の徒に仕立て上げる所存か」
「即刻『大漢宮』と改めよ。そして、陛下をお迎えするにふさわしい居城として、金に糸目をつけず、さらなる拡張を進めよ」
「荘厳なる大漢宮の完成こそが、余の皇帝陛下への忠心を示すものと心得よ」
叱責の手紙だった。

(私の目指すところは、殿下のそれとは見当違いの方向を向いているのだろうか)
長史の悩みは、まさにそれだった。
新しい世をつくりたい。
その一心で呂砲を支え、あの郭図公則と張り合ってきた。
だが、呂砲の手紙は、そんな長史の努力と熱意を完全に否定するものだった。
呂砲に新しい世―涼王朝の世―をつくる気がないのであれば、自分が涼の長史として洛陽に留まる理由はない。
(確認しなければならん。殿下の御意志を)
しばし、その方法を模索していた長史は、大涼宮建設の責任者を呼び付けさせた。

蘇越という名の責任者はすぐに飛んできた。
工事の進捗状況について、蘇越は平伏したまま答えた。
「周辺の工事はほぼ完了しております。しかし、肝心の宮殿の方がなかなか」
「やはり、棟梁か?」
「御意。荘厳なる大宮殿ともなれば、それ相応の大木にあらざれば、その用をなしませぬ」
「他の当ては? その後、見つかっておらぬのか?」
「八方手を尽くして捜しておりますが、やはり、躍龍潭の神木に代わるものはないかと」

洛陽から三十里。躍龍潭。
そこには高さ十余丈に達する千古の梨の木が立っている。
その脇には、漢朝を祭る小さな祠があり、梨の木が「漢の神木」と呼ばれる所以となっている。
「ほかに当てがないのなら、仕方あるまい。躍龍潭の大木を使うぞ」
「し、しかし……二百年余にわたって漢朝を守護してきた神木なれば、切り倒そうものなら、その……」
「祟りがくる、と申すか?」
「……御意」
「安堵せい。おぬしらに一太刀目を任せるつもりはない。やんごとなき身分のお方が、最初の一伐をお加えなさる」
「は、はぁ……。やんごとなき身分のお方とは?」
「おぬしが知る必要はない」

漢朝の神木への第一伐を、呂砲にやらせる。
その時に示す呂砲の対応でもって、判断する。
下野するかどうかを。

「それとな」
恐れ入っている蘇越に、長史はさらに命令した。
「『大涼宮』の名称を『大漢宮』と改めよ。これは涼王殿下の御命令である。よいな」
「はっ。直ちに」
「それともうひとつ」
これが本題というように、長史は足を組み直す。
「大漢宮に改めるにあたって、宮殿を拡張する。造営計画を全般的に見直し、近日中に報告書を提出するように」
「ははっ……えっ?」
かしこまった蘇越は、長史の言葉の内容を反芻し、眼を剥いた。
「そ、その儀はしばらく! ここまで来て計画を見直せば、時間はもちろんですが、費用もとんでもないものとなってしまいます!」
「費用は心配ない。増税で対処する」
「増税! しかし、現行の計画でもかなりの額となっておりますが……」
「やむをえまい。皇帝陛下直々の御命令だ」
「こ……皇帝陛下の」
「今は乱世ゆえ、と涼王殿下はお諌めになったのだがな。皇上の命令とあれば、そう強くも反対はできぬ」
長史は蘇越に笑いかけた。
「民に過酷とわかっていても、皇帝陛下の御命令とあれば、喜んで受けなければならない。宮仕えの身とはつらいものだ。おぬしもそうは思わぬか?」
許昌・町費邸。
町費隊の士長は、ニコニコ顔で恩寵の甲冑を高価な絹で磨いている。
町費が「もう十分にきれいですよ」と声をかけても、「陛下から賜った甲冑にございます。磨き足りるということはございません」と取り合おうとしない。
「それにしても、複雑な気分はいたしますぞ」
顔だけ町費の方を向いて、士長。
「この甲冑を羽織って戦場に立つ殿のお姿。ぜひ見てみたいものではございますが、殿は何かと無茶をなさいますからなあ。この美しき甲冑も、次の戦さが終わった折りには……」
士長のぼやきに、町費は苦笑した。

こと膂力に関して言えば、並みの武将に過ぎない町費だが、戦場では常に、「勇猛」と「無謀」の境界線を行ったり来たりしている。
洛陽解放戦における軍令違反はその典型的例だったし、明らかに自分より強い敵将への一騎打ち申し込みも、二度や三度の話ではない。
そういうわけで、戦さが終わった時の町費の甲冑は、その損傷度合いにおいて、「第一軍の切り込み隊長」廖衛とタメを張る。

「この甲冑には、賊徒を殲滅し、漢朝の威徳を世に知らしめるべし、という陛下のお気持ちが込められています。戦場で使ってこそ、陛下の御意志に応えるものでしょう」
町費の軽い反論に、士長は甲冑を磨く手を止め、頭を下げた。
「や、まことおっしゃる通りにございます。恩寵の甲冑に雌雄一対の剣! 次の戦さが楽しみでなりませんぞ!」
許昌の戦役での戦功で、いくらか借金も返済できた(完済には程遠かったが)。
それに、恐れ多くも皇帝陛下から声をかけていただき、甲冑まで賜った。
そしてさらに、涼王の漢朝復興宣言。これで、自分の上司が、さらにその上司に刃向かう理由もなくなった。
今の士長は、ここ最近になく幸せだった。

もっとも当の町費本人は、そこまで呑気にはなれなかった。
(漢朝復興宣言……本当なら嬉しいが、どうもうそ臭い)
呂砲が一度は皇帝の位への野心を抱いたであろうことに、町費は確信を持っている。
一度抱いた野望をそう簡単に捨てられるものだろうか、と考えた時、とても呂砲の宣言を手放しで信じる気にはなれなかった。
(廷臣殿と一度会っておくべきかもしれぬ)
幸せ一杯の士長と対称的に、町費の顔に安堵の色が浮かぶことはなかった。
許昌・皇宮。
廖衛とやりあった廷臣と、先の戦いを機に涼に帰順した董承が、密談をかわしている。
「馬騰の引退? それが如何した?」
「車騎将軍は、彼の者を存じませぬや?」
「騎馬の扱いに優れているそうだな」
「さような些少なことにあらず。彼の者、周公旦に勝るとも劣らぬ忠義の士。事起こりし折りには、必ずや陛下の心強い味方となったであろう人物」
「事起こりし、とは……穏やかでないぞ」
「おっしゃる意味がわかりませんが」
「涼王は漢の復興を宣言したばかりではないか。平地に乱を起こすような言は、陛下の臣として慎むべきであろう」
「将軍。初めて陛下に謁を拝した時の曹操は、如何ような人物に見えましたか?」
廷臣の指摘に、董承は反論できなかった。

「呂砲がいつ心変わりをするか。いや、あの漢復興宣言ですら、己の野心を隠すための欺瞞とも思えます。凶事となる前に、あの者を除くべきです」
「しかし、涼王……いや呂砲を除いたとしても、また別の者が漢室の威光を脅かすだけではないのか」
弱音をはく董承だったが、廷臣はこれを一喝した。
「陛下の義兄ともあろうお方が、何故ゆえ他者を当てにされるのか! さような弱腰の姿勢が、今の漢室の危機を招いたのではございませんか!」
車騎将軍の身ではあったが、董承はこの熱い血をたぎらせる廷臣には、どうも口応えできない。
「まあ確かにな……以前わしは、曹操を退けるに、亡き韓公の力を借りようと考えたこともあったが……今思えば、劉備殿が曹操に取って代わるだけの話だったかもしれぬ」
「郭、李カクを除くに曹操。曹操を除くに劉備、そして呂砲。野望のみに凝り固まった者に逆臣を除いてもらうなど、家に盗人を招くようなもの。今我らが倣うべきは、己の知謀であの董卓を退けた、王司徒の忠義にございますぞ」

司徒・王允。
洛陽、そして長安で暴虐の限りを尽くした董卓を、搦め手でもって誅殺した人物。
その杓子定規な性格ゆえ、賊徒どもに刻み殺される羽目となったが、この際それは関係なかった。
「だが涼は強いぞ。最盛期の魏より多い都市を押え、兵力も100万を超えている。これにどう対抗する?」
「涼そのものに対抗する必要などないのです。狙うは呂砲の首、ただひとつ」
「というと?」
「呂砲には子がおりませぬ。呂砲が死ねば、後継者のいない涼は、そのまま分裂します」
「おお、そうであった! 涼の大きさに目を奪われ、そんな初歩的なことも忘れておった」
「呂砲に次ぐ実力者の七同志にしろ、すべて同格の士。勝手に合争い、自滅するでしょう。その間に我らは兵を奪い、これを元に叛徒を成敗し、漢の威光を九州に知らしめるのです」
「兵を奪う……うむ、今の我らには自由に使える兵がないからな」
「だからこそ、多くの兵を有する者を味方につけねばなりません。そしてそれは、我らが扱いやすくあるためにも、陛下のお膝元に近いところでなければならない……成都あたりの兵が呼応しても、短期的にはどうしようもありません」
「なるほど。陛下のお膝元に近く、かつ多くの兵を有している……上党にいる馬参はどうだ? 第三軍団長だ。兵も将も多い」
「あの者は呂砲に盲信する輩。漢に対し明らかに不忠。使えません」
「宛太守の馬超は? 馬騰の息子なら、期待もできよう」
「残念ながらその男、漢への忠義という素養は、親から受け継がなかったようです。また単なる匹夫にて、緻密な計には向きません」
廖衛との一件もあって、廷臣はいわゆる「武力型」武将に偏見を抱くようになっている。

「では、第一軍の町費と希代之はどうだ? 奴等に呂砲を誅殺させ、そのまま第一軍の兵を官軍に組み込めばよい。一石二鳥だ」
「彼の者たちに、呂砲を誅殺させることは考えております。ただ、そのまま官軍に編入するのは危険です」
「どういうことだ?」
「呂砲を殺した彼らを官軍として迎え入れれば、残る七同志は弔い合戦として、漢に宣戦するでしょう。下手を打てば、馬参や廖衛あたりが、陛下の身に危害を及ぼすこともありえます」
「そんなことを言ったら、何もできなくなると思うが?」
「あくまでも、呂砲を殺す兵と、陛下の兵は別であるべきなのです。我らの手管によって呂砲が死んだと知れてはなりません」
「つまり………希代之と町費は捨て駒ということか?」
さすがに董承は鼻白んだが、廷臣は目をそらすことなく言い放った。
「陛下の兵は、呂砲死後の混乱期に陛下をお守りし、かつ時期を見て涼や魏を討つべきもの。緒戦に失うわけにはまいりません」

「まあ、第一軍のことは良いとして、だ」
咳払いをした董承は、難しそうな顔になる。
「馬参も馬超も希代之も町費も駄目となれば、いったい誰の兵を組み込むのだ? まさか、弘農の兵を当てにするとは申すまい?」
「弘農太守は陳蘭です。さすがにこの義挙の尖兵とするには、役不足でしょう」
「ではどうする? 状況が変わるまで待つとでも?
「これ以上涼の勢力が大きくなっては、事を成すのも困難となりましょう。早ければ早いほどよろしい」
「しかし、御辺の言う条件に合致する者など………あ」
ここで董承は、ハッとしたように顔を上げた。

皇帝のお膝元に近く、多くの兵を有し、かつ有能。
難しい条件だが、適合する武将は、確かにいた。
ただ、強気一辺倒の廷臣も、さすがに迷いの色を見せている。
果たして、あの男を味方につけることができるだろうか?
これについては、自信をもって断言することはできなかった。

「洛陽太守………郭図公則か」
董承はうなり声を上げた。
曹魏の抵抗により、わずか半年しか経過せぬうちに容量オーバー目前となった。
陣形を維持したまま、全軍次スレへ突入!
なんとしても次スレまでに、中華全土を平定するのだ!

自信?
全然ありませんな。

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>廖影殿
わしもついに禁断の果実の在処を知ってしまった。