「三国志」
基本は、中国は三国時代<221-265>のものを記した史書(陳寿著)ですが、
一般的に日本で三国志と言うと「三国志演義」のことを差すことが多い。
宋代11世紀に物語を歌い上げる講談師達が、
好んで三国時代の話を寄席で行ったのが流行り、多く戯曲として作られたようで、
それが「全相三国志平話」としてまとまり、
更に14世紀末に羅漢中なる人物がきちんとまとめ上げたのが、所謂「三国志演義」であります。
日本でも古くから愛読され、
湖南文山訳「通俗三国志」全50巻は、1689年(元禄2年)には刊行されていたりします。
中国人に負けずとも劣らぬ程、三国志を愛する日本人でありますが、
その魅力はどこにあるのでしょうか。
スケールの大きさでしょうか、登場人物の素晴らしさでしょうか。
今日様々なメディアから出されている三国志の一端を以下紹介したいと思います。
「三国志」 吉川栄治著 講談社文庫 全8巻 (小説)
日本で「三国志演義」をベースとした小説で最も基本と言われるのが
この吉川三国志じゃないでしょうか。
涼やかでキレのある文章は、読み手を三国志の世界に引き入れます。
魏・呉・蜀の三国うち、蜀寄りな内容にはなっていますが、
そこに悪役がいる訳ではなく、純粋に国取り物語を熱く描いているところがまたよしです。
各国の軍師が策略を練り、武将達が華やかに戦場を駆け巡る。
小気味のいい文章の中に、群雄割拠の様がありありと目に浮かび、
過去、実際にいた人々に思いを馳せることが出来ます。
「正史」と「演義」では大分違いもありますが、
歴史小説のいいところは、「現実にあったこと」を二次元的に体感できることでしょう。
さすが吉川御大だと、納得の小説です。
まずはここから、三国志をどうぞ。
「三国志」 北方謙三著 角川ハルキ文庫 全13巻 (小説)
北方三国志の何がよいと言えば、人の死に際の格好よさ、でしょうか。
特に序盤では呂布の格好よさに、一目置いてしまいます。
そして何よりも、読みやすくエンタテイメント性が重視されていると言えるでしょう。
また何処の国に偏るという書き方ではなく、公平を持って書かれているので、
どの人物に対しても活き活きとした、奥行きが感じられます。
戦の描写も映像的で、まるで映画のワンシーンのような迫力の連続。
ハードボイルド作家として有名な北方氏でありますが、
歴史小説家としての手腕も見事だと言えます。
吉川三国志に比べると、更に読みやすい三国志…とは言えるのですが、
有名なエピソードが割愛されていたり、北方オリジナルの人物が出てきたり、
どちらを先に読むかは好き好き…と言った感じだと思われます。
「三国志」 横山光輝著 潮出版社 全60巻 (漫画)
内容的には、小説吉川三国志とほぼ同じでありますが、
さすがに「絵」という視覚的効果は大きいです。
200人をも越す武将達が、画面狭しと中国を暴れ回り、共に生き、共に死んでゆく。
小説と違って、イメージが限定されるという部分もありますが、
太ってるはずの董卓が痩せていたり、虎痴のあだ名を持つ許チョも格好よかったり。
全体的にスマートな印象を受ける部分も多いです。
しかし何といっても横光絵は「可愛い」という印象を受け、
一部に絶対的な支持者を持つ「関平タン」もそれは可愛く描写されています。
ストーリーは淡々と歴史を追いかけていきますが、三国志という世界は熱く描かれています。
活字は少し苦手…と言う人でも、素直に世界観に同調できるのではないでしょうか?
60巻(文庫サイズでは30巻)という長さですが、
漫画喫茶なんかで一度手に取って見ては如何でしょう。
「STOP 劉備くん!」 白井恵理子著 角川書店 以下続、続々という形で全3巻(漫画)
「GOGO 玄徳くん!!」 同著者 潮出版社 1巻以後続刊?
三国志の4コマ漫画。
時事ネタも多く含まれ、更にパロディネタなんかもあったりしますが、
ディフォルメ化された三国志のメンバーが可愛くほのぼのとギャグをかまします。
キャラの性格付けに味が出てるので、三国志を知らない人にも
まず4コマ漫画として楽しんでもらえるのでは?
とにかく出てくるキャラはみんな愛すべき馬鹿であり、
三国志を知る前に一読、知った後に一読をオススメしたい漫画です。
サクっと読めるので、まずは手にとって読んで下さいね。
「真・三国無双2」 光栄 PS2版発売中、X-box版は今秋発売 (ゲーム)
とにかく爽快感を求めて、斬る斬る斬る!というアクションゲーム。
自分が三国志の武将になって、戦場で敵を斬って行きます。
二人同時プレイも楽しめるので、2Pのピンチに颯爽と駆けつけることも可。
そして自分の見えないところで、味方のコンピュータキャラが
敵軍を粉砕してることもあったり(敗走してることも多いですが)
条件によっては、有名イベントや裏切り行為なども発生したりと、とにかく楽しい。
三国志を知らなくても、単純に楽しめるゲームです。
ただ史実を重視する人には、ちょっと向かないかも知れませんが、
パッケージ裏の文句「大軍を蹴散らす爽快感!己の活躍が戦局を変える興奮!」を裏切らない出来です。
「三国志戦記」 光栄 PS2版発売中 (ゲーム)
これは自分が軍師になった気分を味わえるシュミレーションゲーム。
将棋のコマのように味方を操り、更に味方の持つ特性をつなげていくことによって、
連環コンボを発生させ、敵に大ダメージを与え、戦局を変えていくというものです。
この連環コンボを発生させるのが、かなり難しく、
2手先、3手先の行動を考えて、味方を配置していかなければなりません。
しかし最後の1手にて、このコンボが5連鎖6連鎖とつながった時には爽快です。
多勢なる敵を一気に混乱へと陥れ、敗走させる気分は最高です。
システムが少々難しいので、百聞は一見にしかずなのですが、
緻密な戦略を立てていける楽しさがここにあります。
劉備編、曹操編、孫策編と違ったストーリーがあるので、
それぞれの視点からの三国志が楽しめます。
◆◆◆何を読む?何から見る? 三国志・戦国メディア紹介◆◆◆
題名:『三国志』(岩波少年文庫版)
分類:小説
作者:羅貫中 訳者:小川環樹・武部利男
版元:岩波出版 巻数:全3巻
コメント:
羅貫中の『三国志演義』を子ども向けに翻案し、平易な文章でまとめた作品。
主要なエピソードを拾いつつ読みやすく工夫され、労作と言っても良いかもしれないが、
いかんせんジュブナイル化の哀しさ、あまり面白いとは言えない。
しかし人名・固有名詞に全部フリガナがふってあるのが何気に便利で、初心者としては
つい手元に置いて記憶確認に使ってしまうのだった。
主要人物紹介が巻頭についているが、後の方になると全部
「曹仁…武将。 李典…武将。 宇禁…武将。」という感じで役に立たない。
初心者お勧め度:★★☆☆☆ BOOK OFFで100円で買ったのでまあ良し。
◆◆◆何を読む?何から見る? 三国志・戦国メディア紹介◆◆◆
題名:人形劇三国志(通称:人形劇三国志)
原作:『三国志演義』より
分類:映像(DVD)
版元:アミューズピクチャーズ 巻数:全17巻
コメント:
'82年〜'84年NHK地上波で放送され、大人気を博した人形劇。
今年、デジタルニューマスター版でDVD化された。
既に著名であった人形作家・川本喜八郎の人形を使い、NHKならではの豪華な映像で
繰り広げられた物語は、人形劇という形式の親しみやすさから子どもにも多く見られた。
この作品がルーツとなって三国志の世界へ導かれた者は数限りない。
当時人気絶頂だった紳介・竜介を作中に配したり、投書によって関羽が延命されて物語が
間延びしたりと内容に手が入りすぎたきらいはあったものの、今でも見るべき作品の一つ。
初心者お勧め度:★★★★☆ 6月にDVD完結。出荷数が少ないので要注意。
古いものだがビデオ版もあるので、映像資料の充実した
図書館を探すのも吉。
「内閣総理大臣織田信長」全8巻 志野靖史著(漫画)
400年の時を越え、信長内閣が突如、登場。
ちょんまげにスーツ姿の信長が、理不尽に暴れまわる。
しかし、数々の政策は無茶苦茶だが、信念がこもっていて読む側も納得させられる。
以下、代表的なエピソード
初心表明演説が「泣かぬなら殺してしまえホトトギス」
解散に伴ない、国会議事堂を爆破。
円高を「どるってなんじゃい?」発言により円安へ。
アメリカの大統領の娘と嫡子信忠との政略結婚を迫る。
信長千万円札の発行。
歴史系番組を取り扱うMHKちょんまげの開局
初心者お勧め度:★★★★☆
キャラ設定がしっかりされているので歴史を知らなくても楽しめる。
三国志メディアリスト・小説。メディア紹介を書く参考にしてください。
既出分のチェックができてません。済まん。
吉川英治 :「三国志」
陳舜臣 :「秘本三国志」「諸葛孔明」「魏の曹一族 曹操」
柴田錬三郎:「英雄ここにあり・三国志」「英雄・生きるべきか死すべきか・三国志」
北方謙三 :「三国志」
三好徹 :「興亡三国志」
江森備 :「天の華 地の風 私説三国志」
鄭飛石 :「小説・三国志」
伴野朗 :「呉・三国志 長江燃ゆ」
周大荒 :「反・三国志」
光栄(コーエー)から出ている物:
「三国志平話」
「超・三国志」
村上知行 :「完訳 三国志」(角川文庫=絶版、教養文庫(社会思想社)=品切れ重版未定)。
桐野作人 :「破三国志」 全3巻 学研M文庫
鄭飛石著 町田富男訳
:「小説三国志」全3巻 光文社文庫
歴史群像編集部
:「三国志 上・下巻」学研 価格:各1,165円 でかい地図付き
三国志メディアリスト・コミック。同じく、メディア紹介を書く参考に。
あと、ゲームのリストは挫折。映像のリストは作ってません。
「三国志」 横山光輝 潮出版社
「蒼天航路」 王欣太:画 李學仁:原作 講談社 。
「Sweet三国志」 片山まさゆき 講談社 全5巻
「天地を喰らう」 本宮ひろし 集英社 全4巻
「STOP劉備くん! 白井恵理子 角川書店
「GOGO玄徳くん!! 白井恵理子 潮出版
「三国志」 寺島優:原作 李志清:作画 メディアファクトリー
「龍狼伝」 山原義人 講談社
「爆風三国志 我王の乱」 川辺優:原作 山口正人:画 日本文芸社
「青春の尻尾」 小池一夫:作平野仁:画 スタジオ・シップ 全5巻 漫画系
「三国志」 寺島優:原作 小島利明:構成李志清:作画 スコラ
「三国志英雄伝 劉備」 三上修平:脚本小室孝太郎:漫画 集英社
「三国志英雄伝 曹操」 三上修平:脚本小室孝太郎:漫画 集英社
「三国志英雄伝 孔明」 三上修平:脚本 小室孝太郎:漫画 集英社
「三國志曹操伝」 影丸穣也:作 筧十三:協力
「三国志」 笠原和夫:脚本 駒田信二:解説 河出書房新社
「三國志 孔明伝」 とんぼはうす 筧十三:協力 光栄
「三国志」 久保田千太郎:作園田光慶:画 講談社 全10巻
「マンガ 三国志・水滸伝の英傑たち」
和田武司:訳蔡志忠:作画 講談社
「諸葛孔明 時の地平線」諏訪緑 小学館
「諸葛孔明」 久松文雄:画 竹川弘太郎 講談社
「諸葛孔明伝」 瀬戸龍哉:作 藤原芳秀:画 小学館 全3巻
「諸葛孔明」 石ノ森章太郎 世界文化社 全1巻
「諸葛孔明グラフィティー」
横山孝雄 新人物往来社 全1巻
「女 JOKER」 大西巷一 講談社 続4巻
「早わかりコミック 三國志」
守屋洋:監修 とみ新蔵:作・画 三笠書房
「江東の暁」 滝口琳々 秋田書店 全2巻
「4コマ三国志」 文化伝信有限公司 コミックバーズ スコラ 全1巻 漫画系
「三国志艶義」 清水清 ヒット出版社 全2巻
ついでにもう一点。自分が書くときに使ったフォーマットのテンプレです。
あった方が書きやすければ使ってください。
◆◆◆何を読む?何から見る? 三国志・戦国メディア紹介◆◆◆
題名:『 』(通称: )
作者: 訳者:
分類:
版元: 巻数:全 巻
コメント:
初心者お勧め度:☆☆☆☆☆
「戦国自衛隊」
分類:映像(DVD)\4,700 版元:角川書店 製作年:1979
監督:斎藤光正 原作:半村良 出演:千葉真一/夏八木勲/渡瀬恒彦
あらすじ
新潟・冨士県境に演習を展開していた自衛隊一個中隊がヘリコプター、装甲車、
哨戒艇もろとも突如、戦国時代にタイムスリップした!
彼らの前に現われたのは、長尾景虎と名乗る武将、すなわち後の上杉謙信であった。
景虎の越後平定に力を貸すことを決意した伊庭三尉率いる中隊は、
現代の兵器を駆使して次々と諸将を制圧していくのだが……。
果たして歴史は塗り替えられるのか? 異色SF傑作。
コメント
最大の見せ場は2万人の武田信玄軍対近代兵器の凄絶なる戦いです。
かなりの迫力で観るものを圧倒します。
また、真田広之や薬師丸ひろ子もちょい役で出演しています。
初心者お勧め度:★★★★☆ IFモノですが、設定自体が滅茶苦茶なのであまり違和感は感じないです。
笑えますので、近所のツタヤかどっかで借りてください。
◆◆◆何を読む?何から見る? 三国志・戦国メディア紹介◆◆◆
題名:利家とまつ 〜加賀百万石物語〜
分類:戦国ホームドラマ 版元:NHK プロデュース/浅野加寿子 原作/竹山洋「利家とまつ」
この作品は、尾張・荒子城主の四男・前田利家と妻まつが、激動の乱世の中、
夫婦で加賀百万石の礎を築きあげるまでの波乱万丈を描く、スーパー大河ドラマです。
特徴
まつにおまかせすれば、全てがうまくいくドラマです。
毎回、20時30分から45分の間にはお涙頂戴の場面が入ります。
名台詞
まつにおまかせくださりませ!!(まつの決め台詞)
デ・アルカ。デ・アル。(信長の口癖、終盤になるほど使用頻度は増してくる)
秀吉と利家は“真の友”にござりまするっっ
(秀吉に利用されていることを周囲からたしなめられると出てくる利家の言葉)
初心者お勧め度:★★★☆☆ 戦国時代について詳しく知りたいというきっかけになると思います。
出演者も豪華ですし、純粋にドラマを楽しみたいという人にはお勧めできます。
次回予告 7月7日いよいよ本能寺の変!! 利家が本能寺に一番槍で駆けつけます?
詳しくは予告編ムービー
ttp://www.nhk.or.jp/taiga/ykkrm/ykkrm.ram かなり主観が入っている紹介なので、ボツにしてもらっても結構です。
◆◆◆何を読む?何から見る? 三国志・戦国メディア紹介◆◆◆
題名:『反三国志』
分類:小説
作者:周大荒 訳者:渡辺精一
版元:講談社 巻数:全2巻
コメント:
著者である周大荒が北京で発見した「三国旧志」をまとめたもの。これまで巷に流布
してきた三国志は全て偽史であり、蜀が三国を統一する様を描いたこの書こそが
正しき「野史」であるとする問題作である…
…実は周大荒の手によるパロディ、文字どおり「反・三国志」である。
とにかく諸葛亮の策は当たりまくり、敵将は死にまくる。
(「三国旧志」の前半が散逸したという理由で)途中から始まっていることや、何より
元を知らないとあまり楽しめないため、素人にはお勧めできない。
初心者お勧め度:☆☆☆☆☆ どうしても読みたい方はまず他の三国志から。
元ネタがわかっていれば結構面白い。
◆◆◆何を読む?何から見る? 三国志・戦国メディア紹介◆◆◆
題名:『関ヶ原』
作者:司馬遼太郎
分類:小説
版元:新潮社文庫 巻数:上・中・下巻
コメント:
天下分け目の大戦、関ヶ原決戦を描いた歴史大作。
いかにして決戦へと至ったかが、西軍・東軍、どちらにも偏ることのない大局的な視点で綴られていますが、
どちらかというと、人情派な三成寄りの印象を受けるかも。
小狡い悪役というイメージが強かった三成が、見直されるきっかけとなった作品、とも言われます。
読みどころは、裏切り、寝返りを画策する家康の権謀術数、外交戦略でしょうか。
タヌキ爺っぷりを、とくと御覧あれ。
司馬遼太郎の文章はシンプルで読みやすく、且つ迫力充分。クライマックスの合戦シーンは圧巻です。
「関ヶ原」以外にも、「国盗り物語」や「箱根の坂」など戦国時代を舞台にした傑作が多くあります。
初心者お勧め度:☆☆☆☆ (長編が苦手でなければ、星五つ!)