age
929 :
無名武将@お腹せっぷく:04/06/01 20:58
福岡もかなり入ってた。映画の日というのもあるだろうけど。
b
誰も日記書いてないのか?
なら俺が書いちゃうぞ。
933 :
無名武将@お腹せっぷく:04/06/24 10:48
人にも都合ってもんがありますから…。
ってなわけで、他の人も書いてもいいのでは。
ってか、8以外はダメかな?
934 :
無名武将@お腹せっぷく:04/06/24 12:07
状況が状況だし、age進行でもいいかも。
もしかしたら陛下もスレがどれか忘れちゃったかもしれないし…。
935 :
無名武将@お腹せっぷく:04/06/24 17:10
missyerukeizb!!!
>>933 じゃあ書いちゃうよ。
素人だけどいいのかな?
あと、キャラは袁術オンリー?
937 :
無名武将@お腹せっぷく:04/06/25 20:46
じゃあ、馬鉄でやってみます。
三国志[のPUK(PS2)
195年 史実 初級で。
西暦195年、時は戦乱の後漢末期。
大漢帝国の遥か西、涼州と呼ばれる辺境の地域。
現在、この地域を統治するのは、後漢の名将馬援の子孫である馬騰。
そして、その馬騰には3人の息子がいた。
馬超、馬休、馬鉄。
長男の馬超はともかくとして、
その弟である馬休・馬鉄は能力的にも、ネームバリュー的にも、何とも微妙な感じであった。
「なぁ、兄貴」
仕事である商業振興をおこないながら馬鉄が馬休に言った。
「どうした?」
「何かさァ、何て言うか・・・平和だよな」
「別にいいじゃないか、平和に越したことはないぞ」
「中央じゃさァ、李カクに曹操、袁紹といった群雄が
互いに覇を競ってるっていうぜ。オレたちこのままでいいのか?」
「父上も野望がないわけじゃない。
そのうち長安を目指して南下されるおつもりだと思うぞ」
「しかしよォ、オレ、予感がするんだよな。
父上が南下したら、オレ西涼の太守にされてさ、そのまま辺境で朽ち果てていく予感がさ」
ありえないことではなかった。
馬鉄の武力は一族の中で最低。その割に政治や魅力が微妙に高い。
しかも一族の者となれば、後方支援の太守タイプに最適であった。
てか、俺ならそーする。
馬鉄は思い立ったように立ち上がった。そして力強く言い放つ。
「決めた、オレ下野するよ」
「ハァ?」
「じゃあな、兄貴。そうそう、親父や超兄ィにもよろしく!」
「ちょ、ちょっと待て!」
馬休は叫ぶ。しかし、疾風の如く走り去る馬鉄が振り向くことはなかった。
馬鉄、いきなり下野ですか…。
これからの展開に期待!
いきなり下野ワラタ
馬鉄殿、新リプレイ開始おめでとうございます。
続きを楽しみにしております。がんがって下さい。
偽兄ですた。
>>940-942 ありがとうございます!
とりあえず馬鉄でいけるとこまで突っ走ってみます。
暇があったら、また何か感想でもお願いします。
195年10月・・・放浪3ヶ月。
長安、陳留、業βと渡り歩き、
李カク、曹操、袁紹といった群雄に面会するも、手ごたえはゼロ。
それどころか、逆に冷たくあしらわれる始末。
馬鉄はちょっとホームシックになった。
西涼を立ち去る間際、馬休がくれた餞別を握り締める。
(帰ろうかな・・・)
などと考えていると、突然馬超が訪問に来た。
「おう、鉄ちゃん。元気か?」
「兄貴・・・どうした?」
素っ気なく答えたが、心の中では狂喜乱舞。
(やっぱ長兄だぜ、オレのこと心配してくれてんだな・・・)
愚痴でもこぼそうかと思いきや、
「今日はお前にある人物を紹介しようと思ってな」
厳顔という武将を紹介し、さっさと帰る馬超。
部屋の中で無言のまま、馬鉄と厳顔は見つめ合っていた。
(オレに・・・どうしろと?)
ただただ沈黙だけが過ぎていった。
年は明けて196年。仕官できないまま年越ししちまった。
様々な群雄たちに面会したが、
暖かい出迎えを受けたのは公孫サンと劉備であった。
まあ、何といいますか。
やっぱり独り身は寂しいワケで。
そんな時に優しくされちゃうと、気持ちもつい傾いたりするワケで。
どっちにしようか迷いつつ、結局現在地は公孫サンの居城である北平。
意味もなく宮城の前を行ったり来たり、
兵舎で鍛錬をして、車懸の特技をアピールしたりしてみる。
早く勧誘してくれないかなぁ・・・などと思っていたら、仕官キター!!
公孫サン配下の関靖から推挙を受けた。
2回くらい固辞しようかと思ったが、やはり放浪の身は寂しい。即承諾。
何と酒宴を開いてくれた。有難き幸せにござりまする!
196年4月・・・袁術軍が秣陵(孫策領)に侵攻。これを打ち破る。
馬超のことを「超兄貴」と呼ぶということにしてはどうだろうか?
>>946 それだと頭からビームが出そうだから駄目
天下に覇を唱える群雄はいったい誰か?
数年前にそう問われたならば、真っ先に挙がる名前は『董卓』であった。
しかし、その董卓はもはやこの世の人ではない。
董卓という巨大な柱が崩れ落ちた後、各地には雲霞の如く群雄が立ち上がった。
だが、次第にその群雄たちも淘汰されてゆく。
現在、天下に最も近いとされるのは北の袁紹か、あるいは南の袁術か。
または近年台頭著しい曹操か、天下無双の剛勇呂布であろうか。
そしてこの男、公孫サンも天下に近いとされる群雄のひとりであった。
「はっはっは、まあ飲んでくだされ。馬鉄殿」
馬鉄のお披露目の席。公孫サンが馬鉄の杯に酒を注ぎこむ。
彼が馬騰の息子であることに気を使っているのか、
公孫サンの態度はいくらかへりくだっったものであった。
彼は愛想笑いを浮かべながら、その酒を一気に飲み干した。
そして卓上に杯を置き、「ふぅ・・・」と一息いれる。
彼はまだ未成年。それほど酒は強くなかった。
それに、公孫サンに対する軽い失望感が、心の中に少し芽生えていた。
白馬将軍の異名を取る、北方の雄公孫サン。
その勇名は、遠い涼州にまで鳴り響いていた。
どれほどの大人物であろうか。
期待を胸に彼は仕官を受けたのであるが、
今日間近でこの男に接し、馬鉄は何となくその本質を見抜いてしまっていた。
(この男は・・・戦が上手いだけの、ただの田舎将軍だ)
この程度の人物ならば涼州にもいる。
人物的に見れば、父親の馬騰に遠く及ぶまい。
(それよりも・・・)彼は正面に視線を戻した。
(この男が気になる・・・)
視線の先に居るのは、ひとり静かに酒を飲む若武者。
その整った容姿もさることながら、立ち振る舞いに全く隙がない。
馬鉄の動向に気付いた公孫サン。
自分を無視されたことに腹を立てたのか、彼は少しむっとした感じで言った。
「おお、そういえば趙雲の紹介がまだでしたな」
「趙雲殿・・・ですか」
正面にいた若武者は微笑みを浮かべ、軽く頭を下げた。
「子龍、こちらに来て自己紹介せよ」
「はい・・・」
ゆっくりと立ち上がる趙雲。
その様子を見ながら、馬鉄はあることを感じた。
(この男の感じは・・・そうだ、超兄貴に似ている・・・)
>>946-947 超兄貴、使ってみました。
あれって確か元々はマンガですよね?
読んだ事ないんですが、面白いの?
いま、遅ればせながら袁術陛下のリプレイを拝読してます。
まだ全部読んでないんですが・・・この人すごいですね!
マジで再臨希望!最後まで読んでみたい。
まあ、馬鉄は再臨までの場つなぎ程度ってことで。
みなさま暇があったら読んでやってください。
すみません、時間が取れてないだけで、最後まで書く気はあるのです。
トーシロが大物作家気取りの遅筆はアレだとは思いますが……どうにも。
待っていただいている方には本当に申し訳ないことです。
196年7月・・・馬騰軍が天水(空白地)に侵攻。これを領有する。
196年10月・・・馬騰を盟主とする反李カク連合が成立する。
加盟勢力(馬騰・袁紹・袁術・劉表・劉璋)
時代の歯車がその速度を増す。
そのきしむ音が、ここ北平までも高々く響き渡っていた。
遠い山並みに沈む夕陽を目に、馬鉄と趙雲は馬上で語り合う。
「お主の父上は・・・一躍時代の中心に踊り出たようだな」
馬鉄は無言のまま、ひとつ頷いた。そして趙雲が続ける。
「後悔してはいないのか?」
「・・・後悔したことは、ない」
西涼を出る間際、息を切らせて駆け付けた馬休の姿が目に浮かんだ。
今の言葉は、嘘かもしれないと・・・ふと思った。
もしもあのまま涼州にいたなら・・・
父上や兄弟たちとともに、天下を目指していたなら・・・
馬鉄は大きく頭を振った。
間違ってはいない。あの時のオレの行動は、決して間違ってはいない!
それは本能的に確信できることだった。
何の論理も、裏付けもない。説明もできない。
しかし、オレの心だけが、その正しさを知っている。
そんな馬鉄の様子を見て、趙雲はおかしそうに笑う。
「何が・・・おかしい?」
「フフ、お主は・・・まだ子供だ」
「何ィ!?」
右手が思わず趙雲の胸倉に伸びた。
趙雲はスッと上体を反らし、それを難なくかわす。
体勢が崩れ、落馬しそうになった馬鉄を見、彼は大きく笑った。
「血気盛んな年頃なのだな、若い頃にはそんな時もある。
私にもそんな時代があった。そう、言うなれば反抗期というやつか・・・」
「反抗期?」
馬鉄は馬の首にしがみ付きながら、ボソッとつぶやいた。
>>951 陛下、お初にお目にかかります!
袁術おもしろいっす!先ほど読破しました。
文章力やその知識にホント感服です。
いつになってもいいので、続き読ませてくださいね!
197年4月 北平の評定
猛々しい足音が響かせ、公孫サンが評定の間に入る。
椅子にドカッと腰を下ろすと、彼は勢いよく言い放った。
「公孫サンだ。評定を始めるぞ!」
彼の傍らに立つのは、軍師の関靖。
そして目の前には二人の若者が立っていた。
馬鉄と、公孫サンの息子公孫続である。
現在、北平にいる武将はこの4人。
要するに人材難であった。
公孫サン「我らの状況を報告せよ」
関靖「非常に厳しい状況ですな。
渤海・平原に終結する袁紹軍はおよそ10万。
対してこちらは北平・薊を合わせても5万足らず・・・」
公孫サン「ふむ、兵力不足か・・・」
馬鉄「ならばオレに徴兵をお命じください!」
公孫サン「その必要はあるまい」
馬鉄「何故ッ!?」
あっさりと徴兵を却下され、馬鉄の発言権はなくなった。
関靖「さらに昨夜、何者かに城壁を壊されました。
袁紹の間者の仕業と見て良いかと・・・」
公孫続「ああ、それだったら昨日・・・ムッ、ムガッ!」
発言しようとする公孫続の口を馬鉄が押さえる。
不審そうに見つめる公孫サン&関靖に向かい、彼は慌てた様子で言った。
馬鉄「それは由々しき事態、さっそく続とともに城壁修復に向かいましょう!」
公孫サン「う、うむ、頼むぞ・・・」
公孫続を引きずるようにして退出する馬鉄。
城外へ出たところで、馬鉄は彼に力強く言った。
「いいか、内緒だぞ!
昨夜泥酔して、オレたちが城壁を壊したことは絶対内緒だ!!」
「う、うむ・・・」
気圧された公孫続は力なく頷いた。
それから3ヶ月、二人は城壁修復に真面目に勤しんだらしい。
197年7月 北平の評定
関靖「下ヒの劉備軍が、北海に侵攻したようです」
公孫サン「して、結果は!?」
関靖「劉備軍が撃退されました」
馬鉄「てか、北海にいる武将って・・・」
公孫続「孔融殿(武力32)ひとり・・・」
一同「大丈夫か、劉備軍!?」
198年1月
馬鉄は二十歳となり、七品官に昇格を果たしていた。
発作的に涼州を飛び出してから3年、
公孫サン勢力に仕官してからもう2年の月日が経つ。
果たして、この間に自分はどう変わったのか。
何も変わってはいない。
変化のない毎日に苛立ちを感じていた馬鉄はある日、
主君である公孫サンに薊への異動を願い出た。
公孫サン「うむ、いいだろう」
すんなりと承諾を受けたことに、馬鉄は多少驚く。
ひょっとして、自分はどうでもいい存在なのか?
・・・などと一瞬考えたりする。
ともかく、馬鉄はすぐに旅支度を整え、薊へと発ったのであった。
薊に到着し、宮城に入ると、そこでは評定の真っ最中であった。
馬鉄の横を伝令が走り抜ける。
伝令A「李カク軍、洛陽に侵攻、これを領有した模様!」
伝令B「劉璋軍は永安へ侵攻、これを領有!」
伝令C「平原の袁紹軍、孔融領北海へ進撃、これを制圧した模様!」
場に慌しい雰囲気が漂っていた。
前の2つはともかくとして、最後の報告は公孫サン陣営にとって重要なものである。
まずい時に来てしまったかな・・・。
馬鉄は恐る恐る、ゆっくりとした足取りで進み出てゆく。
そんな馬鉄に趙雲が気付いた。
趙雲「馬鉄ではないか。」
馬鉄「はい、この度薊へ・・・」
趙雲「うむ、連絡は入っている。宜しく頼むぞ」
馬鉄「こちらこそ、宜しく願います」
趙雲が馬鉄を、太守である田楷に紹介しようとした矢先、
凄まじい勢いで、もうひとりの伝令が駆け込んで来た。
田楷の前で崩れ落ち、荒れる呼吸で伝令は叫ぶ。
伝令D「渤海の袁紹軍、北平へ進撃中!急ぎ北平へ援軍を送られたし!!」
田楷「な、何と!」
趙雲「ついに動いたか・・・」
公孫範「それがしが向かいましょう」
田楷「うむ。趙雲、単経!副将として範殿を補佐せよ!」
趙雲&単経「はッ!」
馬鉄「あ、あの・・・オレは?」
田楷「お主は異動してきたばかりであろう。薊の兵士に顔も通らぬ。
わしとともに薊の防備に当たれ」
馬鉄「はい・・・」
何とも微妙な時期に異動してしまったものだ。
あのまま北平にいたなら、今頃兵士を率いて戦場だったかもしれない。
悔しさと、わずかな安堵感が心の中にある。
馬鉄はまだ、自分の部隊を率いて戦に出たことがなかった。
慌しく動き回る諸将の中、馬鉄はただひとり、取り残されたように立ち尽くす。
自分はまだ、若僧なのだと感じていた。
伝令「袁紹軍が撤退を始めた模様。
北平の戦いは、我が軍の勝利であります!」
そんな報告が薊になされたのは、
1月も後半になってからの事であった。
そして数日の後、公孫範率いる薊の援軍が帰還する。
従軍した兵士、それを率いる将校、果ては軍馬まで、
無傷で帰還できた者は誰一人としていなかった。
まるで敗軍ではないか・・・
馬鉄は一瞬そう感じた。
田楷による、ささやかな祝勝の宴が催された後、
馬鉄はひとり趙雲の居宅を訪ねた。
北平防衛戦の話を、もっと詳しく聞くためである。
夕陽が差し込む部屋の中、両者は机を挟んで向かい合う。
それぞれの杯に酒がつがれ、趙雲はつぶやくように語り始めた。
「厳しい戦いだったな」
勝利とはいっても、そう簡単に喜べるものではない。
むしろ勝利というよりは、痛み分けというのが正しいだろう。
しかも今回の戦では、ひとつの幸運が公孫サン側に味方していた。
事前に平原の袁紹軍が、北海制圧に乗り出していたことである。
そのため、平原の援軍が少数だったこと。
また、顔良・文醜・張コウといった主力将軍たちが北海に出陣し不在であったこと。
「もしも渤海・平原の総力を挙げて攻め込まれたならば、
今頃北平は袁紹軍の支配下となっていたであろうよ・・・」
趙雲は酒を一気にあおり、そして微笑んだ。
リアルタイムで見れたのはラッキー
馬鉄さんのリプレイ面白いです。
趙雲と馬鉄イイ
星ひとつ見えない漆黒の闇。時刻は深夜となっている。
ひっそりと寝静まった街並みの中、趙雲宅の明かりだけが煌々と灯っていた。
「鉄、このままでいいと思うか!?」
趙雲は机を叩き、大きく叫んだ。
いつにもなく趙雲は酔い、そして荒れていた。
一方の馬鉄はどうにも酔えない、杯を握ったまま沈黙する。
そんな彼を覗き込むようにして、趙雲は睨みつけた。
「このままでいいのかと聞いている」
馬鉄は思わず仰け反って答えた。
「よくない・・・と思う。しかし、どうすればいいのかも・・・」
バタバタと慌しい足音で、趙雲は本棚に向かった。
バラバラと書物が散乱する中、彼は一本の筒を握り締め、それを机の上に出す。
そしてその中から出された紙を、一気に広げた。
それは巨大な中国地図であった。
地図には細かく全国情勢が書き込まれており、
それが趙雲の性格を物語っているようだった。
彼は幽州を指し「これが我々」、続けて冀州を指し「袁紹」と言った。
「袁紹は丁度、我々の頭にかぶさった蓋のようなものだ。
これを持ち上げ、取り除かねば中央に乗り出すことはできぬ」
「だが、それは容易なことではないぞ」
「その通りだ」
自らの杯に酒をそそぎながら、趙雲は紅潮した顔で答えた。
「袁紹と我々では、悲しいかなその地盤が違いすぎる。
このまま幽州に篭っていたところで、いずれ袁紹に呑み込まれる」
「・・・・・・」
「運良く幽州を保ち続けたとしても、中央に覇者が出れば同じ事。
その覇者に、袁紹共々呑み込まれてしまうであろうよ」
「どうすればいい?」
趙雲は杯に口を付けながら、地図を指差した。
薊から南西に指を這わす。
「晋陽の張燕・・・」さらに南へ「上党の張楊・・・」
「これらを撃破してゆく・・・」
さらに南へ指を這わせてゆく趙雲。
その先にあるものが、馬鉄の目に留まった。
「ら、洛陽・・・!」
「そうだ、このルートで洛陽を突く。
そして、さらに西進を続け、長安におわす天子を奉戴する!」
「・・・実現できるのか?」
「難しいな」
「殿は、この策を・・・」
「知らぬ。それどころか、進言したら俺の首が飛びかねん。
これを語ったのは、馬鉄、お前が初めてだ」
いつの間にか、空から雪が降り始めていた。
部屋の明かりを受け、窓の外にキラキラと舞い散る雪。
趙雲は「雪か・・・」とつぶやき、杯を空けた。
>>964-965殿
ありがとうございます!
実は袁術陛下に習い、文章構成をかなり研究しました。
苦労が報われる思いです。ありがd!
袁紹軍を北平にて撃退した後、薊には再び安息の日々が戻っていた。
以前の馬鉄であれば、つまらぬと心の中で
愚痴をこぼしていたかもしれないが、もはやそんなこともない。
趙雲から語られた壮大な策を知り、
漠然とした目標のようなものが、心の中に芽生えていた。
晋陽・上党を制圧し、洛陽を突く。
それを考えると、湧き上がる高揚感に心が震えた。
馬鉄自身はちっぽけな存在かもしれない。
この策を実行に移す権力もなければ、実力もない。
しかし、心の中に夢を描くのは自由なのだ。
夢は、ないよりもあった方がいい。
どんな馬鹿げた夢であろうとも、
理想を持たず、ただ漠然と日々を送るよりは何倍もマシな筈だ。
馬鉄は日々黙々と仕事をこなし、
また、暇を見ては人材を探すべく全国を駆け巡り、
まさしく身を粉にして実務に励んでいた。
あまり楽しくはない。
あまり楽しくはないが、しかし充実している。
そう馬鉄は感じていた。
やがて北平防衛戦より、半年の月日が流れた。
夕暮れの街道を、ひたすら北に駆けるひとつの馬影。
馬鉄であった。
宛に在野の士ありと聞き、出向いたのだが
あっさりと断られ少々機嫌が悪い。
薊に入った馬鉄は、愚痴でもこぼしてやろうと趙雲を訪ねた。
趙雲宅の戸を叩くと、
中からは、ひとりの中年男性が顔を出した。
知った顔、公孫サン配下の単経であった。
「おお、馬鉄か。しばらく見ぬ間にやつれたのぉ」
「は、はい。単経殿は御変わりなく・・・」
単経は前回の評定で、北平に異動していた。
ほどなく趙雲が姿を見せ、馬鉄を中に招き入れる。
三人による酒宴が始まった。
「いやな、ちょいと愚痴をこぼしに来たんじゃよ。
前回の評定で、こやつに階級を抜かれてしまったからな」
趙雲の肩を、ポンポンと叩いた単経は豪快に笑った。
趙雲の階級は六品官。
対して単経と馬鉄の階級は七品官であった。
「お前はワシを抜くまいな?」
今度は馬鉄を睨みつける。
明らかに冗談とわかっていたが、馬鉄はその返答に困惑した。
戸惑う若者二人。
そんな彼らの当惑ぶりに満足したのか、
単経はワハハと笑い「まあ、飲め飲め」と酒を勧めた。
どれほどの時が経ったのか。
目を覚ますと、単経と抱き合って寝入っている自分に気付いた。
単経のヒゲが、ジョリジョリと頬に当たる。
あまりの気持ち悪さに、馬鉄は瞬時に飛びのいた。
ぐらりと世界が回る。
凄まじい頭痛を感じ、馬鉄は額を抑えた。
「寝ていろ」
杯を片手に窓の外を眺めながら、趙雲がつぶやく。
空がいくらか白み始めていた。
もうすぐ夜が明けるのか。
馬鉄は胡座をかき、うつむき加減でしばらく沈黙した。
そして単経に聞こえないよう、小声で言う。
「何しに来たんだよ、このオッサンは?」
趙雲はゆっくりと杯を空け、しばらくしてから答えた。
「若者に愚痴でもこぼしたかったのであろうよ」
「うだつの上がらねェ、オヤジってとこか・・・」
「ふむ、しかし無能ではない。なかなか堅実な用兵をする。
ただ・・・世渡りが下手なのだ。お人好しなのだよ、この御仁は」
「世渡りねェ・・・」
若すぎる馬鉄にとっては、いまひとつピンとこない言葉だった。
出世したければ、戦場で武功を上げればいい話ではないか。と思う。
しかし世の中は、それほど簡単に回ってはいないのだろうな。とも思った。
雀の歌声が聞こえ始める中、
趙雲は自らの杯に再び酒をつぎ、それを飲み始める。
こやつは底なしか!?
馬鉄は呆れた。
やがてここ、幽州にも一足遅れの夏がやってきた。
北平防衛戦での傷も癒え、兵士たちにも活気が戻っている。
そんな中、公孫サンは北平の外れにおいて大規模な閲兵をおこなった。
弛みがちにある軍規を、再び引き締めるためでもある。
そしてここでは、4人の将軍が公孫サンに練兵を披露することになっていた。
北平から、単経と公孫続。薊からは、趙雲と馬鉄。
始めに公孫続が練兵をおこない、続いて馬鉄がおこなう。
しばしの休憩の後、単経が続き、大取りを務めたのは趙雲であった。
自分の番が終わり、緊張から解放された馬鉄は、
将軍たちの集まる高台に上り、彼らとともに趙雲の練兵を観覧した。
すぐさまどよめきが走る。
凄まじい勢いで駆け出す部隊。
やがてそれは水流が分岐する如く、3つに分かれた。
そのまま、速度を落とすことなく駆ける3部隊。
程なく再びそれらは合流し、寸分違わぬ1部隊となった。
続いて2つに分かれた部隊がそれぞれ反転し、
今度は地上に大きな円を描いてゆく・・・
まるで地上に絵画を描くかのような趙雲の練兵に、
その場に居るすべての者が魅了されていた。
「見事なものよな」
傍らに立つ単経が、馬鉄に語り掛ける。
彼は「はあ・・・」と、曖昧な答えを返した。
「あれを真似ようとは思わぬことだ」
「・・・?」
「奴には、生まれついての将器がある。それも天才的な。
凡人がどれほど努力したところで、追い付けるものではない」
「そう・・・ですか」
まるで自分が凡人であるかのような言い様に、馬鉄は少々腹が立った。
そんな馬鉄の気持ちに、気付いているのかいないのか、
単経は淡々と続ける。
「かつて、殿の用兵を初めて見た時・・・
ワシはこの御仁こそ、中華いちの将軍になるであろうと思った。
しかし・・・、上には上がいるものよ・・・」
趙雲の練兵が終わり、周囲はやかましい程の拍手喝采に包まれている。
ひと呼吸遅れて、拍手を始める単経と馬鉄。
高台に向かい一礼をし、意気揚々と撤収を始める趙雲。
それを眺める馬鉄の心の中には、言葉にならない複雑な何かがこみ上げていた。