三国志[プレイ日記

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age
929無名武将@お腹せっぷく:04/06/01 20:58
福岡もかなり入ってた。映画の日というのもあるだろうけど。
 
誰も日記書いてないのか?
なら俺が書いちゃうぞ。
933無名武将@お腹せっぷく:04/06/24 10:48
人にも都合ってもんがありますから…。
ってなわけで、他の人も書いてもいいのでは。
ってか、8以外はダメかな?
934無名武将@お腹せっぷく:04/06/24 12:07
状況が状況だし、age進行でもいいかも。
もしかしたら陛下もスレがどれか忘れちゃったかもしれないし…。
935無名武将@お腹せっぷく:04/06/24 17:10
missyerukeizb!!!
>>933
じゃあ書いちゃうよ。
素人だけどいいのかな?
あと、キャラは袁術オンリー?
937無名武将@お腹せっぷく:04/06/25 20:46
>>933
別に袁術陛下である必要はないと思う。
938馬鉄:04/06/25 22:38
じゃあ、馬鉄でやってみます。
三国志[のPUK(PS2)
195年 史実 初級で。
939馬鉄:04/06/25 22:40
西暦195年、時は戦乱の後漢末期。
大漢帝国の遥か西、涼州と呼ばれる辺境の地域。
現在、この地域を統治するのは、後漢の名将馬援の子孫である馬騰。
そして、その馬騰には3人の息子がいた。
馬超、馬休、馬鉄。
長男の馬超はともかくとして、
その弟である馬休・馬鉄は能力的にも、ネームバリュー的にも、何とも微妙な感じであった。

「なぁ、兄貴」
仕事である商業振興をおこないながら馬鉄が馬休に言った。

「どうした?」
「何かさァ、何て言うか・・・平和だよな」
「別にいいじゃないか、平和に越したことはないぞ」
「中央じゃさァ、李カクに曹操、袁紹といった群雄が
 互いに覇を競ってるっていうぜ。オレたちこのままでいいのか?」
「父上も野望がないわけじゃない。
 そのうち長安を目指して南下されるおつもりだと思うぞ」
「しかしよォ、オレ、予感がするんだよな。
 父上が南下したら、オレ西涼の太守にされてさ、そのまま辺境で朽ち果てていく予感がさ」

ありえないことではなかった。
馬鉄の武力は一族の中で最低。その割に政治や魅力が微妙に高い。
しかも一族の者となれば、後方支援の太守タイプに最適であった。
てか、俺ならそーする。

馬鉄は思い立ったように立ち上がった。そして力強く言い放つ。
「決めた、オレ下野するよ」
「ハァ?」
「じゃあな、兄貴。そうそう、親父や超兄ィにもよろしく!」
「ちょ、ちょっと待て!」
馬休は叫ぶ。しかし、疾風の如く走り去る馬鉄が振り向くことはなかった。
馬鉄、いきなり下野ですか…。
これからの展開に期待!
いきなり下野ワラタ
942韓玄五代目:04/06/26 00:43
馬鉄殿、新リプレイ開始おめでとうございます。
続きを楽しみにしております。がんがって下さい。


                      偽兄ですた。
943馬鉄:04/06/26 06:49
>>940-942
ありがとうございます!
とりあえず馬鉄でいけるとこまで突っ走ってみます。
暇があったら、また何か感想でもお願いします。
944馬鉄:04/06/26 06:49
195年10月・・・放浪3ヶ月。
長安、陳留、業βと渡り歩き、
李カク、曹操、袁紹といった群雄に面会するも、手ごたえはゼロ。
それどころか、逆に冷たくあしらわれる始末。
馬鉄はちょっとホームシックになった。
西涼を立ち去る間際、馬休がくれた餞別を握り締める。
(帰ろうかな・・・)
などと考えていると、突然馬超が訪問に来た。
「おう、鉄ちゃん。元気か?」
「兄貴・・・どうした?」
素っ気なく答えたが、心の中では狂喜乱舞。
(やっぱ長兄だぜ、オレのこと心配してくれてんだな・・・)
愚痴でもこぼそうかと思いきや、
「今日はお前にある人物を紹介しようと思ってな」
厳顔という武将を紹介し、さっさと帰る馬超。
部屋の中で無言のまま、馬鉄と厳顔は見つめ合っていた。
(オレに・・・どうしろと?)
ただただ沈黙だけが過ぎていった。
945馬鉄:04/06/26 06:52
年は明けて196年。仕官できないまま年越ししちまった。
様々な群雄たちに面会したが、
暖かい出迎えを受けたのは公孫サンと劉備であった。
まあ、何といいますか。
やっぱり独り身は寂しいワケで。
そんな時に優しくされちゃうと、気持ちもつい傾いたりするワケで。
どっちにしようか迷いつつ、結局現在地は公孫サンの居城である北平。
意味もなく宮城の前を行ったり来たり、
兵舎で鍛錬をして、車懸の特技をアピールしたりしてみる。
早く勧誘してくれないかなぁ・・・などと思っていたら、仕官キター!!
公孫サン配下の関靖から推挙を受けた。
2回くらい固辞しようかと思ったが、やはり放浪の身は寂しい。即承諾。
何と酒宴を開いてくれた。有難き幸せにござりまする!

196年4月・・・袁術軍が秣陵(孫策領)に侵攻。これを打ち破る。
馬超のことを「超兄貴」と呼ぶということにしてはどうだろうか?
>>946
それだと頭からビームが出そうだから駄目
948馬鉄:04/06/26 21:07
天下に覇を唱える群雄はいったい誰か?
数年前にそう問われたならば、真っ先に挙がる名前は『董卓』であった。
しかし、その董卓はもはやこの世の人ではない。

董卓という巨大な柱が崩れ落ちた後、各地には雲霞の如く群雄が立ち上がった。
だが、次第にその群雄たちも淘汰されてゆく。
現在、天下に最も近いとされるのは北の袁紹か、あるいは南の袁術か。
または近年台頭著しい曹操か、天下無双の剛勇呂布であろうか。
そしてこの男、公孫サンも天下に近いとされる群雄のひとりであった。

「はっはっは、まあ飲んでくだされ。馬鉄殿」
馬鉄のお披露目の席。公孫サンが馬鉄の杯に酒を注ぎこむ。
彼が馬騰の息子であることに気を使っているのか、
公孫サンの態度はいくらかへりくだっったものであった。
彼は愛想笑いを浮かべながら、その酒を一気に飲み干した。
そして卓上に杯を置き、「ふぅ・・・」と一息いれる。
彼はまだ未成年。それほど酒は強くなかった。
それに、公孫サンに対する軽い失望感が、心の中に少し芽生えていた。
949馬鉄:04/06/26 21:08
白馬将軍の異名を取る、北方の雄公孫サン。
その勇名は、遠い涼州にまで鳴り響いていた。
どれほどの大人物であろうか。
期待を胸に彼は仕官を受けたのであるが、
今日間近でこの男に接し、馬鉄は何となくその本質を見抜いてしまっていた。

(この男は・・・戦が上手いだけの、ただの田舎将軍だ)

この程度の人物ならば涼州にもいる。
人物的に見れば、父親の馬騰に遠く及ぶまい。
(それよりも・・・)彼は正面に視線を戻した。
(この男が気になる・・・)
視線の先に居るのは、ひとり静かに酒を飲む若武者。
その整った容姿もさることながら、立ち振る舞いに全く隙がない。
馬鉄の動向に気付いた公孫サン。
自分を無視されたことに腹を立てたのか、彼は少しむっとした感じで言った。
「おお、そういえば趙雲の紹介がまだでしたな」
「趙雲殿・・・ですか」
正面にいた若武者は微笑みを浮かべ、軽く頭を下げた。
「子龍、こちらに来て自己紹介せよ」
「はい・・・」
ゆっくりと立ち上がる趙雲。
その様子を見ながら、馬鉄はあることを感じた。
(この男の感じは・・・そうだ、超兄貴に似ている・・・)
950馬鉄:04/06/26 21:14
>>946-947
超兄貴、使ってみました。
あれって確か元々はマンガですよね?
読んだ事ないんですが、面白いの?

いま、遅ればせながら袁術陛下のリプレイを拝読してます。
まだ全部読んでないんですが・・・この人すごいですね!
マジで再臨希望!最後まで読んでみたい。
まあ、馬鉄は再臨までの場つなぎ程度ってことで。
みなさま暇があったら読んでやってください。
951袁術陛下 ◆5UJc61bxX6 :04/06/27 04:06
すみません、時間が取れてないだけで、最後まで書く気はあるのです。
トーシロが大物作家気取りの遅筆はアレだとは思いますが……どうにも。
待っていただいている方には本当に申し訳ないことです。
952馬鉄:04/06/27 08:28
196年7月・・・馬騰軍が天水(空白地)に侵攻。これを領有する。
196年10月・・・馬騰を盟主とする反李カク連合が成立する。
加盟勢力(馬騰・袁紹・袁術・劉表・劉璋)

時代の歯車がその速度を増す。
そのきしむ音が、ここ北平までも高々く響き渡っていた。
遠い山並みに沈む夕陽を目に、馬鉄と趙雲は馬上で語り合う。
「お主の父上は・・・一躍時代の中心に踊り出たようだな」
馬鉄は無言のまま、ひとつ頷いた。そして趙雲が続ける。
「後悔してはいないのか?」
「・・・後悔したことは、ない」
西涼を出る間際、息を切らせて駆け付けた馬休の姿が目に浮かんだ。
今の言葉は、嘘かもしれないと・・・ふと思った。
953馬鉄:04/06/27 08:28
もしもあのまま涼州にいたなら・・・
父上や兄弟たちとともに、天下を目指していたなら・・・

馬鉄は大きく頭を振った。
間違ってはいない。あの時のオレの行動は、決して間違ってはいない!
それは本能的に確信できることだった。
何の論理も、裏付けもない。説明もできない。
しかし、オレの心だけが、その正しさを知っている。
そんな馬鉄の様子を見て、趙雲はおかしそうに笑う。
「何が・・・おかしい?」
「フフ、お主は・・・まだ子供だ」
「何ィ!?」
右手が思わず趙雲の胸倉に伸びた。
趙雲はスッと上体を反らし、それを難なくかわす。
体勢が崩れ、落馬しそうになった馬鉄を見、彼は大きく笑った。
「血気盛んな年頃なのだな、若い頃にはそんな時もある。
 私にもそんな時代があった。そう、言うなれば反抗期というやつか・・・」
「反抗期?」
馬鉄は馬の首にしがみ付きながら、ボソッとつぶやいた。
954馬鉄:04/06/27 08:34
>>951
陛下、お初にお目にかかります!
袁術おもしろいっす!先ほど読破しました。
文章力やその知識にホント感服です。
いつになってもいいので、続き読ませてくださいね!
>>950
ttp://www.max.hi-ho.ne.jp/hash/g19.html
公式らしきサイトもあるけどあれはちょっと・・・

>>951
マイペースでいいっすよ
これ書くのを基準に生活するんじゃちょっと何ですし
956馬鉄:04/06/30 19:42
197年4月 北平の評定

猛々しい足音が響かせ、公孫サンが評定の間に入る。
椅子にドカッと腰を下ろすと、彼は勢いよく言い放った。
「公孫サンだ。評定を始めるぞ!」
彼の傍らに立つのは、軍師の関靖。
そして目の前には二人の若者が立っていた。
馬鉄と、公孫サンの息子公孫続である。
現在、北平にいる武将はこの4人。
要するに人材難であった。

公孫サン「我らの状況を報告せよ」
関靖「非常に厳しい状況ですな。
   渤海・平原に終結する袁紹軍はおよそ10万。
   対してこちらは北平・薊を合わせても5万足らず・・・」
公孫サン「ふむ、兵力不足か・・・」
馬鉄「ならばオレに徴兵をお命じください!」
公孫サン「その必要はあるまい」
馬鉄「何故ッ!?」

あっさりと徴兵を却下され、馬鉄の発言権はなくなった。
957馬鉄:04/06/30 19:43
関靖「さらに昨夜、何者かに城壁を壊されました。
   袁紹の間者の仕業と見て良いかと・・・」
公孫続「ああ、それだったら昨日・・・ムッ、ムガッ!」
発言しようとする公孫続の口を馬鉄が押さえる。
不審そうに見つめる公孫サン&関靖に向かい、彼は慌てた様子で言った。
馬鉄「それは由々しき事態、さっそく続とともに城壁修復に向かいましょう!」
公孫サン「う、うむ、頼むぞ・・・」

公孫続を引きずるようにして退出する馬鉄。
城外へ出たところで、馬鉄は彼に力強く言った。
「いいか、内緒だぞ!
 昨夜泥酔して、オレたちが城壁を壊したことは絶対内緒だ!!」
「う、うむ・・・」
気圧された公孫続は力なく頷いた。
それから3ヶ月、二人は城壁修復に真面目に勤しんだらしい。
958馬鉄:04/06/30 19:44
197年7月 北平の評定

関靖「下ヒの劉備軍が、北海に侵攻したようです」
公孫サン「して、結果は!?」
関靖「劉備軍が撃退されました」
馬鉄「てか、北海にいる武将って・・・」
公孫続「孔融殿(武力32)ひとり・・・」
一同「大丈夫か、劉備軍!?」
959馬鉄:04/07/03 18:43
198年1月

馬鉄は二十歳となり、七品官に昇格を果たしていた。
発作的に涼州を飛び出してから3年、
公孫サン勢力に仕官してからもう2年の月日が経つ。

果たして、この間に自分はどう変わったのか。
何も変わってはいない。
変化のない毎日に苛立ちを感じていた馬鉄はある日、
主君である公孫サンに薊への異動を願い出た。

公孫サン「うむ、いいだろう」
すんなりと承諾を受けたことに、馬鉄は多少驚く。
ひょっとして、自分はどうでもいい存在なのか?
・・・などと一瞬考えたりする。
ともかく、馬鉄はすぐに旅支度を整え、薊へと発ったのであった。
960馬鉄:04/07/03 18:44
薊に到着し、宮城に入ると、そこでは評定の真っ最中であった。
馬鉄の横を伝令が走り抜ける。
伝令A「李カク軍、洛陽に侵攻、これを領有した模様!」
伝令B「劉璋軍は永安へ侵攻、これを領有!」
伝令C「平原の袁紹軍、孔融領北海へ進撃、これを制圧した模様!」
場に慌しい雰囲気が漂っていた。
前の2つはともかくとして、最後の報告は公孫サン陣営にとって重要なものである。

まずい時に来てしまったかな・・・。
馬鉄は恐る恐る、ゆっくりとした足取りで進み出てゆく。
そんな馬鉄に趙雲が気付いた。
趙雲「馬鉄ではないか。」
馬鉄「はい、この度薊へ・・・」
趙雲「うむ、連絡は入っている。宜しく頼むぞ」
馬鉄「こちらこそ、宜しく願います」

趙雲が馬鉄を、太守である田楷に紹介しようとした矢先、
凄まじい勢いで、もうひとりの伝令が駆け込んで来た。
田楷の前で崩れ落ち、荒れる呼吸で伝令は叫ぶ。
伝令D「渤海の袁紹軍、北平へ進撃中!急ぎ北平へ援軍を送られたし!!」
961馬鉄:04/07/03 18:46
田楷「な、何と!」
趙雲「ついに動いたか・・・」
公孫範「それがしが向かいましょう」
田楷「うむ。趙雲、単経!副将として範殿を補佐せよ!」
趙雲&単経「はッ!」
馬鉄「あ、あの・・・オレは?」
田楷「お主は異動してきたばかりであろう。薊の兵士に顔も通らぬ。
   わしとともに薊の防備に当たれ」
馬鉄「はい・・・」

何とも微妙な時期に異動してしまったものだ。
あのまま北平にいたなら、今頃兵士を率いて戦場だったかもしれない。
悔しさと、わずかな安堵感が心の中にある。
馬鉄はまだ、自分の部隊を率いて戦に出たことがなかった。
慌しく動き回る諸将の中、馬鉄はただひとり、取り残されたように立ち尽くす。

自分はまだ、若僧なのだと感じていた。
962馬鉄:04/07/05 21:36
伝令「袁紹軍が撤退を始めた模様。
   北平の戦いは、我が軍の勝利であります!」
そんな報告が薊になされたのは、
1月も後半になってからの事であった。
そして数日の後、公孫範率いる薊の援軍が帰還する。
従軍した兵士、それを率いる将校、果ては軍馬まで、
無傷で帰還できた者は誰一人としていなかった。

まるで敗軍ではないか・・・

馬鉄は一瞬そう感じた。
963馬鉄:04/07/05 21:38
田楷による、ささやかな祝勝の宴が催された後、
馬鉄はひとり趙雲の居宅を訪ねた。
北平防衛戦の話を、もっと詳しく聞くためである。
夕陽が差し込む部屋の中、両者は机を挟んで向かい合う。
それぞれの杯に酒がつがれ、趙雲はつぶやくように語り始めた。

「厳しい戦いだったな」

勝利とはいっても、そう簡単に喜べるものではない。
むしろ勝利というよりは、痛み分けというのが正しいだろう。
しかも今回の戦では、ひとつの幸運が公孫サン側に味方していた。
事前に平原の袁紹軍が、北海制圧に乗り出していたことである。

そのため、平原の援軍が少数だったこと。
また、顔良・文醜・張コウといった主力将軍たちが北海に出陣し不在であったこと。

「もしも渤海・平原の総力を挙げて攻め込まれたならば、
 今頃北平は袁紹軍の支配下となっていたであろうよ・・・」
趙雲は酒を一気にあおり、そして微笑んだ。
リアルタイムで見れたのはラッキー
馬鉄さんのリプレイ面白いです。
趙雲と馬鉄イイ
966馬鉄:04/07/06 19:02
星ひとつ見えない漆黒の闇。時刻は深夜となっている。
ひっそりと寝静まった街並みの中、趙雲宅の明かりだけが煌々と灯っていた。

「鉄、このままでいいと思うか!?」
趙雲は机を叩き、大きく叫んだ。
いつにもなく趙雲は酔い、そして荒れていた。
一方の馬鉄はどうにも酔えない、杯を握ったまま沈黙する。
そんな彼を覗き込むようにして、趙雲は睨みつけた。
「このままでいいのかと聞いている」

馬鉄は思わず仰け反って答えた。
「よくない・・・と思う。しかし、どうすればいいのかも・・・」

バタバタと慌しい足音で、趙雲は本棚に向かった。
バラバラと書物が散乱する中、彼は一本の筒を握り締め、それを机の上に出す。
そしてその中から出された紙を、一気に広げた。
それは巨大な中国地図であった。
967馬鉄:04/07/06 19:03
地図には細かく全国情勢が書き込まれており、
それが趙雲の性格を物語っているようだった。
彼は幽州を指し「これが我々」、続けて冀州を指し「袁紹」と言った。
「袁紹は丁度、我々の頭にかぶさった蓋のようなものだ。
 これを持ち上げ、取り除かねば中央に乗り出すことはできぬ」

「だが、それは容易なことではないぞ」
「その通りだ」
自らの杯に酒をそそぎながら、趙雲は紅潮した顔で答えた。

「袁紹と我々では、悲しいかなその地盤が違いすぎる。
 このまま幽州に篭っていたところで、いずれ袁紹に呑み込まれる」
「・・・・・・」
「運良く幽州を保ち続けたとしても、中央に覇者が出れば同じ事。
 その覇者に、袁紹共々呑み込まれてしまうであろうよ」
「どうすればいい?」
968馬鉄:04/07/06 19:04
趙雲は杯に口を付けながら、地図を指差した。
薊から南西に指を這わす。
「晋陽の張燕・・・」さらに南へ「上党の張楊・・・」

「これらを撃破してゆく・・・」
さらに南へ指を這わせてゆく趙雲。
その先にあるものが、馬鉄の目に留まった。
「ら、洛陽・・・!」
「そうだ、このルートで洛陽を突く。
 そして、さらに西進を続け、長安におわす天子を奉戴する!」

「・・・実現できるのか?」
「難しいな」
「殿は、この策を・・・」
「知らぬ。それどころか、進言したら俺の首が飛びかねん。
 これを語ったのは、馬鉄、お前が初めてだ」

いつの間にか、空から雪が降り始めていた。
部屋の明かりを受け、窓の外にキラキラと舞い散る雪。
趙雲は「雪か・・・」とつぶやき、杯を空けた。
969馬鉄:04/07/06 19:08
>>964-965殿
ありがとうございます!
実は袁術陛下に習い、文章構成をかなり研究しました。
苦労が報われる思いです。ありがd!
970馬鉄:04/07/07 23:43
袁紹軍を北平にて撃退した後、薊には再び安息の日々が戻っていた。
以前の馬鉄であれば、つまらぬと心の中で
愚痴をこぼしていたかもしれないが、もはやそんなこともない。

趙雲から語られた壮大な策を知り、
漠然とした目標のようなものが、心の中に芽生えていた。

晋陽・上党を制圧し、洛陽を突く。
それを考えると、湧き上がる高揚感に心が震えた。

馬鉄自身はちっぽけな存在かもしれない。
この策を実行に移す権力もなければ、実力もない。

しかし、心の中に夢を描くのは自由なのだ。

夢は、ないよりもあった方がいい。
どんな馬鹿げた夢であろうとも、
理想を持たず、ただ漠然と日々を送るよりは何倍もマシな筈だ。

馬鉄は日々黙々と仕事をこなし、
また、暇を見ては人材を探すべく全国を駆け巡り、
まさしく身を粉にして実務に励んでいた。

あまり楽しくはない。
あまり楽しくはないが、しかし充実している。
そう馬鉄は感じていた。
971馬鉄:04/07/07 23:44
やがて北平防衛戦より、半年の月日が流れた。
夕暮れの街道を、ひたすら北に駆けるひとつの馬影。

馬鉄であった。

宛に在野の士ありと聞き、出向いたのだが
あっさりと断られ少々機嫌が悪い。
薊に入った馬鉄は、愚痴でもこぼしてやろうと趙雲を訪ねた。

趙雲宅の戸を叩くと、
中からは、ひとりの中年男性が顔を出した。
知った顔、公孫サン配下の単経であった。
「おお、馬鉄か。しばらく見ぬ間にやつれたのぉ」
「は、はい。単経殿は御変わりなく・・・」

単経は前回の評定で、北平に異動していた。

ほどなく趙雲が姿を見せ、馬鉄を中に招き入れる。
三人による酒宴が始まった。
972馬鉄:04/07/07 23:45
「いやな、ちょいと愚痴をこぼしに来たんじゃよ。
 前回の評定で、こやつに階級を抜かれてしまったからな」
趙雲の肩を、ポンポンと叩いた単経は豪快に笑った。
趙雲の階級は六品官。
対して単経と馬鉄の階級は七品官であった。

「お前はワシを抜くまいな?」
今度は馬鉄を睨みつける。
明らかに冗談とわかっていたが、馬鉄はその返答に困惑した。
戸惑う若者二人。
そんな彼らの当惑ぶりに満足したのか、
単経はワハハと笑い「まあ、飲め飲め」と酒を勧めた。
973馬鉄:04/07/07 23:46
どれほどの時が経ったのか。
目を覚ますと、単経と抱き合って寝入っている自分に気付いた。
単経のヒゲが、ジョリジョリと頬に当たる。
あまりの気持ち悪さに、馬鉄は瞬時に飛びのいた。

ぐらりと世界が回る。
凄まじい頭痛を感じ、馬鉄は額を抑えた。

「寝ていろ」
杯を片手に窓の外を眺めながら、趙雲がつぶやく。
空がいくらか白み始めていた。
もうすぐ夜が明けるのか。
974馬鉄:04/07/07 23:47
馬鉄は胡座をかき、うつむき加減でしばらく沈黙した。
そして単経に聞こえないよう、小声で言う。
「何しに来たんだよ、このオッサンは?」

趙雲はゆっくりと杯を空け、しばらくしてから答えた。
「若者に愚痴でもこぼしたかったのであろうよ」
「うだつの上がらねェ、オヤジってとこか・・・」
「ふむ、しかし無能ではない。なかなか堅実な用兵をする。
 ただ・・・世渡りが下手なのだ。お人好しなのだよ、この御仁は」
「世渡りねェ・・・」

若すぎる馬鉄にとっては、いまひとつピンとこない言葉だった。
出世したければ、戦場で武功を上げればいい話ではないか。と思う。
しかし世の中は、それほど簡単に回ってはいないのだろうな。とも思った。

雀の歌声が聞こえ始める中、
趙雲は自らの杯に再び酒をつぎ、それを飲み始める。
こやつは底なしか!?
馬鉄は呆れた。
975馬鉄:04/07/10 19:50
やがてここ、幽州にも一足遅れの夏がやってきた。
北平防衛戦での傷も癒え、兵士たちにも活気が戻っている。
そんな中、公孫サンは北平の外れにおいて大規模な閲兵をおこなった。
弛みがちにある軍規を、再び引き締めるためでもある。

そしてここでは、4人の将軍が公孫サンに練兵を披露することになっていた。
北平から、単経と公孫続。薊からは、趙雲と馬鉄。

始めに公孫続が練兵をおこない、続いて馬鉄がおこなう。
しばしの休憩の後、単経が続き、大取りを務めたのは趙雲であった。

自分の番が終わり、緊張から解放された馬鉄は、
将軍たちの集まる高台に上り、彼らとともに趙雲の練兵を観覧した。

すぐさまどよめきが走る。

凄まじい勢いで駆け出す部隊。
やがてそれは水流が分岐する如く、3つに分かれた。
そのまま、速度を落とすことなく駆ける3部隊。
程なく再びそれらは合流し、寸分違わぬ1部隊となった。
続いて2つに分かれた部隊がそれぞれ反転し、
今度は地上に大きな円を描いてゆく・・・
976馬鉄
まるで地上に絵画を描くかのような趙雲の練兵に、
その場に居るすべての者が魅了されていた。

「見事なものよな」
傍らに立つ単経が、馬鉄に語り掛ける。
彼は「はあ・・・」と、曖昧な答えを返した。

「あれを真似ようとは思わぬことだ」
「・・・?」
「奴には、生まれついての将器がある。それも天才的な。
 凡人がどれほど努力したところで、追い付けるものではない」
「そう・・・ですか」

まるで自分が凡人であるかのような言い様に、馬鉄は少々腹が立った。
そんな馬鉄の気持ちに、気付いているのかいないのか、
単経は淡々と続ける。

「かつて、殿の用兵を初めて見た時・・・
 ワシはこの御仁こそ、中華いちの将軍になるであろうと思った。
 しかし・・・、上には上がいるものよ・・・」

趙雲の練兵が終わり、周囲はやかましい程の拍手喝采に包まれている。
ひと呼吸遅れて、拍手を始める単経と馬鉄。

高台に向かい一礼をし、意気揚々と撤収を始める趙雲。
それを眺める馬鉄の心の中には、言葉にならない複雑な何かがこみ上げていた。