92 :
ネルケ無法:
誤解だらけの日本仏教
なぜ私たちが、日本の「プロのお坊さん」でもなかなかしない、
このような修行生活を送っているのかと、不思議に思う方もいることでしょう。
その答えは、修行の中に、仏教の中に、自らの生きる力を見出しているからです。
それでは、仏教とはなにか?
仏教とはいうまでもなく、「仏の教え」です。しかし大事なのは、「仏の教え」とは
単に「仏(釈尊やアミダさん)から教わる」だけではなく、「仏(覚者)になるための道
しるべ」、そして「仏としての生き方そのもの」であるということです。だれが「仏
になる」のかというと、他でもなく今ここに生きている私たちでなければなりません。
自分自身が仏として生きることが昔から仏教の眼目でした。それは今日も変わっていま
せん。自分が仏にならない限り、仏教の意味がなくなってしまいます。
「今ここ、この自分が仏にならなければ」という仏教の原点が、今の日本ではあまり理
解されていないのではないか、という気が私にはしています。日本は仏教国です。少な
くとも、仏教国であったはずです。日本人は生まれながら、あえて意識していなくても
空気と一緒に仏教的な価値観や世界観を吸収しているはずです。ドイツから正法を求め
てはるばる日本にやって来た私には、そのことが羨ましいと思えます。それと同時に、
その伝統がいまや消えつつあるのを目の当たりにして、なんとももったいないことだな
ぁとも思っています。
ネルケ無法著 迷える者の禅修行より