──────さいしょの月は 白い霧 湖近くの町
見慣れた街の見慣れた店で、旅の支度を整えるクロ。なんだか腑に落ちない表情の店員。
「…? 変ねぇ
いえね 北の村から時々お使いに来る女の子がいるのだけど、なんだかその子と重なるのよね
不思議ねぇ、あなたとじゃ全然似ても似つかないのに。」
店員の言葉にドキリとするクロ。
そう……魔女の呪いにより、髪の毛は紺色に染め上げられ
今まで親しくしていた店員さえ気づけないほど、その容姿は「変わらされて」いたのでした
慣れない身体で 慣れない道を歩く
その旅は決して容易ではない事を、少しづつ思い知らされるクロ。とセンだった……
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──────ふたつめの月は 国境越え 藁葺きの村
小さな身体で、不慣れな旅を続けるクロ。しかし、子供の旅人であるが故の利点も
そう……子供であるからこそ見知らぬ土地や人からも、受け入れられやすいこと
「あ そうだ
黒い魔法を使う魔女がどこに行ったか知りませんか?」
愛らしい笑顔で村人に尋ねるクロ。
そんな少女に村人は優しく、旅に必要なナイフや知識を、気前よく分け与えてくれたのでした
「いろいろ教えてもらったよ、このナイフの使いかたとか、絶対ほどけない縄の結びかたとか。」
こんなあどけない少女でも、だんだん頼もしく見えてくるから、旅は不思議です
「あ、そうそう、干し肉の作り方も。ヘビとかコウモリでも美味しいって言ってたよ。」
同時にだんだんと、コウモリに姿を変えられたセンの立場も、危うくなってるのかもしれません
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──────よっつめの月 澄んだ空と 萌黄の草原
どうやらクロ。は、眼鏡のほかにセンの持ち物をもうひとつ持ち出したらしい
旅の途中で迷った時や疲れた時、センに隠れて、思いつめた顔をしてそれを開けている……
コソコソと一人何かをしているクロ。そっと背後から忍び寄るセン……そして
「───やっぱり!! これ俺の嗅ぎ煙草入れじゃねえか!!」
手にしていたそれを、クロ。からバッ!っとひったくるセン
「ああっ!! だめ!!」 やましさからか、慌てた表情のクロ。
「───って、ちょっとまて!!
何で中身が全部固形砂糖に変わってんだ!?」と、中身を見て驚くセン
「ちょ、ちょっとずつ食べてたんだもん!! 元気が出るから」
タバコは大人になってから……と、言うまでもなく、クロ。にはクロ。の使い方があったみたいです
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