幼少の頃、健次が七海の住む家の隣に引っ越してきた日の話
七海と健次が初めて会った時のエピソードです。
家のすぐ裏手に広がる、誰もいない渚。そしてどこまでも広がる美しい海に感動する健次。
そこらじゅうにいるヤドカリを集めて、一人でヤドカリ王国を作って遊んでいた時の事。
七海『…あのう、何やってるの?』
健次『うん?』
七海『わわっ、怖いくらいのヤドカニがっ』
健次『なんだよお前、欲しいのか?』
七海『え、別にそんな意味じゃないけど…』
健次『そっか。でも、あげないぞ』
七海『ほ、欲しいなんて言ってないよぉ、だいいち、いくらでも居るし…』
健次『…いくらでも居る?ばかっ!』
七海『はうっ』
健次『いいか、よく見ろよ、こいつだ、こいつ。これは普通のホンヤドカリと違ってだな…
ほら、このツメ、このツメの大きさもポイントなんだ。どうだ?お前、知らなかったろ?』
七海『あ、うん、知らなかった…』
健次『知ろ!』
七海『うぅ、どうして私が怒られるのよぉ』
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健次『しかもだな、よーく見ると眼の形も違ってだな…』
七海『…………ささ、今のうちに海にお帰り』
健次『それにほら、触覚も長さ違うだろ?』
七海『えへへ、元気でねぇ』
健次『後はこの…って、こらっ、何勝手に俺の楽園から解き放ってんだよっ』
七海『え〜、海に返してあげようよ』
健次『嫌だ!』
七海『だけど、かわいそうだよ、ヤドカニが…』
健次『…ヤドカニ?』
七海『うん、それがどうかした?』
健次『ヤドカニじゃなくて、ヤドカリっ』
七海『はうっ、どっちでもいいじゃないのぉ…』
健次『よかねーよっ、博士なんだから俺は』
つか、なんだよこいつは?見たところ地元っぽいけどそんなことも知らないのか。
健次『いいか、よく聞けよ、そもそもヤドカリってのはな…』
七海『ささ、今のうちにお逃げ』
健次『ぱっと見、カニみたいな…って、またかっ』
くそう、このままでは俺のヤドカリ牧場計画がっ。しょうがねぇ…これも王国を築く為だ。
健次『わかった一匹あげるよ、これでいいだろ?』
七海『別にちょうだいなんて言ってないのに…』
こいつが何を欲しがってるのかわからないが、女王であるマーキュリーはやれない。
とは言っても、普通のでは納得せずにまた国民を逃がすかもしれないし…
うーん悩む。惜しいけどこんな時には、王子である2号をあげるか…。じゃあ達者でな、マーキュリー2号。
「ぽん」。言いながら俺は、王子であるマーキュリーを進呈した。
七海『…うん?うひゃあ、あ、あたまの上にヤドカニがっ』
ttp://cgi2.coara.or.jp/~sarasa/img-box/img20070221213419.jpg 健次『だから、ヤドカニじゃなくて、ヤドカリだって』
七海『わ、わわわ…』
健次『それじゃ、大切にしてくれよ』
七海『う、うぅ… うわーん』 ぽいっ
健次『ああっ、こいつ、即効で捨てやがったっ』
七海『わ〜、ヤドカニがぁ〜』 バシャバシャバシャ
健次『て、うわっ、牧場の囲いまで崩しやがってっ』
七海『え〜ん、おかあさ〜ん!』
健次『こら、待て、お前〜っ』