──────ここのつめの月 だんだん道中でも、口数が少なくなってきたクロ。
小さな女の子には決して楽ではない旅の道中、人生を凝縮したかのようなここまでの道中で
さまざまな経験を繰り返し、クロはもう泣かなくなったけど
笑わなくもなった
「足が…… ふらふらする」以前なら足を止めていたかもしれない険しい山道でも、懸命に歩を進めるクロ。
それでもつい、こぼれる弱音……
「そーゆーことは、云えば余計そう感じるぞ。むしろ出すなら強がりにしとけ。」そんなクロを励ますセン。
「……ん
眩暈なんてしない 寒気なんてしない 頭ががんがん痛むのはきっと、北向きの風になってきたからだ。」
「お前っ… 待て!!
具合が悪いなら、早よそう云えよ!!」 クロの言葉は弱音ではなく、熱に浮かされてのものだった……
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深い緑の森 白濁した世界 しこたまに悪い天気に出くわすときほど 旅人に辛いことはない
山あいの洞窟で、とうとう病に倒れるクロ
熱は少しづつ下がってきたものの、頬を紅潮させ、つらそうな表情を見せたまま
「ねえセンセイ 弱音 …吐いてもいい?
昨日云ってたよね 『強がり』にするなら口に出してもいいって」
そんなクロに、乱暴だが優しさの垣間見える言葉を投げかけるセン
「吐いてラクになるんなら構わねえよ、でも『戻らない』とか『やめない』とか言うのはナシな。
強がりと意固地は別だかんな、そんくらいなら明日から反対の道行かすぞ、俺は。」
「……じゃあ いいや
泥の味がする薬と一緒に飲み込んどく」
旅人に 本当に辛いときは
自分の中に 旅をやめる「理由」を抱いたときかもしれない
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