>>23つづき。一応、健次に好意を寄せており、とある事をきっかけに告白する佐倉裕美というキャラも居ますが、
彼女ですら健次と七海の深い仲を良く知っていて、その関係を尊重し、認めています。
「私は、友坂先輩の事が好き『でした』」
─ダメなの覚悟の上で、自分の気持ちにけじめをつけるための告白です。
健次も、その気持ちを嬉しく思いながらも、自分には七海がいるからと、きっぱり断ります。
「何よ、あんな女さえいなければ!」とか「ちょっとくらいなら浮気してもいいよな」なんて、
そんな心の動きは微塵も見られません。
どいつもこいつも良い奴ばっかりです。極度のお人よしばかりです。
のんびりした町に「バカ」がつくほどのお人よしばかり。
福本伸行漫画のやり手の悪人が居たら、一週間で町ごと乗っ取られてもおかしくない勢いです。
言うなれば人類のある種の理想、性善説が支配する世界がラムネの作中において展開されます。
「世の中から悪い奴なんか居なくなって、良い奴ばっかりになればいいのになぁ」と誰もが一度は頭に描き、
すぐに「ま、そんなの無理だろうけどな」と諦めてしまうであろう、ウソの世界。
ですが、(これまた個人的な感想になってしまうのですが)ラムネを見ている間は、
そのウソの世界を、「こんなのウソっぱちだよな。ありえねー」と、明らかなウソとして認識する事はありません。
見ている間は健次と七海の仲を見守る、ラムネ世界の住人の一人としての自分がそこにいます。
ラムネはとてもウソをつくのが上手い作品で、あっさりとその中に飲み込まれてしまいます。