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<大道寺知世@カードキャプターさくら>支援:
埴谷庵 (はにやあん)
江戸時代、現在の千葉県にあたる上総国(かずさのくに)・埴谷(はにや)に
大道寺(だいどうじ)なる寺があり、そこは毎年枝垂れ桜が咲き誇っていた。
18世紀半ば、当時の大道寺住職「知世和尚(ちせいおしょう)」がこの桜の美しさに
少しでも道行く旅人の疲れを癒して欲しいと考え、近くの川沿いに
一軒の庵を構えた。住職はその庵に「埴谷庵(はにやあん)」と名付け、
茶と茶菓子を用意し、旅人にふるまいながら共に咲き誇る桜を愛でた。
そして別れ際に「桜咲き 共に嬉しや 埴谷庵」と短冊に書いて渡したという。
その噂は次第に江戸へ広まり、それからは毎年春になると桜を求め
旅人が往来するようになり、「嬉しや埴谷庵」という言葉は当時の流行語となった。
もともと日本には桜の花見をするという習慣はなかったが、この知世和尚の
アイデアがきっかけとなって定番となったことは言うまでもない。
ちなみに大道寺は現在「妙宣寺」という名前に変わった、枝垂れ桜と共に
当時の面影を偲ばせている。
余談ではあるが、以前子供向けのアニメーションで、主人公の女の子が
嬉しいときに「はにゃ〜ん」と声を上げるシーンがあったが、原作者が
このエピソードを参考にしたことを推測させる。
(民明書房刊『日本大衆文化再考〜江戸は萌えているか〜』より)