第2回2ちゃんねる全板人気トーナメント宣伝スレ-032

このエントリーをはてなブックマークに追加

      ___
     (_★_)    断じて諦めるな!断じて諦めてはならぬ。断じて、断じて、断じて、断じて!
     彡 ´Д`ミ < 事の大小を問わず、内容の如何を問わず、
     / VV \    己が名誉に賭けての信念と良識以外には、如何なるものにも屈服するな!
  __| |ゲバラ| |__  .
  \   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   \
  ||\            \
  ||\|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄        ―――― ウィンストン・チャーチル
  ||  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
     .||              ||

 こんばんは。三度のネタよりネタが好き、みなさんの世界史板です。
 さて、いちいち例をあげつらうまでもなく、ちょっと頭がイカレてる天才というのは、特に活劇ものの漫画で
よく目にする光景です。
 しかし、事実は小説より奇なりとも申します。
 では世界史板としては、対抗させていただかざるを得ないでしょう。
 史上に燦然と輝く、ちょっと頭のイカレた傑物ども。
 今回はそんな彼らについてちょっとご紹介いたしましょう。

 ユースフ・ブヌ・アイユーブ (1138-1193) 

 通称サラーフッディーン(信仰の公正)。クルド人。後にアイユーブ朝を開く。

 では、超がつくほどの有名人からいってみましょう。
 本名ユースフ・ブヌ・アイユーブ。通称 「サラーフ・アル・ディーン」。
 西洋風にサラディンと呼べばお分かりになる方も多いのではないでしょうか。

 彼の功績は、イスラム史に燦然と輝いています。
 ヒッティーンの丘にエルサレム王国の墓標を打ちたて、88年ぶりに聖地エルサレムをキリスト教徒の
手から取り戻し、獅子心王リチャード1世率いる第3回十字軍に対して最終的勝利を収める。
 また、信仰に篤いイスラム教徒である反面、異教徒に対しても慈悲深く、敵からも賞賛される人格者。
 諸々の年代記は、彼についてそう伝えています。

 しかしそれではつまらない事この上なし。
 当然、彼もこのお題にふさわしい大変困った性癖を持っていました。
199世界史@勝手に支援 (3/6) 〜英雄。その奇癖。:2005/05/27(金) 20:07:43 ID:TsMJC2Ek

 今も語り継がれるイスラムの英雄、サラディンの奇癖。
 そう。彼は、「とても気前がよかった」のです。

 や、皆様の言いたいことは分かります。
 もちろん、ただ気前が良いだけではネタになりません。なりませんとも。
 では彼はどう気前がよかったのか。
 一例を引いてみましょう。

 あるフランク(ヨーロッパ人)との休戦期間中の事。サラディンの幕舎にひとりの男が現れます。
 その男の名はブリンス・アルナート。シリアはアンティオキアの領主でした。
 彼は図々しくも、4年前スルタンに取られた領土を返してくれとのたまいました。
 普通なら歯牙にもかけず拒絶するところ、サラディンはそれに応じ、気前よくその地方を返してやったのでした。
 さて、上の話にはちょっとした異常性があります。
 サラディンの前に現れたこの男、ブリンス・アルナート。またの名をルノー・ド・シャティヨン。
 彼はまさしく、80年前の第1次十字軍の中から現れたような、狂熱的人物でした。
 この男の目的はただひとつ。「異教徒を殺し、財貨を略奪し、その土地を奪うこと」。
 実際、当時イスラムに対して融和的諸侯も多かったエルサレム王国の中で、彼は宗教騎士団と結んで
最も過激な一派を率いています。
 彼にとって、イスラムと結んだ誓約・協定など、ただの詭弁と裏切りに過ぎませんでした。
 当然のように休戦条約を破ってイスラムの隊商を襲い、またあるときは、預言者ムハンマド生誕の地、メッカを
襲撃しようとさえしています。
 この襲撃はサラディンの弟アル=アーディルによって阻止されますが、明らかに十字軍の「聖地回復」という大義から
逸脱したこの行為により、ブリンス・アルナートはイスラム世界から「最もおぞましき敵」と認識され、ついにはあの慈悲深い
サラディンをして、「あの男はこの手で殺す」と誓わしめるほどの悪人っぷりでした。

 彼はせせら笑いながらこう嘯きます。

「不信心者と交わした誓約に、なんの価値があるのかね?」
 少々本題を外れました。話をもどしましょう。
 アンティオキア時代のブリンス・アルナードはここまで酷くはなかったにしろ、既に立派な悪人でした。
 そんな人物だと分かっているはずなのに、客人として来たからには落胆して帰って欲しくない。
 正直、サラディンの気前のよさには、基地外じみたものさえあると思います。(言ってやった言ってやった)

 さて、そんなサラディンですから、他の上客に対しては言うまでもありません。
 こんな話があります。

「彼の浪費癖にほとほと困り果てた経理官たちは、不時の出費に備え、いつも一定の金額を隠していた。
 彼らの主君がそれの存在を知ってしまえば、すぐに使ってしまうからである」

 その苦労、推して知るべし。

 しかも、そんな経理官たちの苦労にもかかわらず、サラディンが死去した時には、国庫にティールの金塊一個と
銀貨47ディルハムしか残ってなかったというのですから、なんとも恐ろしい話です。
202世界史@勝手に支援 (6/6) 〜これでおしまい。:2005/05/27(金) 20:10:33 ID:TsMJC2Ek

 そんな気前の良すぎるサラディンの残した言葉に、こんなものがあります。


「この世には、金が砂粒ほども大切でないと考えている人間もいるのだ」


 彼の元で苦心した無名の経理官たちに、心からの敬意をささげます。
 異常、世界史板からの支援でした。