第2回2ちゃんねる全板人気トーナメント宣伝スレ-032

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『ヴィンランド・サガ』より、バイキングこぼれ話（ネタバレ注意）

≪ヴィンランド≫って何？
コロンブスがアメリカへ上陸したのは、キリスト教紀元１４９２年。
これは有名。しかし、その５００年も前にアメリカへ到達していたバイキン
グたちが存在していた事は、ほとんど知られていません。
事の起こりは９８６年、アイスランドの交易商が航海中に嵐に遭い、航路を
大きく外れ、西の方角に木々の繁る丘陵地を眼にした事に始ります。
これを聞いたのが、レイフ・エリクソンという男。彼の父「赤毛のエリック」は、
放牧されていた羊を争っていて人を殺し、その後罰も兼ねてグリーンランド
入植に従事していた人物。
「自分も新天地を探そう」と、決意して旅立ちます。

グリーンランドを出たのは、９９７年。その後西へ西へと進み、まず辿り着
いたのは、氷河ばかりの荒漠とした土地であったので、「ヘルランド（平らな
石の土地）」と名づけられました。
次に着いたのは、木々が生い茂った土地であったので、「マルクランド（森の
土地）」、最後が「ヴィンランド（葡萄の土地）」（・・・分かり易い）。

実は、何処が何処なのかは、はっきりしません。カナダのニューファンドラン
ド島辺りからは遺跡が発見されていますが、何分寒冷地で葡萄とは縁が無いの
で、もっと南、ボストンやニューヨーク辺りまで南下させる人もいます。

ともあれ、新大陸に到達したのは確か。グリーンランドよりも実りの多そうな
土地を目指し、新大陸には無かった家畜や製鉄技術を引き連れて、１６０人の
男女が旅立ったのは、それから間も無くの事でした。
しかし、新天地には既に「新客」、即ち原住民がいました。
投擲器を使用する者あり（イヌイット？）、弓矢を使用する者あり。
「スクレリンガー」と呼ばれた彼らは、数を頼んで襲撃を行い、鉄製の釘や人名
までもを奪って行くのですから、バイキングの十八番を奪われた形。

遂にはエリックの息子トーステンまでもが矢に倒れ、人員不足で数少ない女
を奪って仲間割れまで起していた彼らが帰国を決意した次第を、「サガ」と呼
ばれる散文学は、次の様に述べています。

≪今や彼らは悟った。たとえ入植した国が豊かであっても、先住民との間に紛
争が生じる危険があるということを。そこで彼らは、いつでも入植地を立ち去
り、故郷の村に舞い戻れるよう準備を怠らなかった≫

こうして、第一次の入植は失敗に終りましたが、その後も交流は続きました。
キリスト教化の進んだ１１２１年には、グリーンランドの司教エリック・グ
ヌプソンが、ヴィンランドに赴いています。
木材目当ての入植者たちの招きに応じたのでしょう。

とはいえ、その後新大陸には鉄器や馬を利用した文明国が成立する事は無く。
１５世紀末以降の、ヨーロッパからの侵略を待つ事となります。

（余談）ずいぶん昔、『小さなバイキング・ビッケ』というアニメがありまし
たが、その中でバイキングたちが新大陸を訪れています。御一見を。

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引き続き、バイキングネタで。

≪美貌の女海賊、その名は・・・≫
ヨーロッパ最古の王朝を誇るデンマーク。彼の国の中世史上において、最も
偉大な歴史家とされるのが、サクソ・グラマティクス（１１５０年頃〜１２
２０年）です。
今回は、彼の手になった史書『ゲスタ・ダノールム（デンマーク人の事跡）』
の中から、とある女海賊の話をご紹介致しましょう。
その名はアルヴィルダ。表記によってはアルビダとなりますが、例の海賊王
漫画に登場する、金棒使いのモデルだそうです。

イェートランドという国の王女として生を受けた彼女は、極端な箱入り娘。
羞恥心が強過ぎた為に、美しい顔を衣服で隠していた上、娘を溺愛する父王
は、毒蛇と無毒の蛇に番をさせ、よばいをかけたらさらし首にするという徹
底ぶりでしたから、まともな男が近づける筈がありません。

ところが、アールブというまともじゃない男がおりまして、これが蛇の口に
焼けて真っ赤になった鋼鉄やら、槍やらを投げ込んで突破してしまいます。

父王は、「娘の意志に任せる」と言い、アルヴィルダも乗り気になっていたの
ですが、そこで母親が「慎みを忘れ、外見の誘惑にとらわれている。彼の徳
を考慮に入れず、軽はずみな心から視線を美の甘い追従に向けている」と、
もうやかましいの、なんの。

しかし、流石は世間知らず。アルヴィルダは、母の言う事を真に受けると、男
装し、可憐な乙女から荒々しいバイキングになり、同じ様な決心をした娘たち
を引き連れ、旅に出ます。

そこで都合よく、首領が戦で死んだばかりのバイキング一行と遭遇。
美しい容姿が認められ、彼女が新しい首領となり、大暴れをします。

さて、物語というものは、向こう見ずな馬鹿な主人公に、危機意識の欠如し
た阿呆なヒロインがいて、世界を攪拌して生み出されるものと申しますが。
阿呆が暴れていた頃、やはり馬鹿の方も小さいながら組織を率いていました。

海は広いが、微妙に狭いバルト海。やがて、両者の船団は遭遇し、アルヴィ
ルダ側から襲い掛かり、戦闘に突入します。
その時、アールブの仲間ボルカルは、アルヴィルダの兜を切り取り、素顔を
目撃すると、こう叫びました。
「これは武器ではなく、接吻に相応しい場所だぞ。きびしい弓矢の手をおい
て、敵にもっとやさしい奉仕をすべきだ」と。
かくして、両者再会、男装は女装に戻され、無事結婚の運びとなりました。
しかし、お母さん、あなたが何も言わなければ・・・とは言うだけ野暮か。

以下、サクソの付言。
≪女性が戦闘に従事したと聞いて驚かないように、ちょっと脱線して、これら
女性の地位や習慣について若干述べてみたい。つまり、昔、デンマーク人の
間には、男装をしてほとんど生涯軍務に服し、気丈さを贅沢の悪で弱めない
女たちがいたのだ。（中略）
とりわけ、逞しい心と美しくほっそりとした姿態を兼ねもつ女たちがこのよ
うな人生を歩むのが常であった。（中略）
（彼女らは）魅惑よりも冷酷を重んじ、接吻のかわりに戦闘で相手をおびやか
し、接吻のかわりに殺害を楽しみ、愛の仕事よりは武器の仕事に精を出し、
織物にむけるべき手を武器をあつかうことにむけた。
休息の寝台ではなく死を熱心に求め、美しい姿で喜ばすことのできる者たち
を槍で狙った≫