第2回2ちゃんねる全板人気トーナメント宣伝スレ-017
【開幕記念 プロ野球漫画シリーズ】 *・゜★・*。.:・゜☆.。.*・゜★・*。.:・゜☆.。.
「メイプル戦記」川原泉 花とゆめ連載 単行本3巻・文庫本2巻 白泉社
「ドカベン」を野球漫画の金字塔とするなら、女のプロ野球を描いた空前絶後の
作品がこれである。1991年7月に女子のプロ選手への門戸が開かれたが、
この作品はその翌月連載開始。現実のプロ野球にはアリエネーな設定や展開は
満載であるが、それでも漫画好き・野球ファンのいずれもが、今なお読み続ける作品。
この作品はむしろ、プロ野球界を舞台にした女の友情と女の志の物語だと考える
べきであろう。現役プロ野球選手の妻、アメリカ人助っ人、お嬢様学校の変わり者、
元イケイケ女子大生、それに、かつて甲子園を湧かせた高校球児ながら「体は
男でも、心は女」と言い切るオカマバーホステスなど、全くタイプの違う選手達が、
「甲子園の空に笑え!」後の広岡真理子監督とともにセ・リーグ優勝を目指す。
監督やオーナーは選手達に全幅の信頼を置き、選手達も全力でそれに応えよう
とする。自己アピールも忘れない。現実には大変困難なシチュエーションであるが、
もしかすると女の友情の最も美しい部分でもってすれば可能かも知れない、と
思わせる不思議な説得力がある。スポーツの世界では尚更である。「女の子で
よかったね。たとえ変わり者だと言われても」という野球好きの女の子達の夢の
物語であり、少女漫画としても野球漫画としても大成功の作品だと言えるだろう。
当時のセ・リーグ各球団、解説者など多彩な顔ぶれがパロディで登場し、
野球ファンも十分楽しめる。ちなみに当時全盛を極めていた他球団オーナーとして
「鼓さん」が登場するが、この人が実在の誰であるかは自粛しておこう。
全編を通じて、技術的な内容はあまり顔を出さないが、守備に関してひとつだけ
登場する。「三遊間のゴロを逆シングルで捕球して即座にノー・ステップで一塁送球
できる技術と肩を持ったショートが欲しい」がそれである。これは実は、直木賞作家
・海老沢泰久氏の「監督」という野球小説にあるのとほぼ同じ台詞。この小説は
セの某球団をモデルにしたと思われる作品で、主人公の「広岡達朗」が万年最下位
チームの再建に際してこう述べているのである。これをみると「広岡真理子」は
実在の広岡元監督よりも、むしろこの「広岡達朗」をモデルにしたものと思われる。
なおこのプレーができれば、現実のプロ野球選手でも名選手に数えられるのでは
なかろうか。詳しいところは、次の機会にプロ野球板に解説してほしいものである。
「メイプル戦記」では「甲子園〜」で見られた広岡真理子の、ノホホンとした田舎の
教師としての表情は消え、プロ球団のストーリーらしく、冷静でしたたかな側面が
強調される。名シーンも随所に。
「−−野球には勝者があり敗者がある。何が何でも勝つつもりでも、負ける時には
負ける。それはそれでいい。私が諸君らに望むものはただひとつ。『最善を尽くせ』」
広岡監督! リアルでこんなことを言われると惚れそうなんですが。
女子の野球選手は1994年、東京六大学で登録された二選手が先鞭と言ってよい。
また現実の野球界において、今年50年ぶりに球団が新規創立した。「スイート・
メイプルス」のフランチャイズ札幌には作品と同じ「札幌ドーム」が既に完成、
プロ球団に使用されている。そして、今年ついに女子プロ野球選手第一号が誕生。
漫画の世界は、常に現実の先を行っているのである。