第2回2ちゃんねる全板人気トーナメント宣伝スレ-011

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445クラシック板支援(1/4)
【ある病気と作曲家たち】
学校の合唱コンクールなどで歌った(歌わされた?)人もいるであろう、
あの超有名曲「モルダウ(ヴルタヴァ)」をご存じの方は多いと思う。
もともとは、スメタナの作曲した交響詩「わが祖国」の中の第二曲。
「わが祖国」は、長年他民族の影響を受けつづけてきたチェコ人にとって
民族主義の一大記念碑であり、東欧民主化革命の際にも運動鼓舞のために
何度も演奏されたという、ある意味アジテーショナルな性格を持つ名曲である。

あまり知られていないかもしれないが、1874年にスメタナが「わが祖国」を
作曲していたとき、実は耳がほとんど聞こえていなかった。“ベートーヴェン”
状態そのものだったのである。そんな中で彼は一気に「わが祖国」を書き上げ、
続いて、これまた有名な弦楽四重奏曲「わが生涯より」までも作曲してしまった。

スメタナが亡くなったのはその十年後の1884年。死因はメニエール病と診断された。
ところが、真相は違っていた。彼は1874年頃に梅毒にかかっていたのである。
ある医師が遺体を解剖したところ、脳の萎縮や聴神経の消失などの症状が見られた。
医師は結論として、死因を梅毒による進行性麻痺と診断したが、彼は民族の名誉を
汚す者として医師会から叱責されたという。その後、1963年にスメタナの日記などが
調査され、彼が梅毒患者であったことがほぼ確定した。
446クラシック板支援(2/4):2005/04/04(月) 13:20:25 ID:ZD09ag50
ヨーロッパにおける梅毒の歴史は長い。コロンブス一行が病原菌を持ち帰って以来、
爆発的に広がった病禍は、一般人だけでなく王侯貴族すら免れ得ぬものとなった。
当然、有名人にも感染していた人はいた。東海大名誉教授の五島雄一郎氏は、梅毒の
発作が起きる数年前から創作力が湯水の如く溢れ出る例がいくつか見られるとして、
スメタナ以外にヴォルフ、シューマン、ドニゼッティなどの作曲家、他にもニーチェ、
モーパッサンなどを挙げている。

これらの人々は後天的に感染したものと考えられているが、梅毒の感染ルートは
それだけではない。母親の胎内で感染した先天的罹患者も多かった。
有名作曲家の中で先天的感染を疑われている一人が、実はスメタナと同じく
耳の病気を発症して聴覚を失った、ベートーヴェン当人である。
先天性の梅毒は頭蓋骨の形に影響を及ぼして難聴を引き起こすことがあり、後に
調査された彼の頭蓋骨にも、先天性梅毒に特徴的な症状が確認されたという。
447クラシック板支援(3/4):2005/04/04(月) 13:20:51 ID:ZD09ag50
そしてもう一人、あのW.A.モーツァルトにも、先天的感染説が出ている。
モーツァルトの遺体がどこに埋葬されたかわからない、適当な扱いをされた
という話は有名である。そもそも、ろくな葬式すら出してもらえなかった。
何故こんなことになったのか?

それは、彼がほとんど自殺に近い死に方をしたからだと言うのだ。
梅毒菌は熱に弱い。モーツァルトは子どもの頃、腸チフスにわざと感染して
大熱を出すことで梅毒菌を殺すという、無茶な治療をしたことがあった。実際
それでかなりの効果があり、しばらくは元気に生活することができたのである。

20年近く経って、症状がぶり返してきたことを感じたモーツァルトは、腸チフスを
使って同じ事をしようと考えた。子どもの頃の経験があったのでモーツァルトは
楽観視していたが、抗体ができていたことを計算に入れていなかったために
失敗、そのまま死んでしまったというのだ。

自殺に寛容な日本ならまだしも、自殺厳禁のキリスト教が浸透していた当時の
オーストリアで、こんなことが容認されるはずはなかった。結果として葬式も墓も…
と、こういうわけである。ただし、モーツァルトの死については昔から諸説有り、
未だ決着はついていない。この話も仮説の一つであることをお断りしておきたい。
448クラシック板支援(4/4):2005/04/04(月) 13:21:12 ID:ZD09ag50
ちなみに、映画「アマデウス」で敵役にされたサリエリも、梅毒が原因で狂死した。
彼が晩年「モーツァルトを殺した」と告白したという話があるが、実は脳梅毒の
影響で本当にそう言ったことも考えられるのだ。先ほど名前が挙がったロマン派
歌曲の巨匠・ヴォルフは、病状が進行して脳が梅毒に冒されると、自分がウィーン
歌劇場の支配人になったと妄想を抱くようになり、周囲にそのことを触れ回った。
そして当時の劇場監督だったマーラーに面会して自分のオペラを上演するように
強要し、断られると「自分こそマーラーだ」と錯乱状態に陥ったという。だから、
サリエリが「モーツァルトを殺した」と告白したというのは、あり得ないことではない。

さて、五島氏の言うような梅毒と創作力との関係だが、これは決して実証されたこと
ではない。しかし、スメタナが梅毒に感染していなかったら「わが祖国」は、「モルダウ」
は生み出されていたのであろうか。我々も合唱で「なつかしき河よ モルダウの〜♪」
などと歌うことがあっただろうか……
もちろん、その答えを知るものはどこにもいない。

参考図書
「音楽夜話」五島雄一郎著 講談社(文庫版「死因を辿る」 講談社α文庫)
「モーツァルト・ノンフィクション」田中重弘著 文芸春秋