第2回2ちゃんねる全板人気トーナメント宣伝スレ-008
「ミステリー板の事件簿」
第5回目は5作品。バラエティ豊かに取り揃えてみました。
【25・殺しの双曲線(西村京太郎)】
最初に驚くのが、本編冒頭に
「この推理小説のメイントリックは、双生児であることを利用したものです。」
と書かれていること。おいおい、それを最初に言ってしまうなんていったいどういう話なんだ?
…と思ってしまったあなた。もう読まずにはいられないでしょう?
差出人不明の招待状で雪の山荘に集められた男女、そこへ連続殺人が…という
かなりガチの設定ながら、冒頭の著者の言葉もなるほどと思わせる巧妙トリックに脱帽。
山手線が30円で乗れる時代の作品だが、名作の評判も頷ける一冊である。
文章も普通で句読点も少なく、現在の著者と同一人物だとは思えない。
【26・暁の死線(ウィリアム・アイリッシュ)】
故郷の田舎町に嫌気がさしニューヨークに出てきたものの、ミュージカルスターになる夢は
いつのまにか場末のダンサーという現実に変わっていた。
帰りたい、でも帰れない。故郷に帰るのに勇気が必要だなんて、田舎にいた頃は考えもしなかった!
都会になんて負けない。胸を張って故郷に帰るのよ。
そのためには、あのパラマウント塔の大時計が、バスが出る午前6時15分を指す前に、
あたしたちにかけられる殺人の嫌疑をなんとしても晴らさなければ!
現在、午前2時。タイムリミットまで、あと4時間――――
【27・長いお別れ(レイモンド・チャンドラー)】
チャンドラーといえば、「優しくなければ生きる資格がない、ってやつね」というイメージを
お持ちの方も多いだろう。小洒落た言葉を多用する鼻持ちならないキザ男、と。
しかし印象的な台詞も、物語の中ではさほど浮いた感触はない。
初読時は地味になんとなく読み流してしまう文章も、再読時にはじわっときて味わい深い。
何を根拠にしたわけでもない「ただ何となく」の男同士の友情を、そんな文章で描いた傑作。
スリルとかサスペンスより、グラスを片手にじっくり雰囲気を楽しみたい貴方に。
【28・とむらい機関車(大阪圭吉)】
H駅機関庫に所属する機関車の中で、粗忽屋の名も高いとある機関車があった。
押しも押されもせぬ轢殺事故の記録保持者で、事故の度に花環を機関車の鼻先に掲げて走ることから、
人呼んで「葬列(とむらい)機関車」。
この葬列機関車が、奇妙な事故に連続して遭遇した。近所から盗まれた豚が、葬列機関車を狙ったように
線路に縛り付けられて轢死させられたのだ。いったい何が目的なのか?
なにしろ戦前の作品なので読みづらい部分も多々あるが、語り口のおもしろさと意外な真相で楽しめる。
同じ短編集に所収の「坑鬼」も炭坑労働の描写が凄まじい傑作。
著者は太平洋戦争で戦没した。実に惜しい人を失った。
【29・ 魍魎の匣(京極夏彦)】
連続少女バラバラ殺人、箱を崇める宗教、作中作「匣の中の娘」など怪しげな設定が
複雑に絡み合い、そして衝撃の結末が。日本推理作家協会受賞作。
薀蓄が多いから京極作品は挫折してしまいがちですが、これは読む価値ありです。
また、後半の怒涛のたたみかけは相当エグいので、くれぐれも「向こう岸」にたどり着かないように・・・。